傭兵ギルド:死線踏破が異世界にログインしました 作:全智一皆
ご指摘くださったにゃるが様、殉職者様、ありがとうございました。
追記2※メアリー・アンのWI所有へのやり取りで、「『傾城傾国』使って精神支配〜」と、まるで《死線踏破》が『傾城傾国』を所有しているかの様な文章にしてしまい、《死線踏破》は『傾城傾国』を持っているという誤解を招いてしまった為、文章を修正しました。誤解させてしまった読者の皆様、大変申し訳ございませんでした
■ ■
「はい、という訳で。《死線踏破:前衛本拠基地》の素晴らしき名所ナンバーワンこと《
『ウォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「いぇーい!!!!!」
「よっしゃキタコレー!!!!!」
「軽いノリに反し過ぎだろテメェらよォ!? つかしれっとヨカネたんとぺっぷん混ざってたな今!? お前らコッチ側な!?」
敵単体との距離を一瞬で詰める『ケンセイ』の
そこまでしてようやく、現在の《死線踏破》のメンバー全員が《
《
これまでに《死線踏破》が仲間内で行ってきたPVPの歴史が壁に刻み込まれており、過去12回にも渡って行われた《チキチキ☆誰が最も多くぶち殺せるかPVP大会♪》の歴代優勝者達の名が掲示板に連ねられている。
尚、12回も行われた大会の歴史優勝者の名前が連ねられているとは言ったものの、その優勝者は残念ながらと言うか案の定と言うか、侍Destr!である。
というか、ぶっちゃけて言うと《死線踏破》が打ち立てた記録の殆どの功績は、だいたい侍Destr!が打ち立てたものだ。特に戦闘系のものになれば、9割彼である。
だが理解してほしい。こうでもなければ『
まぁ、
「はぁ、話が一気に逸れた……気を取り直して。まず最初の確認……つーか、軽い自己紹介って感じかね? ぶっちゃけする必要ないとは思うんだが、一応な。俺らが誰で、そのNPCが誰なのかを改めて確認しとこうぜ。メンバーとその作製NPCの順番でやるぞ。まず、知っての通り俺は侍Destr!。《死線踏破》のギルド長で、ミズガルズのワールド・チャンピオンな。作製NPCはセッちゃんことセツナ」
「はい。《死線踏破:前衛本拠基地》の全権代理人兼旦那様の専属メイド、セツナ。この光栄に一切の間違いはございません」
侍Destr!の作製NPCにして、侍Destr!が依頼に向かっている間における《死線踏破》の全権代理を務めている―――という設定―――専属メイド。
侍Destr!と同じく種族は人間で、それでいて戦士系の職業だけでLv100という部分まで一緒であり、《死線踏破》全作製NPCの中でも火力という面においては最強を誇る女剣士―――それがセツナである。
「はい素晴らしい、流石は俺の嫁」
「よ、よめ……」
隙あらば嫁宣言してくる創造主に、しかしセツナは顔を顰めるどころか赤らめてしまう始末である。が、これは決して彼女がそう設定されている訳ではない。
確かにセツナの設定には『忠誠を誓っている』という説明文を書いてはいたが、愛情に関する言及はしていなかった。
それがこうなっているのは、ひとえに《死線踏破》にずっと居続けた彼の姿を、彼女が見続けていたが故である。勿論、侍Destr!本人は大して気付いてもいないだろう。基本、戦闘以外は頭回さないのだからコイツ。
そんなバカの仕出かしに、☆ミラクル☆は肩を竦めた。
「おい、自分から話戻そうとしといて逸らすなバカ。ったく……じゃあ、次はボクだな。☆ミラクル☆、《死線踏破》の数少ないサポーターであり初期メンだ。熾天使やってる。作製NPCはシンドラー」
「―――はっ。我が主により生を受け、主の傍に仕える栄光を賜っております。熾天使シンドラー、こうして再び主と
真紅の六翼に真紅の髪、黄金色の瞳を持った壮年の熾天使―――シンドラー。
《死線踏破:前衛本拠基地》の防衛を任務とする直轄魔法部隊《赫霜》の隊長―――という設定―――を務める、☆ミラクル☆の作製NPCだ。
翼を畳み、膝を立て拝む様に手を合わせる様は、まさに神を信ずる啓蒙な信徒のそれである。熾天使であるからこそ、そこには何の違和感もなく、寧ろそれこそが当たり前であるとすら思えた。
「あ、うん……ボクも会えて嬉しいよ、シンドラー」
「おぉ、なんと勿体無きお言葉…!」
