【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜 作:広路なゆる
「ほ、本当に頭を上げてよろしいのでしょうか?」
「よろしいです。よろしい以外ないです」
「…………承知いたしました」
ゆっくりと頭を上げた鏡美は「信じられない」とでも言いたげな顔をしていた。
(え……? なんでこの先生、突然、子供相手に土下座したうえにそれを止めてと言っただけで、こんな衝撃を受けたような顔してるの……? ちょっと怖い……)
界は少し怯える。
と、
「えーと、それでは、界様……どうぞお楽しみください」
鏡美はそんなことを言いながら、両腕で自分の身体を抱きしめるようなポーズで停止する。
(は……?)
「え、えーと……鏡美先生……? どうぞとは一体どういうことでしょう……?」
「あ、はい……
「サンドバッグ……?」
「はい、サンドバッグとは、叩いたり蹴ったり、主に打撃の練習ができる物体でございます」
「あ、はい……それは知ってますが……」
「た、大変、失礼いたしました! それではどうぞ気の向くままに……」
(え、まじで何言ってんの? この人……)
界は怪訝な視線を向ける。
その視線を察知した鏡美は焦ったような表情を見せる。
「も、申し訳ございません……! 直立型のサンドバッグはお気に召されなかったでしょうか? それでは吊るすタイプに……」
鏡美はそんなことを言いながらアタッシュケースの中から何やら小道具を取り出そうとする。
「い、いや、そういうことじゃなくてですね。普通に破魔師になるための基礎的なことを教えてほしいのですが……」
「は、はい……? ど、どういうことでしょう……? あ! 申し訳ありません! 下賤の身の分際で質問など……不徳の致すところでございます」
(どうも嚙み合っていない感じがする……)
「いや、鏡美先生、不明点があれば、質問していただければと思います」
「え? あ、はい……そ、それでは畏れながら質問させていただきます。界様のおっしゃる〝破魔師になるための基礎的なこと〟とは、例えば、魔力発現の方法、破魔師の三原則〝心技体〟に関することでしょうか?」
(破魔師の三原則〝心技体〟……? すごく基礎的な響きがします。きっと……)
「それです」
「さ、左様でございますか……となりますと、正に〝破魔師になるための基礎的なこと〟を学ぶことになりますが、本当によろしいのでしょうか?」
「あい、よろしくお願いします」
界は頭を下げる。
「っ…………、こ、この子……ほ、本当に
鏡美がぼそりと何か呟く。
「……ん?」
「あ、いえいえ、何でもございません。えーと、それでは、まず魔力発現の方法についてですが……」
「あ、実はそれだけは知ってるんです。だから、できれば破魔師の三原則〝心技体〟というものから教えていただけないでしょうか」
「あ、はい、確かにそうですよね。魔力発現については生まれた時からできてますものね……失礼いたしました」
(……? 何で鏡美先生、俺が生まれた時から、ドウマに対抗するために、魔力発現してたこと知ってるんだろ……)
「それでは、破魔師の三原則〝心技体〟について説明いたします」
(おぉ、やっとこれまで封印されていた破魔師について学べる……!)
「破魔師の三原則〝心技体〟なのですが、基本的に学ぶ順番は逆順で、体→技→心となります。そもそも技と心は魔力発現してからのお話なので、普通は界様くらいの年齢では実践したくともできないことなのです」
「なるほどです」
「界様におかれましても現在、発現できている魔力はドウマ様に依存するものかと存じますので、状況的には同様になるかと思います」
(ん……?)
鏡美のその発言について、界は少し疑問があったが、一旦、話の腰を折らないように、聞き続ける。
「それで、〝体〟についてです。体はそのままで体術の意となります」
「あい」
「魔力での戦闘が主な破魔師においても基本的な体術は学んでおいて損はありません」
(……確かに)
界は、前世で死んだときも知識的な準備はしていたが、体力の無さが仇になったことをふと思い出す。
「ですから、まずは体術から学んでいくのが基本的な順序になってございます」
「なるほどです、ありがとうございます」
「っ!?」
当然、鏡美は絶句する。
「……? ど、どうかしましたか……?」
「い、いえ……なんでもございません」
「……? 鏡美先生、差し支えなければ、技、心について、知識だけでも教えていただけないでしょうか?」
「さ、差支えなんて、とんでもございません! 承知いたしました!」
(……なんだか大袈裟だな)
界は苦笑いする。
◇◇◇
プロフェッショナルとは何か?
