【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜 作:広路なゆる
「(…………あぁ、だけど殺すのはNGな……)」
【…………残念だが、わかった】
(意外とあっさり受け容れたな。だが、油断は禁物……。もしもドウマが暴走したら、その時は俺が全力で止める。生まれた時から続けてきたんだ。誰かに披露するものではないが、それだけは特技と自負できる)
「(よし、ならドウマ……出していいぞ)」
【おぉおお、久方ぶりの……久方ぶりの魔力発現だぁ……!】
ドウマは機嫌よさげである。
(これくらいが限度だな……ほんの少しだけど……)
界は僅かにドウマに魔力の開放を許す。
イメージするなら蛇口からちょろちょろと水を流す感じだ。
(これ以上、
僅かであっても、脅威を感じる程にドウマの魔力は洗練され、界は濃い密度のようなものを感じた。
と……、
再び、バシンという
「きゃぁああ!」
「……こ、今度はなんですか?」
「また、動いていたぞ?」
「そ、そんな、私、動いてなんか……」
「ほんの少し、こーれくらい動いてた」
教官は人差し指と親指の間にわずかな空間を作るジェスチャーをする。
「っ……」
銀山雨は唇を噛みしめる。
「おい、
別の教官がいびり教官を
だが、その時であった。
「っ……!? ひ、ひぁああああ!!」
突如、
瞑想をするため
「ど、どうした兵藤殿!?」
先ほど兵藤を窘めていた教官が焦った様子で尋ねる。
「鬼が……鬼が……! そ、そこにぃいい!?」
兵藤は尻もちをつき、恐怖の表情を浮かべながら指差しをしている。
しかし、
「お、鬼……!? 何もいないではないか?」
「い、いや……そこに鬼が……! 鬼がいるではないか……! 門から……門から鬼がぁあ……! 見えないのか!?
「門……? あ、あぁ……」
栗田と呼ばれた教官は不思議そうな顔をする。
しかし、兵藤には見えていた。
荘厳な門からひょっこりと顔を出す禍々しい鬼の姿が。
「はっ……!? そ、そんな馬鹿な……、ひっ、う、うわぁあああああああ!!」
兵藤は叫びながら静寂の間から駆け出していく。
「ちょ、兵藤……!? おいおい……」
栗田はあっけにとられる。そして……、
「…………
栗田は子供たちにも確認する。
子供たちは「うんうん」と頷くのであった。
……犯人の界も何食わぬ顔で「うんうん」と頷く。
脳内では、ドウマが
【うーむ……、儂様の魔力を使う相手としてはちと小物すぎたな……】
などと呟いている。
(「ドウマ、そんな器用なことできるんだな……」)
何食わぬ顔実施中の界はドウマに問いかける。
【あん……?】
(「他の人に感知されないように、特定の人に呪いをかけることだよ」)
【そうだな、簡単ではないが、儂様ほどになればそんなことは造作もない】
ドウマは鼻高々だ。
(「そうなんだね……すごいな……」)
界は素直にそう思う。
【なっ!? 儂様を褒めるとは……た、大した度胸だな……小僧介……】
ドウマは憎まれ口を叩く。
(でも、思ったよりドウマが暴れないでくれたから、悪目立ちせずにすんだなぁ……)
などと界は思っていた。
と……、
(ん……?)
「っ……!」
ふと、気づくと前に座っていた銀山雨が半身になり、こちらを見ていた。
それにこちらが気づくと、銀山雨は慌てて視線をそらすように前に向き直る。
(……)
その場は一旦、それ以上のことは起きなかった。
◇
翌日――。
「それではこれから
ちょっとした広場に集められた子供たちに、教官の栗田がそう告げる。
「「「「わぁあああ!」」」」
「うむうむ……」
教官の栗田は優しげに頷いている。
界が認識している教官は三人いる。
一人がこの
わりと物腰柔らかな人物である。
もう一人が、
昨日、子供たちに恥ずかしい姿を見せたせいか、今日は少し静かである。
自分で言っていたが、クラス3の破魔師である。
もう一人は名前不明である。
いつも栗田と兵藤の後ろに佇んでいる。
と、栗田が続ける。
「それでは、皆さん、毬渡しの練習をします」
毬渡し。要するにパスである。
「皆さん、二人一組でペアを組んでくださいね」
(え……?)
「「「「はーい……!」」」」
続々と子供たちがペアを作り始める。
(あ……まずい……)
「えーと、残ったのは界くんと…………雨さんだね」
(……!)
「二人とも毬蹴りは初めてだと思うけど、大丈夫そうかな?」
「あ、はい……!」
界は慌てて返事をする。
雨はというと、こくりと頷いていた。
その後、界は雨の元へと行く。
「あ、あの……雨さん、よろしくお願いします」
「…………よろしく」
雨は小学生低学年くらいの少女である。
綺麗な肩くらいまでの黒髪で、小学生らしからぬ、どこか物憂げで大人びた雰囲気のある少女だ。
加えて、一般的に見て、極めて容姿の整った少女であった。
「…………界くん」
「あ、はい……」
(名前覚えててくれてたんだ……)
「あなたって鬼神ドウマ様の依代の子なんでしょ?」
「え、あ、まぁ……そうです」
「…………そう……すごいわね」
「え……!? あ、ありがとうございます……」
「…………」
(……その、えーと、何がすごいのでしょう……?)
「それじゃあ、毬蹴りを始めましょう」
「あ、はい……」
界と雨は距離を取る。
そして、なにげなく雨が界に向けて、毬を蹴る。
「っ………………!?」
(えぇ……!?)
