ミレニアムの秘密の研究室   作:まったり愛好家

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ユズってさ、刺激臭しそうだよね


第十一話 鋼のメンタル

刀を手に取り、まずは鞘にしまった。だが、それだけではまだ心もとない。剥き出しのまま持ち歩けば、誰の目にも刀だと一目でわかってしまう。だから、分厚めの包装をお願いした。持ち歩く間、刀だと気づかれずに済むようにするためだ。これでひとまず安心できる。

 

エンジニア部を後にし、次の目的地に向かう。今度は研究や戦闘とは関係なく、純粋に気になっていた場所だ。頭の中でイメージを膨らませながら、建物内を歩いていく。

 

その場所――ゲーム開発部である。

 

ここは、ミレミアムの部活パンフレットを初めて手にしたときから、ずっと気になっていた部活だ。目立つ作品があるわけではない。だが、どのゲームも手を抜かず、独自のこだわりと味わいを持って作られている。その高難易度は、一般向けではなく、コアなゲーマーに向けた挑戦状のようでもある。

 

負けイベントだと思ったら、実は倒さなければ先に進めなかったり、ギミックボスのヒントがゲーム内にほとんど出ていなかったり、RTA(リアルタイムアタック)向けのテクニックを前提として作られていたり。どれも「簡単には勝たせない」という明確な意志が感じられる。

 

そして、部の中心にはあの伝説的格闘ゲームプレイヤー、UZQueenの存在があった。一ゲーマーとして、ここで彼女に会える機会を逃すわけにはいかない。

 

深く息を吸い込み、覚悟を決める。そして、ゲーム開発部の扉を三度、コンコンコンと叩いた。

 

「はーい、空いてるから入っていいよー」

 

許可が出た。手を伸ばして扉を押し開けると、中は予想通り――というよりも想像以上に散らかっていた。

 

床にはイラストの原画や設定集、ゲームのパッケージ、そしてお菓子のゴミまで散乱している。ゴミ屋敷というほどではないが、足の踏み場に困るほどだ。

 

まあ、ゲーム開発部はどこもこんなものだろう。散らかり具合は一旦置いておき、部員たちに目を向ける。

 

中央には、猫耳のようなカチューシャをつけ、尻尾のような飾りが生えた金髪の少女が座っている。服装は赤を基調にしており、全体的に活発で元気な印象を与える。その隣には、同じく猫耳風カチューシャをつけ、緑を基調とした服装の少女が座っている。二人は顔がよく似ており、姉妹の可能性が高そうだ。緑の子はどこかおとなしい雰囲気を漂わせている。

 

少し離れた場所には、赤い髪がボサボサの少女が座っている。レインコートのような上着を着ており、こちらを怯えた目で見ていた。

 

なんというか……全員小さい。私を含め、この空間にいる人物は、どう見ても150センチ以下だ。中学生の集まりに迷い込んだような錯覚を覚える。

 

「えっと、ゲーム開発部の見学に来たんですけど……部長さん、いらっしゃいますか?」

 

「え、あ……えっと……一応私がゲーム開発部の部長です……」

 

「え?本当ですか⁉︎じゃああなたがUZQueenさん?あの伝説の?うわー、嬉しい!」

 

「おー、ユズさん、有名人じゃん!だから言ったでしょ?私たち以外にもユズさん好きな人いっぱいいるって」

 

「君は?」

 

「私は才羽モモイ。一昨日この部活に入った新入生だよ」

 

「私が妹の才羽ミドリです。私たちも、ユズさんに憧れてここに来ました」

 

「いいねぇ!私は部活には入らないけど、いい友達になれそうだね。人懐っこそうだし」

 

「えー?入らないの?こんな機会、もうないよ?」

 

「いやー、他にやりたいことがあってさ。そっちを優先しているかな」

 

「ふーん。じゃあ、なんでここに見学に来たの?」

 

「UZQueenさんに会ってみたくて、だね」

 

「わ、私ですか……そんな、たいそうな人間じゃないですよ……」

 

「いやいやいや、我々格ゲーマーからすれば、あなたは憧れの存在ですよ。一切乱れない集中力、キャラのポテンシャルを120%引き出す研究力と操作精度、そのどれもが一級品で、我々のお手本なんです」

 

「……ありがとうございます。そんなに褒められたの、初めてです……嬉しいです」

 

「ならさ、戦ってみようよ。私たちも格ゲーやってるし、せっかく会えたんだから、一線交えて仲を深めたいじゃん!」

 

「私は嬉しいですが……ユズさんはどうですか?」

 

「戦います。せっかく会いに来てくれたんだから、できることはしてあげたい」

 

「じゃあ、四人いるしトーナメント形式にしますか」

 

「イエーい!やろうやろう!」

 

「じゃあ準備しますね。どのゲームをしますか?」

 

「ここはやっぱり『ストリートライター6』でしょ!ユズさんの代表作でもあるし」

 

