【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜 作:広路なゆる
界、じいじ、くまじいじの三名は奈良県のとある神社に訪れていた。
「風術〝
神社に着くと、数名の破魔師が霊魔と交戦中であった。
「おー、やっとるやっとる」
じいじはそんなことを言いながら、戦場に向かって歩いていく。
「おい、白神、昔のように身体は動かぬのじゃ、油断するなよ」
などと忠告しながらも、くまじいじも続く。
界もそんな二人についていく。
と、
「し、白神さま……! 一之瀬さま……!」
戦闘中の破魔師の一人がじいじとくまじいじの存在に気が付く。
「おう、君達、よく
「しょ、承知しました……。…………って、え? この子は……?」
破魔師の一人が界に視線を向け、驚いた様子で尋ねる。
「ひょ、ひょっとして……」
「あん? 俺の孫だが……?」
じいじはやや威圧的にそう言う。
「っ……! し、失礼しました!」
破魔師は頭を下げると、そそくさとその場から離れていった。
(「…………やっぱり子供を戦場に連れてくるのって結構、白い目で見られるのかな……」)
【ん? 何言ってんだ?】
(「……? どういうこと?」)
【破魔師の世界は実力主義だぞ? 力があるのなら年齢など関係ない。小さい頃から実戦に触れさせるために、戦場に連れてこられることなど、さして珍しくもない】
(「……そうなんだね」)
(その辺の価値観はやっぱり前世とはちょっと違うんだろうな……)
【それはそれとして、さっきの破魔師の反応は田介が儂様の依代の子であるがゆえの反応だろ?】
(「……あ、そっちか……。ドウマ、大丈夫? ぶち切れたりしない?」)
【儂様がそんな小さきことに腹を立てるはずがなかろう……!】
(……そうか? ……確かに初期の頃よりちょっと丸くなった感じはするな。…………いや、生まれた直後の母親殺しの呪いモードの時を除けば、実はずっと……)
などと界は考えていたが、
「ジャァアアアアア!!」
残された霊魔が界、じいじ、くまじいじを威嚇する。
(っと……今は目の前の霊魔だな……)
霊魔は巨大な蛇のような姿をしており、五体もいる。
「情報によると、クラス2程度の霊魔のようじゃ」
じいじがそう告げる。
(クラス2か……。なら、そこまで厄介ってわけじゃないのかな……)
界はこれまで破魔師としてクラス4の赤池に勝利した。
さらにクラス5並みの
故に、クラス2に対して、そこまで厄介ではないと思うのはある意味、自然である。
だが、
「界……、今、こいつを大したことないと思ったか?」
「っ……!」
界はじいじに心を見透かされたことを言われ、はっとする。
「ご、ごめん……じいじ……ちょっとだけ思っちゃった」
(そうだよな……。慢心は身を滅ぼす。謙虚になれ、俺……!)
「その通りじゃ」
(ん……?)
「クラス2など大したことないのじゃ」
(え……? そっち……?)
「だがな、それは界、お前にとってはという話だ。界……お前は一握りの
「……!」
「先ほどまで、この霊魔と対峙していた破魔師達……。彼らは才能のない弱者ではない。むしろ〝クラス2を食い止めることができる〟優秀な破魔師達だ」
「うん……」
「そんな優秀な破魔師達が束になっても、お前は簡単にひねりつぶすことができるだろう……」
「……」
「一方で、彼らがいなかったとしたら、すでに人への被害が出ていたであろうな」
「……!」
「界、じいじが何が言いたいかわかるか?」
「……例え、どんなに強くても、人ひとりには限界があって、皆の助けが必要だってこと?」
「…………」
じいじは黙る。
「…………ち、違ったかな?」
「……いや、正解じゃ」
じいじはしかし、少し不満そうである。
(なんで不満そうなの……!?)
「界様、このじじい、界様に深い話をしてやろうと思っていたのに、当てられたから年甲斐もなく
(へ……?)
