【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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64.最速

 グリム・アスシュナーベルは小型化し、非常に素早い速度で周囲を飛び回る。

 まるで、「もう大技には当たりませんよ」と主張するように。

 

 それを見て、界は息を呑み、思う。

 

(………………あれは……ちょうどいいサイズ感だなぁ……)

 

 界がそんなことを思っている間にも、グリム・アスシュナーベルは速度を緩めることなく、界を撹乱するように不規則に飛び回る。

 

「な、なんてスピードだ……」

 

 その速度に、ヨハンは思わず、本音が漏れる。

 

 と、グリム・アスシュナーベルが突然、角度を変えて、界の方向に突進してくる。

 

「キィイイイイイ!」

 

 が、しかし、界に到達するギリギリのところで、踵を返すような離れていく。

 

「え……?」

 

 ヨハンは、グリム・アスシュナーベルの奇妙な動きを不思議に思う。

 

【は……、流石に阿保みたいに突っ込んではこないか】

 

 界の頭の中で、ドウマが嘲る様に呟く。

 

 この瞬間、界はシンプルに自分の周囲、四方八方を壁で囲っていたのだ。

 

 もしもグリム・アスシュナーベルがその速度で壁に激突していたなら、ただでは済まなかっただろう。

 

「絶対防御……」

 

「え……?」

 

 リーゼを治療しながら、じいじはポツリと呟く。

 

「実際問題……、仮にだ。あくまでも仮定の話だが、俺が界と対峙したとしてだ。あの防壁を展開されたら、さて……どう攻略したものかと思う。界の壁は未だ壊れたところを見たことがない。それでいて、全てを検証したわけではないという前提はあるが、物理的な攻撃以外も防ぐときた」

 

「っ……!」

 

 ヨハンは絶句する。

 それが歴戦の破魔師、白神元の言葉の重みであった。

 

【で、田介よ、確かにその状態なら、ほとんどの自分への攻撃は無力化できると思うが……】

 

(「……わかってるよ」)

 

 自分の四方八方を塞いでしまっては、自分からの攻撃も限られてしまう。

 少なくとも現時点では。

 

 何より、

 

(「この壁は、引きこもり戦略をするための壁じゃない……!」)

 

 界にとって、光の壁は、自分以外の誰かを守りたいという思いを具現化した魄術であった。

 

 界は、自身の周囲の壁を解除する。

 

 すると、グリム・アスシュナーベルは目ざとくそれを察知する。

 依然として、不規則で高速な動きを維持しながら、周囲の瘴気を弾丸のような固形物に変形させる。

 そして、あらゆる方向から界に向かって、弾丸を照射する。

 

「ギィイイイイ…………イ?」

 

 しかし、その全てがやはり壁により進行を阻害される。

 

 その壁は界の周囲に常駐しているわけではなく、界に向かってきた弾丸だけを防ぐようにその都度、出現した。

 

【ふん、あの鳥……スピードに自信があるようだが、流石に相手が悪かったな】

 

「ギィ……ギィ……」

 

【これが光属性という奴か……。忌々しいほどの魔力の移動速度だ……】

 

(……そうなのか?)

 

 界は、まだまだ経験が浅い。

 他の属性のことも深く理解しているわけでもないから、自属性である光属性の性質についての理解も十分とは言えない。

 

(ただ、まぁ、光ってのが、万物の中で最速ってのは聞いたことがある。相対性理論だっけな。アインシュタインの……。あ、アインシュタインってリーゼやヨハンと同じドイツの人だったよな……。ドイツ人ってすげぇ)

 

 などと、本人は呑気に考えているが、実際のところ少なくとも界の手の届く範囲内において、界の魔力の移動速度は異常であり、実質的にその空間全てを魔力で満たしているのと同義であった。

 

(それはそれとして、これならさ、守りながら攻撃もできるよね)

 

「ギィ……ギィ……」

 

 界は手の平を、グリム・アスシュナーベルへと向ける。

 

 

 

 

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