【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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44.技術交流会

「それじゃあ、破魔師と霊の審判者(ガイストリヒター)の技術交流会を始めるぞ」

 

(技術交流会……?)

 

 じいじは更に続ける。

 

「ヨハンくんとリーゼちゃんは知っているかもしれないが、実は界には事前に何も言っていなかったから、この交流会の主旨を説明させてもらうぞ」

 

「「はい」」

 

 ヨハンとリーゼが返事をする。

 

「破魔師と霊の審判者(ガイストリヒター)は同じ霊魔を祓うという目的を持っている。しかし、それぞれの土地で、それぞれ異なる文化で発展してきたため、両者に異なる技術が根付いている」

 

(ほぉ……そうなのか……)

 

「どちらが優れているということはないが、ある点においては習うべきものがあるかもしれない」

 

「なるほど、じいじ、つまり僕はドイツ式の技術を、ヨハンさんとリーゼさんは日本式の技術を取り入れてお互いに強くなろうってこと?」

 

「単純に考えればそうじゃ。ただし、そこまで単純な話でもない」

 

「……!」

 

「人にはキャパシティというものがあるのじゃ」

 

(……! ……じいじ、横文字使えるんだね)

 

「つまるところ、日本式とドイツ式、両方を取り入れようとすると、場合によってはどちらも半端になってしまうリスクもある。この偏りも人それぞれであるが故、注意しながら取り入れる必要がある」

 

「そうなんだね」

 

「界、これでこの技術交流会の主旨は理解できたか?」

 

「はい」

 

「よし、それじゃあ、何か質問はあるか?」

 

(……! 質問か……うーん……あっ)

 

「じいじとヴィンターシュタイン家の方はどういった関係なの?」

 

「ぬ……? 界はそういうことに興味があるのか?」

 

「え、まぁ、うん」

 

「まぁ、よかろう。じいじとヴィンターシュタイン家というか白神家とヴィンターシュタイン家の関係じゃな」

 

「うん」

 

「そうだな、白神家とヴィンターシュタインの関係は80年程前の世界大霊災の時、じいじのじいじの代から始まった。まぁ、言う程、歴史が古いというわけでもないのだが……。当時、その名の通りだが、世界規模の霊災が発生した」

 

(まじか……。80年程前というと、第二次世界大戦の頃だよな……。この世界では、戦争の代わりに大きな霊災が起きていたってことか……)

 

「中でも大霊災の初期に大きな被害を受けたドイツは孤立していた。そんな中、日本の破魔師がドイツの支援に動いた。それがきっかけで二者は同盟を結び、その後の日本が更に大きな被害を受けた際には逆にドイツに支援を受けた。で、その最初にドイツの支援に派遣されたのが白神家のじいさんだったというわけだ」

 

(ほぇー……)

 

「最初、ドイツは日本の支援を拒んだそうで、その対応に当たったのがヴィンターシュタイン家であった。それでまぁ、なんやかんやあって、ヴィンターシュタイン家の当主は白神家の説得を受け入れたってわけだなぁ……。それでまぁ、なんやかんやあって、親友となった」

 

(その、なんやかんやが気になるんだが……)

 

「それから霊災が収束して、国同士の同盟関係がなくなっても、白神家とヴィンターシュタイン家の関係は子、孫に引き継がれ、今に至るというわけだ」

 

(詳細は不明だけど、なんとなくわかったよ)

 

「じいじ、ありがとう……」

 

「白神のじいじさん、ありがとうございます。というわけだから、界くん、僕ともリーゼとも仲良くしてくれよな?」

 

 ヨハンが爽やかにウインクする。

 

「あ、はい」

 

(……恐縮です)

 

 界はちらっとリーゼの方を見るが、リーゼはまだつーんとしていた。

 

「ありがとう、ヨハンくん、リーゼちゃん。ヴィンターシュタインの爺さんから二人の話も聞いているぞ。ヨハンくんは一族でも随一の才能で超優秀」

 

「ふふ、爺さん、そんなことを」

 

 ヨハンは苦笑いするが、否定もしない。

 日本人のように謙遜を美徳とする文化ではないのだ。

 

「リーゼちゃんは……うん……ポテンシャルはあると聞いている」

 

(なんだ、その微妙なニュアンスは……)

 

 じいじもヨハンの時より、若干、歯切れが悪い。

 

 リーゼはちょっと(うつむ)いている。

 

「ありがとうございます。我々も爺さんから界くんの噂は聞いております。霊魔大国日本においても最強の霊、鬼神ドウマ様をその身に宿していると……」

 

(……ドウマはドイツでも知られているのか)

 

「そうじゃ……。うちの界は紛れもなく一族の歴史上で最大の才能じゃよ」

 

「「……!」」

 

 じいじの言葉にヨハンとリーゼの顔色が変わる。

 

(あの……、じいじ、嬉しいけども、それはじじバカという奴では……)

 

「ふふ、それは……楽しみです」

 

 ヨハンは不敵に微笑む。

 

「うむ、それじゃあ、主旨の説明はこれくらいにして、早速、技術交流に入っていこう。ヨハンくん、まずはお願いしてもいいかの?」

 

「はい、お任せください。ドイツ式封魔術をご覧ください」

 

