傭兵ギルド:死線踏破が異世界にログインしました   作:全智一皆

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プロローグ 《死線踏破》

 

■  ■

「《ユグドラシル》がサ終とはなぁ……いやー、マジでないわ。本当にないわ。心の底から有り得ないわ。運営潰してー」

 

 遥か空に座す城の中、一人の男がそんな事を大きな声で呟きながら疾走していた。

 右手と左手に、それぞれ刃文の異なる太刀と長脇差―――彼が()()()()()で行われた人間種のみが参加出来る大会で優勝し、《ワールドチャンピオン・ミズガルズ》となった際に運営から手渡された、ギルド武器にも匹敵する武具一体の装備『二天一振(テンワカツヒトフリ)』―――立ち塞がる敵に対して、躊躇なくソレらを振り抜く。

 連なる一閃は空を瞬く流星の如く。首を斬り落とし、胴を撫で斬り、喉を斬り裂いて決して止まる事は無い。

 発動と同時にクリティカル率と攻撃速度を高める、《ケンセイ》の職業(クラス)スキル《一拍無尽》によって、その男はさらに加速して先行しながら、自分の後を付ける仲間へと声を掛けた。

 

「ヲっさんさー、『永劫の蛇の指輪(ウロボロス)』持ってなかったっけ? それでサ終取り消してーって言ってくれよ」

「『永劫の蛇の指輪(ウロボロス)』なんて持ってませんよ。俺が持ってたのは『五行相克』ですし、アレはもう『終末(ラグナロク)』創ってもらう為に使っちゃいましたよ」

「そもそもアレって魔法システムの一部変更だからねぇ」

「はークソっ! ほんまクソッッ!!! なーんでそんないきなりサ終になるかなぁー!?」

 

 斬ッ! という、大袈裟な習字体エフェクトと共に敵を斬り伏せながら、桔梗色の羽織と黒色の袴、両手に布篭手という和装の男―――プレイヤー名:侍Destr(デス)!は、また大きく叫んだ。

 顔全体が暗い闇に覆われた悪魔のアバター―――ヲズワルド=ディズス・クラスター。

 細く黒い尻尾が巻き付いた右側の太腿を大胆に晒すスリットが入ったシスター服に、その体に似合わない三尺余りの太刀を振るう女性―――シスター・ヨカネ。

 二人はそんな彼に呆れる、とか、喧しい、とか、そういった感情を抱くとかではなく、寧ろそれとは全く逆の―――つまり共感を抱いていた。

 

 DMMO-RPG《YGGDRASILL》。それは日本の運営会社によって製作され、2126年から現在の2138年まで運営が続けられているオンラインゲームである。

 仮想世界内で、現実にいるかのように遊べる体感型ゲームであり、数多存在するDMMO-RPGの中でも燦然と輝くタイトルとして知られているゲームでもある。

 日本国内においてDMMO-RPGといえば、ユグドラシルを指すとまで言われる評価を受けていた程だ。

 種族は人間種、亜人種、異形種と合わせて700種類にもなる豊富な種族に加えて、基本的な職業(クラス)と上級職業などを合わせ、その数は優に2000を超える。

 魔法に関しては6000もの種類があり、キャラクターの外見だけでなくアイテムの外見や内装データ、保有する住居の詳細な設定すら、別売りのツールを使って改造出来るという、もはや同じキャラクターや同じ家は絶対に作れないとすら言われる程のデータ量を有する。

 そして、ユグドラシルを代表するのは、プレイヤー達の前に広がる九つの世界。北欧神話をベースに、他の神話を上手く組み込んだ世界観によって多くの『未知』と『可能性』を構築しており、それが多くの人間を魅了した。

 

 だが―――それも、もはや一昔前の話だ。

 現在2138年の今日を以て……YGGDRASILLは、そのゲームサービスを完全に終了するのだから。

 

「今じゃ、活動してるギルドを見付ける事すら難しくなってきたからね……」

「《アインズ・ウール・ゴウン》は今でも活動してたけどなー。でも彼処も殆ど終わった様なもんだろ。たっちさんが辞めちゃったから、武ちんも辞めちまったし。良いPVP(殺し合い)仲間だったんだけどなー、あの二人」

「俺も、ウルベルトさんとは良き悪友だったんですけど……やっぱり皆、現実(リアル)が忙しいんでしょうね」

「完全無欠にして最低最悪のゴミカスディストピアの世界だもんな、俺らの現実」

 

