傭兵ギルド:死線踏破が異世界にログインしました 作:全智一皆
《死線踏破》が有するNPC部隊。発案者は卍最強天魔ぺったんぷりん卍。曰く『せっかくの傭兵組織なら、やっぱり部隊とか作るのもアリじゃない?』との事で、侍Destr!とヲズワルドがそれに激しく同意した結果として出来上がった。
その数は中隊程度に収まるが、全員がレベル70から80で統一されており、職業もそのレベルに合わせてガチガチに特化して設定されている為、下手すれば上位クラン並の戦力を誇る。
大きく別けて四つの部隊があり、遊撃隊でありながら独自の実働を許可された直轄遊撃部隊《利刃》・前衛本拠基地の防衛を任務とする直轄魔法部隊《赫霜》・敵勢力の探知と作戦司令の役を担う直轄情報部隊《散焼》。これら三つが表の部隊で、最後の四つは裏の部隊として設定されている。
最後の四つ目は、ユグドラシルの世界一つを制圧する事を目的とした極秘特務部隊《死灰復燃》。しかし、これは考案こそされたものの、『実質ミズガルズの支配者の癖に何言ってんだよ』と☆ミラクル☆にツッコまれ『マジやん』と侍Destr!が納得してしまった為、結局作らず終いだった。
■ ■
まず最初に、卍最強天魔ぺったんぷりん卍が取った行動は防御だった。というか、彼女はユグドラシル時代からずっと、それこそが武器だった。
《ワールド・ガーディアン》―――《ワールド・チャンピオン》や《ワールド・ディザスター》と同じく、職業名に
「うわー、これ使うのめっちゃ久々ー! えっとー……あれ、名前なんだっけ?」
『お前バカか!? バカなんだな!?!? 一秒だって時間惜しいのに何をしてんのッッッ!?!?!?』
「うるっさいなぁ! 来てない奴はだぁっとれーい! あ、思い出した思い出した! よぉし、ぺっぷんさん久しぶりにやっちゃうぜぇい!!! 『
三つの片翼は唸る様に身を広げ、その禍々しくも神秘を宿した神威を以てして空間を容易く歪ませる。
『
それこそが《ワールド・ガーディアン》が有するスキルの中で最も強力で悪辣極まるスキルであり、彼女が死線踏破で敵に回したくないプレイヤーランキング2位に輝いた最たる理由。
このスキルを使用したプレイヤーは、自分を中心とした半径10mの空間を歪ませ、断絶する事によって絶対的な防御領域を獲得する。この防御領域は、同じワールド系の職業やアイテムの効果すらも逃れられる。
これだけならば、単純に強いタンクスキルだと思われるだろう。強いが特別厄介でもなければ悪辣でもない、と。
しかし、この断絶された空間はプレイヤーを中心として周囲に展開される。プレイヤーが動けば空間もまたプレイヤーの移動に従って、それが拡がり続けるのだ。
半径10m以内とか説明に書いておきながら、しかしプレイヤーが動けば、10mを超えてその防御領域が拡大していくとかいう、もうミスとしか言いようがないバグがあった。しかも―――修正されなかったのだ。
「開いたは良いけどさ、これ何秒持つんだっけ?」
「5秒くらいじゃなかった? それくらいあればサムくんの『
「―――」
身を捻る様な斬撃が、ヨカネの喉元へと飛び掛る。
視界はおろか意識からすらも出し抜き、刃金を突き立てる様は、雪原を駆け回り獲物を狩る猟犬を幻視させた。
それ程までに、侍Destr!の動きは軽やか且つ疾く、そして的確だった。
断絶した空間の前では如何なる攻撃も意味を成さない。しかして、それが絶対的な防御であるという訳ではない。
半径10mに展開され、動けば動く程に範囲が拡がっていく等というバグ技は確かに脅威だ。だが、その防御領域には決定的な穴があった。
それは―――前後左右に展開されてはいるものの、上下は含まれていない事。この防御領域は、ドーム状に展開されている訳ではなく、円上に拡がっているだけで上下の領域は範囲に含まれていない。
