英雄症候群に治す治崎君っ!   作:シュガーマン

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に、2月10日まで忙しいはずじゃ?!

なぜか過去最長の4000字書いてるシュガーマン です。
まじでなんでだ……??


ファーサービヨンド 

俺は飯田とペアになった。

正直コミュニケーションも取りづらくなにかとやりづらいがなんとかするしかないな。

 

「飯田。思う事はあると思う。だが、今は試験に合格する事が最優先だ。」

「……あぁ。」

 

俺と飯田は2人、体をほぐしながら始まりの合図を待つ。

入試のように突然始まるかもしれないからな。

会場はセメントス先生が立ち回りやすそうな、コンクリートだらけの会場だ。

まぁセメントス先生が戦うのに会場が森になるなんて事ないか。

 

「……治崎君。今のうちに作戦を決めないか?」

「そうだな。……単純だが俺が足止めしてお前が全速力で逃げるのはどうだ?

個性の都合、俺はセメントス先生とも相性がいいし。」

 

自分で言っていて違和感を感じた。なぜ教師側は俺の相手をセメントス先生にしたんだ?分解するだけで大抵は何とかなりそうだが……

 

「まぁそれが無難か。それで行こう。地面がコンクリートだから、俺は建物の上を通って行くよ。

建物もコンクリートだが、上の方が逃げ道が多い。」

 

確かにな。そう言うと同時に試験開始の合図が会場に鳴り渡る。

 

「走れ!飯田!」

 

俺の声を聞くより早く、飯田は器用に壁をよじ登り、走り出す。

 

「前方!右斜め!目測だが70メートル先!セメントス先生がいるぞ!」

 

「助かる!」

 

飯田のいう方向に俺も走り出す。どうやら会場のほぼ中心にいるようだ。

飯田はそのまま直進していく。飯田には会場の隅の方を通ってもらい、セメントス先生をスルーして出口に向かってもらう。

そして俺は。

 

「足止めだ。」

 

石柱をいつものように生やして移動をしようとした、が。

 

「なに?」

 

石柱が生成されない?!

まさか、もうセメントスの個性範囲内か?!

まだ50メートルはあるはずだろう!

 

 

コンクリートが急にどろどろになり、俺の足は沈み込む。

そのまま左右からコンクリートの柱が伸びてきて俺を押し潰そうとする。

石柱を生成しようとした事で居場所がバレたか。

 

「ちっ!」

 

液状化したコンクリートを分解し、そのコンクリートをそのまま柱に修復して自分を押し出し、横からの攻撃は回避する。

 

 

おそらくもう石柱での移動はできないな……多分セメントスは地面のコンクリートに個性を通して今の形に"変え続けている"。

俺がまた石柱を生やしてもそれが生成しきる前に今の平面に変えられる。

なんて厄介さだ……!

 

また横からコンクリートの柱が伸びてくる。

今度は左右からの2本ではなく数えきれないほどだ。

 

 

「キリがないな。」

 

個性を使わずに全速力で走りそれを回避する。乳酸の溜まった足は個性を使って走り続けられるようにする。

本体になんとか辿り着きたいな。このままじゃなんの足止めにもなっていない。

飯田を妨害する片手間に俺の邪魔をしているだけだろう。

しまったな。飯田は上を通る、と言っていた。飯田が上からセメントスを視認できた、という事は逆もまた然り。

飯田への妨害は俺のように居場所を直接視認できていないやつにする妨害とはレベルが違うだろう。

 

 

 

なんとか邪魔を掻い潜りながら中央まで辿り着く事ができた。だがセメントスの姿が見当たらない。

飯田を直接やりに行ったか?だがそうなら俺にも攻撃出来たのはおかしい。個性の射程範囲が100メートルある、とかなら話は別だが……

 

「戦闘中に考え事かい?」

 

ッ?!

