助けて前世、逃亡を   作:おおは

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スピスピ☆ したところおっさんが最初になりました。

Let's repeat after me. "ゴルシンゴルシンゴルシンシーン!!”


書きたい話を書きたいように書く私であった


ネクタイは頭に短し首に長し

「じゃあまた会おう大将」

 

そう言って俺に挨拶しながら、バイト―――デイスタンは病室から出ていった。

 

残った荒木が、俺に視線を向けてくる。

 

「えらい日本語上手いやないか、あいつ」

 

「そうだな。俺があいつと会った時からそうだったわ」

 

俺は昔へ思いを馳せる。それはあいつと出会った(なし崩し的に)時のこと。

 

あのころから随分日本語が上手だった。途中からフランス出身であることを忘れかけるくらいには。

 

「へぇー。そりゃ凄いわ」

 

荒ちゃんが感心したように頷く。同時に目を見えているのか怪しいほどに細める。

 

「ま、あいつはまだ青春真っ只中だからな。楽しんでもらいたいしな」

 

「おお、流石は青春時代数多くの学校をシマにしただけはある物言いやんか」

 

「おいそのことは言うな。やめろ」

 

俺が睨むと荒木は不敵な笑みを浮かべながら肩を竦めてみせた。

 

「ま、案内の件は任せとき。ばっちりやっとくわ」

 

「おう頼むわ」

 

「じゃあ俺は用事があるからおいとまするわ。じゃ」

 

そう言い残し、荒ちゃんも病室を後にした。

 

すぐに静かになるベッド周り。

 

この部屋は今過疎っているせいで俺以外誰もいない。

 

俺はベッドに横になり、天井を見る。

 

そして、昔へと思いを馳せた。

 

 

■     ■

 

 

「ありがとうござっした」

 

俺は客に軽くお辞儀をし、配達の帰途に着く。

 

外は既に深夜で、静寂と不安定な気温が俺の肌を刺す。

 

ほとんどの家からは既に光が消えている。

 

街灯だけが己を主張するように輝いていた。

 

「随分遅くなっちまったなぁ……」

 

俺は目を擦りながら、のそりのそりと道を歩く。

 

すると、ふと視界に映ったものがあった。

 

「ん?……―――――人か?」

 

視力が落ちだした目でよく見ると、街灯脇に人のような影が倒れていた。

 

うわぁ、ヤバい系か?と思いながらもそれが怖くない俺はドシドシとそれに近寄る。

 

「やっぱり人―――――いや、ウマ娘か」

 

屈んで見ると、人間だと思っていたが、特徴的な耳と尻尾からウマ娘だと分かった。

 

下向きに倒れているせいで、顔は伺えない。

 

俺は彼女を揺すり声を掛ける。

 

「おーいあんちゃん、おーい、大丈夫かー?」

 

少しの間揺すると彼女が目を覚ましたようで、顔を上げると同時に俺と目が合った。

 

漆黒の、全てを吸収するのかと思えるほどだった。

 

「Hmm... hmm ? ...Et vous ?」

 

「ん?何だって」

 

知らない言語を呟くので、恐らく外国のウマ娘―――発音の感じからヨーロッパだろう。

 

数舜の後、彼女がしまった、というような表情をした。

 

「Oups……すまない、……君は?」

 

「何だ日本語喋れんのかい。俺は暢気地っていうもんだ。お前、大丈夫か?倒れてたが」

 

彼女がゆっくりと上半身を起こす。

 

まだ意識がはっきりしたいないのか、ボーっとしている様子だ。

 

「……あぁまぁ大丈夫だ。今少し金欠のせいで泊まるとこがなくてな。私を雇ってくれるところがないんだ」

 

「金欠って、そりゃ難儀だな」

 

「ああ、全くだ。まるで酔った時に財布を盗まれたような気分だ」

 

酔った時って、飲んだことないだろうに何言ってんだか。

 

やがて彼女は意識がはっきりしてきたようで、立ち上がった。

 

漆黒の髪が深夜の風に揺れる。何となく王者の圧力を感じた。

 

