【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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49.エーテルクルクルクーヘン

「Was ist das?(それはなんですか?)」

 

 なぜかリーゼがいつもより低い声でドイツ語で、問い合わせする。

 

「え……? なんて……?」

 

 界はドイツ語わからず。

 リーゼに聞き返す。

 

「あっ……、えーと、な、なんでもない!」

 

 リーゼは少し慌てた様子で、そっぽを向いてしまう。

 

「……」

 

 雨もドイツ語はわからなかった。

 しかし、何か得体のしれないリスクのようなものを本能的に感じ取った。

 

「界くん、その人達は?」

 

 雨はリーゼ、ヨハンの方向に視線を送る。

 

「あ、えーと、彼らはドイツから技術交流に来ている霊の審判者(ガイストリヒター)で、ヨハンさんとリーゼさん」

 

「……リーゼ」

 

 雨はリーゼという自身にもひけを取らない容姿のドイツ少女の存在をしっかりと記憶する。

 

 と、

 

「おー、ヒュプシェス・メートヒェン(可愛い女の子)」

 

 ヨハンが雨を見て、そんなことを言う。

 

「「……?」」

 

 界も雨もドイツ語はわからず、何言ってるのこの人? という顔をする。

 

「僕はヨハン。ヨハン・ヴィンターシュタイン。君は?」

 

「銀山雨と申します」

 

「あ、銀山家の…………雨ちゃんだね。よろしくね。雨ちゃん」

 

「あ、はい、よろしくです」

 

 雨はわりと淡泊に答える。

 

 ヨハンはあいさつすると、わりと瞳にハートマークな視線を向けられることが多かったので、内心、少し驚く。

 

「ほら、リーゼも挨拶しな」

 

「えっ……」

 

 ヨハンに促され、リーゼは致し方なしという様子で、

 

「リーゼロッテ・ヴィンターシュタイン。よろしく」

 

 と挨拶する。

 

 と、

 

「挨拶は済んだか、若者ども」

 

 生暖かい目で見守っていたじいじが若者たちを呼ぶ。

 

「「「「あ、はい」」」」

 

「うむ、今回は霊魔が弱っているから、悠長に挨拶などできたが、緊急時には控えるようにな」

 

 しっかりと苦言も呈す。

 

「「「「はい」」」」

 

「よかろう。それじゃあ、銀山くん、誰からいこうかね」

 

「そうですね……」

 

(状況と話しぶりを見るに、一人ずつ、霊魔との実戦訓練をしていくということかな?)

 

「じゃあ、ここは僕から」

 

 立候補したのはヨハンであった。

 

「おー、ヨハンくんか。まぁ、君はわざわざこんなお試しをする必要もないのじゃがな……」

 

「そうですね。ですが、ここは一つ、彼らのお手本ということで」

 

「うむ、それじゃあ、頼ませてもらおうかの……」

 

 そうして、ヨハンが一歩前に出る。

 

 銀山家の破魔師たちが一体の霊魔に対する封絶術を解く。

 

 すると、カエルのような姿をした霊魔がヨハンに襲い掛かってくる。

 

 と、

 

「うーん、怖いね……」

 

 ヨハンはそんなことを呟きながら、懐から何かを取り出す。

 

(……銃?)

 

 それは拳銃の形をしたものであった。

 

 ヨハンは静かに拳銃の銃身を上げた。

 それは古風なリボルバー式。

 

 彼の指が、銀色に鈍く光る弾丸を装填する。

 

 界は確かにその弾丸が魔力を帯びているのを感じ取った。

 

 青白い光を宿した結晶弾が、薬室に収まる。

 

 そして、

 

霊晶砲(エーテル・グランヴィル)

 

 ヨハンは呟くようにそう言う。

 

 銃口から魔力がスパークするように発射される。

 

「ゲギャァアアアアア!!」

 

 カエルのような姿の霊魔の身体を青白く煌めく弾丸が貫く。

 

 そして、霊魔は霧散する。

 

「「「おぉおおおお!」」」

 

 周囲からは歓声があがり、拍手する者もいた。

 

(……なにこれ……かっけぇ……!)

 

 界もヨハンのクールな姿にワクワクする。

 そして、素直に質問する。

 

「ヨハンさん、今の技はなんですか!?」

 

「あ、えーとね、Ätherkristallkugel(エーテルクリスタルクーゲル)っていうんだ」

 

「え? テル栗田来る・クーデレ?」

 

「エーテルクリスタルクーゲル! 日本語で言うと、霊素結晶弾って感じかな」

 

「ほぇー」

 

「界、エーテルクルクルクーヘンはな、ドイツにおける妖術に近い技じゃな」

 

 じいじが補足してくれる。

 

(なるほど……!)

