切島と心操の戦いが終わり、一回戦最後の戦いが始まろうとしていた。
「おい、丸顔。」
「なに?爆豪君。」
「…死ぬ気でこい。」
「爆豪君こそ。」
『無重力を操るA組麗日!対するはA組一の問題児!A組爆豪!』
「あァ!誰が問題児だぁ!」
(そういうところじゃないかな爆豪君…)
「用意!はじめ!」
スタートと同時に麗日は接近する。
前の試合の切島を思わせるほどの勢いだが麗日には切島ほどの硬さはない。
爆豪の爆破で全く近づかせてもらえない。
「お茶子ちゃんー!頑張れ〜!」
蛙吹の声が舞台に響きわたる…が。
「死ねェェ!」
「きゃっ!」
麗日は近づけない。
近づいてもすぐ吹き飛ばされてしまう。
「っ。まだまだ!」
「無駄だぁ!」
「くっ。まだぁ!」
「無駄っつってんだろ!」
爆破され続けた事で麗日の怪我が目立ち始める。
「負けたくないんや!」
「うるせえ丸顔ォ!…なっ?!」
麗日は体操服の上着をデコイにし、また接近を試みる。
だが、持ち前の動体視力で爆豪はそれをさばいてみせる。
麗日は肩で息をするようになったがそれでも懸命に動き回る。
「お茶子ちゃん…」
「このままじゃまずいぜ…」
それでも馬鹿の一つ覚えのように接近を試みる麗日、
そしてそれを爆破し続ける爆豪に対して心無い言葉が突き刺さる。
「はやく場外に出してやれよー!可哀想だろー!」
「そんなふうに同級生いじめて楽しいのかよー!」
「近づこうとする麗日も悪いよな…」
「爆豪もあんな事しても人気出ないの分かるだろ…」
「あんな風に女の子いじめなくてもいいだろ…」
ブーイングの嵐は止まない。
それは当たり前の事だ。人は褒めるより貶す方が得意なのだから。
『俺もそう思うぜ…』
『山田。今のは聞かなかった事にする。』
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<治崎視点>
これが…今のヒーローの現状なのか…?
こんなのが…ヒーローなのか?
理解していたつもりだった。だが…これは…
俺1人が内側から分解し、修復しても…これは治るのか?
ヒーローとは金や地位、名声を欲さず、人を助けるために他の全てを捨てられるような…
そんな人間が名乗る事を許される名誉の称号ではないのか?
これを治すには…もしかして内側からでは………
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貶す方が得意、それは確かにそうだ。だが。
そうでない人間も…誰かのブーイングから守る人間もいる。
『おい。今遊んでるっつたのプロか?何年目だ?
シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ 。帰って転職サイトでも見てろ。
ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろう。
本気で勝とうとしてるからこそ手加減も油断も出来ねえんだろが。』
一斉にヒーローは黙った。
だが…それでも小さな声で自分は間違っていない。そう呟くヒーローもいた。
「八百万、マイク作れ。今すぐ。」
「えぇ?!でも……分かりましたわ。」
「ありがとう。」
『おい!!今の言葉を聞いて納得していないやつは俺の元に来い!
2度とこんな事言えないよう分解してやる!職業ヒーローなんていらねぇんだよ!
早く来いよ『やめろ治崎。』
『……』
『それ以上はお前のためにならん。…失礼。うちの生徒が。』
「…解除。」
「っな?!」
爆豪、麗日の戦いに決着がつこうとしていた。
麗日は爆豪の爆破によって生み出された瓦礫を浮かせ空に留めていたのだ。
それが
堕ちる!
「これで…どうだ…!」
「あァァァァ!」
麗日は全力を尽くして勝とうとした。
だが、勝利の女神は微笑む者を選ばない。
爆豪の一度の爆破によって空の瓦礫は粉々に崩れた。
一瞬、麗日は呆然としてしまったが、
まだ動ける。そう必死に自分の体に言い聞かせ戦おうとした。
それに爆豪は応えるように笑みを浮かべる。しかし。
麗日の体はすでに限界だった。
「ま…だ。」
「こいや!麗日ァ!…って。え?」
「爆豪君の勝利!早く麗日さんをリカバリーガールの元へ!」
麗日は進もうとするが、動けず倒れてしまった。
麗日を運ぼうとする救護部隊を引き止め、
爆豪はこれだけ、と一つ麗日に問いかけた。
「あれはデクの策か?」
「……ううん。私の…策やで。」
「そうか。」
「爆豪君!もう!」
「すんません。麗日をよろしくお願い…します。」
麗日は初めて名前呼ばれたな、と思いながら意識を手放した。
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<治崎視点>
「麗日さんは大丈夫なのでしょうか…」
「てかおい治崎!漢らしかったぜ!言葉は悪かったけどな!」
「……」
「治崎?」
「……あぁ、ありがとう。」
どうすれば…いいんだろうなぁ…