傭兵ギルド:死線踏破が異世界にログインしました 作:全智一皆
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「一つ、《死線踏破》は自らの意思で《アインズ・ウール・ゴウン》に敵対行動は取らない。ただし、《死線踏破》が請け負った依頼の内容による戦闘は、その限りではないとする。二つ、《死線踏破》は如何なる理由があってもナザリックのNPCを殺害しない。これは依頼であっても同様であり、戦闘こそするものの決して致命傷を負わせる様な事はしない。もし仮にNPCを殺害してしまった場合は……まぁ、そこはお宅の判断に任せる事にするか。取り敢えず、ざっとこんな所かね?」
未だ僅かな
《死線踏破》にとって、戦闘という行為はまさしく生きる理由にして戦う理由。そしてそれは、弱者とのものではなく、強者とのものでなくては決して得られる事のない愉悦にこそある。
だからこそ、モモンガが提示したたった一つの条件が、侍Destr!―――ひいては《死線踏破》は受け入れられなかった。
『今後、ナザリックに対して敵対行動、或いはそれに準ずる様な行為をしない』? そんなの、無理難題にも程がある。
なんせ、《死線踏破》。読んで字の如く、死線を踏み破る傭兵達にとって、それはあまりにも残酷過ぎたのだ。
しかし、だからと言って同盟関係を結ばない―――なんて、愚かな判断をする程に侍Destr!はバカではなかった。よくバカとは言われるが、これでも一応ギルド長である。そこら辺は、彼なりにしっかりと考えてはいた。
その上での、この要求である。上から目線な言い方ではあるものの、しかし《死線踏破》にとってこれは必要不可欠な事なのだ。
「これが俺たちの要求な。さっきの条件をこんくらい緩くしてくれって話さ。さっきも言った通り、同盟自体は良いんだよ。願ってもない申し出だ、ありがたく思ってる。あと、あんな事言った手前であれだが、何もこれは俺個人の意見って訳じゃない。しっかりとした理由もあるんだよ。な、キラキラ」
「ぶん投げやがって……《死線踏破》は傭兵ギルドです。《死線踏破》が活動するという事は、つまり戦闘行為が必ず発生します。お互い名が広がれば、いつかは必ずどちらかを狙う輩が出てくる。そうなった時、『同盟結んでるから無理です』なんて事言ったら、当然煙を立たせる奴が出るでしょう。ボク達がそれを気にしなくとも、他の人達がそうであるとは限りません。どちらにしたって、そうなれば戦闘は避けられません。何より、両方の名に傷がついてしまいます。組織となる以上、面子を守らなければさらなる面倒事に巻き込まれます。それだけは避けたいんです」
「それは、そうですが……」
モモンガとしても、彼らの言い分は分かる。
お互い譲れないものがある。けれど、それで意固地になって、『じゃあ同盟は結びません、敵対しましょう』なんて結論になるのは絶対にダメだ。
ナザリック以外のプレイヤーの存在が確実になってしまった以上、警戒は厳重にすべきだ。いつどのプレイヤーが襲ってくるかも分からない状況で、協力者が居ないなんてあまりにも危険が過ぎる。
ナザリックを、ナザリックのNPC達を失う訳にはいかないのだ。それだけは断じて避けなければならない。その為なら、多少の譲歩は受け入れるべきだと理解はしている。
だが……やはり大切な仲間達のNPCが、殺されないとは言えども傷付くのを容認するなんて、そう簡単に出来たものではない。
「大丈夫大丈夫、俺たちは誰一人として殺さないって。なんせ―――
「余計な事言うな、バカ」
「だからバカ言うなつってんだろうがよォ!? テメェ本気でぶち殺すぞ!?」
「お前が余計な事ばっか言うからだろうがっ!!!……すいません、モモンガさん。勿論、これは今すぐ決めるべき事ではありません。寧ろ、ナザリックでNPC達と話し合うべき案件だと思います。ボクも《死線踏破》を活動するなんて、ついさっき聞いたばかりですから…」
