【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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37.共に歩まん(一部、じいじ視点)

「…………どうしたの? じいじ」

 

「…………な、なんじゃこりゃ!?」

 

(……何が!?)

 

「じいじ、僕、何かまずいことしちゃったかな?」

 

「まずいかどうかは置いておいて、界よ……一体、どれだけの魔力を込めたのじゃ?」

 

「え……?」

 

「つまりじゃ、界が封魔術に使った魔力量が多すぎて……解呪できないのじゃ……」

 

(何ですと!?)

 

「あの……じいじって封魔術のエキスパートですよね?」

 

「界、じいじを馬鹿にしているのか?」

 

「ち、違っ」

 

「その通りじゃ、じいじは封魔術のエキスパート。じいじのレベルの封魔術を扱える者はそう多くはない。そのじいじが解呪できないと言っておるのじゃ。その意味がわかるか?」

 

(……っ)

 

 界はつばを飲み込む。が、

 

「いや、わかりません」

 

 わからなかった。

 

「…………まぁ、そうじゃよな……」

 

 じいじはちょっと虚を突かれたような表情をしつつ頷く。

 

「でも、その……このままだと、ひょっとして熊燐は永遠に封印されたままに……」

 

「まぁ、そうじゃろうな……別にそれは構わんじゃろ……」

 

(っ……、まぁ、そ、そうなんだろうけど……)

 

「問題はそこじゃない。このままでは、界が使った分の魔力が戻ってこないということだ」

 

「……!」

 

「彰彦から界の魔力量測定の結果がどうであったかは聞いている。にわかに信じられないが、界の魔力量は赤を超えた〝赤外(せきがい)〟であるということじゃろ?」

 

「っ……!」

 

(……赤外)

 

 界はそれを聞き、はっとする。

 きっとそうなんだろうとは思っていたし、実際これまで魔力量にモノを言わせた戦術も取ってきていた。しかし、目の前で、はっきりと言われたのはこれが初めてであった。

 

「赤外がどれ程、膨大なのか……正直、じいじ程度の者には推し量りかねる。ひょっとすると今、界が封魔術で使った魔力量も界からすると些細(ささい)なものなのかもしれない。例えば、一般的な破魔師からして100という魔力量が大きな量であったとしよう。だが、界の魔力量が仮に(無限)だとしたら、∞から100を引いてもそれは∞なのじゃ」

 

(……∞!? 高校数学でちょっとかじった奴だ……。じいじ、流石にそれは大袈裟じゃないかな……? それはそれとして……)

 

「じいじ……」

 

「なんじゃ?」

 

「解呪術を教えてほしい!」

 

「……まぁ、そうなるじゃろうな。これだけの魔力量であっても、界自身であれば、間違いなく解呪できるはずじゃ……。少し順序が狂ったが、先に解呪術……すなわち解印(かいいん)を学ぶことにしよう」

 

「うん、ありがとう……! じいじ」

 

 そうして、界はじいじから解呪術を学ぶことにする。

 

 

 それから一週間後。

 

「封ぜし鎖、今解かれたり。

 汝が意、汝が在り処へと。

 我、干渉せず。ただ扉を開ける」

 

「…………ダメか」

 

「……うん」

 

 解呪術の取得は難航していた。

 

「じいじ、僕、センスないかな……」

 

「いや、まぁ、すごくあるというわけでもないが、普通程度にはあると思う」

 

(……そんなにはないのね)

 

 界は苦笑いする。

 

「じゃが、正直、見ている限り、解印(かいいん)は最低ラインはクリアしているし、解呪できていてもおかしくないと思うのじゃがな……」

 

 じいじは首を傾げるのであった。

 

 その日の訓練は大きな進展なく、終了した。

 

 夜。

 

 じいじとくまじいじが眠っている横で、界は熊燐が封印された札と睨めっこしていた。

 

 訓練中以外に実際の解呪をすることは禁止されており、界はそれを守っていた。

 

 だから、界はなんとなく札を見つめていたのだ。

 

 そして、

 

「なぁ、熊燐、お前、なんで出てきてくれないんだよ?」

 

 なんとはなく語り掛けていた。

 

 しかし、返事が返ってくるものでもない。

 

(「ドウマ、何かわかったりしない?」)

 

【いや、この件に関しては田介の祖父と同じ意見だ……。なぜ解呪されないのだろうな……】

 

(「そうなんだね……」)

 

【ん……? なんで少し嬉しそうなんだ?】

 

(「あ、いや、何でもないよ……」)

 

(ドウマが同意見だなんて……やっぱりじいじってすごいんだなぁ……。これ言ったら、ドウマは不貞腐れそうだから言わないけど……)

 

「それにしても何でうまくいかないんだろうなぁ……」

 

 界は、訓練の復習がてらなんとなく解呪詠唱を口ずさむ。

 

「封ぜし鎖、今解かれたり。

 汝が意、汝が在り処へと。

 我、干渉せず。ただ扉を開ける」

 

(…………我、干渉せず。ただ扉を開ける……か……)

 

「……!」

 

 その詠唱から、ふと思いついたことがあった。

 

「明日、一度、じいじに試させてもらおうかな……。大丈夫かな、じいじ怒るかも……」

 

 そんなことを思いつつ、界は眠りにつく。

 

 

「なんじゃと!?」

 

(ひぃっ)

 

 界は萎縮する。

 

 界は解呪術について一つのアイデアをじいじにに提案したところであった。

 

(やっぱり……ダメかな?)