 この世界は、あまりにも終わっている。目を逸らすどころか、目を潰して捨ててしまいたくなる程に。

 彼等が今を生きている世界は、凄まじい環境汚染によって何もかもが破滅に向かいつつあるディストピアだ。

 時の政治家達は企業によって潰され、昔は誰もが簡単に食べられていた様なもの、遊べていたもの、見れていたもの、それら全てが高価なものとなり、ごくごく普通の人間には手も出せなくなってしまっていた。

 なんせ、最終学歴が小卒で優秀扱いされる様な世界観だ。そんな世界を生きている人間が、ゲームを楽しむというだけでも十分以上の贅沢だろう。

 寧ろ、そんな世界で生きているというにも関わらず、今もこうしてYGGDRASILLを遊んでいる彼等の方がおかしいのだ。

 

「その割にはずっと居るよね、サムくん」

「そらお前もでしょうよヨカネたん。いやまぁ? 俺ってバリバリの不動産会社の社員ですからねぇ? 時間もお金もたんまりってやつですわ、おほほほ!!!!」

「えっ、今それ言うんです!? サムさんリアルの事全然言及しないと思ってたのに!」

「サ終するから良いかなーってね? まぁちょっと前に10億騙し取られて倒産寸前なんだけどもね!?」

 

 え、と空気が固まった。敵対NPCが居なかったのは何とも幸運だった。

 

「え、えぇぇぇぇぇぇっっっっっっ!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

「もっと重たいカミングアウトっ!? サムくん大丈夫なの!?」

「ここまでやられたら、寧ろどうでもよくなるってもんよ! 辞世の句ならぬ辞世の戦を刻みたい、そうなればやっぱユグドラシルで堪能せにゃあな!……そう思ってたらサ終だよクソッタレがァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

 怨嗟の叫びと共に、侍Destr!はさらに疾走した。

 《楓翔一閃(ふうしょういっせん)》、《天稟皆断(てんりんかいだん)》、《鮮血(しんく)太刀(ひとふり)》……広範囲で高火力を叩き出す殲滅特化のスキルを、三つも連続で使用しながら。

 まさに怒り狂った人間の諸相だろう。だが―――これは決して、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というのが、《(イカ)れ侍》の異名を持つ彼らしい。

 

「ヲズさん、一応聞きたい事があるんですけど良いですか?」

「大丈夫です、多分俺も同じ事思ってますので。なので答えますよ、此処は―――《天空城》の内部です。間違ってないです」

 

 《天空城》。それは、ユグドラシルに数多く存在する《ギルド》の根城の一つにして、ユグドラシルの中でも攻略が困難であるとされているダンジョン。

 ユグドラシルには、他のオンラインゲームと同じく《ギルド》というシステムがある。

 八つのクエストをクリアする事で『ギルド設立申請書物の巻物』というアイテムを入手し、その書物の規定に従って項目にギルド名や決まり事などを書き込む事で、ダンジョンを攻略する・建物を発見すらのどちらかによって、ギルドは出来上がる。

 《ギルド》は運営から貸出されている、あるいは《本拠地(ギルドホーム)系ダンジョン》というダンジョンをクリアする事で、その占有権を手に入れ、そのダンジョンを自らの本拠地にする事が出来る。

 この《天空城》は、アースガルズという世界において最高の拠点だ。かつてユグドラシルで悪名を轟かせた、ギルド:アインズ・ウール・ゴウンに匹敵するギルドの根城そのものである。

 彼等は―――今、サービスが終了する前に、そこを攻略している最中だった。

 

「はぁ……なんて張り合いのない。あのギルドすら、現実(リアル)には敵わないってのかよ。こんなん、俺の―――俺たち《死線踏破(しせんとうは)》の求める死線(たたかい)じゃねぇんだよ」

 

 ユグドラシルの最盛期において、上位ギルド10の名前がランキングに載る中で、一際異彩を放つギルドがあった。

 曰く―――()()()()()()()()()()()()()()()()()

 レイドボスやダンジョン攻略、はたまたギルド戦争も何のその。ありとあらゆる危険極まる依頼こそ最安値、ただし平穏無事な依頼など激高でクソ喰らえ。

 所属人数たかだか30数人程度。その半分が戦士系で、完全なる魔法職も支援職も存在しないと断言しながらも、これまでの依頼において戦闘に限った話であれば、一度の失敗もした事がない。

