【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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45.ぽん

「それじゃあ、次、リーゼちゃん、お願いしてもいいかな?」

 

「……! は、はい……」

 

 じいじに指名され、リーゼは油断していたのか、少し慌てた様子で返事をする。

 

「はい、リーゼ、これ」

 

 そう言って、ヨハンはリーゼに石を渡す。

 先ほどヨハンがヴォルフィを封印した瑪瑙(めのう)だ。

 

「あ、ありがと……」

 

 リーゼは、ヨハンがしたように、左手で石を持ち、ふうっと息をつき目をつむる。

 

「それじゃあ、いきます……!」

 

 リーゼが勢いよく目を開く。

 

「Ziehe den Keil des Willens – gewähre dir Selbstbestimmung.(意志の楔を抜き、汝が自律を許す)」

 

(おぉ……)

 

 ヨハンの時と同様だ。

 (くう)に描かれた〝ᛗ〟の文字と共に、石に刻まれたᛗの文字が砕けるように消滅する。

 

「Zerschneide die Kette der 〝Bier〟!(ビールの鎖を断ち切れ)」

 

(ん……? ビール?)

 

〝ᚠ〟の文字が少々、戸惑うように、震えながらも一応、消滅する。

 

「Löse den Kreis der Ernte – lasse die Zeit erneut fließen!(報いの輪を解き、時を巡らせよ!)」

 

 リーゼは勢いに任せて空に〝◇〟を描く。

 が、石に刻まれた最後の文字は砕けることはない。

 そして、しばらくすると、ᚠとᛗも復活する。

 

「…………」

 

「リーゼ…………Bier(ビール)じゃなくてGier()な……。あと最後の文字は(スクウェア)じゃなくて(ジェラ)な……」

 

 リーゼは俯きながら、両手の拳を握りしめ、ぷるぷると震えている。

 

「ま、まぁ、リーゼちゃんはまだ六歳だから……」

 

 その様子を見て、じいじが慌てたように、フォローする。

 

「そうそう……リーゼ、これからゆっくり学んでいけばな……」

 

 ヨハンも続く。

 

 しかし、

 

「ヨハンは……六歳の時、これ、できなかったの……?」

 

「えっ……」

 

 ヨハンはギクリとする。

 

「え、えーと……その……できたけど……」

 

 ヨハンはぼそりと答える。

 

「…………」

 

 それを聞いたリーゼの目が潤み始める。

 

「あぁあ! リーゼ、ごめんな! 兄ちゃんが6歳どころか5歳の時にできちゃっててごめん……! ごめんな!」

 

 ヨハンが一生懸命慰める。

 

(ヨハンさん、それは逆に、少し煽ってないかな?)

 

 などと、界は苦笑いする。

 

「と、まぁ、リーゼは現在、修行中ということです。ドイツ式の封魔術は型が決まっているのだけど、一方で、厳格にそれを守る必要があってね。リーゼはそれが少し苦手みたいなんだ」

 

(……ドイツ式は型が決まっている……か。ってか、六歳でできないからって苦手扱いにされるのか……。結構、厳しいな……。それだけドイツ式は誰にでも扱えるように、体系化されているってことなのかな……)

 

 などと界は思う。

 

 当のリーゼは少しシュンとしてしまった。

 

「気を取り直して……。よし、じゃあ、次は界くんかな?」

 

 ヨハンが界に視線を向ける。

 

「あ、はい……」

 

(やらなきゃか……。うー、なんだか緊張するなぁ)

 

 などと思いつつも、界は自身の封魔術を披露する心づもりをする。

 

 が、

 

「あ、すまん。界がやると色々問題があるから、日本式の見本については、じいじがやる」

 

(ふぇ……?)

 

 じいじがそれを止め、前に出る。

 

「お、そうなのですね」

 

 ヨハンは少し肩すかしをくらった様子だ。

 界に問題があると聞き、リーゼは多少、気を取り直したようだ。

 

 その後、じいじが日本式封魔術の解印と結印を披露した。

 

「おぉー、すごいですねぇ」

 

 ヨハンはパチパチと拍手する。

 

「白神のおじい様、その札、お借りしても?」

 

 ヨハンはじいじが見本に使用した霊魔が封印された札を指差す。

 

「ん? まぁ、構わんが……」

 

 じいじはヨハンに札を渡す。

 

 と、

 

「沈めし印よ、今、ほどけよ」

 

(え……?)

