前回とは大まかな流れは変えていませんが、もう少し沖野Tの心情というか、そんな所を表面に出してみました。
トレセン学園の秋の感謝祭。
たくさんの出店が並び、多くの客が行き交い賑やかなその中を、一人のトレーナーが歩いていた。
「マジか……さっきのワサビがまだツーンと来る」
思い出すのは先ほどの事。
担当のウマ娘の一人に連れられたかと思うと、様々な焼きそばの試食という名の実験台となった。
最後にはワサビ焼きそばなどという合わない予感しかしないようなものも食べた。
そばが茶色でなく緑色だった。どうなってんだ?
「ゴルシのやつ……」と思わず呟かずにはいられない。
「にしても、今日は流石に人が多いな」
ワサビのせいで滲み出た涙を拭きながら辺りを見回すと、たくさんのウマ娘の姿と客の姿がある。
喧騒が耳に入るが、今は心地よく感じる。
だが辺りを見回していると、ふと群衆の合間を縫って移動している一人のウマ娘の姿が目に映った。
どこかシリウスシンボリや担当のウオッカを想起させるようなかっこよさがある。
その滲む鋭いオーラが気になり歩く姿を見失わないようにじっと見る。
すると、その歩く姿勢・歩き方に前のオグリキャップの大食い大会に付いて行った(行かされた)時の記憶がブワッと蘇った。
「……ん? あいつはこないだのウマ娘じゃねぇか?」
オグリキャップが絶対勝つと確信して周辺を散歩していた時に見つけた、ボックスを片手に走る帽子を被ったウマ娘のフォームに似ている節があるのだ。
そして、あの時に喉元まで来た感覚を思い出す。
誰かに似ていると思ったのだ。そう、確か……
「あ!まさかあいつか!」
もしそうなら、是非とも話さなければ。
その好奇心に駆られてそのトレーナーは飴を懐から取り出しながら、逃がすまいと走り出した。
◆ ◆ ◆ ◆
執事喫茶を出てから暫く、俺は屋台を見回っていた。
実にバラエティー豊富で、途中で占いをやっている屋台的な所もあった。
屋台で占いをやるというのは中々見ない。
他にもセグウェイを乗り回しながら焼きそばを売る葦毛のウマ娘もいたりなど、ウマ娘の方も実にユニークである。まぁ先ほどぶつかった鹿毛のウマ娘もそうだったが。
少し休憩しようと人混みを離れ、ベンチに座る。
「ふぅ、人の数が多いな……」
発狂する・癇癪する患者など割と日常茶飯事だったので慣れてはいるが、やはり疲れるものは疲れる。
ふと見ると近くに自販機があり、そこには缶紅茶が並んでいた。
飲み足りない、と思いそれを買おうと立ち上がった、その時だった。
「おい!ちょっといいか?」
振り返ると、割と必死な表情でこちらへと向かってくる一人の若い男の姿があった。
足音がどんどんと大きく聞こえる。
やがて男は俺の前まで来ると、膝に手をつきぜぇぜぇと息をする。
飴を口から取ったらどうだ?呼吸の邪魔だろ。
「何か用か?」
俺がそう聞くと、男は肩で息をしながらも顔を上げた。
その表情は必死ながらも、どこか見透かすような目だった。
そして、男が言い放った。
「なぁ、お前もしかしてデイスタンか?」
……マジか。
「!どうしてそうだと思う?」
驚く俺に、男は飴を咥えたままニヒルな笑みを浮かべた。
「そりゃ俺はこれでもトレーナーやってるからな。二回も見たら分かる」
二回……?
気になった俺は脳内の記憶フォルダーを探し回ると、飴を咥える男で思い出した。
「まさか、前の大食い大会のときの……?」
ちょっと前配達している時に観察するような視線を向けてきたやつだ。
俺は気にしてなかったが、あのときにはこの男の脳内に情報として保存されていたらしい。
男が肯定するように頷く。
「それで、悪いんだが一つ頼み事があるんだ」
「遠慮しておこう」
即答すると、男はそのあまりの早さに驚いていた。
そりゃ碌な事ではないだろうから即判断だろ。
「返事はえぇな。頼むからどうか頼まれてくれないか?」
「む……」
向こうに手札がある見越しての事か?
