英雄症候群に治す治崎君っ!   作:シュガーマン

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ターニングポイント3

「相ッ……澤先生……走り終えました……ッ!」

「ご苦労委員長。」

 

あれからは地獄だった。立ち止まろうとすると飯田に喝を入れられ八百万に嗜められる。

爆豪でさえ悪態をつけれずに走っていた。

 

「飯だぁ……」

「長かったですわ……」

「八百万のせいで休憩出来なかったの多分一生忘れんと思う。」

 

麗日が血走った目で八百万の方をキッと睨んでいた。麗日は個性の反動で吐きかけてたからな。1番辛そうだった。

 

 

______________

 

 

「「すげーー!!!」」

 

上鳴と峰田の声が合宿所内に反響する。うるさい。

だがまぁこの反応も仕方ないな。

俺達の目の前には唐揚げ、餃子、ローストビーフといった高校生が好きな料理ランキングの上位に君臨するものがたくさんの皿に盛り付けられていた。

サラダは所狭し、といった風に机の隅に追いやられている。

 

「圧倒的な肉比率……これだよ!これでいいんだよ高校生なんて!」

「食べよ〜!!」

 

芦戸や葉隠といった女子陣ですらも興奮を隠せていない。

 

「待てみんな!まずはいただきますと言って」「イタダキマス」

 

飯田の横から麗日がとんでもない速さでご飯の方に吸い寄せられていった。まるで弾丸。

 

「いただきまーす!」

 

みんなそれぞれがそう言って皿をつっつき始めた。

さて、俺も食おう。

 

俺もいつもの2倍速ぐらいの速さで箸を進めていく。空腹は最高のスパイスである。

 

「美味しい!米美味しい!」

「五臓六腑に染みわたる!!ランチラッシュに匹敵する粒立ち!!いつまででも噛んでいたい!……土鍋……!?」

 

「土鍋ですか!?」

 

「なんかみんなテンション変になっちゃってるね。」

 

今頃気づいたのかピクシーボブ。

 

俺がピクシーボブに向かってアメリカンなリアクションで残念がっておく。

 

「なんかイラッとするんだけど?!」

 

そんな俺に向かって切島が走ってきて、こう話した。

 

「なぁ治崎……一口食べた唐揚げをよぉ、お前が治してよぉ、それをまた食べて、てやりゃあ無限に唐揚げ食えるんじゃねぇか?」

 

「切島……それは名案だ。」

 

切島の言うとおりに、今食べかけていた唐揚げを皿の上に置く。

 

「修復。」

 

全員が一瞬にして黙った。

 

「あ」

 

俺の声だけが聞こえた。

 

……手加減を間違えて完全に分解して戻せなくなってしまった。

食材を無駄にするわけにはいかないので粉末状になった唐揚げはしっかりと食べておく。

 

 

そんな俺を見て峰田と瀬呂がバカ笑いしている。

俺をそんな風に笑っておいて明日が迎えられるとは思うなよ……

 

 

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

飯を食べ終えた。

今は風呂に入る支度をしている。

 

「バスタオル、着替え……よし。」

 

潔癖症の時は誰かと風呂なんて入れなかったから今日が人生初の体験だ。

 

「早くしろ治崎。」

「すまんな。」

 

俺を待ってくれていた轟と二人で歩いて更衣室に向かう。

 

「待たせて悪かったな。」

 

俺は夜飯を食べすぎたせいで部屋で先に休んでいた。

それなのに轟は待ってくれていた、本当にいいやつだな。

 

 

「いやいい。待ちたかったから待ったんだ。」

 

「ん?どういう意味だ。」

 

隣を歩いていた轟は立ち止まってこちらを見た。

 

「お前……何があった。」

「……なんのことだ。」

 

「ずっと、思い詰めた表情をしている。今日の朝、ショッピングモールに行ってから見ていなかったお前の顔を見た。見覚えがある表情だ、そう思った。……バスで記憶を遡ってみるとすぐに分かったよ。」

 

俺も立ち止まって轟の方を見る。

 

「どうした?そんな急に。見覚えのある表情?人間なんだからできる表情には限りがある。見覚えがあるなんて当たり前だろう。」

 

 

「そういう意味じゃねぇ。とぼけんな。あん時の飯田そっくりだ。ステインを殺そうとしていたあん時の飯田にそっくりなんだ、今のお前。無理してさっきの唐揚げの時みたいにしなくていい。何があったか話してくれ。」

 

 

 

……全部お見通しか。轟も入学した頃より随分周りが見えるようになったな。俺が取り繕うのが苦手、というのもあるだろうが。

でもこればっかりは話せない。

 

「……ヒーローは手の届く範囲しか守れない。誰が言ったと思う?」

 

「……誰だ。」

 

「オールマイトだ。ショッピングモールの時、緑谷にそう言っていたのをたまたま聞いた。その通りだと思った。俺は俺の手の届く範囲しか守れないんだ。だから全力で手の届く範囲を守る。」

 

 

「今のお前には、手の届く範囲すら守れないと思うけどな。」

 

 

……なかなか手厳しい事を言ってくれるな。

 

「………」

「………」

 

ドタドタと走る音が更衣室側から聞こえてきた。

誰だ?

 

「うわ?!治崎君と轟君?!どうしてこんなところに!」

 

曲がり角から凄まじい速さで緑谷が駆けてきていた。

……腰にタオルを巻いただけ、なんて格好で。

というか……

 

「お前こそなんでここに。というか……なんで洸汰君を抱えてるんだ?」

 

轟が俺の一番聞きたいことを聞いてくれた。

緑谷は意識を失っている洸汰君を抱えていた。

 

「それにはちょっと事情があってね……今急いでるから後で話すね!」

 

緑谷は一番気になる事情を言わずにまた走って行ってしまった。

 

「なんだあいつ……」

「まぁいい。とりあえず俺達も風呂に入ろう。」

 

「そうだな。」

 

轟は深く聞いてこなかった。話さないと分かったからだろう。

やっぱり轟はいいやつだ。こいつになら。

エリも託せる。

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