公安対魔特異2課隊長 ゴリラの悪魔    作:チェシャ猫もどき

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第2話です!

自分が近藤さんのことを好きなせいもあって近藤さんをなかなか変態に出来ない!!


仲良くなるのに時間は関係ない

 

「「うぉおおおおおお!!悪魔はどこだぁああああああ!!」」

 

 デンジと近藤は、2人はマキマと一緒に働くために手柄を上げるべく悪魔を求めて街を疾走していた。

 

「テメェ!!こっち着いてくんじゃねぇ!!邪魔なんだよ!!」

 

「別にお前に着いて行ってません!!お前が俺に着いて来てるんですぅ!!」

 

「んだと!?テメェ!!」

 

「やんのか!?」

 

 お互いに罵り合いあいながら、それでも速度は落とすことなく走り続ける2人。

 それはお互いの身体能力の高さ故であった。

 

「お!見つけた!!」

 

 そうやって走り続けている時に近藤が悪魔を発見する。

 それは巨大なバナナに人間の手足が生えている悪魔。

 バナナの悪魔であった。

 

「マジで!?」

 

「もらった!!」

 

「あ!!」

 

 ほんの僅かな差ではあるが、発見が遅れてしまったせいでデンジは出遅れてしまう。

 近藤は腰にたずさえた日本刀を抜き、悪魔に向かって一気に飛びかかるとその勢いのままバナナの悪魔を一刀両断した。

 

「どうだ!!俺はさっそく手柄を上げたぞ!!」

 

「まだ悪魔を1匹殺しただけだろうが!!これから俺が全部の悪魔をぶっ殺せば手柄は全部俺のモンだぜ!!」

 

「威勢がいいな!!だが、そう簡単にはいかんぞ!!」

 

 バナナの悪魔を殺した近藤がデンジを煽り、デンジも負けじと言い返す。

 手柄を先に取られても少しもやる気が落ちないデンジに近藤は嬉しそうに笑った。

 

「おらおら!!悪魔はどこだぁああああ!!」

 

「あ、待て!!」

 

 悪魔(てがら)を奪われたデンジは近藤を置いて走り出す。

 近藤も慌てて追いかけるが、バナナの悪魔を殺した直後であるため出遅れてしまう。

 

「待てぇええ!!」

 

「誰が待つかよ!!手柄を上げてマキマさんと一緒に働くのは俺だぁ!!」

 

 近藤も全速力でデンジを追いかけるが、その差が縮まることない。

 

「お!!俺も見つけたぜ!!」

 

 走り出すとデンジも悪魔を見つける。

 その悪魔は巨大な赤いピーマンに5つの目と足が5本生えている悪魔。

 パプリカの悪魔である。

 

「今度は俺の番だぁああああ!!」

 

 デンジは胸のスローターを勢い良く引くとチェンソーの駆動音が響き、デンジの頭からチェンソーが飛び出し赤い金属で出来た頭部の化物へと変身した。

 

「うらぁああああ!!」

 

「ギャアアアアア!!」

 

 デンジは変身したことで強化された身体能力でパプリカの悪魔に飛び掛かると、両腕から生えたチェンソーでパプリカの悪魔をズタズタにする。

 回転するチェンソーの凶悪な刃に切り裂かれたパプリカの絶叫し、血と肉片をまき散らしながら絶命した。

 

「おい何なんだその姿!?大丈夫なのかお前!?」

 

 パプリカの悪魔の死体の上に立ち、周囲を悪魔の血と肉片まみれという地獄絵図に変えたデンジに近藤は声をかける。

 人間の死体を悪魔が乗っ取った魔人という存在を知っている近藤はデンジが魔人になってしまったのかと心配する。

 

「俺の心臓はポチタなんだよ!だからエンジンかければチェンソーの力を使えるんだ俺は!!」

 

「よくわからんが、大丈夫そうだな!!」

 

 デンジは説明するが、あまりよくわかっていないデンジによる説明のせいで近藤は理解することは出来なかった。

 しかし、デンジの意志はそのままであり、悪魔に乗っ取られているようにも見えなかったため大丈夫であると判断した。

 

「どーだ!!これが俺とポチタの力だ!わかったら諦めて帰りな!!」

 