理論通りならば超位魔法『
死線踏破は基本的に集団行動。一つの依頼に赴くのは最低でも二人だ。片方がそれをカバーする為に動き回る為、そう簡単に隙など生まれない。
が―――その死線踏破のリーダーである侍Destr!であれば、話は別だった。
「あぶっ!? あぶない、すっごいあぶなかった! 首飛ぶかと思ったよぺっちゃん!?」
刃金で受けた一閃はおそろしく鋭く、それでいて岩の様に
首の皮一枚を繋いだ防御は咄嗟の判断によるものであり、それがヨカネの命を紡いだのだ。
「あれ反応したんっ!? さっすがサムと並ぶ戦闘ガチ勢やるねぇ! ちょいキラっち、もしくはヲっさん解説はよ!」
『フェイントだ! アイツ《
「ゲームで出来なかった事を平然とやりますよね、サムさん。《
掌を起点として、悍ましさを身に纏うかの様な黒い霧を漂わせる。ヲズワルドが取得している職業の一つである『ナイト・オブ・ヘルヘイム』のみが使用する事の出来る、死霊系のそれとは全く異なる闇属性の魔法だ。
その黒い霧に触れている間、対象は『5%の確率で即死が発動するスリップダメージ』を負い続ける事になるという、袋小路に追い込まれて使用されれば絶死に等しい効果を叩き出す恐ろしい魔法である。
通常でさえそれ程までの効果を得るというのに、その魔法の威力を最大にまで高める《
高波の如き勢いを付けて、形を持った死は最強の人間の命を奪い尽くそうと駆け抜けていく。
「《
鞘に納められた一閃は、その
文字通りの霧散だ。《抜刀反撃・魔断》によって、本来ならばあらゆる生物を絶望へと叩き伏すであろうソレが、呆気なく消えて無くなったのだ。
「やっぱダメですか。☆ミラクル☆さん、どうしましょう? 一か八か《
『いや無理マジ無理ずぅぇっっったい無理。あれは超位魔法だって使わせちゃくれねぇよ。はぁぁぁぁ、やばいヤバいヤバイどうしようかなマジでどうする!?!?!?!? 暴走した彼奴止められんの誰だよ!?』
「たっち・みーくらいだろう。が、その当人はおそらく居ないとみた」
『わぁってるよ! だから一生懸命考えてんのッ!!!!』
「ちょっ、だれかヘルプ! へるぷみー!!!!」
「女の子二人に任せてないで男子戦えやコラーッッッ!!!!!」
一振り一振りに籠った狂気が鬱陶しく零れて、ヨカネ達に冷や汗をかかせる。
頬を、胸を、足を、腹を、首を。幾つもの急所へと差し向けられる刃を、息を呑みながら必死に捌く二人にも、遂に限界が来つつあった。
だが、その光景に一つ可笑しい点があるとすれば―――死が目前に迫りつつあるというのにも関わらず、二人は笑っていたという所だ。
「なんでアレを捌けてるんですかね……」
「抜かざるを得ないか。だが、ある意味では好機か。あそこまでの本気を出した侍Destr!を相手出来る瞬間など、もうあるかないか……死合なら本望だ」
「☆ミラクル☆さん居ないから、あんまり無茶は止めてほしいんですが……でも分かりますよ、ちいかわさん。確かにこれは心が躍る」
屍山血河もヲズワルドも、果てはシスター・ヨカネも卍最強天魔ぺったんぷりん卍も、結局のところ、突き詰めるまでもなく《死線踏破》の連中である。
恐ろしいまでの狂気と殺気に対して、身が竦まない訳はない。だが、それ以上の歓喜が、愉悦が、そこにはあった。
死合、死線、死闘、死地。我らが望み焦がれたモノが、他ならぬ我らの長によって形作られている―――あらゆる人間の頂点に立っているその人間が、遠慮も容赦も手加減も、それら一切を排斥して全身全霊の殺意を以て剣を抜いているのだ。
―――こちらも抜かねば無作法というもの。一死を以て快楽を得るには、これに限る…!