「……そう、ですね。では、一旦この案件はまたの機会にしましょう。確かに、俺達だけで決めていい事じゃありません」
日を改める、なんてサラリーマン時代に何度も経験した事だ。☆ミラクル☆がそう提案してくれた時、ほっと胸を撫で下ろした自分に、モモンガはまた自分の人間らしさを憶えた。
確かに、これは簡単に決めていい事ではない。アルベドやデミウルゴスといった知恵者に、しっかりと話すべき案件だろう。勝手に決めてしまえば、それこそ反感を買ってしまうかもしれない。
これはナザリックに持ち帰って、守護者達の意見を募るべきだ。モモンガはそう確信した。
「1日で決めるのではなく、色々と確認をしながら少しずつ決めていくって感じにしましょう。そうした方が円滑に進むと思います」
「そうですね。こういうのは積み重ねですから。何かあったら《
「え、そんな事ある? 俺ギルド長だよ?」
「お前が喋り出すと何も始まらないんだよ! 余計なことばっか喋りやがって! ったく……まぁでも、
(……この人も、根底にあるのは同じなんだ)
一見すれば、☆ミラクル☆はマトモであるかの様に見えるのだろう。その見た目と言い、話し方と言い、叱りと言い、それら全てが彼―――または彼女―――を正気がある様に錯覚させる。
だが、違う。☆ミラクル☆も、侍Destr!と何ら変わりはない。ただ彼よりも平静を保っているというだけで、しかしその本質は結局のところ同じである。
求めるものは戦闘ただ一つ。こんな広い世界で、自分達と
何処までも戦いのみを見据えた思考。平和などという言葉から掛け離れた、尋常ならざる精神。
―――狂っている。加えて、話が通じない訳でもないのだから、それが尚のこと面倒さに拍車をかけている。しかしそんな狂者ですら、この世界においては手放すにはあまりにも惜しい人材だ。
それに、この同盟を結ばない、或いは彼らの要求を受けなかった場合―――ナザリックのNPC達の死が確定してしまう。
レベル100の、それも戦闘ガチ勢と名高い《死線踏破》のプレイヤーともなれば、《プレアデス》程度ならば容易に屠れるだろう。
下手すれば、階層守護者達を失うかもしれない―――何としても、それは避けなくてはならない。
(でも、俺だけで決めていい事じゃないのは事実……それに、向こうもまだ正確に決定出来てる訳じゃない。少なくとも《死線踏破》が本格的に動くより前に、ナザリックはこの同盟を結ばなければならないよな。はぁ…なんかもう、本当に社会人に戻った様な気分だ。無い筈の胃がキリキリしてきた……)
ブラック企業のサラリーマンをやっていたモモンガにとって、日程を改めたやり取りというのは、それはもう腐るほど経験してきた事。
ゲームから異世界へと転移したというのに、まさか異世界でも社会人時代を思い出す様な案件を抱える事になるなど、誰が想像しようものか。一気に重たくなった話に、モモンガは頭を抱えてしまった。
「そういえばサム、お前村長から地理について聞いたんだろ? 色々教えてくれ、それ次第で主な活動場所を決めなきゃならない」
「おぉ、それもそうだな。モっさんモっさん、ちょっと手伝ってくれ。俺だけだと上手く説明出来る気がしねぇからさ」
「えっ」
「え、もしかして嫌? 俺なんか嫌われる様な事した?」
「絶対さっきのだろ」
「ウソだろ…!? アレでか!?」
「逆に何故アレで引かれたりしないと思ってんのっ!? 普通の人なら失神してるレベルだぞアレ! お前村の中で絶対やんなよ!? 子供に悪影響だわ!」
「
「そうだった、コイツ
(アレ無自覚なのかっ!?)
あれだけ狂気をばら蒔いておいて、無自覚? 意図的なものではなく? そうであるなら、自分とアルベドに対して襲い掛かった時のアレも無自覚…?
