【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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53.ひょっとして

(それはそれとして、ドイツ式にそんなデメリットがあるなんて、確かに知らなかった。じいじは知ってたのかな? …………っ! って、ちょっと待てよ……。……ドイツ式は魔力量以外にリスクを分散できる……。それって……)

 

 界はふと気が付く。

 

(それって要するに……何かを〝犠牲〟にしている。つまり〝犠牲の封魔術〟に……)

 

 犠牲の封魔術。

 それはドウマが発明したという依代の子に慰霊を卸す鎮魂の儀に使用されているという失われた封魔術である。

 

(じいじ……もしかして……俺のやりたいことに気付いて……)

 

「ありがとうございます、ヨハンさん。僕、もう少しドイツ式封魔術を頑張ってみようと思います」

 

「え……? あ、うん……。わかったよ。界くんには必要ないような気もするけど……」

 

 ヨハンはそんなことを言いつつ、一度、界から離れた。

 

(せっかくじいじが用意してくれた機会だ。なにかものにしないと……)

 

 界はそう意気込み、訓練を再開するのであった。

 

 ◇

 

 夜――。

 

 界は常夜灯だけの居間で一人、ドイツ式封魔術の表を眺めていた。

 

 が、

 

(「だめだ……。こんな表見ててもさっぱりわからん!」)

 

 表からくみ取れるのは、どのルーンを使えば何ができるかだ。

 なぜそのルーンを使うと、それができるのかはわからないのだ。

 

 要するに、多くの人がスマホを巧みに操作することはできても、スマホを作れと言われてもそんなことは無理。それに似ている。

 

(「ねぇ、ドウマ」)

 

【ん? なんだ?】

 

 ドウマは少し眠そうに返事をする。

 

(「ドウマはこのルーンの仕組み……わかるの?」)

 

【まぁ、なんとなくわな……】

 

(「えっ!? 本当に!?」)

 

【お、おう……。儂様は術の開発が盛んにおこなわれていた時代の者だからな……】

 

(「じゃ、じゃあ……その……ちょっと教えてくれないかな……」)

 

【うーん……】

 

 ドウマはすぐには了承しない。

 

【田介……お前……ひょっとしてだが……】

 

 界はぎくっとする。

 

【……母親殺しの呪いをどうにかしようとしているのか?】

 

(「えっ!? あ……えーと……、そ、そうだよ」)

 

【やはりか……】

 

 ドウマはそう言うと、何かを考えるように少し黙ってしまう。

 

 その時だった。

 

「ひゃっ!」

 

(……ん?)

 

 突然、物音が聞こえる。

 

「…………リーゼさん?」

 

 それはパジャマ姿のリーゼであった。デジャブ。

 

(ま、まさか……)

 

「……界さん……ひょっとして私がまた……発注することを狙って、ここで……」

 

「いや、それはないです」

 

「そ、そうよね……。ごめんなさい。私ったらなんて失礼なことを……」

 

 そう言って、リーゼは10ユーロ札をすっと差し出す。

 

(ふぁ……?)

 

 ジャー…………キー……パタン……。

 

「…………」

 

(…………)

 

 トイレから出たリーゼは無言で俯きながら、小刻みにプルプルと震えていた。

 

「あの……リーゼさん、大丈夫?」

 

「へ? あ、えぇ……、また無理を言ってごめんなさい。それと、あの……これ……本当にいらないの?」

 

 リーゼはふたたび10ユーロ札をすっと出す。

 

「いや、だからいらないって」

 

「そう……」

 

 リーゼはおずおずと10ユーロ札を引っ込める。

 

「あの……それで、界さん……やっぱり誰かと話してたよね?」

 

「え……? ど、どうだったかな……」

 

 界はとぼけるが、リーゼは界をじっと見つめる。

 

(……今日はバッチリ聞かれちゃってたのかな……)

 

「あの……ひょっとしてだけど……ど、ドウマ様と話していたの?」

 

(っ……!)

