【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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62.経緯

 時を遡る。

 訓練中に、ヨハンに、祖父の危篤の連絡があった時のことだ。

 

「白神のじいじさん……ちょっとお話が……」

 

「ぬ……?」

 

「ちょっとあちらで……」

 

「……わかった」

 

「……リーゼもおいで」

 

「あ、うん、わかった」

 

 ヨハンはリーゼとじいじを呼んで会話をした。

 

「申し訳ありません、じいじさん、こんなことになるなんて……」

 

「……そうじゃな。俺にも想像力が欠如していた」

 

「そんなこと……。それで、じいじさん、僕達は空港には向かいません」

 

「なんと……?」

 

「うちのじいさんにもしものことがあれば、ガイスト達が解き放たれてしまう。そうならないように、あるいはその被害を最小限にするために僕達は責任を果たします」

 

「……確かに、問題はあったように思うが、君達だけが……」

 

「いえ、僕らは霊の審判者(ガイストリヒター)です。ヴィンターシュタイン家としての責任を果たさなければなりません」

 

 ヨハンは首を横に振った。

 

「しかし、ヨハンくん……、リーゼちゃんは……」

 

 じいじはリーゼの方に手の平を向ける。

 

 だが、

 

「……っ」

 

 リーゼがそのじいじの手の平を包み込むように取る。

 じいじは驚いたように、リーゼの方に視線を向ける。

 

 リーゼはじいじを見つめて言う。

 

「……私もヴィンターシュタイン家の霊の審判者(ガイストリヒター)だよ」

 

「……!」

 

 じいじは観念したように頭を垂らす。

 

「わかった。俺は君達の霊の審判者(ガイストリヒター)の誇りを見誤っていたようだ」

 

 だが、じいじは最後に自分自身を指差し、険しい表情でヨハンに言う。

 

「だが、俺も行く」

 

「えっ……? ですが……」

 

「君達を認めた上で、俺も破魔師として、支援するということだ」

 

「っ……」

 

「第一、君達、ガイストを解放する場所の心当たりはあるのか?」

 

「うっ……、す、すみません。じいじさん、感謝します……」

 

 ヨハンは頭を下げる。

 

「うむ」

 

 こうして、三人は人里離れた場所で、ガイストを対処することに決めたのであった。

 この時、じいじの頭の中には当然、一つの考えが浮かんだ。

 

 それは〝界を連れていくかどうか〟である。

 

 戦力を考えれば、連れていくにこしたことはなかった。

 

 だが、最終的に、じいじは界を連れて行かないことを選択した。

 

 一つの理由として、ドッペルゲンガーの存在が脳裏をよぎった。

 

 ヴィルヘルム・ヴィンターシュタインが封印したガイストの中には、ドッペルゲンガーがいたはずであった。

 ドッペルゲンガーは目の前の相手の姿になることができる。もしもドッペルゲンガーが界の姿をコピーしてしまったら? という危険性が真っ先に思いついたのである。

 しかし、界であればドッペルゲンガーもなんやかんや対処できるのではないかとも思った。

 

 結局のところ、じいじが界を連れて行かなかった理由、それは、じいじはあくまでも界の()父であることだ。

 祖父であって、父ではない。

 二等親であって、一等親でない。

 じいじにとって、この差は大きく、両親に確認せずに激戦が予想される戦地へ連れていくことはできなかったのだ。

 

 

 三人が行ってしまった後、界はやや腑に落ちず、心配ながらもヴィンターシュタイン家のお爺さんの無事を祈るくらいのことしかできずにいた。

 

 そんな界が三人の状況を知ったのは、完全に他者のおかげであった。

 

 界に三人の情報をもたらしたのは鏡美であった。

 

「界様、こちらを……」

 

「えっ……?」

 

 鏡美は界にスマートフォンの画面を見せてくれたのだ。

 

 それは〝破魔師ポータル〟であった。

 要するに破魔師専用のSNSであった。

 

 そこには緊急救援要請が表示されていて、場所や要請内容の概要が記載されていた。

 

「こ、これってもしかして……」

 

「おそらく……おじい様とヨハン様、リーゼ様ではないでしょうか?」

 

 こうして界は割と正規のルートで救援要請の存在を知ったのである。

 

「推奨クラス:5ですか……。そんな破魔師が都合よく手すきで近くにはいないと思いますが……」

 

 そう呟く鏡美であったが、

 

「ここから割と近い位置だ! すぐに行かなきゃ!」

 

 界は前のめりになる。

 

「そ、そうですか……」

 

「で、でもどうやってそこまで行けば……」

 

「私は、一応、お車を出すことはできます……一応ですが……」

 

「か、鏡美先生……お、お願いしたいです……」

 

「一旦は承知です」

 

「じゃあ……」

 

「ですが……お母さまに許可を取ってください」

 

「っ……!」

 

「お母さまにご許可をいただけない場合、お連れすることはできません」

 

「っ……、わ、わかったよ……!」

 

 そうして、界は道場から母のいる住居へ駆ける。

 

 母は即断で許可をくれたわけではなかった。

 悩んでいた。

 

 界が決定的な口説き文句を言ったわけではない。

 

 それでも母は最終的に許可してくれた。

 

 その時、「彰彦さんならきっと……、いや、違う、これは私自身が決断することだ」

 と呟いていたのが、界には印象的だった。

 

 そして、母さんは巡を見ていないといけないから行けないことを謝罪していた。

 

 二歳の巡もまるで空気を呼んだように「おにい すまぬ」と謝罪していた。

 

 こうして、界は鏡美の軽自動車に乗り込み、現場へ向かったのである。

 

 なお、鏡美とのドライブはなかなかにスリリングであった。

 法令順守の安全運転であったのだが。

 

 ◇◇◇

 

 そして、現在……。

 

「えーと……()()、到着しました」

 

 

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