「ふん!!まだお互いに悪魔を1体ずつ殺しただけだ!!勝負はこれからだ!!」

 

「上等だ!!これから全部の悪魔俺が殺してやるぜ!!」

 

 デンジは近藤を挑発するも、近藤には全く効かない。

 むしろ近藤はやる気をみなぎらせている。

 お互いに1歩も引くつもりはない。

 

「「うぉおおおお!!出てこい悪魔ぁああああ!!」」

 

 手柄を上げてマキマと一緒に働くため。

 なにより気に食わないデンジ/近藤に勝つために2人は再び走り出す。

 

「「あーくーまーはどこだぁあ!!」」

 

「「「うわぁああああ!!」」」

 

 悪魔を殺すことに意識が向きすぎた結果、冷静さを失う2人。

 2人は勢いそのまま悪魔のいそうな建物に飛び込んだ。

 いきなり突入してきた2人に人々は恐怖する。

 

「テメェ悪魔だな!!悪魔だろ!!」

 

「ち、違います!!」

 

「やめろ!!その人は悪魔じゃない!!人間だ!!」

 

 その辺にいた一般人を悪魔だと脅し出すデンジを止める近藤。

 もはやデンジの方が悪魔と判断され殺されかねない勢いであった。

 

「悪魔だぁああああ!!」

 

「「なんだと!?」」

 

 店の外から聞こえて来た悪魔がいたという叫びを聞き、2人は店を飛び出す。

 

「人間どもぉおお!!全員食い殺してやるぅうう!!」

 

 そこには筋繊維がむき出しの体に骨のような外骨格を纏い4本の腕を持つ昆虫のような巨大な悪魔。

 ゴキブリの悪魔がいた。

 

「手柄は俺のもんだぁああああ!!」

 

「ぎゃああああああ!!」

 

 悪魔を見つけて真っ先に飛び掛かるデンジ。

 両腕のチェンソーで斬りかかるが、ゴキブリの悪魔は咄嗟に左腕でガードする。

 腕は切断されてしまったが、ゴキブリの悪魔を殺すことは出来ない。

 

「負けるかぁああああ!!」

 

「ぐおおおお!!」

 

 デンジに先を越された近藤だが、すぐにゴキブリの悪魔の両足の健を切断することで態勢を崩して転倒させる。

 腕を1本失い、両足の健を切断されてしまったゴキブリの悪魔は不利になってしまう。

 このままゴキブリの悪魔はデンジか近藤によって殺されると思うのが普通であるが、最悪なことにゴキブリの悪魔は知能が高く諦めが悪かった。

 

「殺されてたまるか!!」

 

「うわぁああ!!」

 

 ゴキブリの悪魔は背中の羽を羽ばたかせて勢いよく移動し、残された3本の腕で逃げ遅れていた男女を捕まえる。

 

「動くな!!こいつらが殺されてもいいのか!!」

 

「助けてくれぇええ!!」

 

「お願い助けて!!」

 

「死にたくないよ!!」

 

「くそっ!」

 

 2人の男性と1人の女性を人質に取るゴキブリの悪魔。

 1人だけなら即座に腕を切り落として人質を救出したであろうが、人質を3人も取られてしまったせいで近藤は動けなくなってしまった。

 

 近藤だけは。

 

「おらぁああああ!!」

 

「なにぃ!?」

 

「うわぁあああ!!」

 

 動けなくなった近藤を尻目に、デンジはゴキブリの悪魔に斬りかかる。

 ゴキブリの悪魔にとってデンジの行動は完全に予想外だったが、咄嗟に右腕でガードする。

 腕が切断され男性が1人解放されるが、それでも男性と女性の残り2人が捕まったままである。

 

「おい!!何やっているんだ!!人質がどうなってもいいのか!?」

 

「あ?別にどうでもいいぜ。だって死ぬのは悪魔のせいで俺のせいじゃねぇし!」

 

「なんだと!?」

 

 人質なんてどうでもいいと言うデンジに怒る近藤。

 

「お前!!人の命をなんだと思っているんだ!?」

 

「どうとも思ってねぇよ。他人がいくら死んでも悲しくねぇな。あ、でも女が死ぬのはちょっと嫌かな。おっぱい揉めなくなるし」

 

「てめぇ!」

 