「本来言うべきじゃないんだが、あいつらをもっと鍛えてやりたいんだ。勝つために」
それに俺は胸打たれる。何て担当思いなんだ。うちのとは全然違う。
これに答えないという手はあるだろうか、と医者の俺がモンク並みに発狂している。
「……分かった。分かったから。何を手伝えばいいんだ?」
俺がそう言うと、男は良い笑顔を浮かべた。
非常に満足そうである。切り替えが早いな。
「お、助かるわ。じゃ、早速で悪いんだが感謝祭終わったら俺んところ来てくれ」
「俺はあくまで一般人だが?」
トレセン学園はそんな簡単に入れるものなのか?という疑問をぶつけると、男は思い出したように一人合点した。
「あーなら来た時ジャージを貸してやるから」
「わかった。まだ制服でないだけ妥協点だな」
俺の返事を聞くと、男は満足気に頷いてから背を向けた。
「俺は沖野ってもんだ。来た時それで呼んでくれ」
そう言い残すと、飴を咥えて去っていった。
……実に堂々としていて、図太いやつだった。
しかし、トレーナーとしてはきっと優秀なんだろう。
さんざん自称してるくせに実際優秀だった某マイトレーナーを見てきたから分かる。
「面倒なものに巻き込まれた予感がするが、まぁいいか……なるようになる」
俺も紅茶を忘れずに買い、もう暫く回ってから帰る為に校門へと向かった。
校門を潜ると、そこには不満げなオーラを纏った荒木の姿があった。
「あ!ようやく出てきたんか」
変わらずの茶色のサングラスをかけながら近寄ってくる。
「結局入れなかったのか?」
「そうやねん。いつもはこんな事なかったのにやで。とんだ災難やわ」
荒木が溜息を吐きながら肩を竦める。
警備今まで何やってたんだよ。屋台楽しんでたのか?
「まぁええわ。それで、どうやった?」
「色々あって楽しかったぞ、色々、な」
俺がそいうと、荒木は吹っ切れたのか、情緒がイカれたのか今度は笑い出した。
ついでに目まで細めている。
「クク……それならよかったわ。じゃ、今日は帰ろか。俺も途中までやけど面白いこといに会えたしな」
太陽の光に迎えられながら、俺達は帰途に就いた。
◆ ◆ ◆ ◆
後日。
スピカのメンバーはチームの部屋へと集められていた。
「んで、何であたし達は呼ばれたわけよ」
遅れてやってきたトレーナーこと沖野に葦毛の長身ウマ娘がズイと寄る。
沖野は飴を咥えながら「まぁまぁ落ち着けって」と宥める。
一方で、部屋にいるもう一人の栗毛のツインテールのウマ娘が声を上げる。
「珍しいわね、こんな時に全員呼びだすなんて」
それに、近くに立つ鹿毛短髪のウマ娘が同調するように言う。
「俺はトレーニングしたいんだけどな……」
しかし、各々がそう言う中でも、沖野は余裕の笑みを崩さない。
「まてまて、説明する」
担当ウマ娘である一同の視線が沖野へと集まる。
「今回俺はお前らのために助っ人を用意した」
「助っ人?東条トレーナとかか?」
葦毛のウマ娘がそう聞くが、沖野は苦笑しながら首を振る。
「いや違う。じゃ、入ってきてくれー!」
入口の方へそう呼びかけると、質素な扉がガチャリと開いた。
そこから一人のウマ娘が姿を現した。
「ん?あ!前の感謝祭の時の……!」
鹿毛のウマ娘が目を見開き驚く。
それもそのはず、そのウマ娘は感謝祭の時にぶつかった栗毛のウマ娘だったのである。
だが他のメンバーは分からない。
沖野は飴をカロリと舐めてから、元気よく切り出した。
「ということで、今回の助っ人のデイスタンだ!仲良くしろよ」
「よろしく頼む」
部屋がシン、と静まり返る。
「はあ?デイスタンってフランスのウマ娘だろ?それに第一髪の色が違うじゃねぇか!」
葦毛のウマ娘が勢いよく突っ込むと、栗毛と鹿毛のウマ娘もそうだそうだと声を上げる。
だが……
「ああ、髪の毛はただのカツラだ」
栗毛のカツラをバサリと取ると、その瞬間漆黒の髪が露になる。
沖野が笑みを浮かべる一方で、他は目を見開いた。
「「は?!はぁー?!」」
その声はよく響いたとか。
ニヒルな笑みって細かく考えると分かりにくい笑みですよね。
自分はいつもエヴァの加持さんの笑みをそうだと思ってます。
最近似た口調でしゃべりはる某ドブカスさんが台頭し、荒木にダメージがぁ。
フランスちゃんが聖蹄祭最初に出会っちゃうトレーナーは、、
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沖野T←作者推し
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南坂T
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東条T
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(北原T)
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オリ主のT
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あったけぇ〜 !
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任せる。
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ケ?