英雄症候群に治す治崎君っ!   作:シュガーマン

66 / 72
ちょうど2000字です。


合理的虚偽

「やっと着いたぁ……」

 

「結構早かったわね!」

 

俺が起きてからもかなり歩いた。そのせいで全員へとへとだ。

時計を見ると短針は4、長針は6を指していた。

 

「4時30分!ヒーローの卵達にしてはいい方だにゃ!」

 

「嘘つきー!何が12時頃だー!!」

 

芦戸がそう抗議したが俺を崖から落とした女性にそれは否定される。

 

「あれはあたし達なら、って枕詞がつくにゃ。」

「合理的虚偽?!」

「嘘はついてないにゃー。」

 

緑谷曰くにゃーにゃー言ってる俺を突き落としたヒーローはピクシーボブ、もう1人のヒーローはマンダレイと言うらしい。土を操るのはピクシーボブの個性だそうだ。崖から突き落とした事は一生恨む。

 

 

「私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ、君ら……特に、そこ4人に治療してた子。躊躇のなさは経験値によるものかしらん?」

 

そう言ってピクシーボブは俺、緑谷、爆豪、轟、飯田を順に指差した。

 

「3年後が楽しみー!今のうちにツバつけとこ。」

 

そう言ってピクシーボブはこちらにツバを飛ばしてきた。

それは土壁を生やして……生やせない!個性の限界かッ!

なんとか後ろに飛んでツバは躱わす。

 

「……そんな対応しなくてもぉ〜!ごめんよ〜!」

「いや、俺が潔癖症なだけなので。」

「グハッ。」

 

「あ、トドメが。」

 

ピクシーボブが倒れ込んだ。それを受け止めて寝かせておく。

せめて安らかに。

 

ピクシーボブが倒れている横でピクシーボブが俺たちに向かって話した。

 

「ごめんね、彼女適齢期で。結婚ができなくて焦ってるの。」

 

「あ、適齢期と言えば」「適齢期と言えばってなに?!」

 

起き上がったピクシーボブをそのまま無視して緑谷は続ける。

 

「向こうにいるあの子は誰のお子さんですか?」

 

「ああ違う。この子は私の従甥だよ。洸汰!ほら挨拶しな。一週間一緒に過ごすんだから。」

 

緑谷くんが洸汰と呼ばれた子どもに近寄って頭を撫でようとする。

ん?何か嫌な予感が。

 

「あ、えと。よろしく洸汰君!僕雄英高校の緑谷……ッきゅう」

 

「緑谷ァァー!!!!」

 

切島の叫び声と共に緑谷が倒れた。

 

「おのれ!なぜ緑谷君の陰嚢を!」

「ヒーローとつるむ気なんざねぇよ。」

「つるむ?!何歳だ君は?!」

 

爆豪が飯田と洸汰君の会話を聞いてボソッとマセガキ、と言った。……それはお前の言える事じゃないぞ。

 

 

「お前ら、そろそろ荷物を運べ。昼飯が食いたくないのか?」

 

相澤先生がそう俺達に向かってそう話した。

……まだ昼飯が食えるのか?

 

「もう昼じゃないよ?!」

「そんなのどうでもいい!飯だァァー!」

「みんな!早く荷物を運び出すんだ!」

 

空腹のせいで皆テンションがおかしくなっている。まぁ仕方ないか。これだけ運動しておいて飯抜きは流石に辛い。

 

 

 

 

それから30分ほどかけて、俺達はそれぞれの荷物を合宿所内に運び入れた。

 

「先生!飯!飯!」

「まぁ待て……昼飯を食わせると言ったな。あれは半分嘘だ。」

 

「……へっ?」

 

「合理的虚偽ってやつだ。」

 

もう2度と合理的虚偽なんて言葉は聞きたくないな。大体この言葉を聞く時は最悪な時だ。

 

「正直俺もプッシーキャッツの皆さんもお前らが来るのは5時半頃と予想していた。だからもとより昼飯の用意はしてなかったんだ。」

 

 

「なんで〜?!」

 

 

葉隠の声が森に響き渡る。

「だが4時半にここに来れたんだから少しは飯を食わせるべきだ、となってな。あっちにじゃがいもがある。それを蒸して食っとけ。夜飯も近いからそれで十分だろ。」

 

「高校生の食欲舐めすぎでしょ?!」

 

あれから何人かが抗議したが意味がない事を途中で悟り、黙って芋を蒸し始めた。

ん?もちろん俺も抗議した。

 

「芋……味がしない……」

「せめて塩を!塩をください!」

 

ムードメーカーの芦戸と上鳴もテンションがおかしくなっている。食は人を狂わせる……

 

「みんなぁー!これは被災地での食事を想定した訓練なのだ!ヒーローはいつだって笑っているべきだ!」

「うるさい真面目委員長!」

 

……飯田はいつだってクソ真面目だ。

 

______________

 

「お前ら全員飯は食ったな。」

「め……し……?」

「ん?」

「何もないです。」

 

「……今は5時15分。まだ夜飯まで時間はある。30分ぐらい走ってこい。運動して腹を減らしておいた方が飯をうまく感じられるだろ。あとは委員長よろしく。」

 

そう言って相澤先生は合宿所内に戻っていった。

 

「もう……歩けもしないよ……」

「みんなぁー!こんな時こそ走ろう!被災地ではご飯にありつけない事だってあるはずだ!それでも要救助者がいれば走って助けなければならない!走れ!走るんだー!」

 

そう言って飯田は1人走っていった。……あいつもテンションおかしいな。

 

「飯田の言う事も一理ある。走るぞ治崎。」

「轟………走るか。」

 

轟に誘われてしまった。もう逃げられないな。最後の力を振り絞って足だけを治す。

これで少しは走れるだろう。

 

「轟さん達に続きましょう!」

 

八百万の掛け声で後ろのみんなも走り出した。

 

 

……相澤先生は鬼だ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。