ダビスタってまだやってる人けっこういたりするんですかね?
配達中に祭りらしきものを見た。
――――――全然小規模じゃなくね?
アナウンスの声を聞くと、なんとオグリキャップが出ているらしい。
葦毛の怪物、オグリキャップ。
イナリワンとスーパークリークに並び、平成三強(永世三強)の一角を担う。
葦毛伝説を体現した存在だった。
前世が競バ初心者人間の俺でも普通に知っている。
幼い頃親がよくオグリィィxxxx!!と叫んでいたのを覚えている。
親も医者だったのだが、医者としてその狂乱ぶりはどうなんだ。
というか、おっさんオグリキャップが出てること知らないんじゃないか。
知っていたら絶対行ってる。
そして、会場近くを走る途中で何か強烈な視線を感じた。
横目でチラリと見たら、飴玉を咥えたイケメンが此方をジッと見ていた。
なんか、俺の走りを観察してなかったか?
……凄く悪寒がする。うん、触らぬ神に祟りなし。クワバラクワバラ。
ともかく帰ったら知らせてやろうと思いながら、最初の配達先の家の扉をノックする。
「お届け物のノンキチラーメン激辛でーす」
やがて髪がボサボサの住人が出てきて、ボックスからまだ温かいラーメンを取り出し渡す。
「態々ありがとうございます」
「いえ、お気になさらず。仕事ですので。では」
俺は再び来た道を走る。
走る途中で、自身の知らせたい欲が急かして思わず速度が出かかったことは言うまでもない。
■ ■
再び店の暖簾を潜る。
すぐさまスープと麵のいい香りが鼻を掠めた。
「帰ったか」
「ああ。それで、例の祭りの近くを通りかかったんだが」
「? 祭りがどうかしたのか」
おっさんがタオルを巻き直しながら厨房から姿を現した。
「オグリキャップが出ていたぞ」
俺がそう言ってやると、おっさんの目がだんだんと見開かれていった。
「――ッ!それをもっと早く言え!!」
おっさんが大慌てで片づけをし、上着を着る。
「注文は今日の分は全部完成してる!やっといてくれ!」
「了解した。楽しんでくるといい」
「頼んだ!!」
帽子を脱ぎ椅子に座っている間に、おっさんは必至の形相で店を飛び出していった。
……あの表情中々面白かったな。
ニヤつきながら次の配達先の書かれている紙を見ている時だった。
「――――――ッッ!!」
ウマ娘の便利耳が悲鳴を聞き取った。
「ん?なんだ?」
聞く限りではそこまで距離がない。何ならすぐ近くだ。
俺はボックスを置き、軽く走って向かってみる。
走っている途中、俺は何か嫌な予感がした。
――――――おっさんじゃないだろうな?声似てたぞ?
悲鳴の発信源に着くと、なんというか、案の定おっさんだった。
脚を抑えて蹲っている。
「どうしたんだ?」
駆け寄ると、おっさんは視線を上げて此方を見た。
汗が額に溜まっている。
「いやなぁ……気づいたら転んで骨折れちまったみてぇだ」
……何やってんだよ。
「……せっかちだな。少し見せてみろ」
おっさんに許可を貰い、疾患部を見させてもらう。
なるほど確かに足があらぬ方向に向かっている。
というか複雑骨折じゃん。
あらすじを聞いてみると、必死で走っていたら石で滑って角にぶつけ、思わず仰け反ったところ傍の石階段を転がり落ちたらしい。見事なピタゴラスイッチだ。
「……よくこれだけのケガで済んだな」
本来もっとヒドいケガになるはずなのだが、なんと複雑骨折だけ。
複雑骨折も十分重症なのだが、石の階段から落ちてそれだけって……
「丈夫だけが取り柄なもんでなぁ」
ハハ、とおっさんが苦笑する。複雑骨折の痛みはどしたんよ……。
「ラーメンも忘れるな。それよりも、複雑骨折なら今すぐに病院だ。先に固定しておく」
俺は腰に付けているポーチから固定用の包帯を取り出す。前世からこういうセットは身に着けている。
着ているジャージは機能性重視しただけあって使いやすいな。流石俺。
「……随分慣れてんな」
「……昔医療の勉強をしたことがある」
まさか前世医者でした、なんていう俺はどこにもいないだろう。
「凱旋門賞とって、日本語を喋れて更には医療もか……相変わらずとんでもねぇな」
日本語喋れるのは前世日本人だからだとは言えない。フランス語は発音にガチ苦労したぞ。
「コツコツの努力の成果だ。固定が終わったぞ。病院までは私が運ぼう」
俺が背負うぞポーズをすると、おっさんは苦笑した。
いや、救急車呼ぶよりよっぽど早いだろ。複雑骨折は感染症リスクもあるんだぞ?
RICEを知らんのかRICEを。
「いや、俺結構重いぜ?」
「そんな程度気にしなくていい。昔もっとも重いものを担いで走っていた……あれは地獄だったからな」
おっさんよ、早く運ばないと痛みが増すぞ?
ジーっと見てやると、おっさんは観念したように軽い溜息を吐いた。
本当に痛み感じてるんか?普通に会話できるんだが。
「分かった分かった。じゃああの病院まで頼む」
「了解した。あそこならそう遠くはないな」
屈み、おっさんを背負う。
感じるズンとした重み。だが、ウマ娘ボディには軽いのなんの。おっさんレベルでガタイが良くても背負えるな。
「じゃあ行くぞ」
「……ありがとさん、イテテ」
俺が背負ったまま歩き出す。
ダンダンと重量のある足音が鳴った。
ノーマルな体型の俺がガタイの良い渋顔おっさんを背負っている様はさぞシュールだろう。
ウマ娘恐るべしだな
そう思っていると、おっさんが痛みの汗を拭いながら問いかけてきた。
「そういや配達はどうした?」
「帰り次第すぐにやっておこう。明日からはどうする?」
「暫くは無理だな。休業だ……何だかんだ歩かにゃならんからな。客には申し訳ないが」
おっさんが少し悲し気な表情をする。
「そうか……」
明日からは暫く休業か……。
――――――ん、待て。
その間俺は何で路銀稼ぎすればいいんだ??
おっさんを運ぶ傍ら、俺は将来に対する不安に苛まれた。
次回やっとこそウマ娘感が出始める。
お楽しみに
RICEです。”ライス”に見えた方は早めの診断を受けましょう(作者は見えてしまった( ゚Д゚))
※RICEでした、ICEでなく。この頃ね、記憶が怪しくなってきたんですよ……
やっぱり掲示板は要る、よね?
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うん
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いや
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え?
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既に掲示板にいる
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パクパクですわ!!!!