『やりにくい! おいサムどうなってんだよこれ!? ボクこんな設定してないぞっ!?』
『流石に《
『しまった、コイツに聞いたの間違いだった…!』
そもそもがメイドという設定なのもあるが、まず侍Destr!本人が嫁宣言するくらいには入れ込んでしまっている為、NPCの態度の愚痴など理解出来る訳がなかった。
たかが一人のNPCの為だけに30万以上も注ぎ込んだ男だ、格が違う。しかも恐ろしいのは、他2人はコレよりさらに多く注ぎ込んでいるという事だろうか。
「じゃあ私だね。シスター・ヨカネ、一応《死線踏破》の副ギルド長やってます。キラくん……じゃなくてキラちゃん「勘弁してくれよ……」と同じく初期メンです。作製NPCはメアリー・アンことアンちゃん!」
「はい、メアリー・アンです! お母様……じゃなくて、シスター・ヨカネ様!」
メアリー・アン。某暗黒童話の妖精と同じ名前だが、決してあの緑羽虫ではない。断じてない。マジでない。本当の本当にない。
シスター・ヨカネが作製したNPCであり、この《死線踏破:前衛本拠基地》における最終安全装置の役割を担う、言わばラスボス的な立場に着いているNPCだ。
金髪碧眼に可愛らしいフリルの着いたワンピースとい、まさしく人形の様に可愛らしい少女だが、《死線踏破》が有する5つのWIの一つである『リヴァイアサンの呼び水』を所有している凄まじいギャップの持ち主でもある。
「あぁぁぁぁぁ、可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!! なんて可愛いの天使なの!? 種族は小悪魔だけれどもー! 抱きしめたい、いや抱き締めちゃう! ぎゅー!」
「あははっ、くすぐったいですよー!」
とは言え、創造主である彼女にしてみればそんな事は心底どうでもいいのだ。なんせ可愛いのだから。
またもやぶっ壊れた空気に、ヲズワルドは《
『案の定暴走しましたね、ヨカネさん……』
『予想の範囲内だよ。ヨカネたんのメアリー溺愛っぷりは、ユグドラシルから凄かったけど……実際に動いて喋るとなると、さらにヤバくなっちゃったな』
『可愛い少女みたいだろ? でもアレで小悪魔な上にカルマ値マイナスだし、しかもWI持ってんだぜ?』
『許可したのサムでしょ。最初はびっくりしたー、NPCに「リヴァイアサンの呼び水」持たせるとかヨカネたん言い出すし、しかもサムがそれ了承するし』
『だって面白そうじゃん? あと、そうした方が楽しいかなってな―――もし「
『マジかコイツ』
☆ミラクル☆は心底からドン引きした。仮にもギルドメンバー、しかも初期メンバーの作製NPCに対して考えうる限り最低最悪の思考にドン引きした。
『傾城傾国』は、精神異常に対して耐性を持っているプレイヤーやNPCに対して、耐性を無視して精神異常状態を与える事が出来るWIだ。
もし侵入してきたプレイヤーがこれをメアリーに使った場合、《死線踏破》のラスボス的立場にあるメアリーが、《死線踏破》にとってのラスボスへと成り代わる事になる。侵入者に絶望を与えるつもりで装備させた『リヴァイアサンの呼び水』が、《死線踏破》を呑み込む大海の怪物と化すのだ。
それこそ、《死線踏破》の崩壊に直結しかねない大惨事であり、絶対に凌ぐべき最悪の事態だ。にも関わらず、当のギルド長は合法的に裏ボスと戦えるチャンスを得られるというふざけた理由で、それを許可しやがったのである。
と…なんか大袈裟に言ってはみたものの、実はこれミスである。
『うわぁ……って思ったけどマジで面白そうじゃん! 流石サム、そういう所
『そうだろそうだろ? でもそれはそれとしてどうやら死にてぇらしいなテメェ? 上等だぶち殺してやるよ、《死闘征破》の具合も確認しねぇとなァ!?』
『あの…そもそも「リヴァイアサンの呼び水」がWIなんですし、「傾城傾国」受けないんじゃ…?』
そう―――WIを所有、或いは装備していれば『世界の守り』というバフが掛かり、他WIの影響を受けないのである。
つまり前提から間違っていた訳である。本当にすいませんでした(by作者)。
『え? あ、そうじゃん。え、じゃあなに? じゃあ俺勝手に一人で盛り上がってただけのバカ?』
『まさにその通りじゃん。草』
『やっぱコイツ殺すわ』
『やるのは良いけど後でにしろよ。ほら次、ぺっぷんの番だよ』
