空気が不味い。それがワシがこの火の国に抱いた初めての印象だった。
遡る事、半年。タンジアの港でギルドマスターをしていたワシの元に一通の書簡が届いた。差出人は火の国の姫君。常に滅亡の危機に瀕しながらも民を思う高潔な精神を持ち、ワシらギルドにも度々依頼を出している。そんな彼女とは公私ともに親交があり、こうしてやり取りをする事がある。この便箋は公の方だ。ワシは飲み掛けていたビールを寸での所で置き、手紙と向かい合うのだった。
それは悲痛とも言える訴えだった。火の国の都にもギルドの支部を設立して欲しいと。いつ訪れるやも知れぬモンスターの足音に、民は怯え疲弊し続けていると。少しでも国を明るくするため契機を切望していると。
実のところ、火の国に支部を創設する話は以前からワシらの議題に度々挙がっていたのだ。しかし、諸般の問題からその度に見送られ続けてきた。その最たる理由が、火の国の主要狩り場が火山であるという点だ。火山から齎される希少な資源やモンスターの素材は、それだけでハンターの懐を潤すが、その裏には大きな危険が潜んでいる。
火山に立ち入った者の多くは、その地で朽ち果て名も無き骸と化している。一定の実力を持たない者の立ち入りは禁じているが、その壁を越えた者ですら無残な最期を遂げるのだ。そのため、一時的な出稼ぎならともかく、火山周辺に常駐するとなると、首を縦に振るハンターがいないと云うのが現状だ。それに関しては、彼らの事情も分かるし、ワシとしても迂闊に非難や強行は出来ないのだ。
しかし、最近になってその機運を破り得る出来事が起こった。それが、東方、カムラの里での、地元住民だけによる二度に渡る古龍の討伐だ。その報は多くの集落を震撼させ、同時に奮い立たせた。
その最大の功労者となった、「猛き炎」と呼ばれる狩人は生まれも育ちも同地であったのだ。それにより、地場との結びつきが強いハンターの育成がそこかしこで騒がれるようになった。そういった者は、土地と一蓮托生であるため、中央からの派遣者と比べてより、地域の事情に密着した活動を行えるのだ。
とは言っても、そんな甘い理想だけで物事が動かないのは世の常。火の国の様な危険地帯では、ド素人の新人など育ちきる前にあの世往きだ。カムラノ里の例は、あくまで彼らの先祖伝来のノウハウが実を結んだ結果に過ぎない。
「ふぅ。」
ワシはついに重い腰を上げた。険しい道のりかもしれない。しかし、火の国でのハンター育成に成功すれば、それは鮮烈なモデルケースとなり得る。それはモンスターの脅威に喘ぐ辺境にとって大きな希望となる。だからこそ、今がワシ自らが動かねばならん時なのだ。
銅鑼ねえちゃんにワシの留守を任せ、出立した。本当はありったけのタンジアビールを持って行きたかったが、無駄な物は持てぬという事で泣く泣く断念した。こんな事なら、最後の晩餐をもっと楽しんでおくべきじゃった。さらば、シータンジニャよ。
火の国に到着してからは、怒涛の日々の連続だった。火の国という国は驚く程に閉鎖的で、古の慣習が色濃く残っている。未だに、山の神を鎮めるためと、生贄の供出を声高に叫ぶ者もいる。姫君の思し召しとはいえ、皆がそれを善しとする訳ではない。この国の大部分を占める保守的な勢力からは、ギルドそのものに懐疑的な視線を送られている。その者らからすれば、ワシらは政敵の手先の様に見えていても仕方が無いだろう。
そのため、いきなり大々的に予算を投じたプロジェクトを展開する訳にはいかない。それでは無益な政争に巻き込まれて、水泡に帰すだけだ。まずは草の根的な活動を通して、この地でワシらが受け入れられる事が先決だ。
そんな訳で、ギルドに与えられたのは賑やかとは言えない都の中でも、閑散とした一角のボロ屋。建付けも色々と悪くて、妙に圧迫感のある質素な内装、これならモガの村のクエストカウンター周りの方がまだ設備として恵まれている。気晴らしに酒を飲もうにもタンジアビールの味に慣れたワシには、この国のはどうにも受け入れ難かった。踏んだり蹴ったりじゃな。
