英雄症候群に治す治崎君っ!   作:シュガーマン

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なんとか隙間時間を見つけて書き上げました。前に書きたかった展開はこれです。原作にはないですが描写されてない範囲であったかもしれない展開です。


それぞれのオリジン

夜が来た。これが普通の高校生なら林間合宿の夜、なんて羽目を外せる展開を無駄にはしないだろう。だが俺たちは普通の高校生ではない。

 

「もう寝ようぜ。うん。寝よう。もう寝よう。」

 

こういう時に「女子の部屋行こうぜ!」とか言いそうな上鳴ですらこの調子だ。まぁこいつは補習もあるからな……もとから少ない睡眠時間をさらに削られているんだ。いつ気絶してもおかしくない顔をしている。

 

「ちょっとだけなんか話そうぜ。」

「せっかくの林間合宿だしな。」

 

切島と尾白はこう言っているが……というか切島も補習組はずじゃ。なんで上鳴とこうも違うんだ。

 

「こういう時はやっぱ恋バナだよな!!!」

 

急に上鳴が息を吹き返した。プルスウルトラだな。

 

「うーむ……俺にはあまり分からんぞ?」

「同じく。そういうのに疎いんだ。」

「ばっちこい。」

 

飯田と障子の言葉で恋バナではなくなぜヒーローになりたいと思ったのか、ヒーローになったら何がしたいのかを話すことになった。

ちなみに最後のは峰田だ。お前に恋バナはできんだろ。……まぁ俺もだが。

________________

 

それから布団や枕をセッティングして、座って話しやすい形にし、1人ずつ話し始めた。

 

「おーい爆豪ー!お前はやらねーのかー?!」

 

「………」

 

切島が目をこすりながら呼びかけたが反応はない。寝ているのだろう。

 

「悪いけど俺も寝させてもらうぜ。」

 

そう言って轟も自分の布団を端に寄せ横になった。

 

「まだ補習まで時間もあるし、じゃんじゃん話そうぜ!」

 

相変わらず元気だな上鳴……

 

「まずは俺から話させてくれ。」そう言い出した飯田から話を始めることになった。

 

「……みんな、俺に兄がいた事は知っているだろう?俺の兄はどんな人にも分け隔てなく、ただ助けを求める人の場所へ全力で駆けつけた。俺はそんな兄の背中を見て育った。」

 

「俺は迷子が伸ばした手を取ってあげられるヒーローになりたい。そう、兄のような。」

 

「……やっぱり飯田君はすごいや。」

 

「そういう緑谷はどうしてヒーローに?」

 

俺は気になって緑谷にそう聞いた。オールマイトが関わってる事は普段の行動から分かるが、なぜか詳しく聞きたくなったからだ。

 

「憧れたから。」

 

ただ静かに、緑谷はそう呟いた。

 

「僕はさ、ずっと憧れるだけだったんだ。オールマイトに。ヒーローに。僕はヒーローをただひたすら見てるだけで、傍観者で。部外者で。でもさ。体が勝手に動いたんだよ。目の前で、僕の尊敬する人が助けを求めてて、それで、体が勝手に動いたんだ。」

 

緑谷は手を握りしめた。

 

「夢は現実に。空想(フィクション)理想(ノンフィクション)に。」

 

「長ったらしい!もっと簡潔に言えや!!」

 

「かっちゃん起きてたの?!……えっと、僕はヒーローに憧れたからヒーローになりに雄英(ここ)にきた。簡潔に言ったらこうなるね。」

 

「ちっ」

 

爆豪は寝返りを打ってそっぽを向いた。

 

「治崎君はどうしてヒーローに?」

 

俺がヒーローになった理由、か。それはもう決まっている。俺のオリジンだから。

 

「飯田と似てるかもな。」

 

「俺は親に捨てられた。」

「ヒーローも孤児院の子供なんて救わない。」

「ヒーローには金や名誉を至上とする者もいる。」

「そんなクズ以外のヒーローだって孤児院の子供は救わない。」

「世の中孤児院にすら入れていない子供もいるんだからな。」

「そんな子供と比べれば俺は随分マシだ。」

「分かってはいた。」

「それでも孤児院にいるのは心細い。」

「俺は人生のどん底にいる。」

「そう考えてた。」

「でも俺はそんなどん底からすくい上げられたんだ。」

「親父に。」

「親父は俺をすくったあとも色んな人を(すく)った。」

 

隣に置いていたペットボトルの水を飲み、また話を続ける。

 

「時にはヒーローに救われない社会的弱者を。」

「時には住む場所やその日食う物にすら困っている元ヴィランも。」

「親父はヒーローが助けないような人間すらも助けた。」

 

「俺はヒーローになりたかった。親父のように全ての人を助けるヒーローに。」

 

俺は握っていた手を緩めて膝に置いた。

 

「飯田と似てるだろ?全ての人を助けるヒーローに俺はなりたかったんだ。」

 

 

「最高に熱い漢じゃねぇか……!眠気がぶっとんだぜ!」

「お前孤児院育ちだったのか……オイラ今までお前の生まれの事いじってないよな?!失言してなかったよな?!知らねえ間に傷つけてたなんてオイラ嫌だぜ?!」

 

「俺と目指す場所は同じ、という事だな!」

「……あぁ。そうだな。飯田。」

「うぇーい」

 

上鳴が俺の背中に覆い被さってきた。重い。

 

「なれると思うぞ。お前なら。」

 

障子が俺の前に手を伸ばしてきて複製腕でそう話した。

 

そう言ってくれるのはありがたいな。

 

「……………」

 

それからすぐに。

 

「おい補習組……いつまで待てば来るんだ?もうとっくに時間は過ぎてる。これ以上睡眠時間を削るのは合理的じゃないんだが?」

 

「ヒェ」

 

捕縛布で縛られて補習組が連れ去られていった。

 

………

 

「そ、それじゃあ僕達はもう寝ようか。」

「あぁそうだな緑谷君!」

 

飯田は手をカクカクさせながらそう叫んだ……叫ぶと爆豪と轟起きるだろ……

 

「……飯田ちょっと静かにしてくれ。」

 

「っすまん轟君……」

 

……今日はもう寝るか。

 

俺は窓から外を見て、今は雲に隠れて見えないが、そこにあるはずの月を想像しながら眠りについた。

 

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