【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜 作:広路なゆる
「魔力発現がまだの者は魔力発現の練習。すでにできるものは初級妖術の練習を行う」
その日、界達は魔力制御の訓練を行うこととなった。
界と雨を除く四人の子供たちは魔力発現の練習をすることになる。
魔力発現の平均年齢は10歳である。
しかし、練習自体はそれよりもかなり前から少しずつ始めるのが一般的だ。
早い子では3歳くらいから始める家庭もある程だ。
「よし、それじゃあ、一人ずつやっていこうね」
柔和系おじさん教官の栗田の号令で、まずは四人の子供たちが順番に魔力発現の練習を披露していく。
「んんーー、えい!」
「やぁあああ!」
「ぬぬぬぬぅ」
「…………にゅん!」
しかし、そんなに簡単に発現するものではない。
「うんうん、皆、もう少し肩の力抜こうなー。でも大丈夫、上出来だよ。心配しなくても大丈夫。魔力発現ってのはある日、突然できるようになるものだから」
栗田はしゅんと落ち込んでいる子供たちを励ます。
「それじゃあ、次は銀山雨さん。雨さんもここでの魔力制御の訓練は初めてだよね」
「……はい」
「雨さんはそれじゃあ、初級妖術をやろうか」
雨は元依代の子であるため、すでに妖術を会得済みだ。
元依代の子の多くは若くして、妖術を使うことができるようになる。
だが、
「大丈夫、ここにはクラス3の破魔師も二人いる。もしも暴発しても大丈夫。落ち着いてやろう」
栗田はそう言って、雨を励ます。
(「……暴発?」)
【……依代の子ってのは、生まれた時から慰霊の魔力で、タガが無理矢理、外されているような状態なんだよ】
(「……な、なるほど。ドウマがやろうとした奴ね」)
【あん……!? そんな生意気なこと言うと、教えてやらんぞ! まぁ、そうなんだけど……】
(「ごめんて」)
【まぁ、だから、慰霊が抜けた後は、感覚がずれて魔力の制御に苦しむ子が多いのは事実だな。その子本来の属性を慰霊によって上書きされている場合も多いからな】
(「……そうなんだね」)
界は赤池が言っていたことを思い出す。
『そもそも悪憑の子ってのはね、七歳で悪霊が抜けた後はただの抜け殻。それまでの悪霊の支配がかえって邪魔になり、大成しないと言われている』
(…………大成しないか)
そして、少しだけどんよりとした気持ちになる。
自分は違うと思いたいが、過去の事例や統計というものは、往々にしてその通りになることが多いのだ。
(多くの人に認められる……みたいな大成がしたいわけではないけれど、せめて大事な人を守れるようにはなりたいな……)
界がそんなことを考えているうちに、
「では、いきます」
雨は準備を整え、そして、手を前方にかざす。
と、
「ひゅー、どんな爆弾が拝めるやら……」
数日間、おとなしかったいびり教官の兵藤が皮肉めいたことを言う。
(「あんにゃろ……」)【あの野郎ぉ……】
(……! ……えーと)【……! ……え、あ、おう……】
思いがけず、界とドウマがシンクロしてしまい、なんかちょっと気まずくなる。
しかし、雨は淡々と続ける。
「水術〝
水術〝
水の輪を飛ばすことで、
雨の手の平に、直径50センチほどの水の輪が発生する。
非常に整った美しい輪だ。
「「え……?」」
それを見て、教官達は驚きの声をあげる。
更に、水の輪が、氷結した円環へと変化していく。
(「……氷? 綺麗だ……」)
【……ほーん、あの小娘、元依代の子にしては魔力が乱れていないな……】
ドウマのその言葉が全てを現していた。
だから、教官達も驚いているのだ。
通常、元依代の子が繰り出す妖術はいびつな形に乱れ、うまく制御することができないのだ。
(「さっき、感覚がずれて魔力の制御に苦しむ子が多いって言ってたけど、雨さんはそうじゃなさそうってこと?」)
【まぁ、そうだ。偶然、
(「なるほど……」)
(…………雨さん、すご……)
「上手じゃないか、雨さん……!」
「……っ」
栗田は雨を称賛し、兵藤は気まずい顔をしていた。
「えーと、それじゃあ、次は……」
雨の番が終わると、皆が界の方を向く。
「界くんはどうしますか? やってもやらなくても、どちらでもよいですよ」
栗田も流石にドウマは怖いのか、そんなことを言う。
(……うーむ、父に言われている通り、光の魔力を出すわけにもいかないし、ここはスキップ……。っ……!?)
