【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜 作:広路なゆる
リーゼはトカゲの霊魔に対して
「縛めの鎖、いま編まれたり。
汝が魂、此処に留まれ。
我が意、我が理、ただ封ずるにあり――封!」
すると、トカゲは光を放ち、木彫りの獣の依代に収まっていく。
「おぉー、よくやったぞ、リーゼちゃん、成功じゃな!」
「はい……!」
じいじに褒められて、リーゼはほんのりと口角を緩める。
「リーゼ、すごいじゃないか、実戦で封魔術を成功させるなんて……!」
「あ、ありがと……」
ヨハンの称賛には控えめの反応を見せる。
(うぅ……、先を越されてしまった……)
同じように訓練しているのに、ドイツ式封魔術を未だ扱えない界はちょっぴり悔しかった。
だけど、
「すごいですね……! リーゼさん!」
中身は大人なので、しっかりと称賛する。
「で…………でしょ!」
リーゼは一瞬、戸惑いつつも、胸を張る。
一方、
「お父さん……、あれって…………封印……術……?」
「あ、雨……そ、そうだな……」
雨は自分の父に、リーゼが今、披露した技の内容を確認する。
「……ふーん」
雨は少々、不満そうな顔を見せ、父である銀山は焦った表情を浮かべていた。
「次、最後。界の番じゃな」
じいじがそう言うので、
「あ、うん」
界は頷く。
「それじゃ、界、はい、これ!」
「え……?」
じいじは界に石を渡す。
縞模様が美しい半透明な石である。
(え……? これって……)
それは
普段、界が訓練で使用しているドイツ式の依代石。
つまり、小型のオオカミのような
「ど、どういうこと!?」
「界、お前、未だに、ちんたらやってるんじゃろ?」
「っ……!」
(失敬だぞ! じいじ……! これでも一生懸命やっているんだ!)
「界、お前は実戦の方が早く身につくタイプなんじゃないかと思ってな」
【それは言えてる。わかってるじゃないか、田介のじいさんは……】
(ちょ、ドウマまで……!)
「というわけで、がんばるのじゃぞー!」
そう言って、じいじは銀山家の破魔師の方たちに「いいよ」というように丸のジェスチャーを送る。
「お、許可が下りたようだ」
「最後は男児だな……」
「ってか、あの子……噂のドウマ様の……」
「ひっ、まじか……」
「ただ……、あのドウマ様を制御下に置いているとかなんとか……」
「やばすぎるキッズじゃないか……」
「それはそれとして……さっき、雨お嬢が、彼に対して、我々には見せない顔をしていなかったか?」
「おいやめろ……! 気づかないふりをしていたのに……!」
「………………ちょっと強めの奴でよさそうだな」
「……うん」
「……特に理由はないけど、そうしよう」
(……おい)
そうして、銀山家の破魔師たちが一体の霊魔に対する封絶術を解く。
選ばれたのはムカデのような姿をした霊魔であった。
(うおっ、来た……!)
「……界くん?」「界さん……」
雨は不思議そうに、リーゼは少し不安そうに界を見つめる。
そんな二人に、気づいていない界は
(……もう、やるしかないぞ!)
覚悟を決め、瑪瑙を握った手を左手に持つ。
そして……、
「Ziehe den Keil des Willens – gewähre dir Selbstbestimmung.(意志の楔を抜き、汝が自律を許す)」
右手で空に、ルーン文字をなぞる。
空に描かれた〝ᛗ〟の文字と共に、石に刻まれたᛗの文字が砕けるように消滅する。
「ちょ、ちょっと待って、どういうこと?」
その様子を見ていたヨハンが慌てた様子でじいじに尋ねる。
「今、界くんがやろうとしてるのは、解呪ですよね? 確かに界くんは、一度もドイツ式の封魔術に成功はしていませんが、それはそれとして、今、解呪をする意味がわかりません!」
「ふむ……」
じいじは気難しそうな顔で頷く。
(じいじは俺の変な封魔術を信じて……)
界はそう思い、ドイツ式解呪術を続行する。
「Zerschneide die Kette der Gier – befreie es(欲の鎖を断ち、解き放て)」
石に刻まれた〝ᚠ〟の文字が砕けるように消滅する。
(よし、いつになくいい感じだ……)
「確かにそうじゃな! 界、なんで解呪術しようとしてるんじゃー?」
(お、おい……!)
「Löse den Kreis der Ernte – lasse die Zeit erneut フリーゲン!(報いの輪を解き、時を
(あぁあああ! フリーゲンじゃなくて、フリーセン(巡らせよ)だったぁあああ!)
〝ᛃ〟の文字は砕けることなく、他の文字も元に戻っていく。
失敗である。
(くっ……、最後……心が乱れた……)
界はがっくしする。
(って、そんな場合じゃない……!)
ムカデのような霊魔は迫っていた。
(くっ……)
「風術〝
「ギィイイ」
界はとっさに風の壁でムカデを止める。
さらに、
「水術〝流水〟」
水術でムカデを後方へと追いやる。
「おぉー!」「……」
その様子にヨハンやリーゼは興味を示していた。
実際のところ、界は、このくらいの霊魔であれば一般的な妖術のみで葬ることができる。
だが、
(今の目的はそこじゃない……。俺は……封魔術を……なんとか次のステージに進めなくちゃいけないんだ……)
界は、もう一度、瑪瑙を握る。
(も、もう一度……)
「Ziehe den Keil des Willeンヌ……」
(あぁあああ! 初っ端で噛んだぁあ! さっきのが奇跡的だったんだよ……!)
【異国の言葉とは難儀だなぁ】
ドウマは謎の共感を示す。
(「あぁ、くそっ……!」)
【お……? 田介にしてはイラついているいるな】
(「…………ごめん、ちょっと焦ってて……」)
【そうなのか?】
ドウマは少し不思議そうにする。
【なぜ、そんなに焦っているのかは知らぬが、前にも言ったが、田介は日本式の封魔術ができるのだからそれでいいのではないか?】
(「それは……そうかもだけど……」)
(だけど……、時間が……時間がないんだ……。ちょっとした手掛かりでも、今は……。……っ! 日本式……か……)
(「ドウマ、ありがとう、ちょっと試してみる」)
【ん……?】
と、界は、再度、瑪瑙を強く握る。
そして、
「封ぜし鎖、今解かれたり……」
「か、界……!」「界くん……!?」
じいじとヨハンは即座に反応する。
「界くん……! それは……! っ……! おじいさま?」
ヨハンが何かを言おうとするが、じいじがそれを制止する。
だから、界は継続する。
だが……、瑪瑙に刻まれたルーン文字に変化はない。
(っ……! くっ……、ルーン文字による封印……これを無理矢理、解印で解くなんて……やっぱり無謀だったか……)
界は唇を噛みしめる。
(いや、諦めるのはまだ早い……!)
「なっ……! ど、どういうことだ……?」「す、すごい……」
ヨハンとリーゼはその気配に恐怖する覚えた。
界はありったけの魔力を瑪瑙に注ぎ込んだ。