「あ、もうアタシ? はいはーい、卍最強天魔ぺったんぷりん卍こと、ぺっぷんでーす! サムとヨカたん、キラくんちゃんと同じ初期メンで、この《死線踏破》における最強のタンク! 作製NPCはディアフレンズ=ぺタリティことディアちゃん!」
「はっ、はいっ! えっと、ディアフレンズ=ぺタリティ……で、す。お久しぶり、です、卍最強天魔ぺったんぷりん卍様」
紫紺のショートヘアに金色の瞳を持った少女……に見せ掛けた少年―――即ち男の娘―――、ディアフレンズ=ぺタリティ。
卍最強天魔ぺったんぷりん卍の作製NPCにして、《死線踏破》のNPCの中で最も金を注ぎ込まれた、ある意味では最も愛を与えられて育ったNPCである。
ぺったんぷりんと同じく
「アッ、ヤバイっ……ごめんサム、アタシ我慢出来ないかも…!」
「はい次ヲッさんねー! おい誰かコイツ縛り上げて黙らせろッ! これ以上喋らせるとナニ仕出かすか分からん! なんでサキュバス・クイーンのヨカネたんじゃなくて
「凄い、サムくんがマトモな事言った!」
「《死線踏破》のメンバーってー、どいつもこいつも一々人をバカにしないと気がすまんのですかー!?」
「ブーメラン刺さってるぞー」
話が一向に前に進まない。なんかもう大体が無駄話で終わってしまっている。
これが本当に、上位ギルドランキング6位のギルドの姿か? と疑われても、何の文句も言えないだろう。
まぁ、そんな疑いを掛けられて、尚且つそれをからかわれようものなら、《死線踏破》は全身全霊でその連中を
戯れは許す。だが侮りは許さない。それが、《死線踏破》の面々に共通している認識だ。メンバー内ですらそれが通っているというのだから、やっぱりイカレ共である。
まぁ、それも置いておくとして。自己紹介の続きである。
「えー……ヲズワルド=ディズス・クラスターです。《死線踏破》の追加メンバーの一人で、ありがたくも追加メンバーの先駆けと言われていました。《ワールド・ディザスター》と《
「うん、そうだよな? その筈なんだよな? でも……」
キョロキョロと、侍Destr!達が《
ユートディスト―――《死線踏破》の追加メンバー募集にいち早く応募し、見事参加を勝ち取り、《死線踏破》の謳い文句である『種族不問、職業不問、カルマ値不問。ただし強い者に限る』を広げた、ヲズワルド=ディズス・クラスターが作製したNPC。
その種族、職業の全てを非公開にしており、ギルド長である侍Destr!ですら1度もその姿を見た事がない、正体不明のNPCだ。
「申し訳ありません、旦那様。ユートディストは城下街防衛の要であり、この非常事態において外すべきではないと愚考致しました」
「城下街防衛の要だったのかアイツ…? ギルド長初めて知ったよ、その情報。まぁ良いや、セッちゃんがそう判断したならオッケー! じゃ、最後にちいかわな」
「屍山血河だ。《死線踏破》敵軍遊撃部隊《利刃》の隊長を務めている」
―――
《死線踏破》の追加メンバーの一人であり、《死線踏破》に入団してから僅か数ヶ月で遊撃部隊の隊長にまで上り詰めた新人。
ワールド・チャンピオンである侍Destr!からお墨付きを貰う程の戦闘狂にして戦闘ガチ勢の一人である。
「作製NPCはテュフォン……だが、居ないな。何故だ」
「いやバカかお前。テュフォンに何持たせてるのか、テュフォンがどういう設定なのか忘れたか? アイツは例外だよ、例外。ユートディストとは比較にもならんくらいの」
《死線踏破:前衛本拠基地》―――もとい、ムスペルヘイムの隠しダンジョンにして隠しエリア『アスク・エンブラ』はその巨大な城と、城下の街を含めた巨大エリアだ。
城の居館は地下を含めて五階まであり、その地下は『アスク・エンブラ』のダンジョンボスがポップしていた場所だった。
その場所に、屍山血河の作製NPC―――テュフォンは、幽閉されている。
メアリー・アンがラスボスという扱いであるならば、テュフォンは裏ボスだ。
メアリー・アンを倒し、遂に《死線踏破》を打ち破ったと歓喜した者達が、探索の末に地下を見付けた時―――《死線踏破:前衛本拠基地》ごと全てを終わらせる為の、最終安全装置でもある。
《死線踏破》が持つ5つの内、最後のWI―――《死線踏破》というギルド設立以降、最高にして最難関の依頼の末に手に入れた代物を所有している、言えば、どれだけその存在が大きいか分かってもらえるだろう。
