【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜 作:広路なゆる
翌日――。
熊燐の件で、再現性を確認するために、昨日、一度、封印した熊燐を再度、解呪した。
昨日と同じように、強い光を放つ札から、熊燐が現れた。
そして……、
「うにょにょー」
昨日と同じように、緩い鳴き声を出しながら、界に擦り寄ってくる。
「じいじ……」
「あぁ、昨日と同じようだな……」
「うん……。じいじ、これってどういうことなんだろう?」
「じいじが聞きたいわ。封魔術で封じた霊魔がうにょにょ化するなんて、こんな前例はないのじゃ」
「……そ、そうだよね」
(うにょにょ化って……)
「…………界よ……」
「ん……?」
「そ、その…………ドウマ様はご存じないのだろうか? ドウマ様であれば……」
「え? あ、そうだね。ちょっと聞いてみるね」
「あっ、す、すまぬ……、無理のない範囲で……」
「じいじ、大丈夫だよ。ドウマはこんなことでブチ切れる程、器の小さい奴じゃないよ」
「……! あ、あぁ……」
(「というわけで、ドウマ……、この現象について何かわかる?」)
【知らんがな!】
(「へっ?」)
ドウマはやや不機嫌であった。
【まぁ、なんとなく霊魔がまるで田介の従者のようになっているように見えなくもないがーー? まさか本当に成功するとは……。儂様ですら、その発想がなかったというかなんというか……】
(「そうなんだね……。ありがとう……」)
【ふんっ……】
(なんで不機嫌なんだろ……)
「じいじ、ドウマも【知らんがな】だってさ」
「ふぉっ! だ、大丈夫か? それ……。ドウマ様、お怒りになってないか!?」
「あー、大丈夫大丈夫」
「そ、そうか……」
じいじはほっとした様子を見せる。
「それじゃあ、界よ……、これより封魔術の練度をより高めていく訓練を……」
「封絶術……」
「「……!?」」「うにょ!?」【……?】
何か……寂しげなつぶやきが、界とじいじと熊燐とドウマの耳に入る。
「封絶……術……」
それは、どこか遠くを見ながら、封絶術とだけ繰り返し呟く、くまじいじであった。
訓練を開始して、すでに一週間以上経過していた。
その間、くまじいじはほぼ放置された状態で、しかし、いつも訓練の様子は見てくれていた。
(や、やべ…………いくらなんでも封魔術の方に偏り過ぎたか……)
【ははっ……あれが霊魔化した姿が熊燐だな……】
(「そうそう……
【あははははは……なんだそれ、おもろ……!】
(い、いかんいかん……。ドウマおじさんが突然、ブラックジョークを言うものだから、不慣れなノリツッコミなどしてしまった。なぜかドウマには受けているようだが……。ドウマの時代にはノリツッコミはなかったのかな……?)
さらに、界はふと思う。
(ってか、ドウマって笑う時、あははって笑うんだよな……。前世で時々、観てた配信とかで〝あはは〟って笑う人のを聞いてるとなんかちょっと元気になったから、少しだけドキッとするからやめてほしいわ)
界は心の中で少し苦笑いするのであった。
そして、
「じいじ、ありがとう……。まだまだ全然だってわかってはいるんだけど、そろそろ一度、くまじいじに封絶術を教わってもいいかな?」
「全然というか……、現在の状況がイレギュラー過ぎて、じいじも今後の訓練方針について、少し考えたい。ちょうど良き頃合いだったかもしれない」
「あ、うん……わかった」
そう言うと、界はまず熊燐を札に戻す。
「うにょーー……」
それから、じいじから離れ、くまじいじの方に歩いていく。
くまじいじの前に立ち、頭を下げる。
「くまじいじ、封絶術について教えていただけないでしょうか?」
「……」
しかし、くまじいじは
「くまじいじ……?」
界は心配そうにくまじいじの様子を
と、
「…………うにょ!」
(うにょっ!?)