 ボス戦、PVP、ギルド戦争。とにかく争いというその一点において、圧倒的なゴリ押しと緻密な戦略と冷静な判断という矛盾を両立させ、上位10ギルドのランキングにおいて6位という順位を獲得した者達。

 保有する世界級(ワールド)アイテム―――以降はWIと略―――の数は最大5個。資産ポイントにおいては《傭兵魔法職ギルド》を越して堂々の1位を獲得したギルド。

 

『種族不問、職業不問、カルマ値不問。

血に飢えた者、名声を欲す者、戦を愛す者のみ踏み込まれよ。これより先は死線の群生、我ら他殺を以て己を満たす者共なり。

 

要約:取り敢えず戦うのが大好きな奴集まれー!』

 

 そんな謳い文句に集った戦闘狂達によって形成された傭兵ギルドこそ―――《死線踏破》である。

 

「あーあ、もういいや。帰ろ帰ろ。《強制帰還の巻物》持ってる人ー?」

「私持ってますよ」

「流石はヲっさん、頼りになる〜! 《五行相克》見付けた人は違うねぇ!」

 

 《強制帰還の巻物》は、使用する事であらゆる状況を問わず本拠地(ギルドホーム)に帰還する事が出来る。

 これはレイド中であっても例外ではない。それこそ、他ギルドの家に土足で入り込んでいようとも。

 かつてはこのアイテムを使って他ギルドやクランを誘き寄せ、レイドボスと戦わせる、なんて悪辣な戦法が生み出されていた程のアイテムだ。

 

「ヨカネたんは……持ってる訳ねぇか!」

「なんで決め付けるの!? 確かに持ってないけど!」

「結局持ってねぇじゃん! ったく、これが初期メンたぁ片腹痛いぜ!」

 

 《死線踏破》というギルドは他のクランとは違い、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 侍Destr!、☆ミラクル☆、シスター・ヨカネ、最大殿、卍最強天魔ぺったんぷりん卍という5人の友人(フレンド)達が、ムスペルヘイムの隠しダンジョン『アスク・エンブラ』をデスアンドトライ(死による挑戦)で攻略したのが《死線踏破》の始まりだった。

 侍Destr!とヨカネがアタッカー、☆ミラクル☆がサポーター、最大殿と卍最強天魔ぺったんぷりん卍がタンクという役割であり、この5人で何度も何度も死を乗り越えた結果が《死線踏破》だ。

 だからこそ、そんな初期メンバーの友情と信頼は凄まじい……筈である。

 

「な、なにをぅ! そういうサムくんこそ持ってるんですかー!?」

「は? 俺はギルド長なんだが? お前達の長なんだが? は?」

「言い逃れ下手くそか! 結局サムくんも持ってないじゃん!」

 

 《強制帰還の巻物》は、所謂『レア・アイテム』だ。WI程ではないものの、その入手率はかなりの低さで、丸1日九つの世界やらダンジョンやらを粘り続けてようやく1個が手に入るかどうか。

 ギルドランキング6位に入った《死線踏破》でさえ、その所有数は10数個が限度だった。

 

「うるせー! ギルド長だから良いんだよ俺は! 18禁はおろか15禁すら厳禁のこのユグドラシルで、種族サキュバス且つ尻尾を太腿に巻き付けた足を大胆に晒すスリットシスター服着て矛盾してる系エロ女は()ーってろ!!!!」

「はぁー!? サキュバスがシスターで何が悪いの!? シスター服は正義なの! 特にそれがサキュバスだから良いの!!!」

「和風メイドこそ至高だろうが舐めてんのか、あ゛ぁ!?」

「はーい巻物使いますから言い争うの止めてくださいねー。止めないと置いていきますよー」

『はーい!!!』

「というか思ったんですけど、別にコレ使わなくても《転移門(ゲート)》使えば良くないですか?」

「いーのいーの。どうせサ終間近だしねぇ。こういうのは潔くバンバン使ってこうぜ」

 

 もう―――俺達が求めるものは無いんだからさ。

 

 

 

 