「だが、俺のNPCだ」
「お前もその設定で納得しただろうが。ちゃんと居るかどうかの確認はセッちゃんが済ませてあるから、心配ねぇって。どうしても気になるなら、後で会いに行けば良いだろ」
「ふむ……」
「うわー、全然納得してなさそう……お前そんな思い入れ強かったっけ?」
「俺が作ったんだ、入れ込むのは当然だろ」
「ちいかわからそんな言葉が出るなんて……アタシちょっと意外だわ」
「ボクも意外……」
「俺も意外です」
「私も」
「貴様ら人をなんだと……」
「はいはい、ストップな。とりあえず一通りの自己紹介が終わったから、次の確認に移るぞー。はぁ……これじゃ、いつに終わるか分からんなぁ」
いやお前が言うな―――メンバー全員が、口を揃えてそう言った。
お前らどっちもどっちだよ。
◆
軽い自己紹介を終えた後に行った確認は、大きく分けて三つだ。
まず一つは、《死線踏破:前衛本拠基地》の確認。シンドラーが飛んで確認した所、ムスペルヘイムにあった筈のギルドホームは、ムスペルヘイムとは全く異なる場所―――山脈の麓に転移していた。
辺りの森林は、まるで都合をこじつけられたかの様に綺麗に整地されていた。アスク・エンブラそのものが転移し、最初から此処にあった様に改竄されたのだろうと、シンドラーは判断したらしい。侍Destr!達も、現状はそれが妥当だろうと納得した。
次に、武器と魔法、スキルの確認だ。《死線踏破》にとっては、この確認は必要不可欠なものだ。これが出来なければ、彼らにとって最も必要な事が出来ないのだから。
侍Destr!は、メンバーを呼ぶ途中で☆ミラクル☆との追い掛けっこで、敵との距離を詰めるスキル『魁』を発動出来た。
使用するスキルや魔法の名を声に出す、或いは強く意識する事で、そのスキルと魔法は簡単に使用する事が出来た。また、自分のHPとMPがどれ程あるのかも、無意識に把握出来ている事も確認が取れた。
最後に―――此処が、ユグドラシルの世界であるか否か。
「うーん……こう、スマホの様にスライド……お、いけた! 出来ましたよ、サムさん。『望遠鏡』使えます」
「お、マジ? ナイスだよヲッさん。とりあえず、ここら辺の確認から頼むわ。なんか村とかない?」
「村ですね。うーんと…」
《望遠鏡》は、遠く離れた場所でも周囲を確認する事が出来るマジックアイテムだ。現在、侍Destr!はヲズワルドと共に『望遠鏡』で周囲の確認を行っていた。
少なくとも、此処はユグドラシルではない。ミズガルズにもムスペルヘイムにも、こんな土地は無かった筈だ。何処を見ても、見覚えのない山に森林ばかりだった。
「ここら辺にはないですね。何処もかしこも森ばっかりです。人も見当たりません」
「やっぱ麓となるとダメか……じゃあ範囲を拡大するか。平地とかの方が村あるだろ多分」
「了解です。村があった場合、どうしますか?」
「とりあえずコンタクト取ってみるわ。というか、こん中で人と話せそうなの俺とセッちゃんくらいだろ。キラキラは天使だし、ヨカネたんとヲッさんは悪魔だし、ぺっぷんとちいかわはネフィリムだし」
「確かに、それもそうですね……あ、でも『人化の指輪』なら大丈夫じゃないですか?」
『人化の指輪』……というよりは、そもそも指輪自体が課金アイテムの一つだ。
指輪にはそれぞれに効果があり、右手と左手の指に1つずつはめる事で、その指輪の効果が発揮される。課金している場合は2つ以上装備する事が可能になるが、それでも能力を発揮するのは2つだけだ。
『人化の指輪』は文字通り、人間種になる指輪。その指輪を装備している間は、異形種も人間種になる事が出来る。ただ―――
「いや、それは止めといた方が良い」
侍Destr!は、その判断に首を縦に振らなかった。
「人化の指輪を装備すれば確かに人間にはなれる。けど、ペナルティとしてレベルが下がるだろ。種族レベルは勿論、職業レベルもな」
「あ、確かに…」
「ユグドラシルから来たのが俺らだけなのか分からないし、この世界のモンスターとか人間の事が不明な以上、レベルダウンは避けるべきだぜ、ヲッさん。下手すりゃ死ぬ可能性があるからな」
「そうですね。流石サムさん、戦闘が関わると頭良くなりますね」
「うんそれ褒めてる様で褒めてないね? 普通に貶してるね? ヲッさんにまでそういう事言われるのか俺?」
