※現実のバトルはゲーム通りには行きません   作:

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感想もありがとうございます。筆者はアホなので余計なこと(ネタバレ要素)まで書いてしまいそうなので返信は控えさせていただいてますが、とても嬉しいです。

今回は紗月さん視点の回です。



白峰紗月。

 

 

 

 

 

白峰紗月という人間は、間違いなく幸福な人間なのだろう。

 

少し裕福な家庭に生まれ、親の仲は良好。姉共々十二分な愛情を受けて育ち、やりたいことをできる環境があった。

 

そして、私も姉も、それぞれ突出した才能を持ち、それを十分に伸ばすことが出来た。

 

姉は幼い頃から運動神経に優れていた。様々なスポーツに触れては、全国大会で入賞を果たし、その道を陸上に定めてからはその実力を十全に発揮し、世界大会にも出場するレベルとなった。

 

一方、私は絵や音楽といった、いわゆる『創作』と呼ばれるものの才能を持っていた。

 

幼い頃から、興味を持った楽器は種類を選ばず練習し、そして満足するに値するだけの実力を手に入れていた。

 

さらには、親に買い与えられたパソコンを使って音楽や絵を作成しネット上に投稿すると、想像以上の反響が生まれた。

今では、それに伴って生まれた仕事の依頼や動画投稿サイトの収益だけで余裕を持って生活することができるようになっている。

 

ああ、間違いなく私は恵まれている人間である。家族にも、能力にも。そして時の運にも。

 

 

だがしかし、この才能というものは、同時に私を拘束するものでもあった。

 

学校では『演奏者』、或いは『作曲家』として、畏れのような感情を向けられて距離を取られ。

SNSではアカウントの規模が大きくなりすぎるあまり、迂闊な投稿もできなくなった。

 

もちろん、その立場があるからこそできることもありはするが、そうしている内に私の中にはなにか、その拘束を無視するような思いきったことがしたいという気持ちが溜まっていた。

 

近頃の私は、この感情を発散するべく様々なことを試みていた。ゲーム然り、運動然り。

 

 

―そして今、その感情に突き動かされるままに、私は素性の分からぬ女の子を家に住まわせている。

 

…いや、うん。

 

そうはならないだろ、という声が聞こえる気がする。

正直、私自身もそう思っている。

 

 

ひとつ言い訳をするならば、小学生くらいの女の子が路上で途方に暮れていて、自分には彼女を助けるだけの財力があるならば、声をかけるのはかなり自然な行いじゃないだろうか?

 

…自己弁護しても虚しいだけなのでこれに関してはもう考えないでおこう。

 

とにかく、紆余曲折あって私は今彼女―アマネちゃんを家に住まわせている訳だが…

 

数日経って、改めて私は初日に感じたアマネちゃんのおかしさというものを実感していた。

 

 

例えば、未来を知っているかのような口ぶり。

 

例えば、小学生とは思えぬ頭の良さ。

 

例えば、過去のことを極端に秘匿する点。

 

 

他にも幾つか疑問に思う点があったし、彼女自身それを積極的に隠そうとはしていないように思える。

 

そして、日中出かけてもいい、と言ったのは私だが、本当にどこへ行っているのか分からないのだ。

 

オレカバトルをやっているという事だったから、所用で出かけた際には街中のゲームセンターを何店か覗いてみたのだが、彼女はいなかった。

 

住まわせることを提案した際に言ったように深く詮索はしない、つもりだったが。

 

それはそれとして、彼女が実際何者なのか、かなり気になってきていた。

 

そして、今の私は、やりたいことを何がなんでもやり遂げたいという気概があった。

それゆえに、私は彼女に声をかけるのだった。

 

「そろそろ、君が出かける所について行ってもいいかな?」

と。

 

 

 

---

 

 

 

アマネちゃんは私の発言を聞いた後、少し考えているようだったが、やがて頷き、

 

「まあ、いいですよ。そこまで隠したいようなものでも無いですし」

 

と言って私の提案を受け入れた。

 