 デンジの身勝手なことばにキレる近藤。

 悪魔がいなければそのままデンジのことを殴っていであろう。

 だが、近藤は公安2課の隊長である。

 悪魔が目の前にいて人質まで取っている状況で、そのようなことをする程冷静さを失ってはいなかった。

 

「正直、今すぐにでもお前をぶん殴ってやりたいところだが、今はそれどころじゃない。まずは人質を助けることが優先だ」

 

「助けるって言うけどよ、俺たちが悪魔をぶっ殺すよりあいつが握り潰す方が早いぜ」

 

「心配するな、俺に考えがある」

 

 どうやって人質を救うのか問うデンジに近藤は考えがあると言う。

 

「おい悪魔!契約だ!!」

 

「契約だと?」

 

「人質を解放しろ!!そうすればお前を見逃してやる!!」

 

 近藤はゴキブリの悪魔に契約を持ちかける。

 人質を解放すれば見逃すという契約を。

 

「その契約、受けてもいいがこれだけやられて見逃されるだけじゃ割に合わねぇ!人質を解放して欲しけりゃお前とそのガキで殺し合え!!片方が死んだら人質を解放してやる!」

 

 腕を2本と両足の健を切断されたゴキブリの悪魔はデンジと近藤で殺し合うことを要求する。

 2人が醜く殺し合う光景が見たいという悪魔だからこその要求だった。

 

「バーカ!!誰がそんなことすっかよ!!それにこいつが死んでもお前が人質を解放するとは限らねぇだろ!」

 

「いや、それはない。悪魔にとって契約は絶対だ。それがどんな契約であれ、1度結ばれた契約は守らなくちゃならん。もし片方が契約を守ったらもう片方も絶対に契約を守らないと、守れなかった方は死んじまうんだ」

 

 相手を騙して殺すことなど悪魔にとって当然と言ってもいいが、契約に関しては別である。

 近藤の言ったように、1度結ばれた契約はそれがどんな契約であっても絶対に守らなければならず、契約を片方が守った場合、もう片方が契約を守れなかったら守れなかった方は死んでしまう。

 それが悪魔との契約である。

 

「じゃあどうすんの?殺し合うのか?」

 

「馬鹿言え、仲間同士でそんなこと出来るか」

 

「仲間って……さっき会ったばっかじゃん」

 

「1度仲間になったら、時間なんて関係ないさ」

 

 いくら人質を助けるためとはいえ、仲間同士で殺し合いは出来ないと言い切る近藤。

 ついさっき会ったばかりの近藤に仲間と言われてデンジは困惑するが、それでも近藤はデンジのことを仲間と言った。

 

「つまり契約はしないってことだな!?」

 

「いいや契約はする!殺し合いなんて出来ん!!だが、その代わりに俺が腹を切る!!俺が死んだらお前は人質を解放する代わりに俺達はお前を見逃す!!それならどうだ!!」

 

 デンジと殺し合いは出来ない近藤が代わりに提案したのが、自分が切腹するというものだった。

 

「切腹か……いいだろう!!テメェが腹を切って、死んだら俺は人質は解放する代わりに見逃してもらう!!契約は成立だ!!」

 

 ゴキブリの悪魔は少し悩んでその契約を結ぶ。

 

「おい、本当に腹切るのかよ?」

 

「人質を助けるためなら、俺の命なんて安いもんさ」

 

「……なんでだよ?」

 

 死ぬと決まったにも関わらず、近藤はそれがなんでもないことのように言う。

 それがデンジにはわからない。

 家族はポチタしかいなかった。

 ポチタを助けるためなら命をかけるかもしれないが、家族でもなんでもない見ず知らずの他人がいくら死のうがデンジにとってはどうでもよかった。

 

「どうして腹切るんだよ?あいつらお前の家族かなにかか?」

 

「いいや、あの人達は家族でもなんでもない。赤の他人だよ」

 

「じゃあ、なんで?」

 

 赤の他人だと、近藤はなんでもないことのように言う。

 ますますデンジはわからなくなる。

 どうして他人のためにそこまで出来るのか。

 

「あの人達を見捨てちまったら、俺は死んじまうんだよ」

 

「死ぬの?どうして?」

 

 死ぬと言った近藤にデンジはますますわからなくなる。

 他人が死んで、どうして近藤が死んでしまうのか。

 