信じられない……モモンガは絶句した。
あんな、意識しなければ絶対に人から発せられる様なものではない、おぞましさの塊の様な狂気と殺気が無自覚に放たれるなんて。
「すいませんモモンガさん。さっきの気持ち悪かったでしょ? もう存分に嫌ってください、文句言わせないんで」
「い、いえ! そういう訳じゃないんですけど……その、俺が聞いても大丈夫なのかなって…」
「なぁんだ、そういう事? 大丈夫大丈夫、全然気にしないから。というか、知ってた方が良くね? その方がモっさんもいざという時に俺ら使いやすいっしょ」
「そうですよ。いざという時は、遠慮せず使ってください。まぁ、現状見る限りだと高い料金ぶん取るとは思いますけど……」
申し訳なさそうに笑う☆ミラクル☆と、快活に笑う侍Destr!に、モモンガはやはり違和感の様なものを覚えざるを得なかった。
狂人だと分かったのに、こうして話すとまるで彼等がマトモであるかの様に思えてしまう。それに加えて、『いざという時は遠慮なく使え』とすら言ってくれる始末だ。
敵対したいのか、それとも友好的になりたいのか……そこらの区別が全くとして出来ていない。
いや、違うのか? あくまでも自分の観点からのものでこそあって、これは彼等なりのメリハリなのかもしれない。
たっち・みーも侍Destr!を普段は良い人だと明言していた。現役の警察官であるあの人が、目を狂わせる筈がない。
つまりどっちも本性という訳か? だとしたら、やはり尚のことタチが悪い。
「まぁ、それはそれとして。聞かせてくれ」
「おう。えっと、確かここらは……リ・エスティーゼ王国だっけ? そんな名前の国の領土になるらしい。俺たちが今居るのはカルネ村で、ここら辺にはエ・ランテルっていう城塞都市があるんだと」
「エ・ランテルには冒険者という職業に着いている人達が多く居る様です。経済都市としても栄えているとか」
「ふむ…じゃあ、ボク達が転移した所は? そこに近いのか?」
「いや、俺たちが転移した山の麓はスレイン法国って所の近くになるらしい。距離はそれなりに離れてるけどな。確か、宗教国家とか言ってた」
カルネ村の村長は、地図も出して大体の地理について教えてくれた。
モモンガ率いるナザリックはトブの大森林という場所を起点とした場所に転移したらしく、その近辺には三つの国がある。
一つは先程も言ったリ・エスティーゼ王国。二つはスレイン法国。三つはリ・エスティーゼ王国と対立しているバハルス帝国。
その為にもアーグラント評議国、竜王国、エルフの国といった様々な国があるが、上記の三ヶ国と比べるとかなりの距離がある。
基本的な活動場所は、その三ヶ国か、その三ヶ国のどちらかの領土にある都市になるだろう。
「宗教国家かぁ……ボクとかヨカネたん、ぺっぷんみたいなのが居る以上、スレイン法国じゃ活動出来なそうだな」
「TS天使とサキュバスシスター、
「おいなんでTS付けた!? 天使だけで良かっただろふざけんな!」
「そんなん面白いからに決まってんだろぶぁか! ふっ、んふっひふふふふふ…やべっ、時間差でまたツボにハマったっははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「マジ死ねっ! 本当に死ねぇ!! 心の底から死んでくれこのゴミカス野郎っっっ!!!!」
「やっぱりたっちさんとウルベルトさんだなぁ……あの二人より暴言のボキャが多いけど」
化かされている様な感覚にはなるものの、この二人のやり取りはかつての仲間を思い出す様で―――少しだけ、穏やかになれた気がした。
それはそれとして、さっきの狂気の後にこんな感覚になれるのは、それはそれでどうなのだろうかと、疑問にも思った。
◆
二人の罵倒によってわりと時間を食ってしまいながらも、地理の説明が終えて間もなく。
コンコン、と扉が軽くノックされた後に、
「お話の所、失礼致します。主様、☆ミラクル☆様、アインズ様。村長の方が、どうやらお話があるとの事です」
と、凛とした声が響いた。
村長の家の中で会合を行っていた侍Destr!、☆ミラクル☆、モモンガを守る様に、外では守護役としてアルベドとセツナが並んで待機していた。
一応、アルベドには決して暴れない様にと言ってはおいたものの、多分凄く険悪なんだろうなぁ……と、無い胃を痛めつつあったモモンガだが、アルベドの声がしない事には疑問を抱いた。
彼女も何かしら声を掛けるのではないか? と思っていたのだが、考え過ぎだったのだろうか。
そうやって考えているモモンガとは対照的に、侍Destr!は、
「オッケー今すぐ出まーす! ありがとセッちゃん!」
やはりテンションが高めだった。
自分の
