【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜   作:広路なゆる

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08.非常識

(つい雰囲気で〝(かべ)〟(仮)です……とか言っちゃったけど、これって一体……)

 

 界は無我夢中で炎を遮断する壁を出した。

 だが、その正体について、実はよく分かっていなかった。

 

 と、拘束されている鏡美が界に語りかける。

 

「界様…………それは恐らく……界様の魄術(はくじゅつ)でございます」

 

「あ……やっぱりそうですよね……」

 

 妖術も使っていない。

 五大属性である風、炎、土、雷、水のどれにも該当しない。

 となれば、魄術(それ)以外に思い当たる節がなかった。

 

(しかし……ほぼぶっつけ本番だったけど、うまくいってよかった……)

 

 界は三人とも生存しているという現況にひとまずほっとする。

 が……、

 

【あははは……! 壁だって……? 正気か……? なんだその地味すぎる能力……どう考えても脇役のそれじゃねえかよ……あはははは……!】

 

 頭の中で爆笑している奴がいる。

 

(……)

 

「笑うなや……いいだろ地味でも……」

 

 界は少しむすっとする。

 

(でも、魄術は一度発動すると型が固定されるらしい……壁は……確かにちょっと地味かもしれない……)

 

 などと少しばかり不安になっていると、

 

「界様……」

 

(……?)

 

 界に声をかけたのは鏡美だった。

 

「私はその魄術、素敵だと思います」

 

(……!)

 

「界様の誰かを守りたいという強い思いの形かと思います」

 

「……ありがとうございます。鏡美先生」

 

「…………私はもう先生などでは……」

 

「いえ、先生です」

 

「っ……!」

 

「鏡美先生、見ていてください。あなたに教わったことの成果を見せます」

 

「な、なにが成果だ……!? 魄術が使える程度で調子に乗るな! ガキとは実戦経験が違うのだ……! 炎術〝炎槍(えんそう)〟!」

 

 赤池は貫通性の高い直線的な炎を界に向けて放つ。

 

 が、界の光の壁は完全に炎を遮断する。

 

「っ……! だが、貴様のそれはただ守るだけだろ? 一瞬の隙をつき、直接攻撃を叩き込めばいいだけだ」

 

 そう言うと赤池は界に向かって突進してくる。

 

【はは……あいつ、馬鹿だな……。壁が守るだけ? 少し考えればそうでないことは想像に難くない】

 

 ドウマは嘲るように笑う。

 

 その間にも赤池は界との距離を詰める。

 そして、

 

「くらえ……くそガキが……!」

 

 右腕を振り上げる。

 

 その瞬間であった。

 

「はぎゃあ……!」

 

 赤池は何もない空間に顔面から激突する。

 

「…………くっ……!」

 

 赤池は動揺しつつも、本能的に界から距離を取ろうとする。

 

 だが、

 

「ぐはっ……」

 

 今度は後退しようとした方で空間に激突する。

 

「…………っっつ」

 

 赤池は焦りの表情を浮かべながらまるで突然、檻に閉じ込められた虫のように四方八方に動き回る。

 

 しかし、その都度、不可視の壁に激突する。

 

 赤池はそこでようやく気づく。

 

 彼がすでに光の壁で包囲されていることに。

 

 と、界が一歩前進し、拳を振り上げる。

 

「ひぃい……」

 

 赤池は腕で顔を隠すようにして、小さく悲鳴をあげる。

 

 だが、

 

「わ、私をどうするつもりだ? こ、子供の言うことなど誰も信じない!」

 

(っ……)

 

 一瞬、動きを止めた界の様子を見て、赤池は薄ら笑いを浮かべる。

 

「七代名家赤池家の当主である私に危害を加えたらどうなるだろうなぁ……?」

 

(……)

 

「ただでさえ、異端の悪憑の子である貴様は間違いなく危険分子とみなされ処分だ」

 

 赤池は尚もまくし立てるように続ける。

 

「赤池家は日本だけでなく、世界的にも後ろ盾となる貴族がいる。さぁ、追い詰められているのはどちらかな?」

 

(……)

 

 界が悔しさを押し殺すように拳を強く握るのを見て、赤池はにやりと口角をあげる。

 

「わかったな? 悪憑の子が私に危害を加えたならば、

 常識的に考えて……

 

 

 

 

 

 

 

 ぶへぇええ゛えええ!!

 

 

 

 

 

 

 」

 

 饒舌に語っていた赤池は顔面をぶん殴られて吹き飛ばされ、

 

「ぐぺっ」

 

 変なうめき声をあげて、〝壁〟に激突し、崩れ落ちる。

 

 

 

 そして、殴った本人は吐き捨てるように言う。

 

 

 

「常識的に考えて、五歳児が常識なんて知るか」

 

 

 

「か、界様……やってしまわれたのですね……」

 

 鏡美は焦った様子であわあわしていた。

 

【あはははは! 小僧やりやがったな! 最高じゃないか! 雷の妖術による肉体強化は家庭教師との訓練で散々やってたからなぁ!】

 

 鏡美とは対照的に頭の中の人(ドウマ)は妙に嬉しそうであった。

 

【それにしても、まさかあのような状況でも儂様の力を拒むとはなぁ……なかなかに興味深……いや、別に知識欲を刺激する的な意味であって、讃えているわけではないぞ……!】

 

 そして、当の界はと言うと、

 

「しまった……やっちまった…………」

 

 ちょっと焦っていた。

 

(だけど…………やっちまったが、後悔はない)

 

 のびている赤池の姿を見て、界はふと思う。

 

