所持金6000億円の断罪聖女。〜転移先の近未来都市で魔道具を売ったら国家予算を超えたので、財力と聖女の力で美食革命を起こします!〜   作:エリス

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第11話 質屋に売った指輪が博物館の展示品にされてました?!

「えっと……グランドパフェと温かい紅茶で!」

「私はチョコレートパフェとホットコーヒーね」

「俺は空腹だからな……パンケーキをデュカプルで、それからアイスコーヒーを頼む」

 

 喫茶店にやってきたエリス達は、思い思いのメニューを注文した。

 

「エリスちゃん、グランドパフェなんて食べきれるの?」

「それくらい食べないと昨晩の糞マズ完全栄養食の口直しにならないんですよ」

「あらら……アレを食べちゃったのね」

「だから言っただろ、長くは持たないってな」

 

 久我の言葉が、翌朝には二人がエリスを解放するために駆け込んできた理由だった。食事が完全栄養食であることを知りながら、捕まえさせたのは釈然としない。二人に非があるわけでもないし、あのまま言い合っても連れていかれただろうとエリスは納得することにした。

 

「久我先輩も、今日は随分と食べるじゃないですか」

「ああ、色々動いたからな」

 

 久我は最初の出会いである爆弾を積んだ車の件やテロリストに返り討ちにあったところを助けられた件、それから今回のデパートの件について、証言をしたらしい。

 

 その内容をマザーとやらが精査した結果、エリスがテロリストに関与している可能性は極めて低く、身柄を拘束するのは不当だと判断された。

 

 その判断を持って駆け込んできたのが今朝の話ということだった。

 

「まずはグランドパフェと紅茶になります」

 

 圧倒的重量感を持つパフェがエリスの前に置かれた。台座の付いたエリスの頭くらいある器に所狭しと色とりどりのパフェが咲き誇っていた。

 

 しかし、今回の注文はレベルが違い過ぎた。

 

「何これ……」

「パンケーキだが?」

 

 久我のパンケーキを見た瞬間、エリスは驚いてスプーンを落としてしまいそうになった。パンケーキ自体は指三本分くらいの厚さで驚くほどのものではない。しかし、それが10段重ねとなれば話は別だった。

 

「いやいや、これ……上の方が見えないんですけど!」

「食べるときは一段ずつ取るから問題ないぞ」

 

 久我の背丈なら見下ろせる高さでも、小柄なエリスからしたら見上げるほど高い。当たり前のように一番上のパンケーキにフォークを突き刺し、取り皿に取ってバターと蜂蜜、生クリームを乗せて食べ始めた。

 

「そういう問題じゃないんだけど……んっ、美味しい!」

 

 パフェに舌鼓を打ちながら、久我をジト目で睨む。そんなエリスの視線など気にすることなく次々とパンケーキを平らげていった。

 

 思う存分パフェを堪能したエリスは紅茶をお代わりして余韻に浸る。久我と成瀬も飲み物をお代わりしてまったりとしていると、成瀬が思い出したように話を切り出した。

 

「そういえば、博物館に新しい展示品が追加されたみたい」

「珍しいな。ここ最近は地球での発掘もあまり進んでいないだろ?」

「そうなんだけどね。ああ、これこれ。見た目はタダの古びた指輪なんだけど、性能が凄いらしいのよ」

 

 目を輝かせて話す成瀬に対して、久我は少しうんざりとした様子で気のない相槌を打っていた。エリスも指輪と聞いて眉をピクリと動かす。

 

「確かに、古代遺物の中には凄いものもあるにはあるが……」

「博物館の展示品って、そんなに凄いんですか?」

「ああ、何の変哲もないように見えて不思議な力を発揮する古代遺物と呼ばれるものがあって、それを展示しているんだ」

「火の玉を打ち出したり、傷を治すものもあるわ。凄いでしょ?」

 

(火球とか回復の付与っぽいけど……)

 

 エリスは眉を寄せて訝しむ。しかし、異世界からやってきたことを知られたくないため、冷静を装って紅茶に口を付けた。

 

「ま、使える回数に制限があるから、あまり実用的ではないんだけどね。でも、今回は凄いんだから!」

「そ、そうなのか?」

「そうなのよ、連続で使えないんだけど使用回数は無制限。しかも効果は絶対防御よ!」

「うん……?」

 

 どこかで聞いたことのある効果にエリスは眉を寄せ、興味の薄い久我は首を傾げた。

 

「あんまり凄そうに見えないんだが」

「何を言ってるの。5分に1回という制限はあるものの、たとえミサイルを撃ち込まれたとしても平気なんですよ!」

「それはヤバい代物だな。もし、テロリストの連中に渡ったら……」

「そうですね……ははは」

 

