【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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17.本当に微量か?

 少し時間を(さかのぼ)る。

 

 院長室にて――。

 

 界の目の前には早急な処置を要する篝火堂院長がいた。

 しかし、静寂の間では、間もなく封印が解かれ、力を解放する狒々が雨に迫っている。

 

(雨さんか、篝火堂院長か……どちらかを選ばないと…………いけないのか……?)

 

 界は目の前の状況に苦悩していた。

 

「…………悩んでる時間なんかねえ……! うぉおおおおおお!!」

 

 界は小さな身体で篝火堂を背負おうとする。

 

「し、白神くん……、何をしている……? 君だけでも早く逃げるんだ……」

 

「うるさいです。少し黙っててください」

 

「っ……!」

 

(あぁあ、しまったー! 目上の人に偉そうな口を! って、それどころじゃないのよ! こっちだって、頭の中、ぐちゃぐちゃなんだよ……! 本当に……本当に……どちらか片方しか選べないなら、俺は……雨さんを選ぶ)

 

「だけど、少しでも両方を救える可能性があるのなら……!」

 

【田介……一応、言っておくが、二兎を追う者は一兎をも得ず……だぞ?】

 

(「わかってる。だけど、二兎を追わぬ者は二兎を得ずだ」)

 

【……!】

 

「大丈夫……、壁の効果はまだ切れてない……」

 

【……】

 

「うぉおおおおおお!!」

 

 界は雷術で己の肉体を限界まで強化し、自分より遥かに大きい篝火堂を運ぼうとする。

 

 と、

 

【…………田介……お前の雷術は無駄が多い】

 

(っ……、わかってるよ……! 俺の妖術がドウマの領域には程遠いってことくらい……!)

 

【…………田介、今回、お前は(あの小娘)の言葉を信じたな? 信じて、篝火堂(この女)を頼ろうとした】

 

(っ……、何言ってんだ? こんな時に……)

 

【それが、今のこの事態を招いている】

 

(……)

 

【……他人の人柄を信じるのは構わない。だが、他人の力を信じるな】

 

(っ……)

 

 界はドウマの言葉にはっとする。

 なおも、ドウマは続ける。

 

【いいな? 他人の力は信じるな。そして……()()()()()()()()

 

(っ……!)

 

【わかったなら、儂様に魔力の使用権を寄越せ】

 

(「えっ……?」)

 

【見せてやろうぞ、雷術の正しい使い方って奴を……】

 

(「それってつまり……ドウマが雨さんと篝火堂院長のために、手助けしてくれるってこと? ……なんで?」)

 

【……この戦い。例え獣風情(けものふぜい)を倒せたとしても、(小娘)篝火堂(その女)、どちらかが死ねば負け……。お人好しのお前はそう思うのだろう……?】

 

(「…………そうかもしれない」)

 

【ならばわかるだろ? 田介……、〝お前の覇道に敗北の二文字は不要だ〟】

 

(「……!」)

 

【分かったなら早く寄越せ……! 憎たらしいことに儂様に乗っ取られないように魔力量を調整できるのだろ? お前は……!】

 

(「…………わかった。ありがとう、ドウマ」)

 

 ◇

 

 そして現在――。

 

「雨さん……! 治癒術できる……!?」

 

「っ……、す、少しなら……」

 

「篝火堂院長をお願い……!」

 

 界が咄嗟に思い付いた雨と篝火堂、両方を救う方法。

 それは雨にも蘇生の役割を担ってもらうという方法であった。

 

 だから、篝火堂を背負って静寂の間までやってきた。

 

 と、

 

「アサネトオデノ邪魔ヲスルナぁ!」

 

(っ……!)

 

「界くん……!」

 

 狒々が界の居た地面に拳を思いっ切り叩き付ける。

 

(……あっぶね)

 

 界はなんとか回避して、冷や汗をかく。

 

 実際のところ狒々は雨に対して、手加減をしていた。

 

 それは狒々の目的がアサネ(雨)を手中に収めることであったから。

 

 しかし、相手が界となれば、それは違う。

 

 全力で存在を滅ぼしに掛かってくる。

 

「邪魔ヲスルナっ……! 邪魔ヲスルナっ……! 邪魔ヲスルナぁ……!」

 

 狒々は連続して、界に攻撃を仕掛けてくる。

 

 界はひとまず雷術を駆使しながら、それを回避する。

 

(…………流石にクラス5に勝つだけはある……。すごい力だ……)

 

 狒々の攻撃の勢いに、界も少し気負わされる。

 

(…………だけど)

 

 界は手の平を前に突き出す。

 

 と、

 

【おい、田介……】

 

 頭の中で、ドウマが口を出す。

 

(「へ……?」)

 

【今、お前……魄術(はくじゅつ)を使おうとしたな?】

 

(「え……、そうだけど……」)

 

【お前、寂護院(ここ)では光属性を使わないんじゃなかったのか?】

 

(「い、いや……そうだけど、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょっ!」)

 

【……なんか嫌だ。光属性を使ったら負けた気がする】

 

(「負けって……、な、なんなのさ、その(こだわ)りは!? ってか、もう一回使っちゃってるしな……」)

 

【……それは発動してないからノーカウント】

 

「のわっ!?」

 

 その間にも狒々は攻撃を続けており、界はなんとか回避を続ける。

 

(「だ、だがよ、ドウマ……、ドウマの魔力は微量しか解放できないし……」)

 

【ふむ……】

 

(ふむって……)

 

 ドウマはしばらく考えた後、再び語り出す。

 

【ところで田介よ……。儂様がどうしてあの獣風情(けものふぜい)の存在に気付いていなかったか? 分かるか?】

 

(「え……?」)

 

(……なんで今、そんなこと聞くんだよー!)

 

(「…………探知が、からっきし苦手とか……?」)

 

【…………まぁ、それもある……が、それだけじゃない】

 

(「……え? ……じゃあ、なに?」)

 

【…………奴が儂様にとって、取るに足らない程の存在であったから】

 

(……! 冗談だろ……? 狒々(こいつ)はクラス5〝力級〟に勝つほどの力だぞ……?)

 

【そして、田介……もう一つ、問おう。……お前が微量しか解放できないと思っているその魔力…………()()()()()()?】

 

(……!!)

 

 

「コザカシイ……! アサネトオデノ邪魔ヲ…………邪魔ヲ……じゃ、ジャ……」

 

 

 

 突然、狒々の動きが止まる。

 

 

 

 狒々の視線の先には、禍々しい闇の魔力を孕んだ幼子(おさなご)がいた。

 

 

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