『あ、もうほんっとにヤダコイツらバカしかいない…………!!!!!!!!!! すんませんモモンガさんちょっと御知恵お貸しいただけますか!?』
『ええっ、俺ですか!? うーん……俺も
『なんか策とかないですか!? こう……なんか!』
『そんな無茶な……って、あれ? そういえば、侍Destr!さんが暴走したのって、元はと言えばセツナさんの言葉遮られたからなんですよね?』
だったら、セツナさんに呼び掛けてもらえば止まるんじゃないですか? 大好きなら。
◆
「いやぁ、スマンスマン! セッちゃんの事になるとつい……こう、ね? はははははははっっっ!!!!!!!」
『死ね! しねしねしね!!!!! ほんっっっっとに死ね!!!!!!!!! マジでしねぇェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
まるでこの世全てを呪わんばかりの怨嗟を叫ぶ☆ミラクル☆に、さしもの侍Destr!もおぉう……と、気圧される。《
侍Destr!の暴走は、セツナの一声によって呆気なく収まった。ただ一言、「どうかおやめください」というそれだけで、狂気と殺気は全てが落ち着いて消え失せた。
現在《死線踏破》一行は、カルネ村かれ少し離れた森の中で、何とかして捕らえる事に成功した―――捕獲する事には手間取らなかったが、そこに至るまでで壮大に手間取った―――捕虜から情報源を聞き出そうとしている最中であった。
対して、今回の暴走を止めるのに最善手を打ったアインズの方は、カルネ村の方に転移させたガゼフから諸々の情報を聞きに行っていた。今はその情報の到着待ちである。
「まぁまぁ、そんな怒んないであげてよ、キラくん。ほら、やっぱり我が子って大事だからさ? せっかくお話出来てるのに、それを遮られちゃうとね」
「そーそー。我が子可愛さ余ってってやつよ、許したってよキラっち」
『誰が許すか、バーカッ! 大事な情報源を殺そうとしてんだぞ!? ただでさえこの世界の事ぜんっぜん分かってないのに!!!』
「そんなん他の連中捕まえて吐かせりゃ良いじゃねぇかよ。別にコイツ大した奴じゃねぇだろ?」
月光に当てられた刃が、唸りをあげる様に輝き、ニグンはひぃ、と小さく声を漏らした。
侍Destr!の目には、ニグンという人間に対して欠片一つの興味も無い。ただ威張るだけの弱い存在など、侍Destr!……と言うよりは、《死線踏破》にしてみれば関心の余地も無い埃も同然だ。
だが、そのニグンにおいては、その限りではない。それもまた当然の事―――何故ならば、彼の目に映る存在は、侍Destr!を除けばその悉くが人間のそれではいのだから。
片やシスター姿のクイーンサキュバス、片や天使と悪魔の混種族である
片や白備えの鎧を着た
こう言えば不敬に取られるかもしれないが、六大神に似た雰囲気を感じ取らずにはいられない程の何かが、彼等にはあったのだ。
故に。
「は、」
「あ?」
「発言の、許可を……くださりませんか」
ニグンは声を出す。
口調がどうとか、大きさはどうとか、そういう事は頭の中には無かった。
正直な所、それは決して信仰心だけからくる様なものではなかった。どちらかと言えば、醜い命乞いに等しいものであったが、だからと言って、それが信仰心ではなく、我が身可愛さからくるものだけであるとは、どうにも思えなかった。
「なになに、自分から話したいっての? それはこっちとしてもありがてぇけどさぁ。言っちゃあなんだが、ベラベラ喋ろうが行く末は変わんねぇぜ?」
「あれ、許したんじゃないの?」
「いや許す訳ねぇだろ。呑み込んだってだけだよ。殺すのは全部聞いてからって事で譲歩したんだよ、譲歩。で、どうなのよ? 話す訳?」
「お、お許しを、いただければ」
「あ? だから許さねぇって……あぁ、発言の方な。おっけおっけ、そっちは良いぜ。じゃ聞かせてくれや。お前らのことをよ」
ニグンは、声を震わせながらも言葉を紡いでいった。
自分達はスレイン法国から来た人間で間違いない事。
スレイン法国には現代における特殊部隊の様なものがあり、自分達は陽光聖典と呼ばれる部隊の所属、ニグンはその隊長である事。
目的はガゼフ・ストロノーフを狩る事による王国の弱体化。その過程で多くの村を焼き、虐殺を続けた。
それらはバハルス帝国に偽装するつもりであった事。また―――スレイン法国における信仰の対象である『六大神』は、彼等から稀に『ぷれいやー』の名で呼ばれる事があるなど、多くのことをニグンは語った。
「ふんふんふん……なるほど? おいキラキラ、纏めろ」
『だと思ったよ……要するに、スレイン法国にはかつてユグドラシルのプレイヤーが居て、陽光聖典のさらに上……《漆黒聖典》はそのプレイヤーが残した武器を扱う奴等が殆どで、敵に回すと楽しめるって事だ』
「だいぶ
「いや間違ってないでしょ。というかそっか、やっぱ他にも居たんだプレイヤー! 良いじゃん楽しくなってきた! 要するに、バカ殿も居るかもって事でしょ!?」
「まぁ、可能性は見えてきたな。だが、此奴の吐いた情報の真偽は未だ分からんぞ」
「そこはアインズさんの情報待ちですね。とは言え、嘘は言ってないと思い……お、噂をすれば」
《
ニグンが恐れ、絶望を抱いた―――死の王だ。
「ガゼフ殿から話を伺った。情報に偽りはなさそうだ」
「ふぅん……ふっ、イイねェ。それは最高だわ。となると、だ。結局のところ、最初の方に戻ってくる訳か……はっは、やっぱそうだよな。《
つーわけでさっさと死ね。
さく、と。刃が喉を穿き、それを横へ裂いてみれば、月光に照らされた鮮やかな血飛沫が森の中を彩った。
貴重な情報提供には、ささやかな死を以てして償わせる。残りの死体はアインズかヲズワルドが好きにするだろうと判断し、侍Destr!は鞘に刃を納め、楽しそうに笑い出す。
「あー、良いねェ異世界! これでようやく本格的な動きが決まったわ!」
「と言いますと?」
「《
傭兵ギルド《死線踏破》は、その活動をこの世界においても行う。それが何を意味するのか?