 《死線踏破》の本拠地(ギルドホーム)はムスペルヘイムにあるが、彼等はその一切を自ら明かしてはいなかった。

 他のギルドやクランは彼等の本拠地(ギルドホーム)は、九つの世界の中央に位置する人間の世界ミズガルズ、その中央にある王城を『葦原(あしはら)』として改名・改造した場所だと思い込んでいた。

 だが、かの戦闘狂達がわざわざ自分達に有利な場所に拠点を置くなんて事はなく、其処はあくまでも表向きの拠点であり、言うなれば依頼を集める為の場所というのが真実である。

 

『相手に有利な場所の方が楽しめるじゃんね?』

 

 彼等は何処まで行っても戦闘狂。ムスペルヘイムは異形種が有利を取る事が出来る世界、そんな世界にわざわざ人間種である彼が本拠地を設定したのは、何も攻略したダンジョンがムスペルヘイムにあったからではない。

 寧ろ、その逆だ。ムスペルヘイムに拠点を置くという理由がまず後付けでしかなく、そもそも彼等がムスペルヘイムの隠しダンジョンを攻略しようと思ったのは、ミズガルズよりもムスペルヘイムの方が敵対プレイヤーが強く、そんなプレイヤー達が多く居るからだ。

 異形種にとって有利な環境であるが故に、大抵の異形種プレイヤーはムスペルヘイムかヘルヘイムで活動している。かのアインズ・ウール・ゴウンも、全員が異形種である事と初見攻略したのを理由に、活動しているのはほぼヘルヘイムだった。

 そんな中で、人間種がリーダーを務めるギルドの拠点が見付かったとなれば、大抵は攻め入るだろう。ユグドラシルのゲーム治安は、別に良いものではなかったのだから。

 

 ただ―――寧ろそれこそが狙いであると気付いたプレイヤーは、そう多くは無かったというだけの話である。

 

「はー……此処ともおさらばかー。嫌だなぁ、離れたくねぇなー。おい()()()()、『永劫の蛇の指輪(ウロボロス)』持ってねぇか?」

「持ってる訳ないだろバァカ。そんなん持ってたらとっくに使ってるっつーの」

 腰まで届くゆるふわな緑髪に金色の瞳、神々しさを放つ六枚の純白の翼、それに反する様な黒いマフラーとロングコートを装備する女天使―――☆ミラクル☆は、うんざりのアイコンを表示する。

 ☆ミラクル☆―――《死線踏破》の初期メンバーにしてギルド設立の提案者。侍Destr!とはユグドラシル以前からゲーマーとして友人関係があり、このユグドラシルでもかなり関係値が深いプレイヤーの一人だ。

 ちなみにリアルは男である。

 

「というかキラキラ来たんだな。ぶっちゃけ来ないと思ってたぞ俺」

「来るに決まってんじゃん。ユグドラシルのサ終だぞ? これまでに色んなゲームやって来たけど、ユグドラシル程やり込んだゲームはなかったし。それに、《死線踏破》の設立提案者は他ならぬボクだからな、来ない訳にはいかないだろ」

「そらそうか。んー、最大殿(バカ殿)卍最強天魔ぺったんぷりん卍(ぺっぷん)、ついでに屍山血河(ちいかわ)は果たして来るのかねぇ?」

 

 ムスペルヘイム・『アスク・エンブラ』 ―――名を改め、《死線踏破:前衛本拠基地》の中心部にある作戦会議室。

 侍Destr!は、ギルド長としてその中央に座りながらそう零した。

 最大殿、卍最強天魔ぺったんぷりん卍、屍山血河。最大殿と卍最強天魔ぺったんぷりん卍は☆ミラクル☆とシスター・ヨカネと同じく初期メンバーであり、屍山血河は後から入ってきたにも関わらず、数ヶ月足らずで《死線踏破》の遊撃隊長に任命された新人だ。

 

「なんでちいかわ?」

「他の奴らよりも来る可能性が1番高いの、アイツしか居ないだろ。俺の事だーいすきだし」

「うわぁ……」

「まさかの展開が…!?」

「ヨカネさん、ストップです。流石にサ終するとは言え、まだ運営見てるんですから」

「本当にブレないよね、ヨカネたん……流石エロゲー配信者」

「今どき珍しいよなー、配信者。しかも男性向けも乙女向けもどっちもやるんだからスゲーよマジ。AOG(アインズ・ウール・ゴウン)のペロロンチーノさんと仲良く話せるだけあるわ」

 