 

 

 

地面から手が。伸びていた。

 

途端に地面が液状化し、伸びてきた手に足を掴まれ、地面の中に引き摺り込まれる。

 

「油断は命取りだよ。」

 

個性で周りのコンクリートを分解しようとしたが、もう遅かった。

 

すでに俺の胴体周りのコンクリートは固まっていて、体が動かせない。

その状態のまま地上に放り出される。もちろん手はコンクリートに触れていない。

胴体、足、手首をコンクリートで固められ、身動き一つ取れない。

なんの足止めも出来なかったッ……市街地においてこの人は強すぎる。

個性の相性がいい?相性どうこう以前の問題だ。個性の練度が違う。

 

何も。出来なかったッ………

 

 

無力感を感じ、目線が次第に"下がっていく"

 

 

「飯田君が出れないよう、出口にはコンクリートの壁を作っている。

君がいれば壊せたかもしれないがね。君たちの詰みだ。」

 

俺の目の前でセメントスが話す。俺は少しでも時間を稼ぐために。

会話をしようと

 

"前を向いた"

 

おかげで見えた。

 

「ふっ。作戦通りに動けよ。」

 

「それは無理だなッ!!レシプロバースト!!!

 

 

俺の目の前には建物の上から飛び降り、壁を何度か蹴って衝撃を抑えながら、こちらに来ている飯田がいた。

 

飯田はそのままセメントスの頭を後ろから蹴ろうとするが、エンジン音と声でバレたようで壁を張られて防御される。

 

 

「ッ!出口に向かっていたはずじゃ?!」

 

セメントスの声を聞き、飯田は俺を固めていたコンクリートを破壊しながら話す。

 

「初めはそうしていました!ですが!見えたのです!救助者の姿が!勝ち筋を探す、迷子の姿が!!」

 

セメントスは飯田が話し終えると同時にコンクリートの柱で攻撃してきたが、それは俺が分解する。

 

「油断は命取り、だな。セメントス!」

 

「先生を!つけなさいよ!」

 

地面を液状化し、同時に柱を生やしてセメントスは攻撃をしてくるが、俺は飯田に抱えてもらい、2人で攻撃を回避する。

 

「まずい治崎君!そろそろレシプロがッ!」

 

何を言ってるんだこいつは。お前の前にいるのは誰だと思ってる。

 

「少しの痛みくらいは我慢してくれよ……!」

「ッ!」

 

抱えられた姿勢のまま、手を伸ばして飯田の足に触れ、レシプロが切れてオーバーヒートしている飯田の足を分解、修復(オーバーホール)する。

 

 

「迷子の手は最後まで引いてくれ。」

「っ!あぁ!」

 

俺は飯田に降ろしてもらい、自分の足で立つ。

すぐに立っていた地面はまた液状化を始めていく。

飯田はクラウチングスタートの構えを取る。

そして。走り出した。

 

「飯田ァァ!!」

 

俺は走り出した飯田に合わせてセメントスの個性範囲外から柱を伸ばし飯田を加速させる。

 

「あぁ!レシプロバースト……ビヨンド!!

 

地面が液状化した事なんか関係ないとばかりの高速で、飯田は自分に伸びてくるコンクリートの柱をかわしながらセメントスの方へ向かっていく。

 

「ぬおぉぉ!!」

 

セメントスは必死に分厚い壁を建てている。だが、それは無駄だ。

 

「地面を平面化し続ける事なんて忘れたかァ?!」

 

俺は個性範囲ギリギリの場所から棘を高速で生やして壁に穴を開ける。

少しの足しにはなったか?飯田。

 

「"壁"を壊して!さらに!向こうへ行け!飯田!!」

 

「はぁぁあぁぁ!!」

 

飯田の蹴りでコンクリートの壁は壊れ、セメントスの姿が見える。

見えた、と同時にセメントスは腹に蹴りを入れられ吹っ飛んでいく。

セメントスの体が吹っ飛び、後ろの壁にぶつかるより早く飯田はセメントスの背中側に回り込み、キャッチする。

そのまま試験開始時に配られたカフスでセメントスを捕らえた。

 

俺は義速(ギハヤ)を使って近づき、飯田のそばに並び立つ。

 

