【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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03.魔力

 界が生まれ変わり、二年ほどが過ぎた。

 そんなある日のこと。

 

(ん……?)

 

 夜遅くに、ひそひそ声が聞こえてくる。

 それは父と母の会話であった。

 

「え……? また監視用の式神が……?」

「あぁ……すでに破壊しておいた……」

「ありがとう……でも、これで何回目かしら……」

「もう数えるのを止めた程だ」

「……やっぱり……界のことを監視しようとしているのよね」

「そうだろう……決められた報告書は嘘偽りなく、しっかり提出しているのに……!」

「……そうね。それでも信じられない人たちがいるのでしょうね」

「あぁ…………だが、そいつらの好きにはさせない。界は俺の命に代えても必ず守る」

「…………私も同じ気持ちよ」

 

(…………)

 

 界は二人の会話を聞いてしまった。

 

(命がけ……というのが大げさではないのがこの世界なんだろうな……)

 

 そして、思う。

 二人が自分を守らなくていいように。

 

(なにか準備できることはないだろうか……)

 

 そう考えた末、界は一つの答えにいきつく。

 

(……俺自身が強くなる方法を考えよう)

 

 界は時が戻ったことでもう一度、両親に会うことができた。そんな奇跡とも呼ぶべき事象に感謝していた。

 さらに、今世においては、前世における自然災害はなぜか緩和されていた。

 だから、両親が被災した災害も起きずに死を回避できるかもしれないという希望もあった。

 それと同時に恐れていることがあった。

 

 それは〝運命の収束〟である。

 

 前世では界が六歳、すなわち今から四年後に両親は被災して亡くなった。

 それが形を変えて再現されてしまうのではないかという恐怖だ。

 

(なんとかして運命を変えて、父ちゃんと母さんを守りたい……)

 

 そんな決意をした深夜のことだ。

 界がむくりと起き上がる。

 

(……よし、母さんはよく眠っているな)

 

 母が熟睡していることを確認した界はこそこそと動き出す。

 二歳ともなれば徘徊なんてお手の物だ。

 

 狙うは母のスマートフォン。

 こんなこともあろうかと、こっそりと母のスマホのロック解除パスワードを覚えていたのだ。

 

(あったあった……)

 

 界はスマホをゲットする。

 

(うお、なんかこのスマホ……改めて見ると、なんかフォルムが絶妙にダサいな……)

 

 2012年はまだスマホが普及し始めてそれ程時間が経っていない頃であった。

 

(母さん、ごめんよ……見るのはWEBサイトだけだから……)

 

 そんなことを思いつつ、界はブラウザを起動する。

 界が母親のスマホを拝借してでも調べたかったもの。

 

(えーと……『魔力 使い方』とかでいいかな?)

 

 界は早速、そのワードで検索をかける。

 

 すると……、

 

(おぉ……)

 

 たくさんのページがヒットする。

 それもヒットしたのは『本当にできる魔術』とかオカルト寄りのサイトではない。

『魔力の基礎』とか『実践的な魔術の使い方』とか『猫でもわかる魔術講座』というように、それが当然できるものとして、存在している雰囲気を醸し出していた。

 

【おい、小僧……母親が使っていたからずっと気になってはいたのだが、その光る四角は何だ?】

 

(「あ、ドウマは知らないのか。これはスマホだよ」)

 

【スマホ……? 名称だけを言われてもさっぱりわからぬ】

 

(説明するの面倒だな……適当でいいか……)

 

(「まぁ、要するにこの箱の中に本が千億冊詰まっていると思ってくれればいい」)

 

【な、なんだと……!? 書物千億冊がその小さな箱の中に……!? 小僧……(わし)様がわからないと思って、からかっているな……! 嘘をつくでない……!】

 

(正確ではないかもだけど……嘘ではない……多分)

 

 界は説明するのがだるくなり、ドウマを無視して、魔術の使い方のサイトを閲覧する。

 

 すると、魔力の発現のコツを説明している動画があった。

 動画には、チャンネルの主らしき若い男と、可愛らしい4~5歳くらいの女の子が出演していた。

 

 =================================================

 

「はい、今日は天才幼児と言われている青海(あおみ)(あきら)ちゃんに来てもらいました~」

「こんにちは、はじめましてです」

「あらぁ、暁ちゃん、しっかりしてるね~」

「ありがとうございますです」

 

 男はテンション高めである。

 暁と呼ばれる少女は照れくさそうにしつつも、子供離れしたしっかりとした対応をしている。

 