 ヨハンはそう言うと、革のアタッシュケースを開ける。

 

(おっ……)

 

 界が中を覗くと、アタッシュケースには、謎の石や瓶が詰められていた。

 

「それじゃあ……これにしようかな……」

 

 ヨハンはその中から、石を取り出す。

 

 それは、縞模様が美しい半透明な石であった。

 

(綺麗な石だな……)

 

 と、界が不思議そうに眺めていると、ヨハンがそれに気づく。

 

「これは瑪瑙(めのう)と呼ばれる石だよ」

 

「そ、そうなんですね。教えていただきありがとうございます」

 

「うん」

 

(それで、その瑪瑙を何に使うんだろう……。ん……? よく見ると何やら文字のようなものが刻まれてるな……)

 

 と、界が思っていると、

 

「さて……、それじゃあ、この石に封印されている霊魔を解呪していくよ」

 

(……! つまり、この石が依代ってことか……)

 

 界がそう思う間に、ヨハンは石を左手に持ち、深呼吸する。

 

 そして、右手で空になにやら文字を描き始める。

 

「Ziehe den Keil des Willens – gewähre dir Selbstbestimmung.(意志の楔を抜き、汝が自律を許す)」

 

 空に描かれた〝ᛗ〟の文字と共に、石に刻まれたᛗの文字が砕けるように消滅する。

 なおもヨハンは続ける。

 

「Zerschneide die Kette der Gier – befreie es(欲の鎖を断ち、解き放て)

 Löse den Kreis der Ernte – lasse die Zeit erneut fließen.(報いの輪を解き、時を巡らせよ)」

 

 すると、〝ᚠ〟、〝ᛃ〟の文字が砕けるように消滅する。

 

(なんだ、これ……、よくわからんが、かっこいいな)

 

 最後のᛃが消滅した時、石から光が放たれ、霊魔の姿がゆっくりと浮かび上がる。

 

「ヴォオオオオ!」

 

(お……?)

 

 中から出てきたのは、小型のオオカミのような霊魔であった。

 ふわふわしており、青い瞳で尻尾が長い。

 

 モフモフした見た目に反して、しっかりとこちらに威嚇している。

 

「この霊魔(ガイスト)はヴォルフィっていうんだ」

 

(おぉー、これがドイツ産の霊魔か。なかなか良い毛並みをしている)

 

「うん、それじゃあ、ヴォルフィを封印するよ」

 

(……! どこかで見たことのある展開……)

 

 と界がふんわり思う間にも、ヨハンは空に文字を描き始めている。

 

「Schließe den Kreis des Schicksals – nähe ihn hier und jetzt.(因果の輪を閉じ、今ここに縫いとめよ)

 Mit der Kette der Gier sei es gebunden.(欲を縛りし鎖をもって、囚わん)

 Mein Wille erkennt dein Sein und beansprucht es.(我が意志、汝の存在を認め支配す)」

 

 今度は先ほどとは逆にᛃ→ᚠ→ᛗの順番で空に文字が発生する。

 そして、それぞれの文字が石に刻まれ、

 

「ヴォオオオオーーーん」

 

 ヴォルフィは石に吸い込まれていく。

 

(…………)

 

「す、すご……」

 

 あっという間の出来事に、界は思わず、感嘆の言葉を漏らす。

 

「ありがとう、界。今のが、ドイツ式の封魔術の基本だよ」

 

「えーと、ヨハンさん、聞いてもいいですか?」

 

「もちろんだ」

 

「ドイツ式では、その……文字のようなものを使うのですか?」

 

「そうだね、ルーン文字だ。ドイツ式の封魔術ではルーンを組み合わせることで、霊魔を封印する」

 

「そうなのですね」

 

(日本式は手や身体の動き、〝結印〟を使うけど、ドイツ式は文字ってことか……。正直、ぱっと見だと分かりやすそうだな。ドイツ語はさっぱりわからないけども)

 

「ヨハンくん、すごいじゃないか。その年齢でここまで封魔術をこなすなんて……」

 

「いえいえ、白神のおじい様。僕なんて、まだまだです、爺さんには足元にも及びません」

 

 ヨハンはそんな風に謙遜しながら、アタッシュケースを開く。

 

「見てください、ここに様々な霊魔が封印されているのです!」

 

 ヨハンはところ狭しと敷き詰められた石や瓶を嬉しそうに見せる。

 

「中でも、これはすごいですよ」

 

 そう言って、ヨハンは一本の瓶を見せる。

 

「これは、爺さんにより封印された超強力な霊魔〝グリム・アスシュナーベル〟が封印された瓶なんです。すごいですよね! すごいですよね!」

 

 ヨハンは目を輝かせる。

 それまでの冷静な感じと異なり、急にマニアックな雰囲気を醸し出し始めるヨハンに、

 

(この人、封印された霊魔のコレクターか何かかな?)

 

 と界は思う。

 

(ってか、そんな物騒なもの持ってくるなよ……)

 

 とも、ちょっと思う。

 

「うむ。ヴィンターシュタインの爺さんの腕は流石のものだ。それじゃあ、次、リーゼちゃん、お願いしてもいいかな?」

 

「……! は、はい……」

 

 じいじに指名され、リーゼは油断していたのか、少し慌てた様子で返事をする。

 

 

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