ミレニアムの秘密の研究室   作:まったり愛好家

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UA10000行きました‼︎ほんとにありがとうございます‼︎まさかここまでの人が見てくれるとは思いませんでした。これからもよろしくお願いします。


第二十八話 再生能力の秘密 短編あり

屋上へ戻った私たちは、しばらく誰も口を開かなかった。沈みかけた陽がコンクリートの床を赤く染め、風が吹き抜けるたびにフェンスが小さく震えて音を立てる。

 

私たちは視線を合わせるのを避けるように、それぞれ別の場所を見つめていた。

 

そんな気まずさを断ち切ってくれたのは、アカネがわずかに眉を動かし、ゆっくりとまぶたを上げた瞬間だった。

 

目覚めたことに気づくと、アスナは「よかった…」と息を吐いて胸を押さえ、カリンは肩から緊張が落ちるような仕草をした。美甘ネルも、怒気と焦りが混ざっていた表情をほんの少し緩めている。

 

アカネにざっくりと経緯を説明したあと、自然な流れで――いや、自然ではない、どう考えても取り調べだ――私は四人の正面に座らされることになった。背中に落ちる夕日の熱が、不思議と罪悪感を刺激してくる。

 

最初に質問を切り出したのは、美甘ネルだった。

彼女は手を膝に置いたまま、まっすぐこちらを見る。その眼差しには、怒りというより「説明してみろ」という圧が滲んでいて、私は思わず姿勢を正す。

 

「さっきも聞いたが、口径が大きかったとはいえ、ただのリボルバーでどうやって自分の足を吹っ飛ばした? 説明しろ」

 

「わかりました。できるだけわかりやすく説明しますが、わからないところがあれば遠慮なく言ってください」

 

そう前置きすると、四人は息を合わせたように頷いた。

その様子に少しだけ安心して、私は言葉を選びながら説明を始めた。

 

「まず、私が再生能力を持っていることは知っていると思います。美甘ネルから聞いているとは思いますが、この再生能力は――失った手足を元に戻せるほどのものです」

 

その瞬間、アスナの手がピッと勢いよく上がった。

 

「はい!」

 

「私それ聞いてない!」

 

わりと本気のテンションで叫んでくる。

 

まじで?

 

視線を横に向けると、美甘ネルが後頭部をかきながら顔を背けていた。

 

「…すまん、説明してなかった」

 

妙に申し訳なさそうに言うその姿に、アスナは頬を膨らませ、カリンは呆れ半分の眼差しでネルを見つめ、アカネは「まあまあ」とでも言いそうな苦笑を浮かべていた。

 

「先に再生能力について説明してよ」

 

アスナが身体を前に乗り出して言う。

 

「そうだな、一旦全員の知識を統一しておくべきだ」

 

カリンが腕を組み、静かに付け足した。

 

「私も説明してほしいですね」

 

アカネも同意するように頷く。

 

「えっと…じゃあ再生能力の説明を先にしますね。再生能力なんですが、元々はこんなにヤバくはなかったんですよ」

 

「私の再生能力は元々、切り傷や火傷、打撲なんかが10分くらいで治る程度のものでした。これはトリニティの剣先ツルギと同じくらいですね」

 

その言葉を聞いた瞬間、ネルがガタンと音を立てて立ち上がった。

 

「は? ちょっと待て。剣先ツルギもそんなんなのか⁉︎」

 

以外だ。知っているものと思っていたが。

 

「そうですね。素の身体能力も同じくらいなので、私は大体剣先ツルギと同じようなもんです」

 

ネルは眉をひそめながらも、少し考え込むように視線を下へ落とす。

 

「再生能力自体は珍しいもんではないのか?」

 

「今のところ、私と剣先ツルギ以外では知りませんが…探せばいるかもしれませんね」

 

そう言うと、ネルは深く息を吐き、座り直した。

 

「……わかった。私の質問は終わりだ」

 

彼女が腰を下ろす音は、ほんのわずかに安堵の色を帯びていた。

 

私は続ける。

 

「その再生能力なんですが、3年くらい前に“制御”ができることに気づいたんですよ。具体的には、再生の速度や、再生する部位を自分で調整できるようになったんです」

 

すると、アカネが小さく手を挙げた。

 

「ちょっといいですか?」

 

「はい、どうぞ」

 

「その再生能力の制御ですが、どういった経緯で発見したんですか?」

 