「起こしてくれて感謝する。それでは」

 

そう言ってさっさと去ろうと踵を返す彼女。

 

「おいちょっと待て」

 

「……どうかしたのか?」

 

彼女が振り返ってキョトンとした様子で俺を見る。

 

「当てあんのか、あんちゃん」

 

俺が真剣な表情で問いかけると、彼女は俺から目線を外し空を見上げる。

 

「ないな」

 

「……それ大丈夫なのか?」

 

「さぁ? 大丈夫じゃないか?」

 

彼女が肩を竦める。

 

何が大丈夫なんだ。

 

「さぁって……なら、俺ん所でバイトしねぇか?」

 

「バイト……?」

 

首を傾げて俺を見る。その視線は無意識なのか、俺に威圧のようなものが掛かっている。

 

―――――このウマ娘、面白いな。

 

思わず口端が少し上がったのを感じた。昔の癖というのは変わらないらしい。今はもう違うが。

 

「あぁそうだ。丁度人手が欲しいと思ってたんだ」

 

「……そうか、ならお言葉に甘えよう」

 

かなりフォーマルな物言いで彼女が軽くお辞儀をする。

 

本当に日本語が上手いらしい。

 

「よく知ってんなそんな言葉。ま、取り敢えず今日は俺ん家泊まってけ」

 

「ありがとう。優しいな、君」

 

彼女がフッと微笑む。随分様になってるな。

 

「カタギには優しくがモットーだからだ」

 

「カタギ……」

 

「ま、そんなことは置いといて、あんちゃんの名前聞いてなかったな」

 

俺がそう言うと、彼女は何故かピクリと耳を動かしていたが、やがて答えてくれた。

 

「……ここはちゃんと自己紹介しておこう。―――――私の名前はデイスタンだ。よろしく頼む」

 

デイスタン……なんかどっかで聞いたことがあるような気がするがなぁ……

 

―――――今は気にしている暇はないか。早く帰って寝てぇ。

 

「あぁよろしくな」

 

そう言って俺は彼女―――デイスタンと帰途を共にした。

 

歩く姿にも、どこか威厳がある。まるで有名ウマ娘と会った時のような。

 

やがて着いた俺の家(小さな一軒家)でデイスタンに部屋を貸して客用ベッドを用意し、お休み、と挨拶をして俺は眠りについた。

 

 

■     ■

 

 

「あいつが来てから早2週間か……」

 

今思えば何故あの時デイスタンという名前でピンと来なかったのか不思議だ。

 

次の日の朝未だ寝ているらしいデイスタンを起こさないよう静かに階段を降り、俺は居間で新聞を広げた。

 

その見出しに載っていた写真、それはまさしく昨日お休みを言った相手だった。

 

当初俺は我が目を疑っていた。

 

だがやがて降りてきた昨日のダサい服装のままのデイスタンを見て俺は確信することとなった。

 

―――――おいおい、そりゃ”私を雇ってくれる”以前の話だろ。

 

その後問い詰めて言うには、”フランスから高飛びしてきた”らしい。

 

……まさかなぁ。未だ実感が湧かない、というか慣れてしまったのだろう。

 

フランスの超有名ウマ娘。

 

凱旋門を3連覇するという快挙を成し遂げ、その後海外でも躍進するウマ娘。

 

最近日本でもどんどんと知名度が上がってきている。

 

兎に角、少しの間だが交流を共にして、色々なことを知れた。

 

「まだまだあいつは青春時代だからな。楽しんでもらいてぇ」

 

 

匿ってる?知らねぇなそんなの。俺はやりたいようにやる主義だ。

 

この先カオスになろうとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公抜けてるね、という方。
→一度死んでるからゆるゆるに達観視できるんです。そうです、そうに違いない(言い訳)


〇面接時は勿論カツラセットです。

他者視点順番~(最後は我らがカイチョー)

  • おっさん→ミズホ
  • ミズホ→おっさん
  • レッツルーレット!
  • スピスピ☆(?)
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