その毬は、まるで弾丸のように、界の頭の横を掠めた。
ギリギリ反応して首を曲げていなかったら、今頃はデュラハンのようになっていたかもしれない。
「ごめんなさい……界くん……私、毬蹴りは初めてで……」
「そ、その割にとてもよいミートで……」
(…………いや、初めての威力じゃないだろ……。でも……この人……多分…………めっちゃ強い人じゃん)
界は自分が強くなるために、吸収できるものを持っていそうな人物を発見し、わくわくしてくる。
結局、その後、界と雨は普通に
雨のキックは最初の一発だけ強過ぎたけど、その後はちゃんとコントロールされた球を蹴ってくれた。
「あ、ごめん、界くん、ちょっとずれた……」
「大丈夫です。雨さん、いきまーす」
「……はい」
こんな感じで、二人は子供にしては、少し思いやりのある大人びた会話をしながら、
そうして
【なぁ、小僧介……それは……やめにしておかないか? なぁ……?】
「(ダメだ……)」
【や、やめ……】
もぐもぐもぐ。
(……うまっ)
界は昼食として出されていた肉じゃがに入っていた椎茸を
【うげぇっふ】
頭の中で、ドウマが変な音を出している。
天下のドウマ様の弱点。椎茸である。
界とドウマは基本的に五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を共有している。
そのため、こういった事態が起きるのである。
【…………肉じゃがに椎茸は不要。できれば餃子や春巻きの類にも入れるべからず……】
それだけ言い残し、ドウマは静かになる。
と、
「お隣いい?」
(お……?)
一人で食事をしていた界の元に、おぼんを持った一人の少女が現れる。
それは雨であった。
「……どうぞ」
「ありがと……」
雨は界の隣に座り、食事を摂り始める。
「「…………」」
(…………え、えーと)
雨の方から隣りに来たのにしばらく無言で、食事を食べ続ける。
なぜか時折、周囲を警戒するように首を左右に振っている。
界は会話がないことに少し気まずくなる。
(……どうしよう。こっちから話した方がいいのかな。一応、精神年齢大人として……)
などと思っていると……、
「界くん、あなたって……」
(……!)
雨の方から口を開いてくれる。
「あなたって、本当に鬼神ドウマ様の依代の子なの?」
「……! え、あ、あい……」
界が答えると、雨はじっと界の頭を見つめる。
「……本当にドウマ様がそこにいるの?」
「あい」
【いるわ】
ドウマもぶっきらぼうに答える。
雨には聞こえないが。
「…………というか、ひょっとしてあなた自身がドウマ様なのでしょうか?」
(……! この質問は…………要するに今も俺はドウマに乗っ取られ真っ最中で、実はドウマの性格が意外といい人説を疑っているってことかな……さて、どう答えるか……)
「…………うーん、よくわかんない」
「そ、そうよね……。ごめんなさい、変な質問して……」
雨はそう言って、少し頭を下げる。
そんな様子を見て、界はふと思う。
(この雨さんは……俺がドウマの依代の子だと知ってるのに、そんなに脅えていないな……)
今まで出会った、界がドウマの依代の子であると知っている人は大抵、へりくだった態度をしていたが、雨にはそれがなかった。
(まぁ、雨さんも大人っぽく見えるけど、実際は子供だしな……。年齢、何歳くらいなんだろ……)
界は聞いてみることにした。
「雨さんはえーと、小学生ですか?」
「ええそうよ……小学二年生、七歳よ」
「そうなんだね。僕は五歳だよ」
(…………七歳か)
年齢が思ったより小さかったことと
「界くん、実はね……私も依代の子だったんだ……」
「……!」
(…………ひょっとしたらと思ったら、やっぱりか……)
「私はね……〝雪女アサネ〟の〝元〟依代の子」
【ほーん、アサネか……】
(「ドウマ、知ってるの?」)
【ん……? そりゃあな……。〝日本
(日本八柱の慰霊……? 聞いたことないけど、ひょっとしてドウマもその一角なのかな? というか、ドウマは悪霊のことを〝
「…………元依代の子はね……、あっ、んーん、この話はやめておくね」
雨はなにかを言おうとして、やめる。
と、
【霊が抜けた元依代の子は一部の阿保からは〝悪抜け〟などと呼ばれる】
なぜかドウマがそんなことを語りだす。
【それまでの傍若無人な行いから、差別的な視線を向けられることも多い】
それは正に雨が言おうとして、やめた内容であった。
これから元依代の子になる幼い界に伝える内容ではないと思ったのだ。
【依代の子のおかげで慰霊の怒りを抑えられているというのに……なんとも愚かな行為だ……】
ドウマは少し物憂げに言う。
(…………それ、ほっといたら傍若無人に振る舞いそうなドウマさんが言う?)
と界は少し思うが、なんとなく事情がありそうな気配がしたので、ドウマに伝えるのはやめておいた。
(って、ちょっと待てよ。ひょっとして、依代の子って、慰霊が抜けたら、保護観察になるのかな? ん……? 待てよ……。ということは、うまいこと
ちょっと悲しい事実に気付き、界は若干、憂鬱な気分になる。
(…………まぁ、それよりは目の前のことを考えよう)
と、
(ん……?)
また、雨が何かに怯えるように周囲をキョロキョロしている。
「……どうしたの? 雨さん」
「……! ……誰かに見られているような……あ、えーと、ごめん、気にしないで……」
(…………なんだろ? ストーカー的な?)
その日は、それ以上のことはなかった。
だが、この日から界と雨はなんとなく一緒に行動することが多くなった。
数日後――。
「それではー、今日は〝魔力制御〟の訓練を行うぞ」
柔和系教官の栗田が子供たちに号令をかける。
(……え? 魔力制御……?)
「魔力発現がまだの者は魔力発現の練習。すでにできるものは初級妖術の練習を行う」