所持金6000億円の断罪聖女。〜転移先の近未来都市で魔道具を売ったら国家予算を超えたので、財力と聖女の力で美食革命を起こします!〜   作:エリス

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第15話 食べ物の恨みを甘く見てはいけません!

「くそぅ……こんなゴミを置いていくなんて……」

 

 エリスの中で、食材を完全栄養食に変えた並平たちへの恨みが膨れ上がっていた。それを後押しするように空腹が襲ってくる。

 

「もう許せない。こいつらの食料を全部奪ってやるんだから!」

 

 エリスは縛っていた縄をほどくと、扉の鍵を器用に開けて監禁していた部屋の外に出る。

 

「この程度の縄と鍵で、私を捕まえておけるとでも思ったのか……?」

 

 あまりにも杜撰なやり方にエリスは疑念を抱く。しかし、のんびりしている余裕はない。急かすようにエリスのお腹が鳴った。

 

「先に食料を見つけないと!」

 

 食料を求めてアジトの中を徘徊する。警備が厳重かと思いきや、廊下を歩いていても

 人の気配がほとんど感じられなかった。

 

「おっかしいなぁ。なんか誰もいない感じなんだけど……あっ!」

 

 前方から二人の男が走って来るのに気づいて、エリスはとっさに物陰に隠れた。

 

「おい、大トロっていう高級品が手に入ったらしいぞ!」

「早くいかないと無くなっちまうかもしれないな、急ぐぞ!」

 

 目が大トロになっている二人は、物陰に隠れたエリスに目もくれず走り去っていった。そんな二人をエリスは呆れたように見送って、物陰から出る。

 

「確かに大トロってのは高かったけど、あそこまで目の色変えるようなものなのかなぁ……?」

 

 エリスが大トロを買った理由は単純に牛肉よりも高かったからというだけ。牛肉で久我と成瀬が元気になったのを見て、大トロなら、もっと元気になるだろうという打算で買ったものだった。

 

「ふふん。あなたたちが大トロに目を奪われている隙に、私は残りの食料を貰うからね!」

 

 人の気配こそないものの、エリスは慎重に扉を開けながら進んでいく。もちろん食料――完全栄養食以外を根こそぎ頂くためだった。

 

「ここも何もないなぁ。こっちは酒樽かな? 酒はいいや。こっちは……なんか箱の中にキラキラした装飾品が入ってるけど、食べ物じゃないし……」

 

 今のエリスは空腹だった。そんな彼女にとって食べられない酒や宝飾品は無価値。それでも先に進んでいくうちに干し肉が置かれた皿の置いてある部屋にたどり着いた。

 

「お、食料はっけーん! もしゃもしゃ。ん-、味はまーまーかな。というわけで全部いただき!」

 

 残りの干し肉をカバンに入れ、エリスは先へ進む。干し肉をかじりながら。

 

「もしゃもしゃ……おっと危ない……」

 

 角から出ようとして、奥の扉の前に男が左右に立っている扉を発見した。

 

「あそこだけ随分と厳重ね。おそらく……あそこが食糧庫でしょう」

 

 物陰から様子をうかがうも、彼らの守りはあまりにも堅かった。目の前を大トロに魅了された男たちが通っても動く気配すらない。

 

「うーん、なかなか厄介だな。ん……?」

 

 彼らの動きを注視していると、通り過ぎる男たちを羨ましそうに見ていた。それだけでなく、落ち着きを失ってきているのが手に取るように分かる。

 

「これは……あと一押しすれば堕ちそうだな」

 

 運よく通りかかれば儲けものだと思ったエリスだが、そう上手くは行かないようで、通りかかる者はなかなか現れなかった。

 

「うーん、声真似でもして煽るかな? あっ、誰か来た!」

 

 エリスが考えあぐねていると、奥の方から部下を引き連れた少しだけ身なりのいい男が走ってきた。

 

「まったく、アイツらは戦利品はちゃんと山分けするって約束だろうが!」

「すみません。ボスの手を煩わせてしまって……」

「もっと早く言いに来いよ。何で俺のところに上がってくるのが最後だったんだ?」

「えっと、それは……」

「ちっ、説教は後回しだ。急いで向かうぞ!」

 

 ボスと呼ばれた男の焦りが扉の前の二人にも伝わり、狼狽えはじめる。しかし、急いでいた彼らは気付かずに走り去っていく。

 

「ボスが来たら……」

「ああ、一片すら残らないだろうな……」

 

 大トロの誘惑に抵抗していた最後の二人が陥落した瞬間だった。

 

「うおおお、俺たちも行くぞ!」

「どうせ、こんな所に来るヤツなど居ねえ!」

 

 ボスを追って扉を守る二人も走り去ってしまった。

 