 その種族や格好からも分かる通り、シスター・ヨカネはかなりのエロゲーマーである。リアルにおいても、このディストピアな世界にしては珍しい配信者であり、同接60万人を達成する有名配信者だ。

 ユグドラシルにおいては、種族Lv.20+職業Lv.80の合計Lv.100プレイヤー。それに加え、攻撃系のWI《無用の長物(ものほしざお)》を有するゴリゴリの戦闘ガチ勢。

 そんな彼女は、悪名高いアインズ・ウール・ゴウンの一人であるプレイヤー:ペロロンチーノと非常に話が合う人間の一人でもあった。

 彼もまたやり込みのエロゲーマーだ。そんな彼と話が通じ合うというだけで凄いのだ。

 

「エロゲーは正義なんだよ! 単純にエロいってだけじゃないんだよ!? そのジャンルごとにストーリーの奥深さが」

「はいストーップ! もうサ終するゲームの最後の会話がエロゲー語りとか洒落ならんわこのバカ女ァ!」

「なんでこれまで垢BANされなかったんだろうね……」

 

【!:卍最強天魔ぺったんぷりん卍 さんがログインしました】

【!:屍山血河 さんがログインしました】

 

「お、噂をすれば」

「せぇぇぇぇぇぇふっっっっ!!!!! サ終してないよね!? まだやってるよねユグドラシル!?」

「やってるやってる、結構ギリギリだけど。わりと久々だな、ぺっぷん」

「ぺっちゃん!」

「ヨカたん、キラくんちゃんにヲッさん、久しぶりー! あ、ついでにちいかわとサムね」

 

 右肩から順に金色、黒色、黒紫の禍々しい翼を生やした、黒のエクステが重ねられたローポニーテールの金髪の女性―――卍最強天魔ぺったんぷりん卍の反応に、侍Destr!は不快のアイコンを返した。

 

「ぶち殺すぞおんどりゃあ…! ちいかわは兎も角ギルド長をついでとか何様だテメェ!」

「おい待て。俺は兎も角とはどういう事だ貴様」

「お前はついでで十分だろうがよォ! 新参者の癖して遊撃隊長とか偉い立場着きやがって!」

「指名したのは貴様だろうが。そんな事よりPVPだ、侍Destr!。今日こそ貴様に勝つ」

「残念ながらもうサ終まで1分もねぇよ。俺お預けとか嫌いだから、決着つかない殺し合いしたくねぇのよ」

 

 ほら見ろよ、と。ピッピッ……そんな軽い音を立てながら刻まれるタイムログを侍Destr!が指差せば、全員が落ち込みのアイコンを表示した。

 1:00…00:59……そうやって刻まれていく時間は、終末を告げるまでの猶予だ。これは何の比喩でもない。なんせ実際に、ユグドラシルというゲームが終わるのだから。

 

「あーあ、もうサ終なんだぁ……アタシもっと遊びたかったよユグドラシル。皆ともっと殺し合いしたかったなー」

「チッ。結局侍Destr!には勝てないままか……無念極まる」

「別に今生の別れじゃないでしょ。ユグドラシル2とか出たら、また一緒にやろうよ。ボク、《死線踏破》結構好きだし、また創りたいんだ」

「私も、《死線踏破》楽しかったなー。ユグドラシル2はもっとエロいアバター作りたい!」

「ブレませんね、ヨカネさん……まぁ、自分もとても楽しかったです。最大殿さんに会えなかったのは、正直残念ですが……」

「まぁ、アイツ結構忙しい立場だからな。仕方ねぇだろ。寧ろこんだけ集まれたのが不思議なくらいだが……うん、楽しかった。ユグドラシル2でも《死線踏破》作るか! 勿論()()()()()もな! 俺の至高のNPCを手放すのが1番惜しい! クソ運営、ユグドラシル2ではしっかり結婚システム作れよ!?」

「最後の最後で言うのそれなんですか!?」

「これこそ俺だろ!―――ははははっ!!!!! じゃあなお前ら、また死線(この場所)で会おうぜ!」

 

 0:03…0:02……0:01………0:00

 

 ―――訪れたのは、静寂であり。

 そして。

 

「……………………ん?」

()()()()……()()()()

 

 新たな世界(じんせい)の―――入口だ。




OPイメージ:アークナイツ・危機契約#11「贋波」テーマ曲「Operation Fake Waves」
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