 

 ヨハンが印を結び、詠唱を始める。

 

「縛りし手を引き、静かに門を開かん。

 我が意思は干渉にあらず!」

 

(えぇええ!? まさか……)

 

「…………」

 

 が、何も起きず。

 

「……うーん、残念。そんなにうまくはいかないか」

 

 ヨハンは肩をすくめる。

 

「…………いや、かなり惜しかったぞ。印の調和が僅かに乱れたようだが……」

 

 じいじがヨハンに言う。

 

「おぉー、そうでしたか」

 

 ヨハンはにこりとする。

 

(すご……ヨハンさん、一度、見ただけで、じいじに惜しいと言わせるところまで……)

 

「うむ。それじゃあ、お互いに少し教え合ってみるかの」

 

(お……? ということは、俺もドイツ式をやってみるってこと?)

 

 そうして、日本式封魔術とドイツ式封魔術をお互いに教え合いが始まった。

 

 界もヨハンに教わりつつ、ドイツ式をやってみることになった。

 

「界くん、ドイツ式のルーン文字を使った封魔術について解説するね」

 

「ありがとうございます」

 

 ヨハンは懇切的寧にドイツ式封魔術について解説してくれた。

 

 =================================================

【ドイツ式封魔術】

 基礎ルーン → 拘束ルーン → 意志ルーン

 の3つのルーンから構成される。

 

 それぞれには下記のような意味がある。

 

 基礎ルーン:霊魔の「属性」を表す

 拘束ルーン:霊魔力の「封じ方」を表す

 意志ルーン:術者の「封印の動機・感情」を込める

 

 それぞれに対して、使えるルーンが決まっている。

 

 基礎ルーンとして使えるルーンの例

 ᚾ ナウディズ 苦痛・抑圧(怨霊系)

 ᛇ エイワズ  死と再生(屍霊系)

 ᛃ ジェラ   循環・変化(自然精霊系)

 ᛉ アルギズ  防御・聖域(神霊・上位霊系)

 

 拘束ルーンとして使えるルーンの例

 ᛒ ベルカノ 包囲・護封(防御結界で包む)

 ᛏ ティワズ 強制・抑圧(力でねじ伏せる)

 ᚠ フェフ  吸収・弱化(魔力を奪う)

 

 意志ルーンとして使えるルーンの例

 ᛗ マンナズ 人間性・共感(鎮めるため)

 ᚨ アンスズ 神託・使命(命令として)

 ᚲ カウナズ 苦悩・怒り(復讐のため)

 

 基本的に対象の霊魔に合わせて、「基礎ルーン」、「拘束ルーン」、「意志ルーン」から1つずつを選び、組み合わせることで封印を行う。

 

 例えば、

 基礎ルーン→拘束ルーン→意志ルーン

 (ジェラ) → (フェフ) → (マンナズ) 

 といった具合だ。

 

 さらにそれぞれのルーンに対して、詠唱も決まっている。

 

 例えば、

 

 (ジェラ)であれば、

 Schließe den Kreis des Schicksals – nähe ihn hier und jetzt.

(因果の輪を閉じ、今ここに縫いとめよ)

 

 (フェフ)であれば、

 Mit der Kette der Gier sei es gebunden.

(欲を縛りし鎖をもって、囚わん)

 

 (マンナズ) であれば、

 Mein Wille erkennt dein Sein und beansprucht es.

(我が意志、汝の存在を認め支配す)

 

 となる。

 

 また、解呪のときは、この逆順を辿る。

 

 意志ルーン→拘束ルーン→基礎ルーン

 

 また、解呪時もそれぞれのルーンに解呪用の詠唱が準備されている。

 

 =================================================

 

「ほぇー、すごくきっちりと決められているんですね」

 

 ヨハンの解説を聞いた界は、ドイツ式封魔術の体系化され具合に驚く。

 

「そうだね。魔力の素養があり、ルーン文字や詠唱をしっかり覚え、遵守できれば、使えるようになっているよ」

 

(……日本式も見習った方がいいのでは?)

 

「ただし、魔力の上限が減ってしまうから使い過ぎには注意だ」

 

(なるほど、その点は日本式と変わらないんだね……)

 

 などと、界が思っていると、隣りからじいじの声が聞こえてくる。

 

「リーゼちゃん、縛印(ばくいん)伏印(ふくいん)締印(ていいん)の順番で行うのじゃ」

 

(……言われてみると、その辺はドイツ式に似てる?)

 

 と、界は一瞬、思ったが、

 

「それで、縛印(ばくいん)はこう! 伏印(ふくいん)はこう! 締印(ていいん)はこうじゃ!」

 

「えぇ……!?」

 

 リーゼは戸惑っている。

 

(…………うわぁ、こうして見ると、日本式はほとんど勢いじゃん……)

 

「ははは……」

 

 それを見て、ヨハンも苦笑いしている。

 

「よし、それじゃあ、界くん、ドイツ式封魔術、やってみようか!」

 

「……はい!」

 

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