「えーと、暁ちゃんは最近、魔力を発現することができたというのは本当なんですか?」

「はい、本当なのです」

「えっ!? マジですか!? いや、本当にすごいですね! えーと、今、何歳でしたっけ?」

「4歳になりましたです」

「うほっ! ……つまり4歳で初めて魔力を使ったってことですかね?」

「正確には3歳です。3歳11か月ですけど……」

「あぁ、失礼しました。3歳ですね。いやー、本当すごいですね。3歳で魔力を発現するなんて、前代未聞ですよ」

「恐れ入りますです」

「いやー、言葉遣いも大人びてて、びっくりなんですが……えーと、今日はそんな暁ちゃんに、魔力の使い方のコツを伝授してもらおうと……思いまーす! 暁ちゃん、いいですか?」

「はい……コツというとちょっと難しく、人それぞれかもしれないのですが、私の場合のお話をしますです」

「はい、お願いします」

「まずは、心を研ぎ澄まし、集中するです。そして〝呼吸を止める〟です」

「…………い、以上ですか?」

「はい、以上です」

「なるほどです……! いやー、天才過ぎて、参考にならなかったかもしれませんが……あ、暁ちゃん、ごめんね」

「……」

「えー、皆さんも是非、挑戦してみてくださいねー!」

 

 =================================================

 

(へぇ~、呼吸を止める……か……)

 

「…………」

 

(って、あれ? それって…………)

 

 界は〝ドウマの乗っ取りチャレンジ〟のことを思い起こす。

 

(「でも、早い子は3歳くらいで魔力が使えるんだな……俺ももう二歳だ。練習すればひょっとして……」)

 

 と、

 

【何を見るかと思えば、魔力の使い方だぁ?】

 

 ドウマが口を挟んでくる。

 

【何を今更、そんなものを見ているのだ?】

 

(「と、言うと……?」)

 

【お前なぁ……(わし)様は悲しいぜ……】

 

 ドウマは呆れたように言う。

 

【この(わし)様の超強力な魔力を……魔力なしで封じていたと思っていたのか?】

 

(ドウマによると、俺はすでに魔力発現をしているらしい……)

 

 それを知り、界はスマホを見つめながら呆然とする。

 

(「え……? ってことは、俺は生まれたその日に魔力発現したってこと?」)

 

【そうだ。この(わし)様ですら、初めて魔力を発現したのは二歳だったはず……。いや、別に羨んでないぞ……!】

 

「……」

 

 界は言葉を失う。

 

(で、でも……スポーツ界なんかで、天才少年と持て囃されてた選手が、いつの間にか無名の雑草選手に追い抜かれてたなんてことはよくある話だ……。慢心せずに謙虚に頑張ろう……)

 

 界はそう決意する。

 

(それじゃあ、早速、実践してみようかな……)

 

 界は生まれて初めて、自発的に魔力を使ってみようと試みる。

 

(まずは集中……)

 

 深呼吸して、息を整える。

 普段、ドウマからの乗っ取りチャレンジを受ける時のことをイメージする。

 

(そして…………呼吸を止める)

 

「……!?」

 

 溢れ出るようだった。

 内に秘めた力が次々に外に解放されていく。

 白く……たゆたうようなオーラだ。

 強い万能感が押し寄せてくる。

 

(…………できた……のか?)

 

 その時であった。

 

「ん……ん~……界……?」

 

(っ……! か、母さん……! やば……!)

 

 母がむくりと身体を起こし、目を(こす)っていた。

 

 界は慌てて、魔力を止め、

 

(はぁ……はぁ……止められてよかった……)

 

 そして狸寝入りする。

 

「界……なんでそんなところで寝てるの?」

 

(危な……ぎりバレなかったかな……)

 

 

 そんなことなかった。

 

 

 翌日――。

 

「ねぇ、あなた……! 昨日の夜……! 界から凄まじい光の魔力を感じたの……!」

 

「え!? 真弓! 本当か……!?」

 

「本当よ……! 私、見たの……!」

 

「やっぱり! 界は天才だ! 界! 父ちゃんにももう一度見せてくれ!」

 

 界の両肩をつかみ、鼻息を荒くした父が問い掛ける。

 

「…………だぁ?」

 

 もうある程度、言葉をしゃべれるのだが、界は咄嗟にとぼける。

 両親に、自分への過度な期待をさせたくなかったからだ。

 天才少年が伸び悩んでしまうことはよくあることだ。

 

「…………真弓……」

 

「あ……うん…………ごめん、夢だったかも……寝ぼけてたし……」

 

「だよな…………ドウマ様の闇の魔力があるのは分かってはいる。光の魔力の気配があるのもそうなんじゃないかと思ってしまってはいるのだが……。だが、凄まじい光の魔力を発現というのはな……。真弓……気持ちは分かるが、子供に過度な期待を寄せすぎるのは子供にとってもよくないと聞く」

 

「……そうよね、ごめんなさい」

 

「…………いや、こっちこそ言い過ぎた。それより…………界くんはかわいいでちゅねぇ」

 

(……ひっ!)