この時点で、少し拍子抜けだった。外出先に彼女の秘匿している内容が含まれているだとばかり思っていたが、実際彼女からすると外出先自体はそこまでのものではないらしい。

まあ、今すぐ全てを明らかにしたい、という訳でもない。ちょっとでも分かることがあればそれは収穫なのだ。

 

 

…それで、翌朝。

朝食を摂った後、外出の準備をして、アマネちゃんと一緒に外に出る。

9月にもなると、夏の暑さはすっかりと落ち着き、外出するのにちょうどいい心地だった。

 

「今日はいつも通っている所へ行こうと思いますが…いま、オレカって持ってきてます?」

 

「アマネちゃんが言ってたから一応いつも使ってるカードだけ持ってきたよ。ゲームセンターとかに行くの?」

 

「似たようなとこですかね。それじゃあ、行きましょう」

 

アマネちゃんはそうやって話したあと、迷いの無い足取りで歩き出した。

 

 

 

---

 

 

 

だいたい、40分くらい歩いただろうか。私たちはこの街の中心近くにある家からはやや離れ、郊外の辺りにやって来ていた。

この辺りは、住民の高齢化で一気に人気が無くなった地域だっただろうか。周りには、既に潰れてしまったお店が散見される。

 

…と、周りを見ながら歩いていると、アマネちゃんが「着きました。」といいながら、建物のへと向かっていく。

ここは…ボーリング場、だろうか。店の塗装は剥げ、駐車場車は全く見当たらない。ここも潰れているのだろうか?

 

そのままアマネちゃんについて行くと、店の裏にある隙間にたどり着いた。人1人なら余裕で通れそうなその隙間の奥には、おそらくゲームコーナーだったのであろう、レーンが見当たらない空間が広がっていた。

 

アマネちゃんは迷わずその中へ入る。私も続いて中に入ると…そこには、オレカバトルの筐体が1台だけ置いてあった。

アマネちゃんは、いつもここでオレカバトルをやっているのだろうか、と思っていると、おもむろに彼女が誰かを呼ぶ。

 

「パンドラ」

 

すると、筐体の下の箱がひとりでに動き出した。

 

「お、よーアマネ。それと後ろに居ルのは…ダレだ?」

「彼女は私の…知り合い?友達? …そのあたり。それで今日は―」

「ちょ、ちょっと待って…?」

 

ただの筐体だと思っていた箱が喋りだした。どういうこと??

 

アマネちゃんはどうやら慣れているようだ。まあ、いつもここに来ているのなら確かに慣れるのも仕方ないかもしれない。

 

それで、結局なぜ箱が喋ってるのだ??

 

混乱して何も言えなくなった私に、アマネちゃんはゆっくりとその説明をし始めた。

 

オレカバトルというのは、所謂「オレカ界」という異世界から実際にモンスターを召喚して戦っているのだということ。

 

ゲームセンターにあるオレカバトルは、その戦いをあくまで再現したものであるが、本物のモンスターを召喚して戦う、「本物のオレカバトル」というものがあるということ。

 

…そして、彼女はその「本物のオレカバトル」をプレイし続けてモンスターたちを育ててきた、ということ。

 

あと、ついでに「本物のオレカバトル」にはお金がかからない、ということ。

 

つまり、お金が無いと言っていたアマネちゃんがオレカバトルのカードを沢山持っていたのは、この「本物のオレカバトル」とやらが所以だったらしい。

 

…と言われても正直理解出来ていなかったところ、アマネちゃんはそれを悟ったのか、「百聞は一見にしかず、かな」と言い、そのまま彼女のモンスターを召喚しだした。

先日私と対戦した時に使っていた聖天使ウリエルや魔剣士ダンテの他に、大きな堕天使―確かサリエルという名前だっただろうか―や泡魔道士ポワンをも召喚していく。

 

「こんな感じ。ここでなら紗月さんも自分のモンスターを召喚できる…と思う。」

「誰にでも召喚できるの? それならちょっとやってみようかな。」

 

レヴィアタンのカードをパンドラにかざすと、雄叫びをあげながら魔法陣からレヴィアタンが出てきた。ほんとに出てくるんだ…

 

レヴィアタンは軽く周囲を回ると、私の前に頭を近づけてきた。頭を撫でてみると、嬉しそうに目を閉じた。体は大きいのに動きはペットみたいでかわいい。

 

「随分と気に入られてるンだナ。」

「そうなの? これが普通じゃないんだ」

「人によっては、モンスターたちに嫌われてるような人もいるからね…」

 

そんな人も居るのか。嫌われるってどういう理由なんだろう。カードの扱いが雑、とかなんだろうか?