(ペロロンチーノさんも似た様な反応するだろうなぁ……)
「ここまで行くと普通にキモイな」
「『
「ごめんごめんなさいすいませんでしたっっっっ!!!!!! 悪く言ったの謝るから此処で『
「分かれば良いんだよ、分かれば。セッちゃん関連で俺になんか抜かしたらマジぶっ殺ぞ? 鬼神進化コンボからの『
「肝に銘じておきます……」
(こえー……)
目ガン開きで涙目女天使(元男)に鯉口切りながら詰め寄るにこやかな男の図の完成である。
モモンガから見ても普通に怖い。というか多分誰が見ても怖い。人が人なら失神するレベルである。
薬をキメてると言われても疑いようもないくらいに開いた瞳孔と裂ける様な口元が、あまりにもミスマッチして恐怖を煽っている。それに加えて声が一気に低くなっているのがまた恐ろしい。
こくこくと頷いて反省の意を示す☆ミラクル☆に、それで良しと、侍Destr!は納得した様に刃を納めた。
なんとか最悪の事態は免れたらしい。仲間同士なのに最悪の事態を想定しなければならないとは、これ如何に。
「いやー、ごめんねセッちゃん! ちょこーっとキラキラにお説教してたら遅れちゃった。んで、村長さん、お話ってのは?」
「それが、どうやら騎士の一行がこっちに向かってきている様でして……」
また奴等が来たのではないか。そんな不安に怯えながら、村長は伝えた。
数は数十程度。先の騎士達とそう大して変わりない数だ。鎧が違った様にも見えたという言もあったそうだが、それも安全という確証には至らないだろう。
モモンガが言うには、帝国兵に偽装したスレイン法国の兵という線もあるかもしれない、との事だ。この線が事実だと仮定した場合、リ・エスティーゼの騎士に扮してやってきた、という可能性もある。
ぶっちゃけ侍Destr!にとってはどっちでも変わりはないが、住民達にとってはそうではないのだ。怯えるのも無理はないだろう。
「ふーん……連中の仲間か、或いはリ・エスティーゼから派遣された騎士団か、そのどっちかだな」
『連中の仲間はともかく、なんでリ・エスティーゼが出てくるんだ? その線は無いだろ』
『彼奴らが的確にカルネ村だけ襲ってるとは考え難いんだよ。多分他の村も被害に遭ってる筈だ、やけに小慣れてたし』
力は弱かった。大した訓練を積んでいる様にも見えなかった。だが、的確に此処だけを襲撃しているにしては、随分と慣れた動きだった。
勿論、これだけなら根拠としては薄い。だが、そこにモモンガの推察が合わさると、また話が変わる。
『バハルス帝国であれスレイン法国であれ、帝国兵の格好した奴が自分の領地の村襲ってたら、その領主が騎士団要請するか派遣させるだろ、普通。そうだった場合、出てくるのは王国の騎士団か冒険者くらいだ。でも村の奴らは騎士達って言ったし、なんならあの状況で、尚且つこんな場所から冒険者に依頼を出せる訳もない。そうなると、残る線は王国の騎士しかない。はい、Q.E.D.』
リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国は長い間、紛争状態にあるという。それも常にという訳ではなく、暫くの時間を置いてからという、戦略的な意味を含んでいるのだろう紛争だ。
王国にとって帝国は敵そのもの。その帝国の兵が王国の領地で好き勝手にしていると分かれば、領主は勿論の事、王も黙って見過ごす訳がない。例えそれがスレイン法国の偽装工作であったとしても、帝国兵の格好をしているのであれば看過は出来ないだろう。
王か領主のどちらか、或いはその両方が王国の騎士達か冒険者を派遣させるのが道理だ。だが、このカルネ村の惨状、王国とエ・ランテルの距離からして冒険者の線は絶対に無いと断言出来る。
なんせ、仮に冒険者だとした場合、王国は何処が襲われるのかを知っていた事になるのだから。
手当り次第に襲われている可能性がある村を探せ、なんて依頼だったら、誰も受けはしないだろう。少なくとも、侍Destr!であれば絶対に受けない。つまらないというのは勿論の事、そんな面倒極まりない依頼など受けて堪るか、と。
冒険者の線は無い。そうなれば、必然的に選ばれるのは王国の騎士以外にない。
『なんでそんな急にIQ高くなってんだよ……やっぱ怖いわお前』
『寧ろ機関学校の卒業生様がなぁんでそこまで頭回らないのかが不思議なんですけどねー? だいじょーぶですかー?』
『うわウゼェ……《
『「次元断層」で乙ですね、対あり』
『クソがっ! チート過ぎんだろ《ワールド・チャンピオン》!』
『お前の《
『コイツにバカって言われた……』
「どうしよっか、セッちゃん?」
「念の為、住民の皆様は避難させておいた方がよろしいかと」
『……ボクも賛成。もしかしたら、ボク達に難癖付けられるかもだし』