 想定していたよりも強力な古代遺物だと知って久我が腕を組んで考え込む。一方、エリスは乾いた笑いを浮かべながら背筋に冷たいものが流れるのを感じていた。

 

(間違いない、それは売り払った加護の指輪……)

 

「成瀬は見に行きたいんだろ?」

「そうそう、テロリストが奪い取ろうとするかもしれないですし……」

「そうだな。エリスはどうする?」

「ははは……もちろん一緒に行きたいです!」

 

 エリスの背中は冷や汗でびっしょりと濡れていた。当座のお金を手に入れるために売ってしまったので、エリスには関係ないこと。だが万に一つ、テロリストに渡ってエリスが売ったものだとバレたら捕まるかもしれない。

 

(もう二度と――あんなマズい飯は食べたくない!)

 

 何ができるか分からないが、テロリストの目論見を阻止するため、エリスは密かに闘志を燃やす。

 

 

 翌々日、エリス達は加護の指輪をテロリストの手から守るという体で博物館へとやってきた。

 

「うわっ、凄い、大きい!」

 

 エリスの目の前には、かつて目玉となっていた展示物である人型の巨大兵器が鎮座していた。見た目は派手な装飾が施されたゴーレムのように見えるが、その大きさにエリスは圧倒されてしまう。

 

「それにしても、今日はやたらと警備が少なくないか?」

「うん? 気のせいじゃないの」

 

 久我が周囲を見回して訝しむ。見る限り、1台か、せいぜい2台ほどしか警備ロボットが配置されていないように見えた。成瀬は軽くなが

 

「ま、どうやっても動かないから置物みたいなものだけどな」

「動かせないことはないと思うんだけど……」

「物騒なこと言わないでよ。こんなの動いたら被害が尋常じゃないわよ」

 

 成瀬の言う通り、動くだけで建物が破壊されていくと容易に想像できるほどの大きさ。流石にエリスとしても「魔力を注入したら動くかもしれない」と言う気にはなれなかった。

 

「でも、今回のお目当てはこっちよ!」

 

 成瀬が指差したのは、真ん中に堂々と展示されている加護の指輪。エリスにとってはイヤというほど見覚えのある聖女の証だ。

 

「見た目は平凡だがなぁ」

「効果も微妙なんだけど……」

 

 ぱっと見では使い古された飾り気のない指輪にしか見えない。久我のぼやきももっともだった。聖女の加護を使えない他の聖女ならまだしも、エリスからすれば劣化版の魔道具でしかない。

 

「ちょっと、そんなことないでしょ! たしかに制限はあるけど、何回でも使えるんだよ! すごくない?」

「うーん、それほどでも……襲ってきた相手が5分も大人しくしているなんてありえないし」

「そうだな。そう考えると微妙だな」

 

 熱く語る成瀬に対してドライな久我とエリス。その温度差に成瀬が拳を震わせながら唸る。

 

「ぐぬぬ、二人ともロマンがないよ!」

「ロマンって……」

 

 古代遺物が魔道具と同じだと知っているエリスから見れば、成瀬がいかに熱く語ったところで滑稽に映ってしまう。

 

「もうっ、これさえあれば先日みたいな爆弾テロだって平気なんだよ!」

「それはそうだけど……あっ!」

「どうかした?」

「ちょっと、トイレ行ってきます!」

 

 ジュースを飲み過ぎた上に、博物館の中は冷房が効いていて寒いくらい。瞬く間に限界が来たエリスはトイレ向かって駆け出した。

 

「お、おい。大丈夫か?」

「ついて行ってあげようか?」

「大丈夫だって! 子供じゃないんだから!」

 

 心配する二人を置き去りにして、エリスは風のように走る。博物館のトイレにたどり着くと、慌てて用を足した。

 

「ふぅ、危なかったぁ!」

 

 危機を脱したエリスは流そうとボタンに指を伸ばそうとして凍り付いた。

 

「あれ? 何で『流す』ボタンがないの?!」

 

 勝手の違うトイレにエリスは思わず声を上げてしまう。家のトイレのボタン操作は完璧にマスターしていたが、外でトイレを使うのは初めてのことだった。

 

「家のトイレも最初はひどい目にあったけど、ようやく使えるようになったってのに……これじゃ意味ないじゃない!」

 

 パネルには銀色の大きい飾りと、その隣に赤いボタンがあり『強く押せ』と書いてある。『流す』と親切に書いてあった部屋のトイレとはえらい違いだった。

 

「どう見ても、ボタンはこれだけか……」

 

 エリスは赤いボタンを思いっきり力を込めて押した。しかし、一向に流れる気配はない。

 

「うーん、壊れてるのかなぁ?」

 

 何度も何度も、エリスはボタンを押し続けた。

 

「コラァァァ! 何やってんだ!」

 

 突然、パネルから怒声が放たれた。

 

 

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