スキップしようとした界であったが、他の子供たちが疎ましそうに界を見ていることに気付く。
「……う」
(……雨さん以外はどういう事情で保護観察にされているのかわからないけど、俺が一番年下なのに、なんかちょっと特別扱いされててな……、他の子の視線がちょっと痛い……。かといって光の魔力を出すわけにもいかない……)
「…………」
(「なぁ、ドウマ……ちょっと折り入って頼みがあるのだが…………魔力貸して。返せないけど」)
【いいよー】
(「え……? い、いいの……!?」)
【うむ、構わない】
(「こ、こういっちゃなんですが……なんでいいんですか?」)
【なんだ? いらぬのか?】
(「あ、ごめん。そういうわけじゃ……」)
【……なぜ許可したか。そんなのは簡単だ】
(「……」)
【頼み方が誠実であったから】
(「……!」)
【頼み事であることを誤魔化さず、返せないことも誤魔化さず。当たり前のことだろう?】
(…………このドウマさん、時々、至極まともなことを言うから困る……)
「か、界くん……どうするかな?」
柔和系おじさん教官の栗田が界に確認する。
「あ、あい……やります!」
「お、そ、そうか……」
(「ドウマ……それじゃあ、ドウマの魔力の使用を一部、容認するから、好きにやってくれ……」)
【うむ】
(……よし、それじゃあ…………魔力の〝蛇口〟を一部、開放して……)
界は脳内イメージの中で、ドウマ魔力水が流れる蛇口を慎重にひねる。
ここまでなら、確実に乗っ取られることはないというところまで。
(……)
そうして、蛇口をひねっているうちに、界はふと思う。
(「……ごめんな、ドウマ……」)
【ん……? なにがだ?】
(「……その……まだ100%信用することができなくて……」)
界の心は、この蛇口を思いっきりひねってもいいのではないかと思える程に……。
【別に…………慎重な奴は嫌いではない。儂様がそうではなかったから】
(……!)
【さぁ、そろそろだろ?】
(「あ、うん……」)
【やるのは……炎術〝
(「わかった」)
界は腕を前に出し、手の平を上に向ける。
そして、魔力の使用権をドウマに譲渡する。
「炎術〝蛍火〟」【炎術〝蛍火〟】
「「「「っ……」」」
その
栗田、兵藤、雨、そして界だ。
「…………う、美しい……」
栗田は思わず、そう零し、頬には一筋の涙がつたっていた。
大袈裟ではなく、本当に涙していた。
ドウマの蛍火は、暗黒の炎。
炎は真球となり、静寂する。
風に揺らめくこともなく、まるで時が止まっているかのように、
(……)
界もまたドウマの放つ暗黒の煌めきに、心を動かされた一人であった。
その時、界の頭の中に、魔力を通じて、ドウマの思念が流れ込んでくる。
ひたむきに修練に打ち込む様子がまるでドウマ視点の映像のようにインプットされる。
(どれだけ……。どれだけ…………
血の滲むような努力。技への敬意と執着心。
それは普段のドウマの悪態からは想像もつかないほどの誠実さであった。
(「ドウマ…………ドウマってそのやっぱりすごいんだね……」)
【はっ!? 急にどうした!?】
(「いや、すごいなって思って……すまん、語彙力なくて」)
【…………儂様から見れば、
(…………? たすけ……? ……あっ、界だから
界は思う。
(一応、かいの漢字読みは知ってたんだな……)
そうして、ドウマのおかげで界はひとまず魔力制御の訓練を乗り越えた(?)のであった。
と、界は肩をちょいちょいと突かれる。
(ん……?)
振り返ると、それは雨であった。
「どうしたの? 雨さん」
「か、界くん……あの……もしよかったらだけど、私に修行つけてくれないかな?」
(ん……?? 私と修行しようの言い間違いかな……? でも……願ってもない。俺も今ちょうど、修行熱に火がついていたからね……!)
「是非、お願いします」
「よかった……。それじゃあ、界くん、自由時間に静寂の間で……」
「き、君達、それを勝手に決めるのは……!」
それを聞いていた兵藤が制止しようとするが、
【あ゛!?】
先ほどの蛍火とは打って変わって、ドウマは邪悪なオーラを垂れ流す。
「ひっ……、ど、どうぞ……」
(あ、やべ……、蛇口開放したままだった)
「あ、えーと、でもね……界くん……? それでも一応ね、管理下でやってもらわないと……」
栗田はかなり気が進まなそうであるが、しかし、寂護院教官としての役割を放棄するわけにもいかず、界にそう告げる。
(まぁ、それが仕事だし、しょうがないよな……)
「そ、それじゃあ、栗田先生、お願いしてもいいでしょうか? 栗田先生にとっても貴重な自由時間に恐縮ですが……」
「……先生!? は、はい、私でよければ是非に……!」
そうして、界は雨と栗田と修行できることになった。