所持金6000億円の断罪聖女。〜転移先の近未来都市で魔道具を売ったら国家予算を超えたので、財力と聖女の力で美食革命を起こします!〜   作:エリス

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第13話 想像以上に警戒されているようです?!

 佐久間から連絡があり、エリスたちは詳しい状況を聞くために警察署へと向かった。

 

「よく来てくれた」

「人型の巨大兵器が盗まれたらしいが、どういうことだ? 昨日は厳重に警備されていたはずだろう」

「ずいぶんと不躾だな。とりあえず、お茶でも飲んで落ち着きたまえ」

 

 気を急いているエリスたちを他所に、佐久間は落ち着き払った様子で秘書にお茶を出すように指示する。

 

「昨日の警戒態勢だが、原因となった緊急ボタンがデマだったことは知っているか?」

「えっ、えっ、デマだったんですね! あ、あはは……」

 

 エリスはうわずった声で初めて知った風に返し、乾いた笑いを浮かべる。傍から見れば、彼女が何らかの形で関わっているであろうことは明らかだった。しかし、佐久間は気付かない振りをして話を続けた。

 

「強引に召集を掛けられた形になったからな。デマだと判明して、挙って解散したのだよ。その隙を突かれて盗まれた形だな」

「それって……やっぱりデマが原因ってこと?」

 

 エリスが恐る恐る尋ねると、佐久間は少し俯き加減に首を横に振った。

 

「全く影響がないわけではないだろう。だが、 一斉に警戒を解いた方に責任がある。それに――」

 

 そこまで言って、佐久間はひと息ついた。そして、エリスをジッと見つめながら神妙な顔をして確かめるように聞いてきた。

 

「君が緊急ボタンを押したんじゃないのかね?」

「えっ……そ、それは!」

「思ったよりバレるのが早かったわね……」

「聞こえているぞ?」

 

 デマの原因をあっさりと特定され、エリスはあからさまに動揺してしまう。追い打ちをかけるように、成瀬のつぶやきも佐久間に捕捉された。

 

「別に責めるつもりはない。先ほども言ったように、警戒を一斉に解いた方に問題があるのだからな」

「そうですか……」

 

 エリスは少しだけ佐久間の言葉に救われた気持ちになる。それでもモヤモヤした感じが残っているのは、彼の表情が何かあると告げていたからだろう。

 

「これも後で判明したのだが、テロリストはエリス君がいた時点で盗む計画を動かしていたらしい。警備システムに干渉するようなクラッキングの痕跡が見つかった」

「もしかして、パネルから聞こえてきた声は……」

「ああ、テロリストの連中だろう。だが、君のおかげで彼らは実行に移せなかった」

 

 佐久間はニヤリと笑った。

 

「何しろ、ヤツらが干渉して警備ロボを少しずつ減らすようにしていたのを、君が緊急ボタンを連打したせいで、減るどころか増えた挙句に厳戒態勢が敷かれたようになったのだからな! まったく君の手腕には恐れ入った!」

「あはは、そ、そうですね……」

 

 途端に心当たりのないことで持ち上げられて、エリスとしても反応に困って乾いた笑いを浮かべて誤魔化す。

 

「そこまでは良かったのだがね。君たちが帰ってからデマだと分かって、逆に警備に隙ができてしまったのだよ」

「それで、あっさりと盗まれたってことか!」

 

 久我の言葉に佐久間がうなずいた。

 

「そういう事情もあってね。デマを流したことに関しては問題ない。それに君が関わっていることを公にするつもりはないが、褒賞の方は追って検討しておこう」

「褒賞って言っても……」

「もちろん君の希望があるなら、それを検討しても構わない」

 

 可能な範囲でエリスの願いを聞いてくれると考えると破格だった。何しろ、佐久間は相応に地位がある。

 

「わかりました。こちらのお願いが決まりましたら相談させていただきますね」

「ああ、それと――盗まれた人型巨大兵器を追ってもらいたい」

 

 佐久間の言葉にエリスは首を傾げた。以前に久我から動かすことのできないガラクタだと聞いていたからだ。

 

「それは一体どういう……」

「あれを動かす方法が無いのは知っている。だが、テロリスト共が動かす方法を手に入れたとしたら?」

 

 エリスから見れば、見てくれこそ派手で巨大だが見慣れたゴーレムでしかない。冷や汗を流しながら未曽有の脅威であるかのように語るのは大げさ過ぎるように見えた。

 