「本当に死ぬわけじゃない。あの人達を見捨てて悪魔を殺せば俺の命は助かる。だが、そのかわりに命よりも大切なもの、魂が死んじまうのさ」

 

「魂って……なんだよそれ?」

 

 毎日を生きるのに必死だったデンジにとって、命よりも大切なものなんてなかった。

 強いて言えばポチタが命よりも大切だったが、命よりも大切な魂なんてものをデンジは知らない。

 

「さぁな?偉そうに言ったがそれがどんなものなのかは俺にもわからん。だが、それはたしかに俺の中にあるんだよ」

 

 近藤は拳で自分の胸を叩く。

 魂はここにあるのだとデンジに教えるように。

 

「魂が死んじまったら、たとえ生きていようと死んだも同然だ。どれだけうまい飯を食っても、どれだけ面白い映画を見ても、きっとマキマさんとデートしている時も、俺はそれを全力で楽しむことなんて出来やしない。あの人達を見捨てたことを死ぬまで後悔しちまう。そうなってしまうくらいなら、きっと死んだ方がマシだって思うんだよ」

 

 人質にされた人達を見捨てたことを死ぬまで後悔するくらいならば、人質を助けるために死ぬ。

 一切の迷いもなく、近藤は自らを犠牲にして人質を助けることを選んだ。

 

「俺は死ぬかもしれないが安心しろ!俺達には頼れる仲間がいるからな!」

 

 たとえ死んでも仲間がいる。

 仲間のことを信じて、近藤は笑った。

 

「待たせてしまってすまんな!!」

 

「お別れのあいさつはすませたようだなデビルハンター!それじゃあ、腹を切ってもらおうか!!」

 

「俺の腹でよければいくらでも切ってやるさ!!だが、俺が死んだら必ず人質を解放しろ!!」

 

「契約なんだ、お前が腹を切って死んだら必ず人質は解放しよう!」

 

「よし!それなら安心だ!」

 

 ゴキブリの悪魔に再び契約の確認をして、人質が解放されることを確認できた近藤は笑って膝を着く。

 公安のスーツを脱いで上半身裸になると、腰の刀を抜き、手を切らないようにスーツで刃を持つ。

 

「……あんた」

 

「あとは任せたぞ」

 

 あとのことをデンジに任せ、近藤は刀を腹に突き刺そうとして。

 

「ちょっと待って」

 

 腹に刀が突き刺さる寸前、近藤が待ったをかけた。

 

「どうした?今更怖気づいたか?」

 

 待ったをかけた近藤にゴキブリの悪魔がニヤニヤと煽る。

 ゴキブリの悪魔は偉そうなことを言っていた近藤が死ぬのが恐ろしくなり、人質を見捨てようとしていることを期待していた。

 

「そんなわけあるか!あの人達を助けるためなら命なんて惜しくない!!」

 

「ほう、じゃあどうして今すぐ腹を切らない?」

 

 いまだに人質助ける気の近藤にさっさと腹を切れと遠回しに言うゴキブリの悪魔。

 だが、近藤は真剣な顔を言う。

 

「いや、カウントダウンいるかなって?」

 

「カウント……ダウン?」

 

 まさかのカウントダウンにゴキブリの悪魔は理解が遅れる。

 

「ほら、いざ切腹したのによそ見していたせいで見れなかったからもう1回やって、なんて言われるの嫌だからさ。だから、よそ見とかしないようにカウントダウンした方がいいかなって」

 

「そういうことか。なら腹を切る前にカウントダウンしろ」

 

「わかった」

 

 近藤の説明を聞いて納得したゴキブリの悪魔。

 ゴキブリの悪魔としては腹を切って苦しむさまを見たいのでよそ見をするつもりはないが、万が一ということもあるためカウントダウンを許可する。

 

「じゃあ、カウントダウンの後に切腹させてもらう!!」

 

「……あんた」

 

「あとは任せたぞ」

 

 近藤は切腹をするために刀を振り上げ、カウントダウンをしようとして。

 

「ちょっと待って」

 

 待ったをかけた。

 

「またかよ!!今度はなんだ!?」

 

 やっと腹を切ると思っていたゴキブリの悪魔が怒る。

 カウントダウンをすると言っていたくせに、カウントダウンの前に待ったをかけたからだ。

 