 

「白神のお爺さま、エーテルクリスタルクーゲルです」

 

「ふぇ……?」

 

 などと、やり取りしていると、

 

「それじゃあ、次は私が……」

 

 今度は、雨が一歩前に出る。

 

「雨さん、がんばってね」

 

 そう言いながら、ヨハンは入れ替わるように後方へ下がる。

 

「お、おい、雨お嬢の番のようだ」

「あぁ、一番、きもくない霊魔にしてさしあげろ」

「うむ、そうだな」

 

 なにやら破魔師達の声が聞こえてくる。

 

「……別になんでもいいのに」

 

 その様子を見て、雨は少し不服そうであったが、破魔師達は雨を甘やかしている感じに見えた。

 

(…………なんか、ひどい扱いを受けているわけではないんだな……)

 

 界は少しほっとする。

 元依代の子である雨は、悪抜けの子などと呼び、差別的な目を向けられることも多いと聞いていた。

 しかし、少なくともここにいる破魔師達から、そういった雰囲気は感じられなかった。

 

 そうこうしているうちに、銀山家の破魔師たちが一体の霊魔に対する封絶術を解く。

 

 選ばれたのはカニのような姿をした霊魔であった。

 

 霊魔は雨に襲い掛かってくる。

 

 雨は静かに掌を前に出す。

 

「氷術:氷柱槍(ひょうちゅうそう)

 

 一瞬の静寂ののち、雨の近くに氷柱の槍が形成される。

 その槍を雨が指先でちょんと弾く。

 

 鋭槍がカニめがけて一直線に放たれる。

 

「キギャァアアア!」

 

 カニの霊魔は奇妙な鳴き声をあげる。

 

 鋭く尖った槍が霊魔の殻に突き刺さり、甲を砕く高音が響いた。

 一瞬、霊魔がもがくが、冷気が傷口に入り込み、動きが鈍る。

 

 そして、凍てついた脚が地を踏みしめられず、重々しく崩れ落ちた。

 

「わーお」

 

 それを見ていたヨハンが小さく歓声をあげる。

 

「ふむ……」

 

 じいじも感心するように頷いている。

 

(……すごい。雨さんの氷術、たった一年ですごく洗練されている……)

 

 と、

 

「ど、どうでしたか? 界くん」

 

 雨が緊張した様子で界に感想を求める。

 

「え? す、すごいよ! 雨さん! たった一年で! 栗田先生に見せたいね!」

 

「うん……!」

 

 雨はとても嬉しそうに頷く。

 

「……ぐぎぎ」

 

(……ん?)

 

 カニがまだ生きてたのかな? と思って見ると、それはリーゼであった。

 

 リーゼはなにやら歯を食いしばっていた。

 

 と、

 

「それじゃあ、次、リーゼちゃんね」

 

「へ……? あ、はい……」

 

 じいじに指名され、リーゼは油断していたのか、少々、すっとんきょうな声を出す。

 

 しかし、覚悟を決めたのか雨と入れ替わるように前に出る。

 

「お、おい、雨お嬢より小さい女の子が来たぞ」

「あぁ、しかも雨お嬢に匹敵する……」

「おい、不敬だぞ。彼女はヴィンターシュタイン家のご令嬢」

「ってか、お前、雨お嬢一筋じゃないのか!?」

「っ……! ち、違う! 私は雨お嬢一筋であって……お、お許しください、雨お嬢」

 

「…………」

 

 当の雨は無言で、何やら恥ずかしそうに視線を逸らしている。

 

「でもまぁ、やっぱりあの子、可愛いから極力きもくない霊魔にして差し上げろ」ということで、選ばれたのは、トカゲのような姿をした霊魔であった。

 

 リーゼは少々、緊張した様子ながら、怖がっているわけでもなく、堂々と霊魔の前に立つ。

 

 と、

 

「リーゼちゃん、封魔術を使ってごらん」

 

 それはじいじからのリクエストであった。

 

「っ……! わ、わかりました……!」

 

 リーゼもそれを受け入れる。

 

 その間にトカゲの霊魔がリーゼに向かい、直進を始める。

 

 リーゼは懐から拳銃を取り出す。

 

(あれはヨハンも使っていた霊素結晶弾……!)

 

 リーゼは更に魔力を帯びた弾丸を装填する。

 

 そして、

 

霊核弾(クリスタ・ヴァント)!」

 

 トカゲに向けて、弾丸を三発放つ。

 

「ぐぎゃ、ぐぎゃ、ぐぎゃん!」

 

 弾丸は見事にトカゲに命中する。

 

 そして、リーゼは木彫りの獣の依代を手に持つ。

 

「え……? 日本式……?」

 

 それを見た銀山家の者達がざわつく。

 

 だが、リーゼは集中を切らさずに結印(けついん)を続ける。

 

「縛めの鎖、いま編まれたり。

 汝が魂、此処に留まれ。

 我が意、我が理、ただ封ずるにあり――封!」

 

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