ありふれた爆弾で異世界爆発   作:黒霧 氷

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これは、一人の殺人鬼であり一人の人間の物語である。


※ジョジョの奇妙な冒険第4部のネタバレを多く含みます。ご容赦ください。





#0 吉良吉影はプロローグを語りたい

 

 

私の名は吉良吉影(きらよしかげ)

年齢17歳。

自宅は――町の付近に親が別荘を持っていて、そこで暮らしており……結婚はしていない。

仕事はなく学生、高校2年生。部活には美術部に入っており遅くとも17時には帰宅する。

タバコは吸えないし吸わない。酒も同じくだが飲んだとしても嗜む程度だろう。

夜更かしはしない主義でね。夜11時には床につき必ず8時間は睡眠をとるようにしている。

寝る前にホットミルクを飲み、20分ほどで終わるストレッチで体をほぐしてから寝床につくとほとんど朝まで熟睡さ。

このストレッチのお陰で、赤ん坊の様に周囲に刺激や突然の感情の昂りなどで起きることもない。殆ど朝まで熟睡さ……

学校の健康診断でも異常なしと言われたよ。

そんな私は、このガワ(女の肉体)を被っている。

強いて言うなら、この世に輪廻転生というものがあるとすれば……私は転生したって事じゃあないかね?

まぁ、いいさ。そんな事よりも……私には一つとても大事な事がある。

それはどんな世界であれ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

それが例え、私〝彼女〟を手に入れる姿を見ていようといなかろうと必ず始末しなければならない事。

だからこそ―――私は例え生き残るとしても。

 

 

「―――だからこそ!この小僧だけは……ここで始末しなくてはッ!

 

 

金色の髪が揺れて解れていた。しっかりとこの世界である素材を使ってワックス風クリームで整えた筈なのに。

また後で、整えなくちゃあならないじゃないか……

さて。冷静に私は今奈落に落ちている。それは万が一、そして過去の失態を繰り返さない為にも生き残る手段を模索する為に思考しているんだ……

 

 

 

「―――キラークイーン……は、まだ遠いか

 

 

 

ここはダンジョンだ。細かい事なんて考える必要は無いが、

探索中に事件があり、巨大な大地の裂け目に落ちていると言う他ない。

遂に光が届かない深部まで落下し続け、真っ暗闇となった中は私の忌々しいトラウマ(振り向いてはいけない小道)を掘り起こしてくる。

しかし私は、これを乗り越えなくちゃあならないんだ……今度こそ平穏に生きる為、私の(さが)を満たす為にも!

 

 

まぁだが……日本人である私がこんな俗に言うファンタジーという未知の場所、という些かハード過ぎるこの世界にやって来て味わった事を、そしてこの世界に来て何があったかを思い出してみるとするか。走馬灯は、まだ浮かんでこないが……もしかするとあの頃の記憶から生き残れる方法を思い出せるかもしれん。

 

 

 

「―――その為に、まずは生き残らなくては!

 

 

 

ドヒュゥウウウウッ!

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

月曜日の事だった。それは一週間の内で最も憂鬱であり、私としては幸福の始まりの日だ。

私の人生は常に幸福でなければならない。しかし周りは、私を幸せにするまいと己の私欲を満たす為周囲を乱し、動かしている。

気に入らない女子達、関わる意味も無いのに不必要に関わりを求めてくる女子達を軽くあしらいながら私……吉良吉影の学校生活はいつも通りスタートする。

 

 

 

「さて、今日も登校するとするか」キュッ

 

 

 

私の学校は、それなりに部活の種類があり多くの才能を開花できる事にも優れている……言わば優良校というものだ。

私は普段から部活で使用する画材の入った横長の鞄と、教材は暗記してあるので必要なノートと筆記用具が入った一回り小さめの横長鞄、そして私が作った食事用の弁当を持って始業チャイムが鳴る15分前には登校し、最高のコンディションの健康体の肉体で健やかな気分で、4〜5分程女子トイレで髪を櫛で整え、手先の状態を確認し手袋を付けて教室に入るんだ。

 

 

私が教室に入っても、特に誰かが熱烈な視線を送ってくることはない。

顔はそれなりに整っている方だと実感しているが、対して喋る事もなく静かな顔で私の机に向かう。隣にはいつも始業のチャイムギリギリで来る男子の机があるが大した事じゃあない。

私の今の机は窓側縁の隣にあり、すぐ隣が壁である。大きめの画材が入った鞄はもたれかける様に置いておく。教材が入ったのは始業で必要なノートのみを取り出して、机のかけ場所にかけてやる。

 

 

そして、始業が始まるタイミングまでこの後始まる授業の準備を終えておく。

残った時間は予習や、入っている美術部で描く題材のアイデアでも考える。

そんな中でも時間はあっという間に過ぎていき、今日も始業のチャイムが鳴るタイミングで私の隣の男子がギリギリで教室に飛び込んでくる。

こいつの名前、なんだっけか…………ああ、そうだ。

南雲(なぐも) ハジメとか言ってたな。

 