「いや、カウントダウンなんだけど、1、2,3で切るのがいいのか。それとも3、2、1、0で切るのがいいのか聞いてなかったから」

 

「どっちでもいいわぁああああ!!」

 

 カウントダウンが1、2、3か3、2、1、0のどっちがいいのかというどうでもいい理由で切腹が止められたことにゴキブリの悪魔は激怒した。

 ゴキブリの悪魔としてはどっちでもよかった。

 さっさと腹を切って欲しかった。

 

「3、2、1、0だ!!3、2、1、0で腹を切れ!!」

 

「ああ、わかった」

 

「……あんた」

 

「あとは任せたぞ」

 

 近藤はデンジに後のことを託し、笑った。

 人質を助けることが出来るのなら悔いはないと。

 

「3」

 

 刀を掴む。

 

「2」

 

 高く振り上げ。

 

「1」

 

 刀を腹に向けて勢いよく振り下ろし。

 

「ちょっと待って」

 

 待ったをかけた。

 

「今度は何だぁああああ!!」

 

 今度こそは切腹を見られると思っていたゴキブリの悪魔は激怒する。

 まさか、また待ったをかけられるとは全く思っていなかったからだ。

 

「いや、3、2、1、0で切るんだけどさ。0で切るときにゼロのゼのところで切るのと、ゼロのロのところで切るのどっちがいいかな?」

 

「どっちでもいいわぁああああ!!」

 

 待ったをかけられた理由が果てしなくどうでもよかった。

 0のゼで切るか、ロで切るか。

 どっちで切るかなんて果てしなくどうでもよかった。

 

「ロだ!!ゼロのロで腹を切れ!!」

 

「わかった」

 

 もう面倒くさくなったゴキブリの悪魔はなかばやけくそになりながら、ゼロのロのところで切るように言った。

 どっちでもいいから早く切れとしか思っていなかった。

 

「……あんた」

 

「あとは任せたぞ」

 

「それ毎回やってんじゃねぇええええ!!うっとおしいんだよぉおおおお!!」

 

 切腹の前に毎回されるデンジと近藤のやり取りにゴキブリの悪魔のイライラは上がっていく。

 早く腹を切るところが見たいのに、このやり取りのせいでほんの少し待つはめになるからだ。

 あと、単純にうざかった。

 

「今度待ったをかけてみろ!!人質は殺すからな!!」

 

「「助けてぇええ!!」」

 

 もはや我慢の限界になりそうなゴキブリの悪魔はもう次はないと人質を使って脅す。

 むしろ悪魔のわりに、ゴキブリの悪魔はよく我慢した方なのかもしれない。

 

「わかった!!もう待ったなんて言いやしない!!だから人質に危害を加えるな!!」

 

「ふん!!わかればいいんだよ!!」

 

 人質を殺すと脅されて慌てる近藤に、少し溜飲が下がるゴキブリの悪魔。

 もう近藤が切腹することは避けられなかった。

 

「いくぞ」

 

 もう待ったは出来ない。

 

「3」

 

 覚悟を決める近藤。

 

「2」

 

 刀を持つ手に力を込める。

 

「1」

 

 刀を高く振り上げ。

 

「コン」

 

 突如として現れた巨大な狐の頭部が、ゴキブリの悪魔を噛みちぎった。

 死亡したゴキブリの悪魔の体が仰向けに倒れ、人質にされていた人達は解放される。

 

「ふぅー、助かったぞアキ」

 

「あんたら勝手に突っ走り過ぎなんですよ。フォローするこっちの身にもなってください」

 

「すまんすまん!!アキならすぐに追いつくと信じていたんだよ!!」

 

「まったく……調子のいい」

 

 刀を鞘に納めて笑う近藤に呆れながらも、満更ではなさそうなアキだった。

 

「あんたまさか」

 

「言っただろ?『俺達には頼れる仲間がいるから』ってな」

 

「だから腹切ることが出来たのか」

 

 アキの登場によって、デンジはどうして近藤が一切の躊躇もなく切腹しようとすることが出来たのか理解する。

 自分が切腹する前にアキがゴキブリの悪魔を殺してくれると思っていたからだった。

 

「でもよ、もし間に合わなかったらどうするつもりだったんだ?」

 