そんな手詰まりな状況下でも、ワシと伝手のある数人の上位ハンターが火の国への中長期的な駐留を快諾してくれた。お陰で、これから募集する新人のための教育体制の充実や露払いが行える。これにより、人材が育ちきるまでの繋ぎを確保することが出来たといえる。
また、受付嬢とギルドストアの店員に関しては、姫君の人脈から信頼のおけるこの国の者をそれぞれ一人ずつ採用している。彼女らにはワシが自ら、ギルドの制度や現場の事情など業務について必要な知見を指導している。ゆくゆくは、独り立ちした彼女らが後任を指導し、この地の者の間で継承されればと思っている。
さらに、食事場については、シータンジニャからの暖簾分けという形で、タンジアで勤務する数人のキッチンアイルーが志願してくれた。皆、自分の店を持てるという事もあって、やる気十分だ。加工屋もどうにかワシの伝手で招聘に成功した。これでどうにか、最低限ギルドとしての機能は担保された。
体裁が整った後にする事は、当初の目的通り、この地からハンターを育てる事だ。実際、募集を掛けると、かなりの人数が集まった。職に溢れた者、一攫千金を夢見る者、皆事情は様々だ。志半ばでの殉職や挫折、中央に比べ、人員の入れ替わりは激しいものの、活動に支障の無い頭数はどうにか維持できている。滑り出しとしては、予断を許さない状況であると言えるだろう。
そんな中、後にこのギルドの運命を大きく変える出来事が起こった。それは、一人のハンター志願者の来訪だった。その男の名は、「ほも」。どうやらこの辺りでは、変人として悪い意味で有名な男だそうだ。片手にハンデを負いながらも、本気でハンターを目指しているらしい。幾らハンターの進退が自己責任だとしても、最初からリスクのある者にライセンスを交付する訳にはいかない。ワシは頭を巡らせ、穏便にお引き取り願うための口実を考えるのだった。
彼奴はまるで嵐の様に、突如としてこの場に現れた。通りを脇目を振らずに全力疾走し、思い切り集会所の扉を開け放った。かと思うと、ワシの方へと一直線に向かって来るではないか。
ワシは襟を正し、彼奴の一挙手一投足を注視する。実に無駄のない走行フォームだ。体幹も安定しており、姿だけであれば並みいる上位のハンターと相違ない。そして何より、空気が違う。その場に居るだけで、周囲を凍て付かせる覇気。正に歴戦の強者だけが持つ静謐な殺気そのものだ。これ程の威容を持つ人物はワシはこれまでにたった一人、あの煉黒龍を退けた英雄しか知らない。
「ハンター登録を行いたい。」
その声はさながら地獄からの生還者の如き、淡々とした物だった。これが本当に新人なのか?二つ返事でギルドカードを取り出そうとする手を、ワシは、寸前の所でどうにか阻止した。彼奴の噂に関しては、ある程度裏は取れている。だからこそ、ワシには確かめる責任がある。ワシは気取られぬ様、秘かに息を整えた。
「悪いが一つ聞かせてくれぬかな?お主の噂はワシの耳にも入っておる。右腕が満足に扱えないそうではないか。狩人の仕事はそんな奴に務まる程、甘くはないぞ?命が惜しいのなら悪い事は言わん、ハンターは辞めておけ。職に困っているのなら、ギルドで働けばいい。人手はいくらあっても足りんからのう。」
努めて冷静に、気分を害することが無いよう、我が子を諭す父親の様な優し気な口調を心がける。だが、彼奴はそんなワシの心中などお構いなしという風に、言い放った。
「腕の件は事実です。が、私は一刻も早くハンターにならなければならない。ご忠告痛み入りますが、とうに覚悟は済ませてあります。それでもと仰るのであれば、この場で一筆したためましょう。私の身に何があってもギルドに責任を問う事は無いと。」
