緑谷とすれ違った後、俺と轟はそのまま風呂に向かった。
風呂場の更衣室で他のA組連中に出会い、緑谷の事情を聞いた。
「峰田……お前それでもヒーロー志望か……」
「うるせえ治崎!男にはしちゃいけねぇって事でもしなくちゃならねぇ時があんだよ!!」
「そうなのか?」
「納得するな轟。」
まぁ峰田の処理は女子達に任せよう。こいつを最も苦しませる罰を与えてくれるだろう。
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次の日の朝、無情にも鳴り響く目覚ましの音に起こされて、重たい瞼を擦りながら目を開けた。昨日はあれから大変だった。轟と2人で風呂に入ったがどこか気まずく、心の休まらない時間を過ごした。
「起きろお前ら。」
「あと四時間……」
「長い。瞼を分解して起こさせたくなければ自分で起きろ。」
「それは嫌だわ!」
切島と上鳴、瀬呂は特に眠たそうだ。
蒲田試験で赤点を取ったことによる補習は睡眠時間を削って行われる。この3人の睡眠時間は多く見積もっても三時間くらいだ。あと四時間寝たいと思うのも分からんでもない。
「みんなァァー!朝から救助を求める人も実際の現場ではいるはずだ!寝起きでも気を張っていこう!」
飯田の掛け声を聞いて1人、また1人と用意を始める。
まぁ女子ほど用意もかからないし集合時間には間に合うな、なんて考えながら俺はカーテンを開けた。……真っ暗だな。
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「相澤先生!A組全員!集合完了しました!」
男子が集まって10分後ぐらいに女子も集合が完了した。男子よりも早く起きたのか、芦戸の顔色が真っ青になっている。元の顔色はピンク色だったはずだが……
「ご苦労。さて、今日から訓練を始めていく。辛いだろうが、それも仮免を取るためだ。仮免を取ればインターンに出ることだって出来る。まぁ、せいぜい頑張れ。」
「「はい!」」
少しずつ空が明るくなってゆく中、訓練は始まった。
「まず、おい爆豪。」
「あ?」
爆豪に向かって相澤先生はどこかで見たことのあるボールを投げた。
「そのボール、確か入学してすぐの……」
「あぁ、正解だ治崎。これは個性把握テストで使ったボールだ。それをもう一度投げてみろ。」
相澤先生の話を聞いて皆がざわめき立つ。
「爆豪1kmとか行くんじゃね?!」
「最近色々濃かったもんな!」
爆豪はそんな声を聞きながらボールを投げる構えを取った。
「よっこら……くたばれェェェェ!!!」
掛け声もっとどうにかならんのか。
爆豪は指先を爆破させながらボールを飛ばした。勢いよく飛んでいったボールだが、俺の予想では……
「709.6m。」
相澤先生はただ無感情に数字を読み上げる。
「あれ?なんか……」
「思ったより伸びてない?」
確か爆豪の入学時の記録は705mぐらいだったはずだ。そこから4mしか伸びていない。ここから分かること、それは。
「身体能力は伸びていても、個性自体はほとんど伸びていない、という事か。」
「そうだ。よって。この林間合宿では主に個性を伸ばす訓練をしてもらう。死ぬほど辛いが、くれぐれも死なないように。」
相澤先生はニヤッと悪い顔をしてそう話を締めた。