アカネは興味深そうに首をかしげながら、私の答えを待っている。

 

「経緯ですか?」

 

「はい」

 

私は少し空を見上げた。

夕陽の残りが空の端で揺れている。それを眺めていると、自然と三年前の朝焼けの記憶が浮かんでくる。

 

「そうですね…私は当時、私の研究テーマだった“神秘量の最低保証”について検証するため、朝のマラソンをしていました」

 

「その神秘量の最低保証ってのは何だ? なんでマラソンを?」

 

今度はカリンが前のめりになり、真剣な眼差しで問いかけてくる。

 

「神秘量の最低保証というのは、神秘の量が、その者の持っている総合スペック――身体能力や知力など――に比例しているのかどうかを検証するものです。身体能力が上がれば神秘の量も上がるのか、それを確かめたかったんですよ」

 

「だから運動を?」

 

「はい。上がりやすいステータスとしてまず身体能力を上げようと思い、マラソンを選びました」

 

説明し終えると、カリンは腕を組み直し、静かに頷いた。

 

「なるほど。分かった」

 

そう言って席に戻る。

夕風が彼女のコートの裾を揺らし、屋上にひんやりした空気が流れ込んだ。

 

まるでこれから語られる続きを静かに促すように、屋上は再び静かになった。

 


 

短編 ホシノ視点 2

 

 その日の夜、アビドスの空には雲がかかり、月の光が薄い膜の向こうでぼんやりと滲んでいた。

 私が部屋の明かりを落とし、ようやく一息つこうとしていたときだった。

 

 ――着信音が鳴った。

 こんな時間に誰だろうと画面をのぞき込むと、表示された名前はセリカちゃんだった。

 

「もしもし? こんな時間にどうしたの?」

 

 電話越しの向こうで、少しだけ弾んだ息が聞こえた。

 

『あ、すみません。寝てました?』

 

「ううん、ちょうど起きてたところ」

 

 小さく安堵するような吐息のあと、セリカちゃんがぽつりと話し始めた。

 

『今日、帰りの電車で……ちょっといいことがあったんです』

 

 その声には、昼間とは違う照れくささと温もりが混じっていた。

 静かな夜の空気の中で、その感情がより鮮明に伝わってくる。

 

『元気なさそうに見えたらしくて……声かけてもらったんです。

 “大丈夫ですか”って。最初は、つい……当たっちゃったんですけど』

 

「当たったって……怒鳴ったとかじゃないよね?」

 

『怒鳴ってはないですけど……ちょっと嫌な態度をしてしまって……。

 でも、あとからすごく反省したんです。せっかく心配してくれたのにって』

 

 窓の外の夜風が、木の葉を揺らす音がする。

 その静けさの中で、セリカちゃんの声が真っ直ぐに耳に届く。

 

『だから、思い切って……借金のこととか、色々話したんです。

 そしたらその子、“助け合いですから”って言ってくれて。

 あんなふうに言われたの、初めてで……なんか、嬉しくて』

 

 電話の向こうで、彼女が胸の奥でそっと笑っている気配がした。

 その笑みは、ここ数日では想像もできなかったほど優しいものだった。

 

「……その子、どんな子だったの?」

 

 自然と声が柔らかくなった。()()()()》》》》

 

『ええと……すごく小柄な子でした。背が低くて、年下に見えるんですけど……

 ミレニアムの制服を着てました。たぶん高校生だと思います』

 

 心臓がひとつ鼓動を強める。

 

『髪は白いボブで、目は赤かったです。

 なんだか……儚い雰囲気の子でしたね』

 

 その瞬間、私は息を呑んだ。

 

 朝の光の中で立ち尽くしていたあの少女。

 虚ろな目。

 折れそうなほど細い腕。

 弱々しく揺れた声。

 

 ――特徴が、完全に一致していた。

 

「……そう、なんだね」

 

 声の震えを悟られないように、そっと喉に力を入れる。

 

 電話の向こうで、セリカちゃんは続けた。

 

『もしまた会うことがあったら、お礼したいなって思ったんです。

 話を聞いてくれただけですけど……ああいう優しさ、ほんと、久しぶりで。

 なんかずっと、心が軽くて』

 

 私は携帯を握る手に力が入りすぎていることに気づき、そっと指を緩めた。

 

 ――あの子が、セリカちゃんを励ました?