(今回、赤池を倒せたのは、完全に運だったとまでは言わないけど、運がよかった部分もあるのは確かだ……。ぶっつけ本番で魄術(はくじゅつ)が使えたのが正にそれだ。今後は不確実性を排除していくことが課題になってくるな……)

 

「えーと……、それでこの状況どうしよう……」

 

 勢いあまって赤池をぶん殴ってしまった界であったが、後先のことを考えていなかった。

 

「界様…………申し訳ありません」

 

 赤池が意識を失ったことで、鏡美の拘束が解かれていたようだ。

 その鏡美は界に向かって頭を下げる。

 

「界様の家庭教師を受けた裏で、赤池の仕事を受けてしまったこと、深くお詫びいたします」

 

「あ……えーと……」

 

「白状いたします。この仕事を受けた時の(わたくし)は依代の子であり、異端でもある界様を調査する……という赤池の依頼は社会的に意義のあるものと捉えておりました。ですが、今ではそれが間違っていたと思っております。これは私の素直な気持ちでございます」

 

「……」

 

「どのような罰でもお受けする覚悟でございます」

 

「…………罰だなんて……」

 

 界は困惑する。

 

「罰なんてないですよ……。でも……鏡美先生、一つだけ聞きたいです」

 

「はい、なんでございましょう?」

 

「僕に教えてくれたことは全力だった……と思っていいのでしょうか?」

 

「っっ……! も、もちろんでございます! 仮初(かりそめ)の仕事であっても仕事は仕事。不肖(ふしょう)、鏡美ではございますが、仕事には常に全力で取り組んでまいりました!」

 

「……であれば、大丈夫です。僕は先生が鏡美先生でよかったと思っています」

 

 界は微笑みかけるように鏡美にそう伝える。

 

「えっ……」

 

 それを言われた鏡美は、はっとする。

 頬は少し紅潮していた。

 

「はっ……、わ、(わたくし)は一体……! 界様は五歳児ですよ……!」

 

 鏡美は顔をぶんぶんと振っている。

 

(……ん?)

 

 界はそれを不思議そうに眺める。

 

 と、脳内からも声がする。

 

【おい、小僧……】

 

(「ん……? なに……?」)

 

 

【この……あんぽんたん】

 

 

(は……!?)

 

 ドウマから突然、小学生並みの罵りを受け、界は動揺する。

 

(まぁ、いい……。今は気まぐれドウマおじさんに構っている場合ではない)

 

「と、ところで鏡美先生…………これ、どうしよう……」

 

 界は焦った表情で、自身がのしてしまった赤池を指差す。

 

「…………はい」

 

 鏡美は少々、嫌そうに、赤池の状況を確認する。

 

「どうやら、気絶はしていますが、生きてはいるようです」

 

「そうですか」

 

 界はそれを聞き、少しほっとする。

 このような世界であっても、前世で絶対悪であった殺人は犯したくはなかった。

 

「では、界様………………証拠隠滅しましょうか」

 

 鏡美はどこからともなく(のこぎり)やらバッグやらを取り出す。

 

「いやいやいや、鏡美先生、今は冗談言ってる場合じゃないですよ!」

 

「え……? ……はい」

 

 鏡美は少し不思議そうな顔をしながらも、頷く。

 

(…………ひょっとして冗談じゃなかった?)

 

 と、界が冷や汗をかいていると、

 

「おぉー、界~、巡~、今、帰ったぞー」

 

 病院から呑気に父が帰ってきた。

 

「鏡美先生、ありがとうございましたー。幸い、真弓は大したことなく…………って、え? 何これ、どういう状況?」

 

 父は道場でぶっ倒れている赤池を発見し、硬直する。

 

 ◇

 

 それから、界と鏡美はつい先ほどあったことを父に話した。

 

「いや、えーと……すまない、理解が追い付かないのだが……」

 

 父は強く困惑した様子であった。

 

「鏡美さんが実はスパイで、赤池殿が界を殺そうとした。しかも赤池殿は俺や真弓のことをそんな風に思っていたなんて……。いや、そんなことはこの際、どうだっていい……」

 

(…………どうだっていいとは父ちゃん、随分とおおらかだな……)

 

「そ、そんなことよりも……本当に赤池殿を…………界が……? しかも界が魄術(はくじゅつ)を使っただって……?」

 

「はい、白神様、間違いございません」

 

「っっ……。赤池殿は腐ってもクラス4〝能級〟破魔師だぞ? それを界一人で……?」

 

「はい、白神様、間違いございません」

 

「っっ……」

 

 父は言葉を失う。

 

「い、いや、父ちゃん、一人じゃなくて鏡美先生もいたし……」

 

「いえ、(わたくし)は何の役にも立ちませんでした」

 

(えぇ……!?)

 

 鏡美は完全否定する。

 

「界……まずは無事でよかった。本当に……」

 

 父は界を強く抱きしめる。

 

(……)

 

「界、だが……一つだけ確認させてくれ」

 

「あい」

 

「なぜ、父が渡した人形を持っていなかったのだ?」

 

「へ……?」

 

「渡しただろ? 初めて鏡美先生が来た時に、人形(ひとがた)を……。肌身離さず持っていろと……」

 

「え……? うん……。だから、持ってるけど……?」

 

 界は折れないように大事にケースに格納した人形を父に見せる。

 

「っっっ……!? も、持っていた?」

 

「うん」

 

(ってか、いつも持ってろって言われてるけど、これ何なんだろう……)

 

「…………つ、つまり……式神はあの赤池を前にしても、界にとっては些細なこと。()()()()()()()と判断したということか…………? そ、そんなことが……」

 

 父は何やらぶつぶつと呟いていた。

 

 




次話、ドウマ、ついに(ちょっと)許しを得る……。光と闇の融合の序章が始まる。
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