 当然の疑問。

 アキが間に合ったから近藤は切腹をせずにすんだが、もしも間に合わなかったらどうするつもりだったのか。

 気になったデンジは近藤に聞く。

 

「間に合わなかったら?そんなもん決まっているだろ」

 

 デンジの疑問に近藤は何の迷いもなく答える。

 

「そのまま腹を切ったよ」

 

 それが当然と言わんばかりに。

 

「……マジで?」

 

 まさか本当に腹を切るつもりだとは思っていなかったデンジは絶句し、溶けたチェンソーの頭部から唖然とした顔が現れる。

 

「ま、アキが間に合ったんだからオールオッケーってやつさ!!」

 

「こんな人なんだよ、近藤さんは」

 

 腹を切らなければならなかったとは思えない笑顔で豪快に笑う近藤に、アキがもはや慣れっこといった具合に肩をすくめる。

 それだけで2人の付き合いの長さが感じとれた。

 

「そういえば自己紹介がまだだったな!俺の名前は近藤(こんどう)(いさお)だ!!お前の名前は!?」

 

「デンジ」

 

「そうか、デンジっていうのか!!これからよろしくなデンジ!!」

 

「ああ、よろしくな近藤さん」

 

 自己紹介をしていなかったことに気付いた近藤とデンジがお互いに紹介を終えると、握手を交わす。

 

「あ、そういえば」

 

「ん?どうしたデンジ?」

 

 握手したデンジが何かに気付くと。

 

「おら!!」

 

 近藤の股間を思いっきり蹴り上げた。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」

 

「なにやってんだお前ぇええええ!!」

 

 近藤は股間を抑えてうずくまり、アキはデンジの胸倉を掴む。

 アキからしてみれば、悪魔の力を使うデンジがおかしくなってしまったのだと判断した。

 

「いやよ、俺近藤さんに殴られたんだよ。だから、俺は近藤さんの金玉を蹴った。殴られた俺と、金玉蹴られた近藤さん。これでおあいこな」

 

「おあいこ……か?……これ?」

 

 デンジの言い分に納得したアキと、痛みから息も絶え絶えな近藤。

 アキもおあいこだとは思っていないが、言っても面倒なことになりそうだったので近藤の嘆きを無視することにした。

 普段から面倒をかけさせられている鬱憤が少し晴れたのはあまり関係のない話である。

 

「んでさ、この悪魔は俺と近藤さんのどっちの手柄になるんだ?」

 

「どっちと言ってもとどめを刺したのはアキだからな。アキの手柄になるんじゃないか?」

 

「あ、手柄についてなんですが」

 

「どうしたアキ?」

 

 ゴキブリの悪魔の討伐はどっちの手柄になるのかハッキリさせようとするが、それにアキが待ったをかける。

 

「この悪魔に関しては近藤さんかこいつのどっちでもいいんですけど、問題は他の悪魔です」

 

「ここに来るまでに俺とデンジで悪魔を1体ずつ殺したが、それがどうしたのか?」

 

 近藤とデンジはバナナの悪魔とパプリカの悪魔をそれぞれ1体ずつ殺している。

 それが問題だと言われてもピンとこない2人。

 

「あの悪魔たちは先に民間のデビルハンターが対応していたんですよ。だから2人は民間のデビルハンターの業務妨害をしたことになります」

 

「マジで!?」

 

「それだけじゃありません」

 

「まだあんの!?」

 

 民間のデビルハンターが手をつけた悪魔を公安が殺すことは業務妨害であり逮捕される案件である。

 それだけでも問題なのに問題はまだあった。

 

「ここに来るまでに『大声で悪魔を探して走っている奴がいて怖かった』や『いきなり店に悪魔とゴリラが飛び込んで来た』に『頭がチェンソーの悪魔にお前は悪魔だと言われて怖かった』などの苦情が殺到しています」

 

 ここに来るまでにデンジと近藤は暴れ過ぎた。

 そのせいで人々に迷惑がかかってしまい、2人を追いかけていたアキは人々に対応するはめになり追いつくのが遅くなってしまったのである。

 

「なので2人とも手柄は無しです」

 

「「ち、ちくしょおおおおおお!!」」

 

 自分たちの努力が無駄になったことを嘆く、2人の絶叫が街に響くのであった。

 

 




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