凛と起つ〜祠を壊した少女と長髪無精ヒゲ退魔師オジさん〜 作:卯月幾哉
「……
悪友二人を求める岡部
円香たちが初めて道路で巨大な
木々の間を
――遊ばれとる。
林の中を当て
必死で逃げ回りながら何度も転んだ円香は、髪や制服のあちこちに枯れ葉や
――この巨大なアカニゴ(〝
なぜなら、自分の体は周囲の木々よりもずっと
あの大きなハサミに
これだけ周囲の木々を容易に破壊し続けている化け物が、疲労でフラフラの自分をいつまでも取り逃がし続けるはずがない。
――それを理解して、円香はみっともなく逃げ
ふと円香は小学生時代、蟻の行列に
ああ、あたしはアレをやられているんだ。
あのときの蟻が、今のあたしなんだ。
それでも容易に自分の命を諦められない円香は、棒のように鈍く固まった足を無理やりに動かして活路を探す。
左右を見回し、円香が
「えっ……?」
追い詰められた。
それを悟った円香の足が止まる。
円香の背にどっと汗が噴き出し、今まで頭の端に追いやっていた疲労が全身に重くのしかかる。
円香の背後でパキパキと木々が
「い、いや……」
円香は
ゆっくりと近づいて来る巨蟹の化け物に焦った円香は、両手を後ろ手に地面に着き、座ったままの不格好な姿勢で慌てて後退した。トスン、とその背が一本の立木に
「あ……」
行き止まり。逃げ道は
巨蟹は左右四対の
「……やだ、やだやだ! こ、殺さないでぇっ!!」
円香はパニックを起こして必死に手足をばたつかせるが、それは何の意味もない行為だった。
巨蟹は歩脚を広げてやや体を沈み込ませるようにして、横に広い顔面を円香の目と鼻の先まで持っていった。まるでそれは獲物を品定めするような動作だった。
「――――」
恐怖の
巨蟹が左の大ハサミを空高く振り上げる。それは
円香はふるふると首を左右に振る。震える
「……い、いや……――いやあああぁぁぁっっっっ!!」
――コツンッ
そのとき、円香の左手側から飛んできた石
巨蟹が体をそちら側に開くと、もう一つ石礫が飛んできたので、巨蟹は右のハサミを盾にしてそれを弾いた。
巨蟹の化け物が振り向いた先には、木の棒を
同じくそちらを向いた円香は、彼女が何者かすぐにわかった。
「て、転校生……? なんで?」
新たに現れた少女――
「カニの化け物! 食べるなら私からにしなさい!」
『…………』
凛の啖呵に反応してか、巨蟹はブクブクと口元で泡を立てていた。
円香はその姿を目前にして、まるで化け物が笑っているかのように感じた。