「OK。ちなみに何使ってます?」

 

「クックック、ザムギエフだよ」

 

「壊しキャラかー、飲まれないようにしなきゃな」

 

「準備できましたよ。誰からやります?」

 

「二人がどのくらい強いかによるかな」

 

「私はぼちぼち、お姉ちゃんは少し弱め……かな」

 

「じゃあ二人は別のブロックにしよう」

 

「わかった。じゃあまずはあなたと私でやろうか」

 

「お姉ちゃん、落ち着いてね」

 

「クックックック、ぶん投げて差し上げますわ」

 

 

一分後。

 

「うわ、汚い!人を舐め腐ってるでしょ、そのプレイ!」

 

「これが!ザムギエフの真骨頂よ!理外の選択肢こそ至高、普通のキャラと同じように戦ってはいけないのだ」

 

「ア“ア”ー!負けたー!ウッソでしょ⁉︎あんな汚い択、初めて見たよ!」

 

「お姉ちゃん、言い過ぎ。確かにプレイは終わってたけど……」

 

「勝てばいいとは言うけど……ここまでなりふり構わないなんて……」

 

「UZQueenにそこまで言ってもらえるなんて……荒サー冥利に尽きるよ……」

 

「そこ、喜ぶんだ」

 

「そりゃあね。私はいかに理不尽を押し付けるかに重点を置いて戦っている。汚い、目が腐る――それは褒め言葉だよ」

 

「はあ……私のプレイにも影響出そうだけど……」

 

「こういうのは番外戦術っていうんだよ」

 

「うわー……早く私たちの試合始めないと、またなんかされそうだね。やろうか、ユズさん」

 

「うん、手は抜かないよ」

 

 

再び一分後。

 

「処理……だね」

 

「何もできずに処られてるね……ミドリも結構上手いはずなんだけど……」

 

「ヤバい、これ死ぬ?死んだー!あー負けた。パーフェクトだし……」

 

「流石は天下のUZQueen、余裕だね」

 

「もう少し、対空を意識したら攻められにくくなるかも。技に仕込みをしたりするのもいいかも」

 

「ありがとう、試してみます」

 

「クックック。さて、決勝戦ですね」

 

「負けないよ」

 

「がんばれー!」

 

「ユズさん!私の仇を取って!」

 

戦いは一瞬だった。開幕カウンターのフンドシストームをからぶって隙を晒した私に、ユズさんがため技を合わせようとする。だが、開幕カウンターなんて普通はしない。急すぎて、若干技が遅れてしまった。

 

その隙を逃さず、私は相手の技の発生前にコマンド投げを出す。見事にヒットし、大ダメージ。だが、これでユズさんのスイッチが入った。

 

無理な攻めはせず、私の技にリスクなく対処する。体力はじわじわと削られ、ついに25%を切った。

 

ここで使えるのは、ザムギエフの必殺技――全身無敵、ガード不能、威力トップクラスのバカみたいな技。生で当てても普通に避けられるので、作戦は一つ。

 

大業をから振り、確定反撃がギリギリ届かない距離を保ち、そこからダッシュで小技を振る。反応できなかったユズさんはガードしてしまう。音を立てて必殺技コマンドを組む。

 

咄嗟にジャンプで避けたユズさんを迎撃、コンボをわざと失敗させる――起き上がりに技を振るところを狙い、無敵の必殺技で押し切った。

 

「は……?今のコンボミス、わざと……?」

 

「初見で対応できなかった……私もまだまだ……」

 

「いやいやいや、あれはユズさん悪くないよ!」

 

「そうですよ、通り魔や災害の類です!やる方が悪い!」

 

「大会では初見の連携も武器になる。これも一種の武器だ」

 

「格ゲーの基本はプライドを捨てること。綺麗なプレイだけしていては舐めプになる。ガチでは番外戦術も惜しまず勝つ」

 

その後も、組み合わせを変え何回か戦ったが、ユズさんには一度も勝てなかった。

 

 

久しぶりの長時間格ゲーで、指先は限界に近い。思った以上に盛り上がり、普段なら頃合いを見て退室するところだが、ミドリやモモイに「まだ一緒にやろう?」と誘われれば断れなかった。

 

互いに敬語は外れ、「ユズ」「コハク」と呼び合う仲にもなった。本当に、いい経験だった。

 

しかし、ふと気づく。私は……ロリコンなのだろうか。小柄な一年生ばかりの部屋で、彼女たちに対して保護欲のようなものが湧く。手を握られると心臓が高鳴り、体温が上がる。思わず抱きつきそうになることすらあった。

 

この空間には、全員が小柄で、ユズを除けば全員一年生。私自身も140cmに満たない。何か特殊なフェロモンでも出ていたのかもしれない。ロリ特有の、言葉にしにくい魅力が満ちていたのだ。

 

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