「ラッキー。これで食料は私のものだ! いやあ、大トロ効果は絶大だなぁ!」

 

 ホクホク顔でエリスは扉を開けた。山のような食料があることを期待して――。

 

「え、え、えええええ! 何なのこれは?!」

 

 しかし、エリスを出迎えたのは山のような大きさを誇る人型兵器だった。思わず「何なの?!」と叫んでしまったが、期待していた食料でなかったことに対する言葉であって、そのモノ自体は見覚えがあった。

 

「博物館にあった人型の巨大兵器じゃない……そういえばテロリストに盗まれたと言ってたな」

 

 ピクリとも動かない巨大兵器を見ながら、エリスはため息を吐く。だが次の瞬間、エリスの脳裏には素晴らしいアイデアが閃いた。

 

「そうだ、この巨大兵器でヤツらに食料を差し出させればいいんだ。奪った食料を運ぶ手も必要だし、ちょうどいいね」

 

 何しろ、エリスのカバンの中には制御用の魔石がある。これを巨大兵器にはめれば自由に動かせるようになるはず。

 

 エリスはさっそく動力用の魔石に魔力を入れていく。魔道具自体は前の世界で使ったことはあるし、エリスは聖女に相応しい膨大な魔力を持っている。

 

 しばらく魔力を補充していると、巨大兵器の目が光って、ゆっくりと動き出した。

 

「よし、これで後は制御用の魔石をはめこめ――うわっ!」

 

 魔石をはめ込むよりも早く、巨大兵器が動き出したことでエリスは振り落とされてしまった。彼女は知らなかった。制御用の魔石は先に埋め込まなければいけないことを。

 

「あ、マズいな……順番が逆だったみたい……どうしようかな?」

 

 ――ズガガガーン!

 

 善後策を考えるエリスに、巨大兵器が光る剣を振り下ろした。エリスの足元を除いて部屋の床に亀裂が走る。

 

 ――ドドドドドーン!

 

 巨大兵器の中から放たれた光弾がエリスに襲い掛かる。激しい爆発が起こるが、エリスの体には傷ひとつ無かった。

 

「これは……困ったな」

「な、何の音だ?! うわぁぁ! う、動いてる!」

 

 部屋の外から男がやってきて動いている巨大兵器を見て腰を抜かした。巨大兵器は音に反応しているらしく、叫び声を上げた男の方へと向き直って剣を振り下ろした。

 

「ぎゃああああ!」

 

 叫び声を上げると同時に、男の体が真っ二つに切り裂かれた。

 

「うわっ、グロイなぁ……」

 

 逃げながら放ったエリスの聖女の癒しによって、男の体は完全に回復する。しかし、痛みと恐怖から、白目をむいて気絶していた。

 

「これは……逃げるしかないわね。食料は惜しいけど……もう、私には手に負えないわ!」

 

 颯爽と駆け出したエリスは遅れてきた並平の脇を抜けて先へと進む。逃げられないように捕まえていたはずの彼女が自由に動いていることに気付いて、声を上げる。

 

「お、おい! なんでここにいるんだよ! 捕まえたはずだろ?!」

「あんな食事を渡されたら逃げるに決まってるでしょ。食料は譲るから、死なないように頑張って!」

「おい、待てよ――うわっ!」

 

 エリスは無視して入口に向かってひたすら走る。追いすがるように並平もエリスの後を追った。

 

「ちょっと、アンタが付いてきたら、アレまで一緒に来ちゃうでしょ!」

「そもそも、入り口がどこにあるか分かってんのかよ?!」

「適当に走れば、いつかは着くでしょ?」

「ちっ、しゃあねえ。こっちだ! 俺についてこい!」

 

 並平が角の所で止まってエリスに呼びかける。完全に信用できるわけではないが、エリスは大人しく彼に付いていくことにした。

 

「また捕まえるつもりじゃないの?」

「しねえよ! お前が疫病神だって知ってたら捕まえてねえよ!」

 

 捕まえてきておいて酷い言い草だと、エリスは眉を寄せる。しかし、背後から巨大兵器が追ってきている以上、言い合いを続けている余裕はエリスにもなかった。

 

「ぎゃああああ!」

「うわああああ!」

「何だよ、これは!」

「……お仲間が次々と犠牲になっているみたいだけど?」

「うるせえ、俺は俺の命が一番大事なんだよ! それより早く走れよ!」

 

 わき目も振らず入口へと走ると、5分足らずでたどり着いた。アジトから距離を取って、ようやくエリスは一息吐いた。一方で隣にいる並平は頭を抱えている。

 

「ここまで来れば大丈夫かな?」

「くそっ、どうしてくれんだよ!」

 

 安心するのも束の間、アジトが崩壊すると同時に、土煙の中から例の巨大兵器が姿を現した。

 

 

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