「そうだ、もし動いても爆発する車をいっぱいぶつければ倒せるんじゃないですか!」

「爆発する車?」

「この間、車に轢かれたんですよ。それが大爆発を起こして――」

「どういうことだね? 久我君の報告とは食い違いがあるようだが……」

「あ、いや。そうだったのか? あの時の爆発はそういうことだったのか?!」

 

 久我は、エリスに突っ込んできた挙句に爆発した車について、事実とは異なる報告を上げていたらしい。冷や汗をかきながら弁解を始める彼に、佐久間は大きくため息を吐いて首を振った。

 

「報告については後できっちり詰めるとして、今は盗まれた古代遺物の方が先決だ」

「はい……とほほ」

「それでは……まずは博物館の方で聞き込みをしましょう」

「よろしく頼んだよ」

 

 落ち込む久我の代わりに成瀬が段取りを決め、警察署を後にした。

 

 

 博物館は昨日の盗難のこともあり、物々しい雰囲気に包まれていた。入り口は閉鎖され、『関係者以外立ち入り禁止』の札が掛かっている。

 

「ちょっと! ここは関係者以外立ち入り禁止だよ!」

 

 気にせず入ろうとするエリスたちを警備員が呼び止める。

 

「私たち関係者ですけど……」

「何をバカなことを――」

「こういう者だが?」

「えっ? す、すみませんでした! こ、こちらへどうぞ!」

 

 エリスは関係者だと主張するが、バカにされたように警備員に見下されてしまった。一方、久我が手帳を見せて少し凄んだだけで、警備員は委縮してしまう。

 

「納得いかないんだけど……」

「ははは、これを見せれば一目で刑事だとわかるからな」

「安易に見せるものじゃないけどね。相手がテロリストだったら逆効果よ」

 

 自慢げに笑う久我に成瀬が背後から釘を刺した。久我の顔が引きつって、笑い声も徐々に乾いたものになっていく。

 

「そ、そんなことは分かっている!」

「はあ……まあ、置いておいて現場に向かいましょう」

 

 成瀬を先頭に閑散とした館内を進んでいく。すぐに目的のスペースに到着したが、そこには台座だけだポツンと残されているだけだった。

 

「こりゃあ……キレイにやられたな」

「バラバラにして手分けして運び去ったらしいわ」

「それでも目立つと思うんだけどなぁ……」

「日中は人がいることもあって警備ロボット任せだからな。警備員が動くのは、こうして事件があった時か、人気のない夜だけだ」

「なるほど……」

 

 久我も成瀬もテロリストの鮮やかな手口に忌々しそうに眉を寄せ、現場の調査を始めた。

 

「痕跡もほとんどと言って良いほど残っていないわね。残っている痕跡は……あまり役には立たないかな」

「警備員にも話を聞いてみたが……デマだと聞かされて怒って帰ったヤツらばっかだったわ」

「あとは、警備システムのログを追うしかないけど、クラッキングされたなら期待はできないわね」

 

 少しでも手がかりがあればと警備システムのログも漁ってみたが、予想通り、これといった証拠は見つからなかった。全てが徒労に終わったせいか、久我と成瀬も少しだけ疲れた顔をしている。

 

「今日はここまでにして、喫茶店にでも行きません?」

「そうだな……」

「そうね、正直疲れちゃったわ」

 

 エリスの提案に疲れた顔をしながらも、少しだけ笑顔が戻ってきた。

 

「よし、グランドパフェが私を待っている!」

 

 エリスを先頭に三人は博物館の外へと向かう。

 

 

 先頭を歩く彼女を柱の陰から一人の男が睨みつけていた。

 

「あの女は爆弾の……また俺たちの邪魔をするつもりか?」

 

 男は懐から端末を取り出して電話を掛ける。

 

「ボス、例の女が盗んだブツを探しているようです……」

『なんだと?! クソッ、俺たちの邪魔をどこまですれば気が済むんだ!』

 

 明らかに苛立った声が端末から聞こえてきて、男が少しだけ委縮する。

 

『手に入れたは良いが、説明書の通りにやっても動かねえし、どうなってやがる……』

「それで、俺はどうすれば?」

『尾行して動きを探れ! 邪魔をするようなら殺せ!』

「でも、爆弾を食らっても無傷のヤツを、どうやって殺せと……」

 

 男の真っ当な返しすら、ボスの感情を逆撫でするには十分だった。

 

『うるせえ! ちっとは自分で考えろ。殺せないなら、捕まえて動けないようにすればいいだろうが!』

「なるほど、わかりやした!」

 

 男は電話を切ると、エリスの後をこっそり追うのだった。

 

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