 

「……」

 

 じいじは界の提案を聞き、一度、強く聞き返したものの、しばらく考え込むように沈黙する。

 

「解呪詠唱の改変じゃと……? 封魔術とはデリケートなものだ。過去の偉大なる破魔師達が作り上げた伝統的な方法を変えることは、想像だにしない結果をもたらすかもしれない」

 

「…………そ、そうなんだね……。軽はずみなこと言って、ごめん」

 

 界は頭を下げる。

 だが、じいじの次の言葉を前の言葉とは、違う方向性の言葉であった。

 

「…………じじいになるとな、大抵は頭が固くなるものじゃ……」

 

「……?」

 

「きっとな、変化を受け入れられなくなるのじゃろうな……」

 

(……じいじ?)

 

「じいじも界くらいの時は、そんな頑固な大人達を疎ましく思ったものだ……。気づけば自分がそんな大人になっていたというわけか……」

 

 じいじは自嘲するように少し微笑む。

 

「…………じいじ、そんなこと……」

 

「界……やってみろ」

 

「え……?」

 

「一度、やってみたらいい。何か問題が起きたら、じいじが何とかする。そのために、この老いぼれ達はここにいるのだから」

 

「……!」

 

 ふと気づくと、くまじいじも傍らで頷いている。

 

「おい、白神、界様が失敗するわけないじゃろ……」

 

(く、くまじいじ……そ、それはそれでちょっとプレッシャーが……でも……)

 

「ありがとう、じいじ、くまじいじ……」

 

 そうして、界はじいじにとある解呪詠唱の改変についての許可を得る。

 

(よし……やってみよう……)

 

 界は熊燐が封じられた札を取り出し、左手の人差し指と中指で挟むように持ち、一呼吸する。

 

 そして……、

 

「封ぜし鎖、今解かれたり。

 汝が意、汝が在り処へと」

 

(ここまでは同じ……。本来はこの後、〝我、干渉せず。ただ扉を開ける〟と続く。だけど……)

 

 その時、ふと、今朝方、ドウマに相談したことが想起する。

 

 ◆

 

『ねぇ、ドウマ、やるとしたらこんな感じでいいかな? 〝共に歩まん。我と共に〟』

 

【あん? 相変わらずセンスがないな】

 

『え……!? なんで……!』

 

【共にが二回続いているのがダサい】

 

『ひどい……』

 

【こんな感じでいいんじゃないか? ごにょごにょごにょ】

 

『え……? ちょっと恥ずかしいんだが……』

 

【何を言うか、お前がやろうとしていることを考えれば、これくらい堂々としていないとな!】

 

『……わかったよ』

 

 ◆

 

 界は解呪の際に、最後に札を手放す動作を行わない。

 

 そして……、

 

 

 

「望むなら共に歩まん、我が覇道へと!」

 

 

 

「「っ……」」

 

 札は強い光を放つ。

 

 

 そして、内部から、熊燐が現れた。

 

 

「うにょ?」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 おかしい……。

 

 明らかに霊魔の様子がおかしい。

 

「うにょにょ」

 

 霊魔が俺の孫の界に、()り寄っている?

 

「熊燐……、くすぐったいよ……」

 

「うにょにょにょ」

 

 鳴き方もなんかおかしい。

 

 っ……!

 

 俺は何をしているのだ!?

 俺が本来しなければならないことは、この奇妙な霊魔を即刻、排除することであるはずだ。

 

「界、そいつを排除するぞ……!」

 

「え? なんで!?」

 

 っ……! 俺の非情とも言える発言に、界はめちゃくちゃ驚いている。

 

「なんでって……お前なぁ……そいつは……」

 

「…………そ、そうだよね」

 

「うにょッ!?」

 

「じゃ、せめて僕の手で……」

 

 え、本当か!?

 

 界は手の平を熊燐に向ける。

 

 が、

 

「うにょ……」

 

 な、なんだと……?

 

 霊魔が全てを受け入れている?

 

 今しがた、消滅させられようとしているにも関わらず、その運命に全く抵抗することなく……?

 

「か、界……! ちょっと待て……!」

 

「あ、うん」

 

 界はあっさりと手を下げる。

 

「どうしたの? じいじ」

 

「っ……」

 

 …………俺は今、前例のない歴史的な出来事を目の当たりにしているのかもしれない。

 

 どういうロジックだ?

 伏印《ふくいん》の時に霊魔を屈服させることなく、締印(ていいん)の際に、浴びせるように魔力を込められたことで、霊魔に何らかの変化が生じたのか?

 そして、解呪の時に……〝望むなら共に歩まん、我が覇道へと〟……か……。

 

 …………くっ……この詠唱…………ちょっとカッコいいじゃねえか……。

 

 

 

「し、しばらくだぞ?」

 

「へ……?」

 

「しばらく……様子を見てみよう」

 

「…………うん!」

 

 界は目を細めて微笑む。

 

「……」

 

 …………かわいい。

 

 

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