「それで、依頼の方は受けていただけますか?」
私は一呼吸置き、目の前のC&C部の面々を見回す。
「うーん……私の戦闘能力を調べるという以上、リーダーの許可が必要なんだけど……」
美甘ネルは腕を組み、眉を少しひそめながら答える。次に来る言葉は予想できていた。
「それに関しては微妙だな。まだお前を信用できてねぇからな。相応の報酬があれば考えてやるが……わかってるな?」
私は小さく息を吐きながら、彼女の視線を受け止める。報酬……まあ大体予想はつくが。
「もしかして、また戦いたいとか言うんじゃないでしょうね」
彼女はにやりと笑い、少し挑発的に言った。
「似たようなもんだな。C&Cの戦闘演習に付き合ってくれれば、許可を出す」
「お金じゃダメですかね……」
「金に関しては、他の依頼でどうにでもなる。それよりも、お前と戦えることの方が大きい」
その言葉に、一緒にいたもう一人の部員が小さく息を呑む。
「え?この子……そんなに強いの?」
「私に勝ってる。タイマンでな」
「……この子が?本当に?頭は良さそうだけど……なんか、オーラがないって言うか……」
「マジだ、なんなら一回戦ってみるか?」
「いや、勘弁してください。あれは運が良かったのと相性が良かっただけです。二回目は勝てるビジョンが全く見えませんよ」
「ふーん。すごいね、一年生なのに」
「まあ、それなりに鍛えてますから。それで、いつから始めますか?」
「気が早いって。戦闘訓練は明日だ。今日はもう予定があるし、全員揃ってないからな」
「あー、確かに。じゃあ明日、出直してきます」
「え?帰るのか?早くない?」
「他にもやることがあるので。それでは失礼します」
そう言い残し、私はC&Cの部室を後にした。今日もまた美甘ネルと戦う羽目になったが、出費を抑えられたことを考えれば悪くない。さらに戦闘データも少しは集まるかもしれない。
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次に向かったのは、校門で少し見学して気になっていたエンジニア部だ。ここでは、面白そうな機械や発明品があるかもしれないと期待していた。
エンジニア部の部室は、ミレミアムタワーの20階から22階までを占める大規模なものだった。部員の数は軽く三桁に届くほどで、まさにミレミアムの象徴とも言える部活である。
部室前には、「見学者用」と書かれた札がかかっており、肩から下げて中に入るように指示されていた。私はその札を肩にかけ、扉を押し開ける。
部屋に入ると、まず目に入ったのは、まるで砲台のような巨大な装置だった。近くの看板には「レールガン」と書かれている。
「レールガン……?」私は小さく呟く。
あの超電磁砲のレールガンか?確か燃費効率が悪すぎて実用性が薄いと結論が出たはずだが……新しいエネルギー変換方法でも見つけたのか、それとも私の知らない種類のレールガンなのか……。
迷った末、私は一番目立つ服装の、奇抜なメガネをかけた少女に声をかけた。
「すみません、このレールガンってどういうものなんですか?」
一瞬、彼女は驚いた表情を見せたが、私の身分証を見ると興奮した笑顔に変わり、早口で説明を始める。
「実は、レールガンって本当にシンプルなんですよ。基本はF = (1/2)L′I²という式で計算されるんですけど、このI²の部分が恐ろしくて、電流を少し増やすだけで推進力が爆発的に上がるんです。先月の試験ではピーク電流を5.2 MAまで上げましたが、波形が教科書通りにきれいに出て、思わず『うわ……物理、完璧すぎる……』って声が出ちゃいました。レールはGRCop-84製ですが、1発撃つたびに表面が300 μmくらい削れるんです……」
私は彼女の話を聞きながら、頭の中で処理するが、数値や式が多すぎて理解しきれない。
「え……すみません、何言ってるのかわかりません」
「ああ、ごめんなさい、ちょっと熱くなっちゃいましたね。簡単に言いますと、レールガンは“電気の力だけで弾を飛ばす大砲”です。イメージはこうです:二本のレールを並べ、その間に金属の弾を置き、ものすごく大きな電流を流す。すると磁力で弾が前に押し出されるんです。ポイントは、電気の量を少し増やすだけで押し出す力が急激に跳ね上がることです。普通の火薬砲だとマッハ2〜3が限界ですが、レールガンはマッハ7〜10まで加速できます」
「おお……なんとなくわかりました」
「よかったです。もし入部希望なら、このレールガンの制作にも関われるかもしれませんよ」
「いえ、見学に来ただけです。特に入部希望はありません。面白そうなものがあれば、と思って」
「そうですか。それなら、個人制作コーナーに行けば、色々な発明品が見られますよ」
私は案内に従い、個人制作コーナーへ向かう。小さなブースがいくつか並び、作品の前には解説と製作者名が掲示されていた。中には制作者本人が奥で実演しているものもある。
その中で、一本の刀が目に止まった。名は「世界一頑丈な刀」。特殊合金で作られており、貨物列車に踏まれても曲がらないという。
「これ……欲しい」
近接戦闘用の武器を探していた私にとって、まさに理想の品だった。銃は弾が尽きれば無力になる。だが、この刀があれば、半永久的に高水準の戦闘力を維持できる。
作者は猫塚ヒビキ、一年生。同い年だ。私は近くの部員に聞き、彼女は他のブースで勧誘をしていることを知る。
「おや、猫塚ヒビキかい?今呼ぶよ。おーい、ヒビキ!君に用があるって」
「え?わかりました、すぐ行きます」
「すまない、君の作った刀について少し聞きたくて」
「刀?見てくれたんですね。ありがとうございます。何を聞きたいんですか?」
「購入できるかどうかを聞きにきた」
「売り物ではありますが……キヴォトスで刀なんてあまり意味ないでしょう?用途は?」
「近接戦闘用に使う」
「珍しいですね。いいですよ、売ります」
「助かります。いくらですか?」
「50万。値下げはなし」
私は近くのコンビニで現金を下ろし、再び彼女のもとへ戻る。
「はい、これで確認してください」
「48、49、50……うん、揃ってます。この瞬間から、あの刀は君のものです」
「良かったですねヒビキ。発明品が売れるなんてすごい」
「キヴォトスで刀が売れるとは思ってませんでした。変わり者がいてよかったです」
「変わり者……否定はしませんけど、本人がいる前で言いますか?」
「君、口調変わりましたね?」
「年上には敬語で話すんです」
「なるほど、きっちりしてますね」
「互いの上下をはっきりさせることは、円滑なコミュニケーションには大事ですから」
「別に気にしませんけど」
「そちらが気にしなくても、私は気にします」
「まあ、そういうものか」
「そういうものですね」
「ふーん。まあとにかく、勝手に買わせてもらってありがとう」
「こちらこそ、良い買い物をさせてもらいました。ありがとう」
互いに礼を交わし、私は個人ブースを後にする。そして、エンジニア部の販売ブースで刀を受け取る。すでに購入の情報は届いていたらしく、受け取りはスムーズに完了した。
コハクちゃんにはどうしても刀が持たせたかった。