 

 

 

 

---

 

 

 

その後、私はアマネちゃんがいつもやっている戦いも見学させてもらう事にした。

 

今、彼女はウリエルとポワンとダンテを使って、ちょうど今日新しく公開された第2章の敵と戦っているらしい。

 

なぜかは分からない(大人の都合)が、本物のオレカバトルで現れるモンスターたちも、ゲームと同じく章に応じたキャラしか出てこないみたいだ。

 

私がバトルを見ていると、同じくバトルを見ていたアマネちゃんのサリエルさんが話しかけてきた。

 

「小娘。今主は貴様の住処で世話になっていると聞いたが、それは本当か?」

「えーと、そうですね。アマネちゃんは今うちで暮らしてますよ」

「そうか…」

 

そう言うと、少し考えるように黙りこんだサリエルさん。

どうしたのかと聞こうとすると、その前にサリエルさんが再び口を開く。

 

「…小娘。主については、どれほど知っている?」

 

「アマネちゃんについて…そこまでは知らないですね。親がいなくてお金がない、くらいです」

 

「貴様もそうか。…なあ、小娘」

 

「はい」

 

「貴様は…主について、何か、違和感を感じたことはあるか?」

 

違和感。

今回、私がアマネちゃんについて行くと決めた理由のひとつである。

しかし、サリエルさんも同様に感じているということは、その違和感は本物のオレカバトルとは別のものなのだろうか。

 

「違和感は…確かに感じます。私はオレカバトルが理由なのかと思ってましたが、その様子だとまだ別の話なんですか?」

 

「ああ。主のアレは、我が仕える前からのものだ。

初期から主に従っていた者にも聞いたが、その頃から、あのような雰囲気であったらしい。」

 

サリエルさんはそこで1度言葉を切ったが、再び話し出した。

 

「我は、以前、主の住処へ行ったことがある。あそこに居る天使による提案でな。その際に、違和感の正体を探ろうと住処にあるものを軽く物色したのだ」

 

「住処…というと、アマネちゃんが両親と住んでいた所、ってことですかね」

 

「ああ。だが、我々は―我が主、三上アマネに関する情報を何一つ確認することは出来なかった。

完全に、痕跡すら存在しなかったのだ。」

 

「というと…アマネちゃんは、その家に住んでいた訳ではない…と?」

「あくまでも可能性に過ぎないが、そうだ。

もしかすると…我が主は、我々と同じ存在なのかもしれん」

 

「! それって…アマネちゃんがモンスターだってことですか?」

 

「ああ、そうだ。最も、確証がある訳ではないがな。我々も手がかりを探してはいるが、特にこれといったものも見つかっていない。」

 

「そうですか…」

 

サリエルさんと話して、少し違和感の理由が見えた気がする。

彼女は、なんだか「()()()()()()()()」に生きているかのように見えることがあるのだ。

 

それはオレカ界なのか、それとも…全くの別世界なのか。

 

そのままサリエルさんと話し込んでいると、アマネちゃんがそろそろ切り上げようか、と話しているのが聞こえた。思ったより長く話していたようだ。

 

「有意義な時間だった。主のことをどうか頼む」

「こちらこそ、参考になりました。また機会があったらお話させてください」

 

最後にそうやり取りして、我々はアマネちゃんの所へと向かった。

 

結局、この外出を通じて違和感の正体を掴む…ということは叶わなかったが、手がかりを得ることはできた。

 

別に急ぐことでもないのだから、これからも、少しずつ理解していこう。

 

 

 






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