 

 リーゼの質問は完璧に当たっていた。

 

「えー、えーと……」

 

「界さん、私、誓って、誰にも言いません」

 

「え……?」

 

「だから、どうか教えてもらえませんか?」

 

 リーゼの眼差しは真剣そのものであった。

 

 その表情を見て、界は思う。

 

(これは、ただの好奇心から来るものじゃないんじゃないか……)

 

 だから、界は意を決する。

 

「……そうだよ」

 

「……!」

 

 リーゼは自分で聞いておいて、いぜ的中すると言葉を失う程、驚いていた。

 

「……す、すごい…………ど、どうやってドウマ様を従えて……」

 

【ぬ……】

 

 リーゼの言葉に、ドウマは少々、むっとした様子だ。

 

「リーゼさん、誤解しているよ」

 

「え……?」

 

「僕はドウマを従えてなんかいない」

 

 リーゼは目を丸くする。

 

「ドウマは……えーと……そうだな……」

 

(あ、あれ……、ドウマって……なんだろう……俺にとってのドウマ……)

 

「ドウマは……隙あらば、乗っ取ろうとしてくる厄介な奴であり……」

 

「……」【……】

 

「師匠であり……」

 

「……!」【……!】

 

「そして…………とても……とても大切な人だよ」

 

「……!」【……~~】

 

「…………界さん、やっぱり……とても信じられません」

 

 リーゼは俯き気味に呟く。

 だが、今度は顔をあげて、語りだす。

 

「……界さん、私は最初、界さんに……その無礼な態度を取ってしまっていましたよね?」

 

「え、えーと……どうだったかな?」

 

(……確かにちょっと冷たかったけど。無礼とは思わなかったけども)

 

「それは……きっと……界さんのことが、羨ましかったからです」

 

「え……?」

 

「界さんは、最強と呼ばれる鬼神ドウマ様の依代の子でありながら、そのドウマ様を従え……あ、失礼……えーと、うまくやってるじゃないですか」

 

(……うまくやれてるのかな)

 

「それで、界さんもご存知ですよね? 私の中にも……いるんです」

 

「……ひょっとして……ローレライさん?」

 

「そう、ローレライ」

 

 リーゼはヴィンターシュタイン家に代々伝わるとされる精霊〝ローレライ〟の正式継承者とされている。

 

 以前、リーゼはローレライをホムンクルスとして、具現化させる訓練において、失敗してしまったのだ。

 

 ホムンクルスとは、日本の〝魄術〟にあたる技であり、魔力を守護霊体へと変化させる技術のことだ。

 

「私は、ローレライの継承者でありながら、ローレライを具現化することもできない未熟者。なのに、界さんはあのドウマ様を制御下においていると聞いていた。界さんは訓練の時も、それにこうして夜も訓練をするような努力家なんだって今は知ってます」

 

(……う、訓練してたのもバレてたか……。ちょっと恥ずかしい……)

 

「それを知った今だからわかるけど、私はなんの根拠もなく、あなたを逆恨みしていたのだと思います」

 

「……」

 

「だから……ごめんなさい……」

 

(………………え? 女の子ってこんなに大人なの? 何、この適格な自己分析と謝罪まで……。ドイツのお国柄? 霊の審判者(ガイストリヒター)だから? それとも家柄のいいお嬢様だから? 俺が前世の6歳の時は……父ちゃんと母さんがいなくなって流石にちょっと荒んでたけど、その前はかっこいいオリジナルの技名とか妄想してるだけのアホだったと思うが……)

 

「そ、そんな……お気になさらず……」

 

 界はリーゼの大人っぷりに、恐縮するしかなかった。

 

「そ、それで……界さん……」

 

「はい?」

 

「恥をしのんで……お願いがあるのですが……」

 

「あ、うん。自分にできることであれば……」

 

「ありがとうございます」

 

 リーゼはぺこりと頭を下げると、唇を一度、結び、そして質問する。

 

「界さんは……どうやって…………どうやってドウマ様を落としたのですか?」

 

「へ……?」【……~~】

 

(……落とすとは一体?)

 

 

 

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