しばし沈黙の時間が訪れる。まるで剣豪どうしの立合における一瞬の間の様に、永遠とも思える睨み合いが続いた。側で聞いていた受付嬢は、余りの空気の重さに今にも泣きそうな表情を浮かべている。そろそろ、潮時かの。
「お主の覚悟、確かに受け取った。支度金じゃ。3000 zある。有意義に使ってくれたまえよ。」
「どうもありがとう。」と、一言だけ告げた彼奴は一目散に雑貨屋の方へと走り去ってしまった。そこまで急がんでもよかろうに。
「よろしかったのですか?」
心配そうな声色で受付嬢が尋ねてくる。
「構わん。これでもワシは多くの狩人を見て来たつもりじゃ。それに、そこまで耄碌してはおらんよ。」
気が変わった。この辺境の地から英雄が生まれる瞬間を肴に安酒に酔うのも悪くないかも知れんな。
それから、3日が経った。今日はワシが港にいた頃から縁のあった行商人が火の国のギルドへと立ち寄る日だ。事前に雑貨屋や食事場で周知していた事もあって、集会所内には既に多くの人だかりが出来ている。その中には、先日現れたほもの姿もあった。順調に仕事を熟しているようで何よりじゃ。
喧騒を余所に執務を進めていると、ふと集会所内に驚嘆が入り混じった歓声が響き渡った。どうやらその中心にいたのは件の男らしい。状況を見るに、どうやら素材の売却を行っているらしい。最初から身の丈に合わぬ獲物に手を出さず、堅実に採取で路銀を稼ぐとは、感心じゃ。
しかし、よく見るとその手に握られた鉱石は明らかに、昨日今日登録したばかりの新人が持ち合わせて良い物ではなかった。あれは間違いなく、溶岩塊だ。野次馬たちの中には、偶然拾ったのだろうと結論付ける者もいるが、ワシには到底そうは考えられなかった。両手に抱えきれぬほどのあの量、あの目を奪われんばかりの光沢、それら全ては、正にウラガンキンから直接削ぎ落さなければ実現不可能なものであったのだ。
まさか、ワシの脳裏にあり得ない光景が映し出される。ウラガンキンは数多くの若手や中堅のハンター達を苦しめた存在。ずぶの素人が一朝一夕でどうにか出来る相手ではない。しかし、目の前の事実は、そんな常識を嘲笑うかのように堂々と鎮座している。ほもからウラガンキンと遭遇したという報告は受けていない。受付嬢は事前にそういった不測の事態が起こった場合は、報告するよう説明していた筈だ。
ワシは思わず頭を抱えてしまった。とんだ問題児を招き入れてしまったものだ。ただ、考えていても仕方が無い。ここは一つ、話をせねばならん。ワシは渋滞した思考をリセットするため、安酒を喉に流し込んだ。
ワシは立ち上がり、集会所を去ろうとする彼奴へ呼びかけた。しかし、その声は喧騒に掻き消されて届く事は無かった。まったく、これだから若い者は。
程なくして、あの問題児は集会所に舞い戻って来た。今度こそ話を付けなければならない。
「ほもよ、お主に話が有る。」
ワシは彼奴を見つけるや否や、有無を言わさず、淡々と切り出した。
「単刀直入に聞くぞ、お主、先程の溶岩塊はどこで手に入れたのだ?まさか、あの爆槌竜と一戦交えたとも言うまいしのお。」
「ええ。良い”拾い物”をしましたよ。お陰で、財布は潤い、見てください。この通り。こんなに良い物まで買えてしまいましたよ。私の強い味方です。」
彼奴は、左腕に嵌められたスリンガーをこれ見よがしに、ワシへ見せつけてくる。スリンガーか。新大陸から輸入されて久しいが、辺境では未だその価値が正しく認知されていない。豆鉄砲だの、アクセサリーだのと宣う者までおる始末。しかし、どうやら目の前の男は、その真価を見通したようだ。審美眼は確かなようだ。
「それは良き事じゃ。しかし、ギルドに報告をせんかったというのは少々頂けんな。お主だけじゃない。皆の命と安全を守るために必要な事じゃ。努々、忘れないでくれよ。」
彼奴は寸分も表情を変えずに、このワシと向き合っている。普通、新人と言えば、立場のある者と話す時は委縮するものだが。中々に食えぬ男じゃ。まあいい。口を開く様子も無いので、ワシはそのまま続ける。