「普段が普段ですから。あ、これ村……見付けましたよ、サムさん。小さな村です…けど、これは」
人の群がりが動いている。まるで何かを追うように、そしてそれから逃げるように、指向性もなく。
望遠鏡を拡大してみれば―――そこには、惨殺があった。
「なんじゃこりゃ? 野盗ってやつか?」
「いえ、野盗にしては装備が整ってます。騎士っぽい……いや、実際に騎士なんでしょうか? 或いは俺達と同じ傭兵とか?」
「傭兵がこんな小さな村いちいち襲うかねぇ?」
「どうします?」
「どうするって―――そら、行くだろ。折角見付けた村だし、コンタクト取らねぇと情報掴めねぇじゃん」
違和感。
ヲズワルドのリアルは、ごく普通の社会人だった。と言ってもアーコロジー内における社会人で、言うなればかなり裕福な身の上だった。
そんな自分が、今こうして無辜の民が無残に殺されている様を見て―――
侍Destr!も同様だ。
「あ……そ、そうですよね。その為に探してた訳ですし……おかしいな…」
「んだよ、なんか変な事言ったか俺?」
「いえ、そうではなくて……人が死んだのに、なんで俺達こんな冷静なんだろうって」
「……確かに? 人が死んだの見てるのに冷静だな、俺ら。俺に関しては損得勘定が真っ先に出たし……種族に引っ張られてんのか? いや、悪魔のヲッさんなら兎も角、同じ人間の俺もだし……」
「カルマ値、じゃないですか? 俺とサムさん、両方マイナス値ですし」
「あ、それだわ」
主にPKや死体撃ちといった、常識的な行動から反した悪辣なロールを行う事でカルマ値は徐々に下がっていく。
その最低値は-500、そうなると属性は極悪となり、街や村などNPCからの反応が変わる、指名手配に乗るといった不都合がある。
だが、種族や職業によってはカルマ値が最低値でなければ使えないスキルや魔法などもある為、一概にそれが悪であるとは言い難い。
しかしこと現状においては、この状態はあまり良いものとは言えなかった。
「あー、カルマ値かぁ……すっかり抜けてたわ。不味いな、いちいち損得勘定ばっかで考えるのは流石に……まぁでも、傭兵するならこれくらいが丁度良いのか?」
「☆ミラクル☆さん大丈夫ですかね…? あの人、確か極善じゃ……」
「んー、そこは帰ってからにするわ。とりあえず今はこの村に行かねぇと。ヲッさんさ、《
羽織を翻し、左腰に差した二振りの刀の鯉口を切って刀身を確認しながら、侍Destr!はそう問い掛けた。
《スクロール》は、魔法が刻まれた羊皮紙のマジックアイテム。これを使えば、例え魔法を覚えられない戦士職の人間でもその魔法を一時的に使用する事が可能となる。
今回は《
「ありますよ。どうぞ」
「あざっす。『
『はい、セツナでございます。如何なさいましたか、旦那様?』
「ヲッさんのお陰で村を見付けられたから、そこに向かう。でもなんか襲われてるっぽいんだ、念の為に完全武装で来てくれ」
『承りました』
「俺は先に向かってる。《死線の間》にヲッさん居るから、《
『はい、すぐに追い付きます。どうかお気を付けて、旦那様』
「勿論。……っし。じゃあ《
「了解です」
「―――俺が求めてる
☆ミラクル☆
通称『キラキラ』、或いは『キラっち』。異名は『
《死線踏破》が誇る優秀なサポーターにして初期メンの一人であり、《死線踏破》設立提案者。侍Destr!とは古くからのゲーム仲間。
《死線踏破》がこれまで数多くのレイド、ギルド戦争を乗り越えられた要因の一つと言える程に、サポーターとして多大な貢献を残したプレイヤーであり、同時に《死線踏破》の依頼の大半でやらかし続けたヤベー奴。しかし《死線踏破》の中では最もカルマ値が高く、尚且つ常識人。
種族は天使であり、階級は熾天使。アバターは長い緑髪に金眼、6枚の白い翼という、如何にも熾天使らしい見た目の女性。リアルの性別は男性だが、アバターが女性だった為に転移後はアバターに引っ張られて女性になってしまった哀しき男(元)。
バッファーとしても司令塔としても非常に優秀であり、《死線踏破》がこなしてきたレイドやギルド戦争等の依頼の約9割には必ず彼が居た程。
しかし戦闘ガチ勢の戦闘狂共の集まりである《死線踏破》の初期メンという事もあってかなりの戦闘狂であり、サポーターに徹している最中に血が疼いて戦場に飛び込んでは怒鳴られていた。尚、侍Destr!とシスター・ヨカネは盛り上がっていた。