英雄症候群に治す治崎君っ!   作:シュガーマン

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職場体験編
はじめてのおわかれ


体育祭が終わり、俺達のクラスは日常を取り戻していた。

いや、取り戻していないやつもいるか…

体育祭が終わった時に俺は寝ていたから知らなかったが、飯田はあの日早退していたらしい。

なんでも、お兄ちゃんのインゲニウムが『ヒーロー殺し』とか呼ばれてる敵に襲われ、緊急搬送されたそうだ。

胸を刺されて…現在危篤のようだ。

それを今朝常闇から聞いた。

飯田は大丈夫、と言い張っているが明らかに覇気がない。

A組の教室もどこかどんよりしている。

 

「なぁ、治崎。お前なら治してやれるんじゃないか?」

 

誰かが俺に向かってそう言った。…あ、そうじゃないか。

 

「そ、そうだ治崎君!君の個性なら治せるじゃないか!頼む一生のお願いだ。

俺の兄を治してくれ…!ヒーローインゲニウムは…迷子の子の手をとってあげる優しいヒーローなんだ…!

こんな事で引退していいわけがない…!」

 

飯田がこっちを見て早口で捲し立ててきた。そんなに焦らなくても

 

「もちろんだ、飯田。善は急げだ。今から行くぞ。」

 

助けるに決まってるだろ。

 

教室中に歓声が起こる。

 

「治崎君…治崎君ッ!ありがとう…!」

 

「おいおい待てお前ら。」

 

相澤先生が寝袋を着たまま教室に入ってきた。

おい教師それでいいのか。

 

「行くにしても個性の使用許可を先に取らなきゃならん。

今すぐは無理だ。」

「相澤先生、俺があんたを前に治した時は事後でしてくれただろ。

今回もそれで「ダメだ。」

 

…なぜだ?

 

「センセーいーじゃん!命がかかってるんだよ?!」

 

「あの時は治すという事を知る前に勝手に治していたからな。

だが、プロヒーローの俺の前で勝手に個性を使おうとしてる奴がいるんだ。

しかも医療系個性は手違いで人を殺してしまう事すらありうる。

それは1人のプロヒーローとして止めなきゃならん。」

 

…今回は相澤先生が正しいな。

 

「し、しかし!それじゃあ僕の兄は…!」

「話は最後まで聞け。俺が放課後までに個性使用許可を取っておく。

それまでは、病院を信用して待ってくれ。」

 

「分かり…ました。」

 

 

 

正しいのと納得できるのとは…別問題だ。…クソッ

_______________________

 

放課後になり、俺と飯田はインゲニウムのいる病院に向かっていた。

どうやら相澤先生は相当無理をして個性使用許可を取ってくれたようだ。

調べてみると本来なら医療系個性の場合、即日の許可は出せないと書いてあった。

あのツンデレ教師が…!

 

バスを乗り継ぎ病院の前についた。

 

「治崎君!走ろう!」

「ッ!あぁ!」

 

飯田の携帯が鳴り出したがそれも無視して受付まで走る。

そして受付で事情を話した。するとすぐに部屋に案内してもらえた。

 

どうやら今集中治療室にいるようだ。

 

部屋の前に飯田の両親らしき2人が立っていた。

 

「父さん!母さん!兄さんは?!」

 

事情を話す暇すらもどかしい!2人をおしのけて入ろうとした時、

 

 

 

「天晴は…天晴はぁ…!!死んだのよぉぉ…!」

 

 

時が止まった。そう錯覚させるほどの寒気がした。

 

 

「…えぇ…????」

 

いつも気の張った声を出す飯田の声と、それは似ても似つかなくて。

心の中に何かが蟠るのを感じた。いや、でも!

 

「飯田!死んですぐならまだ治せる!」

「ち、ぢざぎぐん!頼むッ!」

 

涙で眼鏡を曇らせた飯田が俺に叫ぶ。

 

飯田の両親を今度こそおしのけ、部屋のドアを開ける。

 

「な、なんだ君は!」

「どけ!」

 

医者をもおしのけ俺は飯田の兄の肩に手を触れ、全身を治した。

 

少し遅れて飯田も治療室に入ってきて兄さん戻ってきてくれ!と叫ぶ。

だが。

返ってきたのは沈黙だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐふッ」

 

 

「兄さんッ!」

 

驚かしやがって!飯田の兄はしばらくして目を開けた。

これで安心して

 

「俺は……もう…長、くない。」

「……え゛???でも体は治って…?」

 

「そうよ天晴!なんでッ?!」

 

「そうだ、俺が完璧に治したはずだ!」

 

なぜだ?!完全に治したはずじゃ…?!

 

 

「なんか…自分で分かるんだ。体はなにも痛くないけどさ…生きてる間ずっと灯ってた火が揺らいで…

どんどん弱くなっていくのを感じるんだ…今は…残り火…みたいな?」

 

「兄さん!弱気になんてなるなよ兄さんらしくない…!!」

 

「どんどん…火が…小さくなっていく…けどさ。よかったよ。最後にお前と話、せて。

立派なヒーローになれよ、天哉。」

 

こんなの…認められるかッ!

 

俺はもう一度飯田兄の体に触れて治した。だが…

 

もう奇跡は起きなかった。






今年最後の投稿になります。皆さん良いお年を〜
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