「報告未達というのは、ギルドにおいて重い罰則があるのは知っているな?だが、お主は新人で初犯じゃ。”偶々”忘れてしまっただけという可能性もある。そこで、じゃ。今回は軽い"労役"だけで済ませてやろう。」
労役、という言葉に彼奴の表情は一瞬、揺らいだ。どこか、煩わしさを含んだそれを覗かせたのだ。ここであまり脅かしてもしょうがない。
「なに、そう難しく考えなさんな。ただ、お主は、ワシが提示したクエストを幾つかクリアするだけで良い。初日から”採掘”出来るような、有望な若者をここで無為にするのは本望ではない。それら依頼の達成だけで、今回の件は水に流そう。」
「お心遣い、誠に感謝します。早速、そのクエストとやらに行きたいのですが。」
早速、ワシはクエストボードから2つの依頼書を剝がした。それぞれ、ブナハブラとウロコトルの群れの討伐だ。新人ハンターは採取クエストから始まり、小型モンスターの討伐、大型モンスターの狩猟とステップアップしていくのが普通だ。これを選んだのは、彼奴がまだ小型モンスターのクエストを達成していなかった事と、実力を試すというのが理由だ。ワシが依頼の趣旨と目的を説明するなり、そそくさと出発してしまった。その様は、何かに追われる様な、憑りつかれた様な形相だった。きっとその背中はワシに留められる物ではないのだろう。
ほもはワシの提示したクエストを楽々とクリアして来おった。身に染み付いた火薬の臭いは少々気になるものの、大きな怪我や装備の損傷も無く攻略した辺り、その実力は本物なのだろう。
彼奴の実績や十分。武器はハンターナイフのままではあるが、防具は新調されている。今の彼奴であれば、ドスフロギィなどであれば、最低限生きて帰っては来れるだろう。ワシは依頼書に緊急クエストの印鑑を押し、彼奴に渡す。事前に必要な知識や準備について話すと、彼奴は直ぐに受注し、出発しようとした。思わず、ワシは、声を上げた。
「待たんか。そんな武器ではとても歯が立たんぞ。お主の事情は分かっておる。じゃが、せめて剣か盾のどちらかぐらいは相応の物に変えんか。」
すると、彼奴はこちらへ向き直り、ワシの目をじっと見つめてきた。そして、静かな、しかしある種の確信に満ちた言葉が打ち出された。
「それは、必要ありません。」
「なっ?!お主、正気か!!ただでさえ、不利を負ったお主が慢心じゃと!?命を無駄にする気か!?」
気付けば、ワシの息は乱れ、肩は上下していた。
「私は既に、この剣の、盾の代わりとなる物を”調達”しています。今はまだ届いていませんが、直に私の手元に渡るでしょう。もし、私が留守の折に届いたなら、代わり受け取ってください。それと、私の悲願は死して達成される物では、決してありません。生き抜いて、生き抜いて、更にその先にある光景を見たいのです。」
その眼には蜷局を巻くほどの強烈な執念が宿っていた。それは最早、恐怖などとうに越えた戦士の双眸だった。去ろうとする彼奴にワシは問いかける。
「ま、待ってくれ。なぜ、お主はそうまでしてハンターに固執する?」
それはまるで親鳥に縋り付く小鳥の様な声だった。
「今は亡き屍たちに報いるためです。この地に積もった屍は数知れない。そして、このままでは、これからもその山は大きくなり続けるでしょう。だが、私にはそれが我慢ならないのです!」
冷淡で機械的だった声色は、煮え滾るマグマの様に熱く迸っていく。彼奴の目は火山の方角を向いていた。それは志半ばで散った狩人に向けれらたものか、はたまた理不尽にも生贄に捧げられた無辜の人々へ向けられたものかは、ワシには分からない。
「私はこの世界を知っている。ある者達は、自らの脚で立ち上がり、百竜の災禍さえもを跳ね除けてみせた!またある者達はたった12人で未知の新天地を目指し、千里の海をも渡ってみせた!その歩みの一つ一つが、絶望する私の心を奮い立たせたのです!
