英雄症候群に治す治崎君っ!   作:シュガーマン

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明日受験の結果発表です……落ちたらショックと勉強のせいで投稿出来なくなるかもなんで今日投稿しときます。
ターニングポイント 2
どうぞ。


ターニングポイント 2

プロヒーロー「ネイティブ」、飯田、緑谷、轟、そして治崎。

狭い路地の中、5人はそれぞれの視点でヒーロー殺しを見つめていた。

 

「緑谷!もうすぐプロヒーローがこの場に現着する!それまで耐えるぞ!」

 

呼んでくれて助かった。轟、ファインプレーだ。

 

 

 

「ハァ今夜はヒーローの卵によく出会う。貴様は…どっちだ?」

 

「っ!どういう意味だ?!」

 

俺は廃ビルの上で身を屈めてヒーロー殺しを覗き見る。

こいつが…ヒーロー殺し…!

両手と顔に赤と鼠色の包帯を巻いて、背に刀のようなものを差している。

目元を包帯で隠しているせいで顔をはっきりは見れないが……目力だけで人が殺せそうだ。

血走った目で、今も轟を睨みつけている。

 

「本物かどうか、という意味だ。」

 

ステインは慣れた口調で話し始めた。

 

「今のヒーローは、金、名声。そんな打算に満ちている。本物のヒーローとは、ハァ。

誰かを助けないと生きていけないような自己犠牲の精神を持ち合わせ!

そして家族や恋人を作らず、ただ名も知らぬ一般人を助け続ける存在でなければいけない!」

 

………

 

「また、その自己犠牲の精神に耐えうる強固な肉体も持ち合わせなければならない!

オールマイト!オールマイトだけだ!彼だけが…彼だけが英雄(ヒーロー)と呼ぶに相応しい!」

 

「口先だけの人間はいくらでもいるが…このガキのようなら行動に起こせる者は少ない。」

 

ヒーロー(英雄)とは、英雄(ヒーロー)でなくてはならない!」

 

 

 

…………英雄………………ちっ。クソ。

この言葉は、俺の心の欠けた部分にストンと嵌り込んだ。

綺麗に嵌り込んだ。

ぴったり嵌まり込んだ。

 

 

もう…嵌まり込んだそれを抜き出す事は、

 

 

 

「ヒーローの卵…貴様はどっちだ。」

 

「はぁぁぁあぁぁ!」

 

轟が氷を滑り台のように出してプロヒーローと倒れている飯田、緑谷を回収する。

炎で牽制しながら。炎を使う事に一切の躊躇がない。エンデヴァーさまさまだ。

 

しかしどうして緑谷と飯田は倒れたままなんだ?傷は少ないし、動けそうだが。さっきまで緑谷も動き回っていたのに…

こいつの個性か?

俺の個性なら治せるかもしれん…いや、奇襲の機会を失うのは痛い。まだステイだな。

 

「こいつらは殺させねぇぞ。ヒーロー殺し。」

 

「緑頭のガキは殺さんがな。」

 

緑谷はヒーロー殺しのお眼鏡にかなったのか。嬉しくはないだろうが。

 

「轟君!こいつに血を見せちゃダメだ!多分血の経口摂取で相手の自由を奪う個性だ。」

 

「俺の個性なら近づかせずに…っ!」

 

速い!ステインは轟が炎を出そうとした瞬間ナイフと刀を投擲した。

刀は遅れて刺さるように上に投げている。これは轟目線じゃ見えないだろう。

これは…奇襲どうこう言ってる場合じゃない!

 

俺は廃ビルの柵を掴み飛び降り…ようとした。

 

「ぐっ!」

 

見えていたのか!ステインは俺の方に向かってもナイフを投げていた。

透明なのかってくらいナイフが見えなかった!こいつ…暗闇での戦闘のエキスパートだな。

柵を掴んでいた手にナイフが突き刺さり、そのまま柵を貫通する。これじゃ手を離せない!

俺は飛び降りる事ができず、宙ぶらりんになってしまう。全体重が手にかかって痛い、なんて言ってる場合じゃないな。

 

「「治崎君っ?!」」

 

緑谷と飯田がこちらを見て驚いている。そうか、こいつらは俺がここにいる事知らないもんな。

 

轟はナイフによって頬を切られ、それに動揺した瞬間一気に距離を詰められた。

新たなナイフでステインは斬りかかったが、それは氷で防御する、だが。

 

「轟!上に刀が!」

 

「ちっ!」

 

轟は刀に対応しようとして手を上に向けた。

……しまった!