突然、顔を上げたくまじいじに界は肩を揺らして驚く。
くまじいじの顔は、前世含めても見たこともないような満面の笑みである。
「界様と訓練やるにょ!」
くまじいじは嬉し過ぎたのか変なテンションになっていた。
◇
「界様、封絶術は封魔術のように半永続的なデメリットはございません」
一旦、落ち着きを取り戻したくまじいじが界に封絶術について説明してくれていた。
(……くまじいじ、元に戻ってよかった)
(「一瞬、本当に熊燐になっちゃうのかと思ったよ……」)
【あははははは、なるわけないだろ……! あははははははっ】
ツボに入ったのか頭の中でドウマが爆笑していた。
(「…………ドウマ、そんなに爆笑してていいんだっけ?」)
【ん……? どういう意味だ?】
(「…………さーてぃわん」)
【っ……!】
(「……連れて行ってくれたの誰だっけ?」)
【……んなっ……、この儂様を脅すというのか……。いやしかし……確かにさーてぃわんの恩を忘れるというのは
(……いや、そんな大げさでもないけどな)
「しかし、界様、封絶術にも勿論、リスクがございます」
界とドウマがそんな会話をしているとはつゆ知らずにくまじいじがまじめに説明を続けていた。
「あ、はい」
(いかんいかん、俺こそちゃんと聞かないとだな……)
「封絶術は霊魔に使用した瞬間から、術を解くまで、ずっと魔力を消費し続けます」
「っ……!」
「実際のところ、封絶術は一般的な攻撃型妖術などよりも消費する魔力は多いため、使いどころは慎重に考える必要があるのです。その点を理解した上で、訓練に取り組んでいただければと存じます」
「わかりました」
「それでは封絶術の概要を説明いたします。封絶術には
「
「はい。封綾とは、魔力を具現化して生み出される織物のことです。例えば、糸であったり、紐であったり、人によっては鎖のようなものを具現化する人もいます」
「
「はい、
「そうなんだね」
「それで、
「はい」
「まず、両手を前に構えます」
くまじいじが実際の動作をしながら説明してくれる。
「右手の中指と薬指を立て、残りの指は軽く折りたたんで親指で支えます。
左手は人差し指と小指を立て、他は握り込む形にします。
両手を近づけ、指先同士を合わせるようにして、印を固定します。
その状態で、魔力を指先に集中させます。
魔力がまとまれば……このように……」
「おぉ……! すごい……!」
くまじいじの指先から、太い縄のような物が具現化する。
「
(……あくまでも拘束具ってことだね)
「そうして指先を対象に向けることで、対象を束縛し、弱体化させることができるのです」
「わかりました!」
「はい、それでは界様、早速やってみましょう!」
「はい……!」
そうして界は封絶術の訓練を始めるのであった。
五日後――。
(右手の中指と薬指を立て、残りの指は軽く折りたたんで親指で支える!
左手は人差し指と小指を立て、他は握り込む形に……!
両手を近づけ、指先同士を合わせるようにして……印を固定……!)
界の指先からは刺繍用の糸みたいのがちょろんと出現した。
(……)
【……】
「……」
「ど、どうかな……? くまじいじ」
「界様…………正直に言います。まぁ、普通……またはそれ以下でございます」
「……ですよねー」
界の封絶術のセンスは、全くではないが、並以下であった。
(「ぐぬぬ……なんか全くできないとかだったら、まだなんかコツをつかめば花開くみたいのがあるかもしれないけど、普通にできてはいるのに、並以下って……」)
【まぁ、そんなもんよ……儂様も探知苦手だし……】
(おっ……? ドウマが慰めてくれてる?)
【そもそも田介……、お前は相手を弱体化させる必要ないだろ?】
(「なんでさ……!」)
【なんでってなぁ……】
などと、している時であった。
くまじいじのスマホに着信があった。
「ん? すみません、ちょっと出ます」
くまじいじは通話を終え、スマホを切る。
「どうした? 一之瀬」
じいじがくまじいじに尋ねる。
「あぁ、どうやら割と近くに霊魔が出現したらしい。我々に協力を依頼したいということのようだ」
と、じいじがにやりと笑う。
「ほーん、界の実戦練習相手にちょうどいいではないか」
書籍、ついに明後日。。。