次の日、俺は自室の椅子に座り、また考え事をしていた。
何度も同じ問いが俺の頭の中をぐるぐる歩き回る。
『なぜステインはあれほど俺に執着するんだ?』
職場体験をしたあの日、俺をヒーローとして認めたからだとするなら緑谷や轟に無反応なのはおかしい。
俺の個性が必要?
それともヤクザの若頭が必要?
それとも……
「ヒーロー社会を……壊す。」
壊すために、必要?ステインは、死柄木は何を考えている?
ピコンッとまた薄い板がしゃべった。
スマホを見ると委員長から連絡が来ていた。
「林間合宿の場所が変わるのか。あの日みんなが買っていた水着が無駄になるかもな。」
スマホをベッドに放り投げ、また椅子に深く座り込んで天井を見上げる。
ふぅ。
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覚悟はもう。決まった。
ドアからコンコン、という小さな音が聞こえてきた。
エリか。やっとノックすることを覚えたようだ。
「……廻。大丈夫か?」
「……親父?」
今までの人生で親父にノックなんかされた事がなかった。
ノックだけで親父の真剣さが分かる。
「お前、昨日家に帰ってきてからずっと部屋にこもっているだろ。ヒーロー殺しに2度も会ったん、だ。不安になる気持ちは分かる。
俺に出来る事があればなんでも言え。分かったな?ハッ、まぁ俺に出来る事なんてそう多くは無いがな。」
親父。ありがとう。
でも。
「ありがとう親父。でも大丈夫だ。」
「そうか……頑張れよ。廻。」
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「林間合宿だー!!!」
あれから数日後にしおりが届いた。
やはり水着を着る時間はないようだ。峰田ががっかりしていた。
しおりが届いた時はエリはなんともなかったが、今朝は泣きながら俺を引き止めてきた。
やめてくれ本当に行きたくなくなるから。
「お前ら静かにしろ。遊びに行くわけじゃないんだ。飯田。みんなを整列させてバスに乗せておいてくれ。」
「分かりました相澤先生!」
「みんな!整列だ!」
飯田が手をカクカクさせながら整列を促してくる。あの手ひっさびさに見たな。
「隣は……轟か。USJの時と同じだな。」
「あぁ。よろしくな。」
前よりは会話が持ちそうだ。
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「お前ら、そろそろ降りる準備をしておけよ。」
轟……なんでこっちを見たまま黙り込んでたんだ。やめてくれ圧が、圧がすごいッ!
「なぁ治崎。」
「なんだ、いやなんなんだ本当になんなんだ。」
「何か、あったか?」
「……いや、何も。」
「そうか。……そばおにぎり食べるか?」
「食べたくはないが気になる。」
みんなに心配されてしまうな。
だがもう大丈夫だから。
心配はもう、しなくていい。
今日も俺の頭の中は散らかって、散らかって、何があるのか分かりやしない。