【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜 作:広路なゆる
2016年4月10日(父母の命日まであと4日)。
界は九州に来ていた。
家と家の間隔が100メートルくらいありそうな田舎道を進みながら、界は思う。
(いや、まさかチャーター機で来ることになるとはな……)
父と母と界は、破魔師協会の準備したプライベートジェットで九州に来た。
それは界が鬼神ドウマの依代の子だから。
万が一のことを考える必要があった。
空中で閉鎖された空間で多くの人が搭乗する飛行機に、界を乗せるわけにはいかなかったのだ。
(あの駄々こねが、まさかこんな大袈裟なことになるとは……)
界は少し申し訳ない気持ちになる。
だが、
父母と離れるわけにはいかない確固たる理由があった。
「界、もうすぐ着くぞー」
背中越しに父の声が聞こえる。
実は現在、界は父におんぶされているのだ。
「よく我慢したな。こんな遠くまで」
最寄りのバス停からすでに3キロくらいは歩いていた。
「子供の足にはちょっと遠いよな」
「ウン……僕、疲レチャッタヨー」
界は極力子供らしくそんなことを言う。
「母さんニモオンブシテ欲シイヨー」
「えっ? でも母さんはなぁ……」
父は母に配慮しているようであった。
「いいわよ。界がこんなこと言うの珍しいし、私も界をおんぶしたい」
「そうか、そうだよな」
「ワーイ」
そうして、界は父の背中から母の背中によじよじと移動する。
【何をやってるんだか……】
(「仕方ないだろ……! 大事なことだ」)
【はいはい……。って、ん? やはり女の背中の方が、こう……なんていうか……柔らかいな……。うむ……こちらの方が心地が良い……】
(「…………おっさんめ……」)
【はぁっ!? い、言っておくがな、儂様は……】
ドウマが何かを抗議しようとした時、
「ほら、界、着いたぞ」
父が目的地への到着を告げる。
(お……!)
そこは田舎のど真ん中にある大きな屋敷であった。
七代名家の一つ、
家に到着し、呼び鈴を押す。
しばらくすると、出迎えが来てくれた。
「おぉお、彰彦! 真弓さん! それに、君は界くんだね。わざわざこんな田舎までありがとう……ございます!」
「「「こんにちは」」」
父母と同世代らしき優しそうな男性一人と、女性三人が出迎えてくれる。
女性の中にはお腹が大きくなった妊婦も一人いた。
青海家当主とその妻
「彰彦、遠かっただろ? 言ってくれれば、車を出したのに……」
「いやいや、こういう道を散歩したかったんだよ」
父と青海はそんな会話をしていた。
界はふと妊婦さんのお腹に視線が行く。
(この方が……)
これから依代の子を生む母であった。
少し時を
今回の青海家訪問の目的を界は貸し切り飛行機の中で話していた。
「母さん、寝ちゃったね……」
「そうだな……。久しぶりに子供の世話から解放されたからな。父ちゃんが仕事の間、母さんは
「あ、うん」
「子供の世話をするってのは、大人同士とはまた違った方向の大変さが…………って、子供の界にこんなこと言ったらダメか……!」
「あ、うーん、どうだろ……」
(どちらかと言うと、ダメだな……)
「どうにも界は大人びていてな……うっかりだ……!」
(まぁ、精神は大人だし、間違ってはいない……)
「ところで、父ちゃん、青海家に行く目的ってなんなの?」
「…………あぁ、えーとな……」
父は少し
「父ちゃん、僕は破魔師になるんだよ。ちゃんと教えて……」
界は父をしっかりと見つめて、真剣に言う。
「…………そういうところが大人っぽいんだよなぁ……」
父は困ったように頭を搔く。
実際のところ、クラス4の赤池の撃破、クラス5以上の狒々の撃破(どちらも公にはされていないが父は知っている)。
この事実から、界はすでに一握りの破魔師と同等以上の力があるのは明白であった。
「わかったよ……」
父は諦めたように語りだす。
「青海さんの正妻……」
(……)
「
「……!」
「つまり、依代の子を
「……そ、そう……、ちなみに……どの慰霊かってわかるの?」
(ドウマの時も分かっていたから、きっと何かしら事前にわかる方法があるはずだ)
「あぁ、
「なるほど……、それで誰なの?」
「…………日本八柱の慰霊の一柱、〝聖乱テンシ〟だ」
(……! 雪女アサネと同じ……日本八柱の慰霊の一角!?)