『俺もです。俺は仮面と腕甲付けてるので大丈夫そうですけど、☆ミラクル☆さんは翼隠せないですし……』
『あ、そうだった。ボク表出れないわ』
アルベドは全身鎧で全体を隠せているから、まだ問題ない。例え翼が露出した所を見られたとしても、鎧の装飾だと言えば、取り敢えずの説明にはなるのだ。
だが、☆ミラクル☆にはそういった装備が一切としてない。なんから所有すらしていない。
☆ミラクル☆は《死線踏破》のバッファーにして司令塔だが、やはり《死線踏破》らしく戦闘狂である。バッファーとアタッカーを兼ね備えた、『アサルトバッファー』とも言うべき存在である彼(または彼女)は、サポート性能と速攻性能に特化したビルドなのだ。
その為、鎧とかそういう重量系の装備は一切持っていないのである。今装備している黒いコート―――最大殿が作製した
そもそも熾天使の翼は、《ユグドラシル》時代も非表示には出来なかったものだったのだ。おそらく、この世界でも透明にする事は出来ないだろう。
『いきなり天使でーす☆とか言う訳にもいかねぇしな……じゃあキラキラは一旦戻ってくれ。一応、監視は続けとく感じで頼むわ』
『了解。一応言うけどすぐ殺すなよ。情報引き出せ』
『
『期待半分で見とくわ、バカ野郎』
『PVPの準備しとけよアヒル野郎』
口を開けばすぐ罵詈雑言の嵐である。本当に同盟組んで大丈夫かな……モモンガは少し不安になった。
《
「さて、連中の仲間か王国の騎士か……ぶっちゃけどっちも弱そうだけど」
「主様、まずは対話から始めましょう。☆ミラクル☆様も仰っていた通り、情報を引き抜かなければなりません」
「セッちゃんがそう言うなら仕方ないなー! 乱暴は止めるか!」
「自分の創造主に易々と意見を……貴方、被造物としての自覚が足りないんじゃないかしら?」
セツナの態度が気に障ったのか、唐突のアルベドが口を出した。
あ゛? と、侍Destr!が顰めっ面を浮かべ、アインズがアルベドを制そうとしたその時、
「そんな事はありません! 私は主様に…その…よ、よ……ょめ、と言ってもらっている身ですのでっ!」
「なっ…!?」
強烈なカウンターパンチが飛んできた。
最初の方が小さくなったが、アルベドにはしっかりと聞こえたらしい。
その言葉が、思ったよりも彼女に突き刺さったのだろう。アルベドはがくっと膝から崩れ落ちてしまった。
「守護者統括であるこの私が……他所の人間如きに遅れを…!?」
「ふんっ!」
「なんか思った以上にダメージ受けてんな……コイツこんなキャラだったっけ? さっきまでのヒスり具合どうした?」
『いや、その…サービス終了間際に、ちょっとした出来心で……設定文を少し』
『あー、なるほど? ってマジかその手があったか! 他の奴等の設定弄っときゃもっと面白い光景が見れたのかよ! 勿体ねぇー!!!』
『本当に性格悪いですね!?』
さて、そんなやり取りを続けて約数分の事。
遠方から砂煙が舞い上がるのを目視し、侍Destr!はその口角を上げる。
砂煙を背景に、その集団の姿は徐々にはっきりと顕になっていく。赤の装飾が加えられた銀の鎧を身に纏う、厳の様な顔付きの男を筆頭にした騎士達が、広場へ向けて馬を走らせていた。
(……少なくとも、さっき斬った奴等よりはマシだな。とは言え満足するとはいかねぇな……はぁ、残念だ)
心中で溜め息を吐き、思いっ切り肩を落とす。
アインズとアルベドと軽い戦闘をやって多少の足しにはなったものの、彼としてはまだまだ暴れ足りない所だった。
出来る事なら、互いの命が尽きるその時まで暴れ散らかしたいのだが……大切な
「私はリ・エスティーゼ王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒らし回っている帝国の騎士達を討伐する為、本国の命令を受け、村々を回っている者である」
「王国戦士長…!?」
王国戦士長という単語に、村長は目を見開いて驚いてみせた。対してアインズと侍Destr!は、はてと内心で首を傾げたものの、その反応からして有名な人なのだろうと、何となくの察しはついた。
戦士長なんて立派な肩書きがあるのだ、おそらく王国でも一、二を争う男なのだろう。
「この村の村長だな。それで……その隣に居る御仁方が誰なのか、教えてもらいたい」
「それには及びません―――初めまして、王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン。この村が襲われておりましたので、助けに来た
「どーも、戦士長さん。俺は
「…! この村を救って頂き、感謝の言葉もない!」
馬から降りたガゼフは、そう言って頭を下げた。
純粋な感謝、或いは安堵だろうか?
