太陽は、波打つ雲を纏い、
薄い光がぽつり、ぽつりと地に届く。
森に立つ木々の影は、
空から差された光に触れようともせずに
……ただ囲うだけ。
その光景は、けれど──
ナニカに怯え、惑う空の表情にも見えた。
やがて、二つの流星が交差する。
片や、四つ目と四つ腕を備えた異形。
もう片や、無数の手をまとった異形。
二つの意思は、交わった瞬間に定まる。
破壊と悦楽を求め、
全てを喰らい尽くす化身は、
奪った影を沈め、
本来の姿を取り戻した呪いの王──両面宿儺
片割れを求め、
総てを奪い続ける意思は、
導いた崩壊を取り込み、
壊し尽くす破壊の魔王──オール・フォー・ワン
今ここに、
混沌の暴君と悪の支配者が、幻想を斬り崩す。
対面した瞬間、会話は要らない。
目が合った瞬間、闘争の羅針盤は定まった。
宿儺の右上の手が握るは
特級呪具──雷武解。
呪力が流れ、雷武解が空を裂く。
雷轟がオール・フォー・ワンめがけて降り注ぐ。
オール・フォー・ワンは
無数の手を生やし、片手をかざす。
黄金と黒い閃光が脈打つ波動を吐き出し、
稲妻を打ち消す。
衝突。煙が辺りを包む。
オール・フォー・ワンは
足元から円形のエネルギーを形成し、
躍るように宿儺へ迫る。
乾いた笑みを浮かべ、触れんとする
その瞬間――触れかけた手が、下へ折れ、鮮血が流れ落ちる。
宿儺は小さく口ずさむ。
「──解」
短い合図のように続けた。
二人の距離を切り裂く斬撃が、オール・フォー・ワンを捌き、空を裂き、地を割る。
下から噴き上がった土煙が晴れたとき、そこに立っていたのは、肉の鎧を剥がされ、芯を晒した魔王の姿だった。
さっき受けた傷は既に塞がっている。
表情は好奇と支配衝動を滲ませ、宿儺を見据える。
「まったく、随分と大胆な歓迎だね……これがここの儀礼というわけかい?」
オール・フォー・ワンは上から見下ろす。
先ほどまで緑に覆われていた木々は土を晒し、深く刻みを残していた。
「腕が四本、目が四つ、腹にもう一つの口──とても人間とは思えない姿だ」
宿儺は目を向けてクハッと、嘲るように笑う。
「貴様が言えたことではないだろう?」
オール・フォー・ワンは
なるほど"君もか"と言わんばかりに、興味深そうな様子で目を細める。
その視線に映るは、前の宿儺の肉体のさらにその先を見据えるように囁く。
「見たところ、君の肉体には二つの意思がある……」
「片方がもう片方を沈める形で制御している……だが、その身体は君自身のものだ」
「元来の宿主の肉体を変容させている、それも科学ではなく、意志という現象で──」
オール・フォー・ワンの目には、
支配とも破壊衝動とも違う──未知への好奇心が滾る。
「実に興味深い、ますます知りたくなったぞ──君(異能)を……!」
宿儺は視線を外さず、不敵に笑った。腕を組んで鼻で嗤う。
「御託はいい、来るなら来い」
視界の端で、宿儺の内的観測が滑る。
術師でも、呪いでもない存在がやって来るのか。
──否、俺が移動されたのだろう。
迷い込んだ空と地、木々。
──見たことのない世界、触れたことのない現象、呪力なくして成立するその原理。
両面宿儺は更に臓腑から呪詛をこみ上げ、先の戦いを思い返す。
五条悟、江戸の雷術師・鹿紫雲一。
「次から次へと、上等なものが出るものだ……いいだろう」
四つの腕を広げて嗤う宿儺は間合いを計る。
「興が乗ってきたところだ」
「まずはその手……お前の得意を潰してやろう」──手の側面を向け、睨む。
「次は治す暇もなく刻む」
オール・フォー・ワンは予想外の展開に苛立ちを覚えつつ、興味が揺れる。
(OFAを得る機会は延びたが……これは思いがけない収穫だ)
「まさか、個性因子以外の、感情を具現とする異能とは……弟を取り戻すまでのいい手土産になりそうだ」
雲は暗く、深く染まっていく。
空気が軋み、呪いと支配が幻想を掻き乱す。