 

「真弓……! 魔力なんてなくたって、界は世界一、かわいいぞ!」

 

「そうね!」

 

(…………)

 

 

 その晩のこと。

 

 むくり……。

 

 両親の眠っている隙を突き、界は再び徘徊を開始する。

 

(あった、あった……)

 

 界は母のスマホを発見し、早速、操作しようとする。

 

 だが……、

 

(「あっ!? あれ……?」)

 

【ん……? どうかしたか小僧……】

 

(「あ、いや……パスワードが変わってる……」)

 

 昨日からパスワードが変わっていて、スマホを使うことができなかった。

 

(「しまったな……昨日、使ったままの状態にしてたから、母さん、流石に怪しんでパスワードを変更したんだな……」)

 

【はん……、罰が当たったのだな……人のモノを勝手に見ようとするなど趣味が悪い】

 

(くっ……悪霊に正論をぶつけられるとは……)

 

 界は唇を噛みしめる。

 

(「ぐぬぬ……でも……こつこつ頑張ると決めたんだ……こうなったら独学だ……!」)

 

【はぁ……!?】

 

 界は昨夜と同様に魔力の発現を試みる。

 

(集中して…………息を止める……よし……!)

 

 昨夜のように、魔力を解き放つことに成功した。

 

(昨日はここで母さんが起きちゃったけど…………今日は……大丈夫そうだ……)

 

 父も母もぐっすりと眠っていた。

 

(ここから先……何をすればいいんだろ……うーん……とりあえず……)

 

 界は、魔力を動かし、様々な形に変形しようとする。

 

 その時だった。

 

【っ……! お、おい、小僧……そんなに魔力使っちまっていいのか?】

 

 ドウマが低いトーンで問いかけてくる。

 

(「え……?」)

 

【小僧……魔力が無尽蔵だとでも思ってるのか? 魔力は体力と同じだ。使えばそれだけ消費する】

 

(「……!」)

 

【別にいいんだぜ? (わし)様は……。いや、むしろその方が都合がいい。小僧が疲れたところを……】

 

(……やばっ!)

 

 界は慌てて魔力を停止する。

 

【なーんだ、やめちまったのか……つまんねえな……】

 

(…………くっ……魔力放出の訓練はしばらくはできないか)

 

 ドウマの存在により、界は魔力放出の独学訓練は止めざるを得なかった。

 

 その後も、ドウマの乗っ取りチャレンジは毎日のように続いた。

 ドウマの魔力は日に日に強くなり、界はその都度、それこそ必死に対抗した。

 

 ◇

 

 界は4歳になった。

 

 毎日欠かすことなく続いていたドウマの乗っ取りチャレンジも3歳ごろを境に、ほぼ無意識に止められるようになっていた。

 そして、つい最近になって、とうとう諦めたのか、全く乗っ取りチャレンジをしなくなった。

 界は煩わしかったものがなくなり、清々するかと思ったが、なぜかちょっと物足りない感じがしたのであった。

 

 それはそれとして、4歳になったが、保育園や幼稚園には通っていなかった。

 もちろん、この世界に保育園や幼稚園がないわけではない。

 

 というか実のところ、界は他人に比べ、極めて外出が少なかった。

 行くとしても閑散とした場所を散歩する程度で、両親は界を人が多いところへは絶対に連れて行かなかった。

 

 両親は口には出さないが、そういった場所へ行かせない理由はわかっていた。

 界がドウマの依代の子だからだ。

 

 他人に、もしものことがあることは絶対に許されない。

 両親が界を愛していることと、リスクがあることは切り分けて考えなければならない。

 

 そのことについて、界は両親が良識のある人間で本当によかったと思った。

 

 それはそれとして、この世界改変において、変わってないことがある。

 そう、家族構成である。

 

 だから、今から半年前、3歳半の界は思っていた。

 

(そろそろだよな……)

 

 無事、母の第二子ご懐妊である。

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