 

 あんな虚ろな目をしていた子が。

 誰よりも傷ついていた子が。

 帰りの電車で、誰かの弱さに寄り添っていたというのか。

 

 その事実は、胸の奥で複雑な色を広げた。

 温かさと、痛みと、心配と、答えのないざわつきが積み重なっていく。

 

「……うん。話してくれてありがとう。いいことがあって、本当によかったよ」

 

『はい……聞いてもらえてよかったです』

 

 声はふわりと嬉しそうで、それがまた私の胸を締めつけた。

 

 通話を切ったあと、私はベッドの端に座りこんだ。

 暗い部屋の中に、自分の鼓動だけがやけに大きく響いている。

 

 ――やっぱり、あの子だ。

 

 そう確信した途端、胸に冷たいものが流れ込んだ。

 

 彼女は何を抱えてあんな目をしていたのか。

 誰に、どんな扱いを受けていたのか。

 どうして人を励ます余裕があるのか。

 その小さな心のどこに、そんな力が残っていたのか。

 

 夜が深まるほどに、不安は静かに濃くなっていく。

 

 私は窓の外を見上げた。

 薄い雲の向こう、ぼんやりと滲む月が、どこまでも遠く感じられた。

 

 ――どうか、あの子が無事でありますように。

 

 その願いを落ち着ける術もないまま、私は長い夜を迎えることになった。




 ホシノ「先生、どうしてこの本の私はいつも何かに苦しんでるの?」

 先生「そうだったらいいなあって」

 ホシノ「……え?」

 耳に刺さった言葉が、しばらく意味を持たずに宙を漂っていた。ホシノはゆっくりまばたきをして、ぼんやりした視線のまま先生の顔を見つめた。

 「ずっと……何かに、苦しんでいてほしい……?」

 言葉にしてみても現実味がなかった。いたずらでも冗談でもない温度を感じた瞬間、胸の奥がきゅっと縮む。痛みとも、冷えとも違う、説明できない感覚が胸骨の裏側を擦った。

 なんだろう、この感じ。
 友達にふざけて小突かれたときの軽さとは真逆だ。笑えない。笑おうとすると、喉が勝手に強ばってしまう。

 ホシノはいつも通り、柔らかく、ゆるく、どこかまどろむように世界を受け止めてきた。面倒なことはかわしながら、肩の力を抜いて生きてきたつもりだった。
 だけど――“苦しんでほしい”なんて言葉は、そのゆるい日常を簡単に踏みつけてしまう。

 胸の奥で、何かが沈むように落ちていく。
 それは動揺とも、怖さとも違った。もっと質が悪い。心のどこかに、先生の声が深く刺さって抜けない感覚。まるで、見えない棘が心臓の表面に引っかかったまま、微妙に動くたびに痛むような。

 「そんなこと言われちゃうの、ちょっとショックかもだよ……先生……」

 口ではそう言いながら、声がいつもより少しだけ掠れているのが自分でもわかった。
 軽い調子を崩さないようにしているのに、目の奥だけが笑えていない。先生には気づかれないのか、それとも気づかれていても関係ないのか。

 本当にそう思ってるの?
 それとも、なにかの冗談?
 ホシノの頭の中でその問いが繰り返されるたび、胸の奥の棘がわずかに角度を変えて、別の場所を刺した。

 自分は、先生にそう願われるような存在だったのだろうか。
 いつも、ゆるくて、どこか頼りなくて、面倒ごとを避けて、眠そうに笑って……。
 そんな自分が、もしかしたら誰かを苛立たせたり、不安にさせたりしていたのかもしれない。
 そう思った瞬間、胸がひどく重くなる。

 ――ああ、やだな。
 こんな風に胸が痛いの、久しぶりだ。

 ホシノはゆっくりと息を吸い、胸の底に沈もうとする感情を必死に押しとどめる。

 「……苦しんでほしいなんて、そんなの……ひどいよ、先生」

 言葉は静かで、どこか寂しかった。
 笑顔が作れないのに、無理に口角だけを上げるその仕草は、普段の彼女の柔らかさとはどこか違っていた。



ホシノ「先生、この本の私は、なんで先生に酷いこと言われてるの?」

先生「書いた人の心が汚れてるからだよ」

ホシノ「ふーん。この人は私を怒らせるのが上手い」



Twitterで見かけたネタのパロディです。
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