「あっ、一之瀬! てめっ!」
と、
「ジャァアアアアア!!」
蛇の霊魔が、無視すんじゃねえとでも言いたげに、三人を威嚇する。
「あぁあぁ、威勢のいいことで。五体いる。俺が2、一之瀬が2、界が1だ」
じいじの指示に、界とくまじいじは頷く。
「特に界、お前は妖術を使わずにそいつをなんとかせい」
「……!」
(妖術NGか……。要するに封印術を使えってことだよな)
「じいじ、わ、わかった!」
◇
「えーと、それじゃあ……」
初手、界が手の平を前に突き出す。
「「っ……!」」
じいじ、くまじいじ、そして蛇の霊魔達も驚かされる。
発生したのは壁。
それもアクリルのように、壁の存在は認知できるが、向こう側も視認できる透明な壁だ。
その壁が、部屋を隔てるかのように、界と霊魔1体、じいじと霊魔2体、くまじいじと霊魔2体を分離したのだ。
「ちょっ! 界……!」
界の初手に対して、じいじは少し抗議するように界の名を呼ぶ。
「なぁに……? この方が修行に集中できるかなって……」
「そ、そうなんじゃがな……ふ、封魔術をだな……」
「妖術はダメって言われたけど、
「っ……、まぁ、確かに、妖術は使うなとしか言ってないな……。……だが、目的は……」
「わかってるよ。妖術を使うなって言うじいじの意図は、封魔術の訓練だよね?」
「……うむ、わかっているのならそれでいい」
「おーい、白神……私はそろそろ始めるぞい……」
そう言って、最初に動いたのはくまじいじであった。
界は目の前の敵に意識を向けつつも、くまじいじの方にも意識を傾ける。
壁で分離したのは、単に、分担分を明確にしただけではない。
じいじ、くまじいじという破魔師の戦いを観たかったから。
そして、
(……二人の封魔術のスペシャリストの実戦を観て、何かを吸収してやる)
界の目に野心的な光が
「それじゃあ、いくぞ……」
(はやっ……!)
くまじいじは目にもとまらぬ速さで、封絶術の印を結ぶ。
ほぼ同時に、くまじいじの指先から太い縄が出現する。
「封絶術……
縄の
(……ってか、蛇自体が細長いから紐を紐で縛ってるみたいだなぁ)
などと界は割としょうもないことを考えていたが、
(あ、あれ……?)
結果として、ぱっと見では、二体の蛇の態度に大きな変化は起きていない。
(……なんなら気づいていない?)
「界様、封絶術は強力な術です」
界が観ていることに気が付いたのか、くまじいじが語りだす。
「ですが、封絶術そのもので相手を
「ジャアアアアアア!」
(あ……!)
何かをされた違和感はあるのか、二体の蛇がくまじいじに襲い掛かる。
と、くまじいじはポツリと呟くように、技名を宣言する。
「炎術…………〝
くまじいじが行使したのは炎の初級妖術〝蛍火〟である。
二つの小さな炎が放たれる。
(…………おぉ)
界は息を呑む。
界にとって、もはやお馴染みとなった炎術〝蛍火〟。
(蛍火に関して言えば、割と詳しい方だと思う)
くまじいの紅の蛍火は、呼吸と同調するように微かに脈打つ。その焔は放たれる瞬間を待ち、静かに揺れていた。
蛍火ガチ勢の界から見てもくまじいじの蛍火はなかなかのものであった。
とはいえ、あくまでも小さな炎の球体であることに変わりはない。
蛇達は怯むことなく、くまじいじに向かい襲い掛かる。
それを迎えうつかのように、静かに漂う蛍火に、襲い来る蛇が触れる。
次の瞬間であった。
「ギァアアアアアアアアア!」
突如、蛇達が身をよじり、奇声をあげる。
「……めちゃくちゃ効いてる?」
「……先ほどの私の封絶術は、奴らの防魔力を極小化するものです」
(なんと……!)
「奴らはそれに気づくことができず、弱い妖術と決めつけ蛍火に飛び込んでしまった。その先にあるのは……」
「ギァアアァアア!!」
「……消滅です」
くまじいじの前に、二体の蛇はあまりにもあっけなく消滅してしまった。
「……すごい」
界が感嘆の言葉を漏らす。
「界様、お褒めいただき光栄です。とはいえ、
「……そうなんだね。でも、くまじいじ、やっぱりすごいよ……!」
「ありがとうございます」
くまじいじは界にぺこりと頭を下げる。
(さて、次は……)
界はじいじの方に視線を向ける。
(じいじの封魔術……勉強させてもら……)
「雷術〝
(……ばりばりぴしゃぁ)
じいじの放つ電撃を浴び、二匹の蛇は消し炭となった。
「って、じいじ!? 封魔術は!?」
界は思わずツッコミを入れるように尋ねる。
「……界、勘違いするよな? これは封魔術の基礎の基礎だ」
「え……?」
「封魔術を使う必要のない相手には封魔術は使わない」
「……!」
(……そうか……、封魔術は魔力の最大値を犠牲にするから……。例えしばらくして霊魔が復活したとしても、遭遇する度に霊魔を封印していたら、キリがないってことか……。じいじはそれを俺に教えるために……)
(………………ん?)
「……じゃあ、なんで父ちゃんは熊燐、封印してたんだろ……?」
「わからん」
書籍、ついに明日。。。
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こちらの企画はあくまでも著者(広路なゆる)の自主企画になります。講談社さんへの問い合わせはしないでください。また永続的な企画継続を約束することもできません。ご了承ください。