【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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18.ねじ伏せる

「レ、裂牙(レツガ)ぁ」

 

 生理的な恐怖を覚えた狒々は、ターゲットの幼子(おさなご)に襲い掛かる。

 その鋭い牙で界を噛み殺そうとする。

 

 だが、

 

「……ダデ?」

 

 狒々が嚙み砕いたのは空気であった。

 そこにいたはずのターゲットは無くなっていた。

 

「雷術〝迅雷躰(じんらいたい)〟」

 

「……ダ!?」

 

 ぼそりと呟かれた技名が耳に入り、狒々は振り返る。

 

 そこには、黒い電弧(アーク)をまとった界がいた。

 

「イ、一瞬デ……!?」

 

 狒々は界の動きが全く可視できておらず、焦燥にかられる。

 

 そして、

 

「ゴ、轟天衝(ゴウテンショウ)……!」

 

 床が損傷する程、強く地面を蹴り、界への突進を試みる。

 

 しかし、

 

「風術〝風縛(ふうばく)〟」

 

「……ナ、ナンデ?」

 

 界までの距離、50センチというところで、身体が完全に停止してしまう。

 

 風圧が狒々の進行を妨げていた。

 

【流石に壁っぽい技のセンスはいいな……】

 

(…………そ、そうかな……)

 

 狒々が自身の攻撃を完封され、生理的な恐怖を感じていたとき……、

 

 界もまた必死であった。

 

(……ドウマによると、俺が微量だと思っていた魔力は普通からすると、めちゃくちゃ多いらしい。ただ……、魔力を多く持っていることと、その魔力を使うことは全くの別物だ。俺の妖術はまだまだ(つたな)い。要するにMPだけ大量にあっても、それを有効に使えなければ宝の持ち腐れだ)

 

「ウボォオオオ! アサネトオデノ邪魔ヲスルナ! アサネトオデノ!!」

 

(う、うわ、なんかあいつ興奮してるよ! やばくないか……!)

 

 

猛爪乱舞(モウソウランブ)!!」

 

 

 狒々はその鋭く長い爪を凄まじい勢いで振り回し、逃げ道を塞ぐように、界に接近してきていた。

 

 と、

 

【田介……】

 

(「お……?」)

 

 ドウマが語り掛けてきた。

 

【お前の妖術は確かにまだまだ成長の余地がある。磨けば、より研ぎ澄まされた妖術を扱えるようになるだろうし、今はまだお前より洗練された妖術を使える者も多いだろう】

 

(「……うん」)

 

【だがな……お前は誰かが一生を懸けて、積み上げ磨き上げてきた技を……()()()()()ことができる】

 

(「……!?」)

 

 その時、界の身体中を熱い何かが駆け巡る感覚がした。

 界はその感覚が何かを知っている。

 

(「……ど、ドウマ……これって……」)

 

【あぁ……儂様の持つ〝術ノ書〟だ】

 

〝術ノ書〟、それは妖術を扱うための教科書である。

 通常であれば本の形をした術ノ書に触れることで、その技の情報をインプットできる。

 しかし、ドウマは以前、ドウマならば、本なしでも術の情報を注入できる旨の発言をしていたのだ。

 

 界は今まさにドウマにより術ノ書を注入されたのだと理解する。

 

(「だけど、俺……一発でできるかな……? 妖術の時も響術の時だって……最初の挑戦では失敗した……」)

 

【何を言うかと思えば、そんなことか……? 最初の挑戦では失敗しただと……? お前は初めて儂様の魔力を止めた時のことを忘れたのか?】

 

(「……!」)

 

【お前は生まれた直後に、世界で最も難しいことをやってのけた。それから今までずっと、それを継続してきた。つまり、お前は本番に強い。だから……できる……。()()()()()()

 

(「……!」)

 

【儂様が心配しているのは、むしろ別のことだ。己の力を正しく理解することは重要だ。だが、天狗になるなよ。慢心は必ず身を滅ぼす】

 

(「…………肝に銘じる」)

 

「ウボォオオオ! アサネ、オデノ! アサネ、オデノ!! 邪魔モノ、潰ス!」

 

「人違いだろ? アサネじゃなくて、雨さんだ」

 

「っ、…………界くん……」

 

 そうして、界は右手を前に出し、手の平を狒々に向ける。

 

 闇が広がり、そこだけ時間が止まっているかのようであった。界の手の平から黒い煙が立ち上り、周囲の空間が歪み始める。

 次の瞬間、黒蓮の花が開き、紫黒の光を放ちながら、冥界の炎がゆっくりと姿を現す。

 

【魔力なき者には扱うことすら叶わぬ、奥義……。それは多少、拙くとも、地道な修練により積み上げた匠の技を非情にもねじ伏せる】

 

 

闇炎術(あんえんじゅつ)黒蓮冥火(こくれんめいか)〟」

 

 

 ただただ暗い……暗黒の炎が狒々を包み込む。

 

 

 

 

「ガァアアアアア……! コンナ小童ニ……コノオデサマガ負ケルワケ……オデノ……オデノアサ……、ア……」

 

 その瞬間、炎の火力が上昇する。

 

「ゃメぇえええええええ…………」

 

 

 

 そして狒々は塵となる。

 

 

 

「なんだ……、ちゃんと言えるじゃん? (アメ)って……」

 

【……ははっ……、なんと強引な……。というか、アゃメになってなかったか?】

 

「細かいことは気にしない」

 

 




次話、顛末【一部、雨視点】
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