巫女戦記   作:零デイ

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17話

 部屋に入るとそこは地獄だった。

 

「中尉殿!ご無事でしたか!左目は負傷されましたか!?それは?」

 

「左目は問題無いです。捕虜は取り合えず手当と監視を。こちらの損害は?」

 

 幸いにもその捕虜はディナよりも更に小さい兵士だったので簡単に確保出来た。

 

「負傷者はいませんが、あそこに一人疲労を訴えた者がいたので休ませています」

 

座り込んでしまったまともな彼をディナは一瞥する。

 

「まあ無事なら良かったです。この拠点の制圧は?」

 

「完了しています。ただ捕虜はいません…いや流石にそこまではしませんってば。テロリスト達はしつこく抵抗するか多少潔い奴は自決しました」

 

 捕虜が一人もいない原因を想像したのかベラをじっと見たディナに彼女は慌てて説明する。

 

「…」

 

 そのまま反乱軍司令部に入ると嗅ぎなれた、血が酸化した鉄分や生臭い新鮮な死体、硝煙のツンとした匂いで立ちこめていた。死体を制圧した直後であるため散乱した死体や備品もそのままとなっている。

 

「書類などは全て処分されています。探せば何かあるでしょうが…」

 

司令官と思しき年長の死体の顔を見たディナは呟く。

 

「彼らは信じる神に殉じたのか…」

 

羨ましい、と漏れ彼女の呟きをベラは聞き取れなかった。

 

「中尉?どうされました?」

 

「ンー…数が少ないですし恐らくここも使い捨ての司令部の一つでしょう…すぐに次の司令部を叩くのでここは放置して移動準備を。あと無線機をください」

 

「ハッ…中尉が確保した捕虜はどうします?抱えたまま作戦続行は不可能ですが」

 

「先に移動します。捕虜もここに転がしておいて友軍に確保してもらいます」

 

ディナは飛行して場所を変えると無線機を掴むと広域無線で発信する。

 

「…全局へ、こちらカルミの子、SI.KC, UI U.TTにて上着確保、繰り返すSI.KC, UI U.TTにて上着確保、オーバー」

 

「ソレ正規のコードでは無いですよね中尉?」

 

「捕虜だから念のため一番頑丈なコードを使いました。階級が上がると増えた給料よりも面倒事ばかり増えて碌な事が無いですね」

 

 怪訝に思った隊員に彼女は適当に言いくるめる。後半はジョークのつもりで言ったのだろうが相変わらず彼女が言う冗談は周りから受けない。

 

「次の司令部にも魔導部隊が待ち伏せしていないでしょうか?」

 

「こちらが魔導部隊を分散させたから虎の子をぶつけて各個撃破を図ったとみるべきでしょう…さぞ苦労して錬成した魔導部隊なんてそういる訳が…錬成…」

 

「所で中尉、その左目は本当に大丈夫ですか?さっきから瞳孔が開きっぱなしですよ?」

 

 心配したベラが話しかけるがディナは呟いて答えない。

 

「…即席の反乱軍が自前の魔導部隊?いやそんな長期的に計画を建てられるのは既存の組織位…そもそも宝珠はどこから調達した…?蜂起の自暴自棄なやり方と長期的な視点がズレてる…」

 

 彼女の左目はもはや光を失っている。彼女の保有魔力を越えた魔力量を使う97式を使用した反動で一時的に見えないのか永遠に失ったのか。どのみち彼女にはあまり重要なことではないだろう。

 

__

 

「さて、少し雑談に付き合ってもらおうか…えーとライ・サラーハ君か」

 

「…」

 

 共和国の身分IDを確認しつつ彼は気さくに話しかける。

 

「あーいや君は別に話さなくていい。私の独り言に付き合ってもらえば構わない」

 

 アズラ少佐は司令部跡地で転がされていた捕虜を確保して離れた場所で話しかけていた。捕虜の少年兵は黙然として答えない。

 

「しかし年端もいかない少年兵を投入するとは解放戦線も中々手段を選ばなくなってきたな。」

 

「…」

 

 この捕虜を確保した彼女の年齢を考えると自虐でしかない。

 

「この宝珠…T3476型演算宝珠だったか。ルーシー連邦の傑作機。大戦に投入された中で最も優れた宝珠と名高い演算宝珠。性能、整備性、コスト、生存性と全てのバランスが取れた最強ではないが最優。そして戦後も世界中に拡散し各国の軍隊や非正規組織が手っ取り早く魔導部隊を編成するには打ってつけだ」

 

「…」

 

「そしてラコブス共和国でも“親切な隣人”からお裾分けされた物が倉庫に大量に転がっている」

 

「…」

 

 相変わらず少年は黙ったままだが同じ姿勢で痺れたのか少し身じろぎする。

 

「で、だ。問題は大量の魔導宝珠の取引は隠しようがない、という事だ。東の王国に潜んでいようが解放戦線がショッピングすればその痕跡が残る。今回の場合そんな大規模な取引は把握されてない」

 

「…」

 

「そして解放戦線といったアレリア人過激派が宝珠やら対魔導ロケットなんて装備することにメリットがあり、痕跡を抹消する裏工作に長けた、そしてこの宝珠を大量に持ち出せる組織というのは数えられる。例えば合衆国、ルーシー連邦、そして」

 

「…ッ」

 

 動揺が見えた彼にアズラ少佐は続ける。

 

「ラコブス共和国」

 

__

 

鎮圧軍司令部に続々と車両が到着していた。ラコブス共和国公安警察の車両群だ。車両からは続々と武装した人員が降りている。

 

「これはこれは。お早いご到着でしたな」

 

彼らの重役出勤を出迎えた鎮圧軍司令官は皮肉る。実際に彼らは重役なのでその通りではある。

 

「鎮圧の進捗は?」

 

「もう山は越えたと言ったところでしょうか。我が軍が市街地ゲリラ如きに後れを取るわけが無いですし当然の結果でしょう。敵の司令部と目される拠点を片っ端から航空魔導士に叩かせているので敵の指揮系統は大分痛めつけられているようですな」

 

公安警察の現地部隊指揮官は黙って続きを促す。

 

「連中破れかぶれになったか人質を皆殺しにしましたからね。人質を盾にするしか能が無いテロリストがその戦術的優位を捨てれば必然でしょう」

 

「では我々は反乱罪、テロ防止法の“容疑者”達への摘発、処分を行います。国家安全保障特別行政令 第109号に基づく行政処分となるのであなた方には最大限の協力を要請します」

 

 




花粉症という生物兵器(?)
閾値を越えたら発症ってあたりが劣化版放射線被爆って感じで害悪だと思います。(ガチギレ)
人道に反する凶悪兵器(?)なので国際法で規制しませんかね
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