英雄症候群に治す治崎君っ!   作:シュガーマン

5 / 72
仮想ヴィラン、激突 治崎廻 <オリジン>  終幕

—————————

——————

———

 

場所は変わって死穢八斎會。

1人の貫禄のある男に2人の男が声をかけた。

 

「失礼します、親父。」

 

そう言って死穢八斎會組長の部屋に入ってきたのは玄野と音本だった。

 

「どうした?2人とも?」

 

組長は困惑して答えた。2人が来る心当たりがなかったからだ。

 

「いや、用があるわけじゃあないんですが……」

 

2人は言葉を濁しながら答えた。

そうするとニヤッと組長は笑みを浮かべこう言った。

 

「さてはお前ら、廻が心配になってきたのか?」

 

「いや初めからずっと心配ですよ!

あいつの個性は強力でどんなものでも治せるあの個性はヒーロー向きです!」

 

「でもあの雄英ですよ!東の雄英、西の士傑と呼ばれる超名門校!そのヒーロー科の入学試験!」

 

こらえきれなくなったのか今にも泣きそうな顔になっている。

 

「お前らいい歳なんだからそんな顔をするな………

だがまあたしかにあんな名門校に受かるのは難しいだろうな。」

 

「しかもだって……あいつは…

あいつの個性は手を通じて発動する個性なのに潔癖症で人にほとんど触れられないッ!

あいつは雄英に行けば治るとか楽観的に考えてるのかもしれませんが

あれはそんなレベルじゃない!医者にも言われたでしょ!

これは一生付き合っていくものになるかも知れないって!」

 

組長は落ち着いた表情で頷きながら最後まで聞くと今度はさっきよりもっとニヤッとした顔で

 

「お前らは廻より医者を信用するのか?」

 

ただ一言、そう答えた。

 

「いや、そういう訳じゃ…」

「でも……」

 

「あいつはきっかけ一つでどんな凄い奴にもなれる。

1番潔癖症を悩んできたのはお前らじゃなくあいつだ。

さっき名門校に受かるのは難しいと俺は言った…訂正するよ。

廻以外には難しいかもな。あいつなら大丈夫だ。」

 

やっぱり親父はかっこいい。そう思う2人だった。

そして。

2人の涙の雫は静かに枯れ果てた。

 

—————————

——————

———

 

……俺は組長のようなヒーローには、なれないのか。

 

<ドゴォーンッ!>

 

急に爆発音が聞こえて俺達は音の方を見た。

あれは…人か?

あの緑の髪は…まさかさっきの!

 

さっきも見た緑の少年が飛び上がってロボットに立ち向かっていた。

遠くてあまり見れないが足が変な方向に曲がっている。

おそらく飛び上がった衝撃で折れたのだろう。

なんてパワーだ…

 

さっきは全く戦っていなかったのに、あんな武道派の個性だったのか。

いや、使えば体が壊れるから使わなかったのだろう。

あいつは人を助けるために自分の体を…おそらくあいつはポイントもほとんどない。

壊れた体に短い試験時間じゃ合格できない…

それなのに…なんで…なんであいつは。あいつは立ち向かえるんだっ!

そうだよな。そうだよ。

あいつは今日合格する為に受験しにきたんじゃない!ヒーローになる為に受験しに来たんだッ!

俺だって…俺だって!

 

「俺だってヒーローになりに来たんだッ!」

 

俺はマスクを分解し、蕁麻疹の出た身体にも個性を使って無理矢理治す。

 

「おい、お前名前は?」

 

眼鏡の少年は俺の行動に驚いた様子だったが答えてくれた。

 

「天哉、飯田天哉だ。君は?」

 

「廻、ヒーローになる治崎廻だ!」

 

俺は近くの怪我人に触れながら眼鏡の少年、飯田にお願いする。

 

「飯田!重症のやつから順に俺の所まで連れてこいッ!

俺よりずっと早く来て状況把握をしていたお前なら出来るだろう!」

 

「あぁ!もちろん!」

 

飯田は足から青く輝く炎を出しながら走ってゆく。

素晴らしい個性だな。埃は出さないで欲しいが。

蕁麻疹をまた個性で無理やり抑える。

 

俺は触れた怪我人に個性を使い、さっき作った担架の上に乗せておく。

俺の個性を使ってもすぐに意識までは戻らないからな。

そうしてるうちにもうほとんどの怪我人が俺の周りに並べられていた。

 

「これで全員だ!よろしく頼むっ!」

 

「あぁ!任せろ飯田!」

 

俺は近くにいる奴から順に個性を使っていく。今のうちに声かけとくか。

 

「おい!お前ら!そうお前らだ!

怪我もしていないのに誰も助けようとしないお前らだ!

お前ら今日何しに来たんだよ!

ヒーローになりに来たんだろう!