(「聖乱テンシ……。ドウマ、知ってる……?」)
【ん? あぁ、まぁ……、好きか嫌いかで言えば、嫌い】
(……知ってはいるのね)
◇
その後、界はこれはチャンスだ! と、父から慰霊や依代の子、破魔師の家系について聞いてみた。
5歳の誕生日プレゼントのWi○UによるWEBブラウジングを得て、知っている情報もあったが、いくつかの情報を教えてもらえた。
まず、慰霊は日本八柱の慰霊だけではない。
それ以外にも多数存在する。
慰霊ごとに降霊の周期が異なり、更にブレ幅も大きいため、正確な予想は困難である。
慰霊は破魔師の家系の妊婦に降霊し、妊娠した時に
基本的に破魔師の家系であれば、どの家庭にも降霊の可能性はあるが、八柱の慰霊など上位の慰霊は必ず七代名家に降霊する。
例え、力の劣る慰霊であっても、悪霊降霊の儀(正式には
そんな事情もあり、破魔師は側室(一夫多妻)が許されていた。
「父ちゃんは母さん一人なんだよね?」
「え? あ、あぁ……、結構、周りからの圧が辛いところだが、父ちゃんは母さんだけがよかったんだ……」
「……!」
(……あくまでも前世の一夫一妻制の価値観を持つからというのもあると思うが、俺からすると、そんな父ちゃんはかっこいいと思う)
「でも、父ちゃん……女性はそんな危険があるのに、どうして破魔師の家系に嫁ぐの?」
「……っ!? そ、そうだな……。考えたこともなかったな……」
(え……? まじか……。この世界では、そういう価値観が根付いていて、気づいてないってことか?)
【……〝呪い〟だ】
(……え?)
【〝母親殺しの呪い〟……鎮霊の儀が生み出された際に、埋め込まれた強力な呪いだ。破魔師は全員この呪いに掛っている。母親殺しの呪いについて、いざそれが直前に迫るまで恐怖しないのもその呪いの効果の一つだ】
(…………なるほど。……ドウマですら逃れることができない呪いってことだよな……? 〝鎮霊の儀〟……、一体、どんな経緯で始まったのだろうか……)
「とはいえ、界、依代の子を孕む確率はそう高くないんだ……。普段はな……」
(……!)
「周期が重なることがあるのだろうか……。最近、すごく多い」
「……そうなんだね」
【ところで、田介よーー、儂様の史実調べたー?】
(「いや、視覚共有してるんだから、知ってるでしょ! 調べてないよ」)
【なんでなんだよー!】
(……正直言うと、すごく調べたい。調べたいけど……なんかこう……事ある毎に【儂様の史実調べたー?】って、言ってくるから、逆にちょっと照れくさくて調べ
【…………なんかここまで
(「ん……?」)
【あ、いや、なんでもないぞ……!】
(……? ……なんとかドウマに悟られずに調べる方法はないだろうか)
「だがな、界……」
「え? あ、うん……」
「忘れてはならないことがある。慰霊の方々はな……、多少、横暴かもしれない……」
【ん? 横暴だと?】
(……わりと横暴な方でしょ)
「しかしな、慰霊の方々は慰霊となることを受け入れてくださった方々なのだ」
「……!」
【……】
「慰霊の方々は、誠意を持って話せばわかってくれる方もいる。怒りのポイントが独特で基本、絡みづらいけどな……」
【おい】
(父ちゃん、ドウマの前で堂々とそんなこと……)
「だからな、本当に人にとって危険なのは、慰霊ではない……。〝霊魔〟だ。界も破魔師になるのであれば、この点を決して忘れるな」
「……わかった」
◇
そうして、今に至る。
青海家――。
「さぁさぁ、彰彦、真弓さん、界くん、入って入って……ください」
青海家当主に屋敷の中へ案内される。
日本八柱の一角〝聖乱テンシ〟が降霊されるから、他の七代名家も一堂に会している……のかと、界は思っていたが、そうでもなく、来ているのは白神家だけであった。
どうやら父と青海は旧来の友人らしい。
(それにしても青海ねぇ……どっかで聞いたことあるような……)
と、
「あ、
(お……?)
「こ、こんにちはです。
小学生低学年くらい。
少し青味がかったショートヘアの可愛らしい女の子がぺこりと頭を下げる。
(ん……? どこかで……)
「………………」
(あ! こ、この子、魔力発現の動画に出てた天才の子だ……!)
現在から、四年程前。界が二歳、暁が四歳の時に観た動画である。
「ぬぬぬ? 君が……界くんなのですか?」
暁はなぜか早速、界にターゲティングする。
「え、あ、はい……」
「わぁ……! か、界くん……!」
「はい」
「私と稽古しようです!」
(え……? いきなり……?)
暁初登場については3話参照!