彼らは村々を回っていると言っていた。つまり、他にも被害にあった村を見てきたという事で、そしてこの反応は……その殆どが、手遅れだったという事なのだろう。
だからこその、感謝だ。自分達では救う事が出来なかった村を救ってくれた二人の御仁へと、純粋で真っ直ぐな感謝を、ガゼフは正直に伝えたのだ。
(何とも真っ直ぐな目をしてらぁ。なんつーか、ユグドラシルでもリアルでも、こんな目した奴久しく見てなかったな……サム的に好感度アップだぜ、戦士長。でもなぁ―――)
「視線が邪魔なんだよなー……」
ひい、ふう、みい、やー……十何人? とにかくその程度。やたらとねちっこい視線に、侍Destr!はうんざりとした様に顔を顰めた。
「サム殿、何か?」
「んー? 囲まれてるよって話」
「―――なに?」
「戦士長! 何者かが村を囲む様に陣を取っています!」
「なんだと…?」
―――あの一瞬で、見抜いたと言うのか? 離れた距離からの視線で、敵の位置と数を?
ガゼフは侍Destr!―――サムを凝視した。その佇まい、空気、立ち位置……それら全てを観察した上で、
(強い…!)
彼の強さを、僅かに感じ取った。
想像しようとして、間もなく首を振る。無理だ。どうやっても、この御仁には勝てそうにない。いや、それどころか、剣を振るわせてもらえるかどうかすらも怪しいのではないか?
それに、その隣のアインズ・ウール・ゴウンという御仁もだ。一見すれば、何処か怪しさすら感じずにはいられないが……彼からは、自分では理解し得ない様な何かを感じた。
「取り敢えず家ん中入ろうぜ。そこで視察すりゃ良いだろ。な、アっさん?」
「う、うむ。そうですね、サム殿」
「何固くなってんだよ。1回
(この下等生物がぁ…!)
(抑えろアルベド! 我々の大切な同盟相手になるかもしれない人間だ、余計な敵対はするな!)
(はっ。申し訳ありません、アインズ様)
(いや、分かってくれれば良いのだ…)
かくして―――蹂躙までのタイムリミットは、迫りつつある。
・卍最強天魔ぺったんぷりん卍
通称『ぺっぷん』、異名は『天使の体に悪魔の魂を宿した女』。作製NPCは『ディアフレンズ=ぺタリティ』。
《死線踏破》の初期メンバーの一人であり、数少ない女性プレイヤーの一人。☆ミラクル☆に次いで侍Destr!と関係が長いプレイヤー。
種族は天使と悪魔のハーフである
タンク系最強の職業《ワールド・ガーディアン》を習得している《死線踏破》最硬のタンカーであり、それでいてバーサーカーやベルセルクといった狂戦士系の職業も習得している特攻役でもある。
その圧倒的なHPと防御力によるゴリ押しで、あらゆる障害を正面突破する正真正銘の脳筋バーサーカー。《死線踏破》の中で敵に回したくない奴ランキング2位にランクインしたヤベー奴。
リアルでは超有名な機関学校の卒業者であり、企業大学に通っていた超絶お嬢様な現役女子大生だった。