まだヒーローになるつもりの奴がいるなら、意識ない奴運べ!」

 

俺の声を聞いて1人、また1人と涙を流しながら動いてくれた。

 

 

 

よし、これでもう全員治し終えた。ここはもう、大丈夫だ。

 

「飯田!俺はもうロボットの方に向かう!あとは頼んだ!」

 

「あぁ分かった治崎!ありがとう助けられた!」

 

「困った時はお互い様って奴だ!」

 

俺はそう答えてまた石柱で移動する。

あぁ、マスクがないとなんだか視界が広くなったような気がするな。

 

 

 

        <麗日お茶子視点>

 

もうかなりポイントも集めれたし、合格できそうだ。

これでとうちゃんもかあちゃんも楽にしてあげられるんだ。

 

「おい!なんだあのロボット!こっちに向かってきてるぞ!」

 

「えっ?」

 

受験生が指差す方を見るととんでもない大きさのロボットが近づいてきていた。

やばい!私の周りには腰を抜かして動けなくなっている人がいる。

私がこのまま逃げると最悪死んでしまうかも知れない。

そんなの

 

「嫌や!」

 

私は他の受験生に触れてロボットがいない方に向かって投げる。

空に逃がせばビルを崩壊には巻き込まれないだろう。

 

「えっ!なんだこれ浮いてる!」

「ありがとう!助けられた!君はどうするんだっ?」

 

浮かした人からそう聞かれた。

 

「私も個性で逃げるから大丈夫だよ!」

 

そう言って私はその人を安心させてあげる。…うそだ。

私の個性じゃみんなを逃すことは出来ても自分まで浮かして、それで逃げる。

そんなことが出来るほど私はたくさん個性を使えない。

試験だから死ぬ事はないだろう、

そんな現実逃避が出来るほどに周りの状況が見えていない訳じゃない。

ごめん、とうちゃん、かあちゃん…

 

私はみんなを逃がした後気持ち悪くなって吐いてしまう。

もうダメか、そう思った時…

飛び上がった彼の背中が見えた。

 

 

—————————

——————

———

 

俺はロボットの近くに着くと同時に吹き飛ばされてしまう。

ロボットの攻撃ではなく、ロボットが倒れた衝撃で。

早く立たなくちゃ。

 

「グハッ…?」

 

なんだこれは。血?俺は口から血を吐いていた。まぁいい。治すか…

手が震えて上がらない…

目と鼻からも血が出ている。あぁそうかこれは…

個性限界。

 

上半身を無理矢理起こしてロボットの方を見ると近くに緑の髪の少年と丸顔の少女が倒れていた。

周りに他の怪我人がいないのは少女の個性で浮かして逃がしてくれたのだろう。

少女の方は気を失ってるだけだろうが少年の方はかなりまずい。

 

そこにはロボットの大きな破片が腹に貫通していたのか大きな穴が腹に出来ていた。

頑張って抜いたのか血だらけの破片が横に置かれている。

だが、抜いたせいで出血がひどい。長くは持たんだろう。

少年は腹に出来た穴から向こう側が見えてしまっている。

早くしないと手遅れになる、なのに。

動けない。

 

「ぐぅぅッ!」

 

少年は倒れた少女の方に這って動いていた。

 

「守ら…なくちゃ…僕の……みんなの…ヒーロー、……トみたいに…」

 

うわごとのように少年は呟いていた。

あいつの方が明らかに重症なのに…

あいつにも憧れたヒーローがいるのか。あいつにも憧れた…ヒーローが…

俺達世代には良くある動機だろう。自分を助けたヒーローのようになりたい。

それはほんっとうによくある動機。

なのになんでこう思っちまうんだろうな。

 

「あいつ…は、 あいつは…おれだ…おれと……一緒だ…!」

 

なんで憧れちまうんだろうなぁ!ヒーローに!

俺が…俺達が…こいつら2人が、飯田が!

入学しようとしてる雄英、その校訓、それは!

 

Plus Ultra!(さらに向こうへ!)

 

俺は震える手を押さえて自分に個性を使う。

あぁ、手が内側から爆発しそうだ。

全身に血がどくどくと巡り、熱くなっていくのを感じる。

俺は少年の方に走り寄る。鍛えて良かった、こんな時速く走れるからな。

 

「もう、大丈夫だ。」

 

そう言って俺は少年に個性を使った。

これでもう大丈夫だな、そう思うと同時に頭が真っ白になってゆく。

はじめてだ。気絶するのは………

 

……

 

 

「試験終了!」

 

 

 

 

<???視点>

 

「ダメじゃないか、誰も殺さず、情報も持ち帰らず、ましてや1人は捕まってしまって、

1人で帰ってくるなんて。」

 

「いや、優秀な個性のやつがたくさんいたんです。あんなの聞いてない!」

 

「せっかく君にドーピング剤と個性『擬態』を渡したんだから。

その個性はなんだったかな…あぁそうだ、入中だ。彼から個性を貰ったんだ。

彼は逃げ足が速くてね。けど、面白い個性だったから貰ったんだよ。

君の逃げ足の速さを確かめるような状況にはなってほしくないんだけどなぁ。」

 

「すみません!もう失敗しません!だからどうかご慈悲を!」

 

「いや、もういい。この個性は君にはもったいなかったみたいだ。」

 

「あ、うわ、ぁぁ」

 

「じゃあ、おやすみ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次ので教師陣の動きは書かせていただきます!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。