だからこそ、私はこの国の者にも知って欲しいのです。勇者のためのマーチを背に、大敵への挑戦を行う強さを!私は信じています!この灰の中に埋もれた理想がいつの日か舞い戻ってくることを!そして、いずれはこの地が未踏へ挑む者達を生む中心地へと育てたい!」
それはとても高潔で、でも、たった一人の狩人が背負うには大き過ぎる夢だった。
「分かっておるのか?この国は余所者のワシから見ても、余りにも閉鎖的で保守的だ。お主の前に立ちはだかるのはモンスターだけではないかも知れんのじゃぞ?」
「案ずるには及びません。私はそのための行動を既に開始しています。これはその始まりなのです。」
そう言って、彼奴は自身の左腕を高らかに掲げた。
嗚呼、ワシの中で散らばった多くの線が一つに繋がった。そうか、だから大勢の前で敢えてスリンガーを購入したのか。だから、規則を破ってまで、ウラガンキンと対峙し、資金をこさえたのか。全てそうする必要があったのだ。全てそのタイミングでないと、行えない必然の行動だったのだ。老獪な為政者すらも震え上がらせるその胸中成竹に、ワシは武者震いが止まらなくなっていた。
閉鎖的なこの地において、既にある価値観を覆すのは難しい。如何な巧みな言葉であってもだ。だからこそ、目の前の男は最も雄弁な武器として覆しようのない実績を選んだのだ。
身体的なハンデを負った者にさえ、狩りを遂行させる力を与えた。そんな噂が経てば、稼ぎに飢えた狩人達は必然的に興味を持つ。その道具は当然、外の世界から齎されたものであるから、多くの者にとってそれは外界への興味へと転化する事だろう。その一つの象徴がスリンガーだったのだ。この男は、自らの身一つで、完全とは言えぬその不安定な身体一つで、この地の歴史そのものへと挑もうとしているのだ。そして、その眼には一切の憂いは無い。
思えば、あの溶岩塊の一件も綿密に練られたショーだったのだ。ああやって一度噂を形作っておけば、僅かな人数でも興味を抱く。そして、それが長い時間を得て大きな流れへと変貌するのだ。ホントウに、末恐ろしい男よ。
「では私はこれで。次のクエストも用意をお願いしますね。」
「ああ。貴殿の躍進を心より、祈っているぞ。」
このボロ屋に一陣の風が吹き抜けた。灰臭い風であったが、確かな変革の匂いがそこには混じっていた。
ああ、姫君よ。今日は素晴らしき日です。貴方が長く、長く待ち焦がれた英雄は、今やっと産声をあげましたよ。ワシは見届けなければなりません。あの男、否、この地の行く末を。
ワシは適当なクエストを見繕い、手元へ置いた。あの男にはもっと高みに昇って貰わなければ困る。気付けばワシは楽しんでいた。
「あの、マスター。マスター宛の連名の書簡が届いております。差出人はカムラの里の里長、フゲン様になります。どうやら、当ギルドへの物的・人的支援を申し出たいとのことです。」
受付嬢が慌てた様子で、駆け込んで来た。
「して、連名と言ったが、もう一つの宛名は?」
「当ギルド所属のハンター、ほもさんとなっております。」
あの男め。つくづく食えぬ男よ。おちおち酒も飲んでいられないわい。さて、そろそろワシも本格的に仕事でもするかの。