英雄症候群に治す治崎君っ!   作:シュガーマン

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これで職場体験編は終了です。


ヒーロー殺し、その顛末。

俺に妹ができた。

 

その事実を噛み締める前に俺はヒーロー殺しとの戦いな事情聴取に病院に呼ばれた。

場所が病院なのは緑谷達が全員入院しているからだ。俺が治せば一日もかからんのだが……

 

そういえば、リカバリーガール曰くヒーロー免許とは別に医療ヒーロー免許を取得すれば現場での医療行為が許されるらしい。

実はヒーロー殺しとの戦いで"凝血"の個性を解除する際に修復したのも犯罪に当たるそうだ。

……個性無断使用+医療行為でもう立派な犯罪者になってしまった。

 

「この部屋か。」

 

ノックをして3人のいる病室に入ると、犬の顔をした警察っぽい人とエンデヴァーやマニュアル、おじいちゃんのグラントリノといった俺達の体験先のヒーローが来ていた。

 

後に聞いた話によると犬の顔をした人は面構さんと言って警察署長をしているそうだ。

 

「来たか治崎君。それじゃあ話を始めるよ。」

 

「……はい。」

 

俺は緑谷のベッドに腰掛けて話を聞く姿勢を取る。

 

「ステインは、現在も逃走中だワン。」

 

「ッ!……」

 

飯田が手を震わせている。

 

「雄英生徒ならわかっているとは思うが、超常黎明期、警察は統率と規格を重要視し個性を武に用いないこととしたワン。そしてヒーローとは、その穴を埋める形に台頭してきた職業だワン。個人の武力行使、容易に人を殺められる力。本来なら糾弾されてしかるべきこれらが公に認められているのは、先人たちがモラルやルールをしっかり順守してきたからなんだワン。」

 

面構署長は続ける。

 

「君達、資格未取得者が敵とはいえども他人に個性を用いた暴力行為をした。これは立派な犯罪だワン。君達4人とプロヒーロー3人には厳重な処罰を行う必要があるワン。」

 

「待ってくださいよ。飯田が動かなきゃネイティブさんが殺されてた。緑谷が来なけりゃ二人が殺されてた。誰もヒーロー殺しの出現に気づいてなかったんですよ!? 規則守って見殺しにするべきだったって言うんですか?!」

 

「待て轟。」

 

「なんだ治崎!」

 

俺も轟と同じ気持ちだ。だが。

 

「それとこれとは話が別だ。お前が言うように俺達が動かなきゃ誰かが死んだかもしれない。だが、お前が出した炎や氷が通行人に当たったらどうする。ヒーロー殺しがそれで死んでいたらどうする。資格がないから俺達はその責任が取れないんだ。俺達は昨日、人を殺していたかもしれない。その事実を噛み締めるべきだ。」

 

「そこまで分かっていてなぜしたのか……まぁ子どもだから仕方がないワンね。」

 

少しイラッとしたが抑える。実際、その通りだからだ。

 

 

「以上が、警察としての公式見解。そして。処分云々はあくまで公表すればの話だワン。公表すれば世論はステインを追い返したキミらを褒め称えるだろうが、処罰は免れない。一方で汚い話、公表しない場合、ヒーロー殺しがエンデヴァー達プロヒーローを恐れて逃げた、という風に事実を隠せるワン。幸い目撃者は極めて限られている。この違反はここで握りつぶせるんだワン。」

 

「この方法だと、キミたちの英断と功績も、誰にも知られることはない。どっちがいい? 一人の人間としては、前途ある若者の偉大なる過ちに、ケチを付けたくないんだワン。」

 

「俺達はどのみち責任取らなきゃだから、好きな方を選びなよ。」

 

マニュアルも手でグッドマークを作りながら続けてくれた。

そのマニュアルに飯田は駆け寄り謝罪をする。

 

飯田は謝罪を終えると自分のベッドは再び腰掛けた。

 

俺達は目配せしあう。

 

 

まぁ……お願いするしかないな。

 

「よろしく、お願いします!」

 

緑谷の声と同時に俺達は頭を下げた。

 

______________________

 

「廻…さん?」

 

「廻でいい。」

 

時計の短い針が12を回った頃、俺はエリにあてがわれた部屋でエリと話していた。

あの後ヒーロー殺しの戦い方やら思想やらを根掘り葉掘り聞かれて大変だった。

……その途中で飯田は体調不良を訴えて帰ってしまった。

まぁ俺とは違って3人は俺がくる前に病室で状況確認をしていたから話すべき事はもう話していたのだろう……が、心配だ。

やはり家族を失う事はショックを受ける事なのだろうか。ヒーローだから殉職する可能性は理解していただろうに。

 

「廻はなんとなく呼びづらい…ので廻さんでいい…です」

 

「そうか。……」

 

今は自分の新しい家族と話すべきだな。

昨日、エリが寝てから親父に聞いた話だが、エリは親父の娘の子、つまり親父の孫に当たるらしい。

なぜ今うちに来てるのかは時間がなくて聞けなかったが……

 

「廻さん?」

 

 

 

……話す話題に困る。

この年代の子ってどんな事が好きなんだろうか。

やはり女児アニメとかだろうか。

その辺は当たり前だが全く分からん。

……うーん……

 

 

「エリ!廻と仲良くやってるか?」

「親父。玄野に音本も。」

 

俺が唸っていると親父達が襖を開けて入ってきた。

ふぅ。助かった。

 

親父はエリの頭を優しく撫でて俺について話し始めた。

目の前で自分について説明されるのはこそばゆいからやめて欲しいな。

 

 

「若。話が。」

 

 

2人が俺の横に正座して耳を貸せ、とジェスチャーで示してきた。

なんだ?

 

 

「エリの個性について調べて欲しいんです。エリに生えてる角が何か関係してると思うんですが……」

 

「親の個性から予想出来ないか?」

 

「父親はエリの個性による個性事故で死んでいます。それを恐れて母親はこの子を捨てました。親の個性は角といった異形個性とは全く関係ない、なんなら殺傷力もない平凡な個性で……」

 

……この年で親を殺してしまっているのか。

 

「分かっている事はないのか?」

「溜め込む系の個性、ぐらいでやんす。角が長いと個性を最大限に発揮できるようです。」

 

「それと、親を殺した事についてはショックで忘れているようです。」

「そうか……」

 

不幸中の幸い、だろうか。

 

「とにかく俺の方で調べてみる。地下の部屋をいくつか借りるぞ。」

 

「ありがとうございます。若。」

 

ふぅ。ヒーロー免許と医療ヒーロー免許の取得。エリの個性の把握。課題がたくさんだな。

 

「エリ。何か欲しいものはないか?」

 

親父は俺について話し終えたようだ。

 

「えっと……さっきテレビでしてた女の子が戦うのが欲しい…です。」

 

「おい!誰か買いに行ってこい!」

 

親父が組の下っ端連中に声を掛けた。甘いな。

 

「俺が行く。何を買えばいいか分からないからエリ、一緒に来てくれないか?」

 

「な?!」

 

「は、はい。」

 

エリの顔が晴れやかになった。

やはりこれが正解の選択肢だったか。

親父の顔が悲壮感に満ちていくのを横目にエリの手を取って玄関へと向かった。

正直何を話せばいいか分からないが……仲良くなっておいて損はないだろう。あぁ。損はないだろう。

 

俺の出来る限りの笑顔を作り、もてなしてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________________________________

 

 

 

エリの個性を知るのに時間はさほどかからなかった。

個性を調べてくれと頼まれてから一週間後くらいだろうか。

エリの個性が"巻き戻し"と知ったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 




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