 

 

「よぉ、キモオタ!また徹夜でゲームかよ?どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっキモォ〜、エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん」

 

 

 

一体何が面白いのか軽快に笑い出す男子生徒達の光景もいつも通りだ。私が近くにいることを一切気にしていない。

声を掛けているのは、確か檜山大介を筆頭に斎藤良樹、近藤礼一、中野信治……だったか。

心底どうでもいい。だが、私にとって一つお目当てのものがあるとすれば……その答えが彼女だ。

 

 

 

「南雲くん、おはよう!今日もギリギリだったね。もっと早く来ようよ」

 

 

 

まるで女神の様に微笑みながら、一人の女子生徒が私の近くの机に歩み寄ってきた。

この学校内で、私の隣に座るこの男に物好きかの如く喋りかける存在。

名を白崎 香織(しらさき かおり)

私の通う学校で二大女神と称され、男女問わずから絶大な人気を誇る途轍とてつもない美少女である。

何より……その腰まで長く艶やかな黒髪と、少し垂れ気味の大きな瞳は優しさを帯びていた。すっと通った小ぶりの鼻、薄い桜色の唇がまさしく《モナ・リザ》の如く黄金比を作り上げるように並び上がっていた。

しかし一番私が注目しているのは、彼女の綺麗な……その両手。

汚れも穢れ一つもないその手は、傷一つない。

私はそれに対してだけは、彼女に興味がある。

非常に美しくも整えられた桃色の綺麗な指とその淡い白の肌色の手を触らせてもらえる機会があったが、初めてその手を触れた時に線が切れたかの様に感動して泣いてしまった事を思い出すなぁ〜……。

 

 

「(また触れれる機会があるなら、時折でもいいから触れていたい……)」

 

 

いつも微笑みの絶えない白崎香織は、非常に面倒見がよく責任感も強い。

男女問わず、その頼り甲斐のある様を頼られる。それは歳や職務も関係なく、教師からもだ。

彼女のコネクションもそうだが非常に出来ている人間である事は間違いない……が。

 

 

 

「あ、ああ。おはよう白崎さん」

 

 

 

南雲ハジメが会話をそう会話を返しているタイミングを図ったのかは知らないが、三人の男女が近寄って来た。

その中でも私は唯一と言っていい―――忌み嫌う女がいる。

 

 

 

「南雲君。おはよう。毎日大変ね」

「香織はまた彼の世話を焼いているのか?全く……本当に香織は優しいな」

「全くだぜ!そんなやる気ないヤツにはよぉ、何を言っても無駄と思うけどな?」

 

 

 

三人の中で唯一南雲ハジメに対して、朝の挨拶をしているこの女……名前は八重樫 雫(やえがし しずく)とか言ったか。

ポジション的には香織の親友的存在である事は間違いない。

長い黒髪を一纏めにしている(俗に言うポニーテールってヤツだ)のがトレードマークである。

切れ長の目は鋭くもしかし奥には柔らかさも感じられた。

だが!外見はいい、整っていると私もそこは認めるが……

 

 

この女の手だけは……認められないッ!

 

 

八重樫雫の実家は八重樫流という剣術道場を営んでいる。

私はその道場に通っていた事があるし、習い事として剣道をやった事もあるが……小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者であった事は大会で3位を取った私としてもその実力も認めざるを得ない。

だが剣道は踏み込みの為の足から、しっかりと剣を握り相手の面胴篭手に対して攻撃を当てる為に握力も必要だ。

そんな彼女の素手は、綺麗ではあるもののその手は非常に一定部分に筋力が付いた特化型の素手になっている。

 

 

 

しかしっ!大切なのはその手の〝不節操さ〟……だ!

 

 

 

この女が女としての魅力を捨てている訳ではないのは見た目から分かるが、その手を見た時にあまりにもショックを受けた。

勿体ない……っ!その手をたかが剣一つの道で使い潰すのは余りにも愚かな判断としか言い様がない!

その手が彼女の剣道の鍛錬で何度傷付き、マメが出来マメが潰れ血が零れたか!

手は繊細だ。その一つのシワでさえ体の健康状態を確認出来るほど人の手は非常にデリケートな場所であることを理解しろ!……と、小一時間程説教をしたくなるくらいには、彼女の手の使い方に対しては根掘り葉掘りと文句を言いたい。

しかし私は言わない。彼女に対しては大会で剣を交えた程度。

故に何かを言う権利は、精々昔の馴染みとして手は大切にしたまえよ……程度の事だろう。

 

 

 

残りの天之河光輝や坂本龍太郎などは遥かにどうでもいい。男の手に対しては興味はないからね……

 

 

 

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

 

 

雫達に挨拶を返して、苦笑いする南雲ハジメの様子を見ていると、周囲の人間達がこいつに対して明瞭な悪意ある視線を送っていた。

なんと言うが、こんな馬鹿な奴らと私が人付き合いしていると私がおかしくなりそうだ……

更に、付け加えるとすれば。

 

 

「それが分かっているなら直すべきなんじゃないか?

いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。

香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

 

 

 

天之河光輝が南雲ハジメに忠告していた。

この男、何の善意か分からないがこの男(南雲ハジメ)に対しては香織の厚意を無下にする不真面目な生徒として映っているらしい。

明らかに……白崎香織は南雲ハジメに対して好意があるって分かるんだがね……認めたくない事実って言うのもあるんじゃあないか。

 

 

 

「いや~、あはは……」

「光輝君、何言ってるの?私は、私が南雲君と話したいから話してるだけだよ?」

 

 

 

ざわっ……とこの教室が騒がしくなった。

全く、分かりやすい狭い世界だ。釣り合う釣り合わないの話ではなく、好きになった好きにならなかったって世界なだけじゃあないか。

男共は分かりやすい嫉妬の視線を送っているが、そういう視線を送るだけで自分は何も準備出来ていないような輩ばっかりだ。

……要するに可愛い女を隣に侍らせたいという邪な思考ばかりしかない今の思春期男子、って感じじゃあないか。

悪くはないんだが、ごく稀に私にも視線が飛んでくるのはやめて欲しいね……

 

 

 

「え……ああ、ホント、香織は優しいよな?」

 

「……ごめんなさいね? 二人共悪気はないのだけど……」

 

 

 

そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り響くと、教師が教室に入ってきた。教室の空気のおかしさは毎日の習慣のように感じているのか、何事もないように朝の連絡事項を伝えてくる。

隣の男はもう寝ている。まぁ、起こす義理もないな。

授業をしっかりと受けようじゃないか……

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

授業が終え、担任の号令の後に昼休憩に入った。

そのタイミングで机に突っ伏していた体を起こした隣の男がエナジーゼリーをゴソゴソと取り出していた。

私の方はサンドイッチだ。材料さえあればラップに包んで簡単に作る事が出来る、手間暇もあまり掛からない楽なものだ。

 

 

「(不健康なヤツだ)」モシャ……

 

 

エナジーゼリーは瞬間的に体にとってエネルギー効率のいいゼリー状の食べ……飲み物か?まぁどっちでもいいだろう。

瞬間的に栄養が取れるという点は評価出来るが、それはある程度のエネルギーの効率性を取れているだけであって不足している栄養を保管出来る訳じゃあない。

それを案じてなのか、ニコニコとハジメの席に寄ってきたのは……白崎香織がやってきた。

 

 

 

「南雲君、珍しいね教室にいるの。お弁当よかったら一緒にどうかな?」

「あー……誘ってくれてありがとう、白崎さん。もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」

 

 

 

隣の男の指摘はごもっともだ。まぁ、それが通じれば良かっただがね……

 

 

「えっ!?お昼それだけなの!?

ダメだよ、ちゃんと食べないと!私のお弁当、分けてあげるね!」

 

 

 

周囲の視線が隣の男に送られていると、まるでそこに介入してくる者が現れた。天之河光輝達だった。

 

 

 

「香織、こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。

せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

「え?なんで光輝君の許しがいるの?」

 

 

 

素で聞き返していた白崎香織の反応に、八重樫雫が小さく吹き出していた。天之河光輝は困ったように笑いながら白崎香織からハジメを動かそうと模索する様にペラペラと喋ってはいるが、全部無駄に終わっている様じゃあないか。

ここまで来れば、もう諦めたらどうかね……

横目でこの茶番劇の様な光景を見ながら、サンドイッチをしっかりと咀嚼していた時だった。

 

 

「―――!」

 

 

私の目の前、隣の男達も例外なく足元に純白に光り輝く謎の円陣が浮かび上がった。ただのイタズラにしちゃあ、あまりにもおかしいと感覚で理解した。しかも、その円陣には謎の紋様が描かれていた。

しかも、学んできた歴史や美術部での経験からしてもこの幾何学模様は見たことがない。地球にあるものではない。

私の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴が響き、未だ教室にいた担任の教師の外に出て、という声が教室の中に響くと同時に魔法陣の輝きが爆発したように照らし出された瞬間に、私の頭の中に何かが流れ込んでくる。

 

 

 

 

『―――射程距離内に…………入ったぜ、吉良吉影……!』

 

 

『東方…………仗助』

 

 

 

鮮烈に残る、謎の男と私の記憶。

なんだこれは……なんなんだこれは……!?

 

 

 

「うぐ……っ……!」

 

 

教室が光を全て包み込んだ時に、私は()()()()()()()()()()()を全て取り戻した。

私の名前は……吉良吉影。

幽霊であり、杜王町で東方仗助と激闘を繰り広げ―――杉本鈴美の手によって振り向いてはいけない小道に振り向かされ、何処かに向かった筈の私の記憶が。

 

 

 

そうして、私が目覚めた頃には……謎の荘厳なる場所だった。

 

 

 








to be continued……



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