「おい、セメントス気絶しているじゃないか。」

「うむ……すこしやり過ぎてしまった。」

 

俺と飯田は協力してセメントスの体を持ち、寝かせておく。

体重+おもりでとんでもなく重い……

 

 

今のうちにさっき思った事を話しておくか。

 

「この試験で、思った事がある。」

「なんだ治崎君。」

 

「セメントスは言った。コンクリートの壁を建てているから飯田は出られない、と。だが、時間をかければそのくらい壊せるだろう?時間を壁で稼いで自身が向かうのか、とも思ったんだが……セメントスはおもりをしているだろう?そこまで早く動けるとは思えない。

俺達の試験で見られていたのは。勝つ事じゃなく協力出来るかどうか、だったんだ。実際、2人で逃げていれば俺の個性ですぐに壁を分解出来ただろうしな。協力せずに勝ちきっていても合格は出来なかったかもな。」

 

「なるほどな。確かにそれはそうかもしれん。」

 

「正解だよ。そして合格だ、2人とも。」

 

「セメントス?!」「セメントス先生?!もう起きたのですか?!」

 

「治崎君、先生をつけなさい。飯田君も心配してくれてありがとう。」

 

起き上がるの早いなセメントス……先生。……戦いに熱中するとつい敬語を忘れてしまうな。

 

 

「治崎君。」

 

「なんだ?」

 

飯田はどこか晴れやかな顔で俺の方を見た。

 

「俺のヒーロー名、テンヤじゃなくインゲニウムにするよ。兄の遺志を継いで、迷子の手を引くヒーローになってみせる。

そうすれば天国の兄も安心するだろう!」

 

 

「……そうか。俺は応援している。

それと……お前の兄の事を、家族を軽視してしまってすまない。

………俺は……幼少期に親に捨てられたんだ。今は死穢八斎會というヤクザの親父に拾ってもらっている。」

 

「ヤ、ヤクザに?!」

 

「ヤクザ、と言っても犯罪行為をしていない、形だけのヤクザだがな。もっとも、俺が拾われるまでは相当な事をしていたらしいが……まぁ。俺が親に捨てられたからと言ってお前の家族を軽視していい理由にはならない。悪かった。」

 

「いや……いいさ。親に捨てられた、という背景を知った今なら理解……は出来ないが納得は出来る。君にもいつか家族が出来るはずだ。その時、家族の大切さを知ってくれればそれでいいさ。」

 

家族。その言葉が俺の中でぐるぐる回る。

 

「……エリ。」

 

 

俺は……なんて馬鹿だったんだ。何度もおもちゃ売り場について行き、時にはアニメも一緒に見た。俺はその時間をとても大切に思っている。なのにエリの体から個性を破壊する薬を生み出そうとしていた?大馬鹿じゃないか。

 

エリは"巻き戻し"のエリじゃなく、俺の妹のエリだ。

 

 

「……飯田。俺、最近色々あって妹が出来たんだ。」

「い、妹が?!また唐突だな?!」

「また、その話をさせてくれ。俺の大切な妹の話だ。」

「……あぁ。聞こう。いくらでも。」

 

 

 

俺達を上から見下ろす空は、青く澄み渡っていた。

 

 

 

「……和解したのはいいんだけど、そろそろ戻ってくれるかい?」

 

「あ……すみませんセメントス先生!」「すまん。」

 

 

少し……胸の内が軽くなった気がする。

 

 

 

 

 




 またまたこの辺で感想乞食をば。
やっぱり感想読めばモチベがほんっとなら上がるんですよね。てことで感想待ってます。チラッ

ファーサービヨンドは和訳すると「さらに向こうへ」です。
Farther Beyond です。
書いててウルトラマンゼロビヨンドを思い出しました。ま、まずい。年代がバレるッ!

本当は日本人だとファーサーじゃなくファーザーの方が一般的なんですがファーザービヨンドだと父親を超えるみたいなんで実際の発音に近い方のファーサーにしました。

プルスウルトラはラテン語らしいですね。
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