人によってとらえ方は異なるでしょう。
私の考えるプロフェッショナル。
それは、例えどんな理不尽な依頼であろうとも断らないことである。
しかし、断らないからと言って、嫌じゃないわけではない。
中でも、最悪の仕事が
おっといけない、悪憑の子は差別用語でしたわ。
依代の子と呼ぶのが本来の……。
いや、無理だろ。
あいつらは悪憑の子以外の何者でもない。
過去に何度も悪憑の子の家庭教師を引き受けた。
引き受ける者が極めて少ないからであろう。
割と少なくはない頻度でそれはやってくる。
しかし、その度に、筆舌に尽くしがたい屈辱であった。
ある時は、
「指導? 何様のつもりだ? 小娘……お前がこれからやるのは
またある時は、
「ねぇねぇ、お姉ちゃん、おしっこ掛けていい? 断ったら殺すねー」
そして、またある時は、
「わーい、お姉ちゃーん、サッカーしよーよー」
一瞬、油断しかけた。しかし、
「お姉ちゃん、ボールなぁ」
あぁ、思い出すだけで、辛みが辛い。
とはいえ、経験は人を強くする。
結論として、悪憑の子には、サンドバッグとして身を差し出すのが最適解であった。
だから……、
「え、えーと……鏡美さん……? どうぞとは一体どういうことでしょう……?」
「あ、はい……私はサンドバッグでございます」
「サンドバッグ……?」
悪憑の子が素っ頓狂に聞き返してくる。
ドウマはサンドバッグを知らないのか?
「はい、サンドバッグとは、叩いたり蹴ったり、主に打撃の練習ができる物体でございます」
「あ、はい……それは知ってますが……」
知っている……!? し、しまった……罠か……!
この子の悪霊はあの〝鬼神ドウマ〟。
失言は即、死に直結する。
「た、大変、失礼いたしました! それではどうぞ気の向くままに……」
私がそう言うと、悪霊の子が怪訝な視線を向けてくる。
しくじったか……!?
「も、申し訳ございません……! 直立型のサンドバッグはお気に召されなかったでしょうか? それでは吊るすタイプに……」
死を覚悟しつつ、一縷の望みに賭け、小道具を探す。
「い、いや、そういうことじゃなくてですね。普通に破魔師になるための基礎的なことを教えてほしいのですが……」
……?
「は、はい……? ど、どういうことでしょう……?」
し、しまった……! あまりの衝撃に、NG行動筆頭の……〝質問〟をしてしまった……!
「あ! 申し訳ありません! 下賤の身の分際で質問など……不徳の致すところでございます」
「いや、鏡美先生、不明点があれば、質問していただければと思います」
……!? ……へぇ……そ、そういうタイプの悪霊もいるんですね……。
え……? でも、待って! この子の悪霊、あの
何かの不手際で普通の子に……?
先生呼びされてるし……。
いやしかし、その割に、語彙力が高い。
年齢不相応の語彙力の高さは悪憑の子の特徴に一致している。
「え? あ、はい……そ、それでは畏れながら質問させていただきます。界様のおっしゃる〝破魔師になるための基礎的なこと〟とは、例えば、魔力発現の方法、破魔師の三原則〝心技体〟に関することでしょうか?」
やばい……ドウマ相手に破魔師の基礎を語るなんて……間違ってたら殺されるかも。。。
「それです」
ほっ……。
「さ、左様でございますか……となりますと、正に〝破魔師になるための基礎的なこと〟を学ぶことになりますが、本当によろしいのでしょうか?」
「あい、よろしくお願いします」
界は頭を下げる。
「っ…………、こ、この子……ほ、本当に
や、やば……! 私、何
今の聞こえてたらやばっ……!
「……ん?」
セーフ……? みたいね……ふぅ……プロフェッショナルが聞いて呆れる。
でも、この子……さっき私に向かって、頭を下げたわよね……、まさか本当に……。
「あ、いえいえ、何でもございません。えーと、それでは、まず魔力発現の方法についてですが……」
「あ、実はそれだけは知ってるんです。だから、できれば破魔師の三原則〝心技体〟というものから教えていただけないでしょうか」
「あ、はい、確かにそうですよね。魔力発現については生まれた時からできてますものね……失礼いたしました」
悪つ…………依代の子は、生まれた頃から、その悪霊の魔力を発する。
魔力の発現というよりは、〝暴発〟に近いだろう。
「それでは、破魔師の三原則〝心技体〟について説明いたします。破魔師の三原則〝心技体〟なのですが、基本的に学ぶ順番は逆順で、体→技→心となります。そもそも技と心は魔力発現してからのお話なので、普通は界様くらいの年齢では実践したくともできないことなのです」
「なるほどです」
「界様におかれましても現在、発現できている魔力はドウマ様に依存するものかと存じますので、状況的には同様になるかと思います。それで、〝体〟についてです。体はそのままで体術の意となります」
「あい」
「魔力での戦闘が主な破魔師においても基本的な体術は学んでおいて損はありません。ですから、まずは体術から学んでいくのが基本的な順序になってございます」
「なるほどです、ありがとうございます」
「っ!?」
この子……今……なんて言った?
いや、聞き間違いじゃないわよね?
あ、ありがとう……?
こ、こんなの初めて…………。
「……? ど、どうかしましたか……?」
「い、いえ……なんでもございません」
「……? 鏡美先生、差し支えなければ、技、心について、知識だけでも教えていただけないでしょうか?」
「さ、差支えなんて、とんでもございません! 承知いたしました!」
この子……今までの依代の子とは、何かが
……いや、ダメよ、私……! この仕事の本来の目的は……。
プロフェッショナルとして、油断は決して許されない。
彼がまともであればあるほどに……〝異常〟なのです。