 

「っあぶねぇ!」

 

ステインは刀を陽動に使い、轟の頬に垂れる血を舐めようとしていた。

それはすんでのところで炎によって防御される。

 

俺が声をかける事まで計算されていたのか…?

こいつ、戦い慣れしている。

 

再び斬りかかろうとするステインに向かって俺が釘付けにされている廃ビルから横に棘を伸ばして牽制する。

 

「ほう。」

 

これもかわされるか…ステインはバックステップを使って回避した。

 

今のうちに手を分解、修復してナイフを抜き取り、下に着地しておく。

 

「ここからは、2人だ。」

「また治崎と敵退治か。」

「またとはなんだ。」

「いい意味だ。」

「悪い意味にしか聞こえなかったが。」

 

軽口の応酬を終わりとばかりに俺達はステインに向かい合った。

 

「待て!待ってくれ2人とも!緑谷も聞いてくれ。」

 

 

ステインを睨みつけている緑谷にも飯田は声をかけた。

 

「なんだ飯田。」

 

「なぜだ…なぜ君たちが…やめてくれよ…!俺は兄さんの名を継いだんだ…!

そいつは…インゲニウムが…僕がやらなきゃ…!」

 

飯田の声の途中でステインはまた俺達に斬りかかってきた。

それを氷の壁で受け止めながら轟は話した。

 

「変だな。俺が見たインゲニウムはそんな顔していなかったけどな。お前ん家も裏では色々あるのか。」

 

「っ!…待ってくれよ!」

 

「うるさいぞ飯田。」

 

俺はまだ話そうとする飯田の声を遮るように大きな声を出した。

 

「たかが家族が死んだくらいで何を言ってる。」

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

空気が凍っていくのを感じる。

 

氷の壁を壊し終えたステインは斬りかかるのをやめ、立ち止まった。

 

「ほう。面白い。続けろ。」

 

ステインにも聞こえていたか。まぁそりゃ聞こえるよな。

 

「人は誰でも死ぬ。遅いか早いかの違いだ。たかが家族が死んだくらいでヒーローがショックを受けてどうするんだ。」

 

「な、何を言ってるんだ…何を言ってるんだッ!」

 

「俺は親に捨てられた。だからこう考えるだけかもな。だが、これが俺の考えだ。1人の死をいつまでも引きずるなよ。」

 

「君は…君は兄さんの死に立ち会っただろう!それなのに…何も思わないって言うのか!」

 

「その時は悲しかったさ。今は切り替えている。

お前みたいにこうやって人を助ける時に気にして、さらには仲間を危機に追い込むのは嫌だからな。」

 

「たかが…家族?……俺には…君が理解出来ない…!」

 

あぁ緑谷、轟。お前達までそんな青ざめた顔をしないでくれ。轟は分かってくれると思ったんだがな。

飯田が立ち上がった。いつのまにか緑谷も構えている。

話している間に個性の効果時間が切れたのか。

 

「面白い話だ。『たかが家族』……お前はネジが外れている。」

 

「ヒーロー殺しにそういってもらえるとは。」

 

「お前は英雄の素質がある。」

 

「ワンフォーオールフルカウル!デトロイトスマッシュ!!!」

 

ナイスパンチ。

 

緑谷のデトロイトスマッシュで、ヒーロー殺しとの二回戦が幕を開けた。

 

_______________________

 

二回戦が幕を開けた。だが。

 

誰かを助けないと生きていけないような自己犠牲の精神を持ち合わせ!

 

オールマイト!オールマイトだけだ!彼だけが…彼だけが英雄(ヒーロー)と呼ぶに相応しい!

 

ヒーロー(英雄)とは、英雄(ヒーロー)でなくてはならない!』

 

ヒーロー殺しの声が、言葉が。

俺の心に嵌り込んで抜けそうにない。

 








一応補足

治崎君の中で自分を助けてくれた「親父」は家族ではなくあくまでヤクザとしての親父と認識してます。
本物の父親の記憶がない+特殊な環境のせいで仕方ないんですけどね。
あ、親父目線では治崎は愛息子です。
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