即ち―――我々の知る所の、『戦国時代』の幕開けだ。たった一人が戦場を蹂躙し、幾つもの国を滅亡に瀕す者達が戦場へと躍り出るのだ。
多くの国が金を出して彼らを雇おうとするだろう。だが残念かな、そんなものは《死線踏破》にとっては二の次も良いところ。
彼等は弱い方の味方である―――その方が、不利な国に味方する方が、彼等にとって都合が良いのだから。
「よし、方針決まり! じゃ、後は帰ろうぜ。あ、モッさんはちょい待ちな。色々と話そうぜ」
「う、うむ。分かった。アルベド、お前は先に戻っていろ」
「しかし、アインズ様!」
「分かっている。だが、これは長同士の話し合いだ。彼と二人で済ませたい。なに、そう荒事にはならんさ」
「……分かり、ました。ですが、どうか上位アンデッド、或いはデーモンの供を」
「ふむ……分かった。先に戻ったら、他の階層守護者に今回の件を伝えておいてくれ」
「はっ」
心配してくれるのは嬉しいけど、ここまでされたらなぁ……と、アインズ―――もとい、モモンガは少しだけ溜息を吐いた。
心配されるというのは思ったより嬉しいものではあるが、しかしまぁ、こうも過保護なくらいに想われていると、流石に気が重くなると言わざるを得ない。
「じゃあセッちゃん、晩御飯楽しみにしとくからな!」
「はい。真心を込めて、お作りします」
これくらいの事が出来ればなぁ……モモンガはリア充ムーブする侍Destr!を羨んだ。が、モモンガは童貞である。そんな事をする度胸など、ぶっちゃけ無かった。
まぁ、閑話休題。
「いやー、暴れまくって悪いね、モッさん」
「本当ですよ……《
「心臓あんの?」
「ありませんけど」
「ないんかーい」
くだらない事で笑う侍Destr!に、モモンガも引かれて笑う。この程度ならば、精神抑制も発動はしないらしい。
「しっかし、モッさんは静かだったねー。もっとこう、バリバリ攻撃してくれてよかったぜ?」
「いや、仮にも同盟相手なんですから……」
「いやいや、だとしてもよ。ほら、攻めればそれだけ俺のスキルが色々と分かるかもしれないぜ? 敵の情報って大事だろ?」
「だからなんで同盟崩壊の前提で話しすんですか!?」
「いやー、何が起こるか分からんのが人生じゃん? というか、自分で言うのもなんだけど、ぶっちゃけ俺……つか、《死線踏破》って身内贔屓がスゲェ奴らだからさ。仲間とかNPCがなんかされたら黙ってられる気しねぇんだわ。キラキラが騙しの依頼取らされてPKされた時なんかまーじヤバかったんだぜ? 主に俺が」
多くの者に利用される傭兵組織となれば、必然とそれを気に食わないと思う者が現れる。《死線踏破》によってボスやダンジョンを横取りされたギルドや、《死線踏破》が加わった所為で戦争に負けてしまったギルドからは特に恨みを買った。
そうなれば、クソみたいな依頼が舞い込んでくる。大金を叩いてでも、借金をしてでも、課金をしてでも、全てを手にしてでも、全てを手放してでも、あの傭兵共に一泡吹かせてやると。
たまたま侍Destr!が別の依頼で不在の時、☆ミラクル☆が受けたその依頼がまさにそれだった。依頼内容はヘルヘイムにあるダンジョン攻略の支援。レベル90クラスのエネミーが多く居るという事もあって、かなり安い金額で受けた結果は、ダンジョン内における騙し討ちだった。
最初は普通に頼り、何とかボスを倒した所でトドメを刺す―――そんな、悪辣で計算されたPKによって☆ミラクル☆は装備を失う羽目になったのだ。
☆ミラクル☆の主な役目はバッファーだ。装備は強いし、彼のプレイスキルも高いが、それでもボス戦の後はどうしても瀕死になる。スキルのリキャストタイム的にも、MP的にも。
そこを刺された結果だ。☆ミラクル☆本人は、自分の落ち度だと言って納得していたが、☆ミラクル☆の仲間は―――《死線踏破》の面々は、決して首を縦には振らなかった。
「アレがくっっっそ腹立ってよォ……普通に「お前らウザイんで殺したいです戦ってください」ってPVPの申請するなら依頼するなりしてくれれば、こっちも普通に戦ったのにさァ……騙し討ちだぜ? そんなつまんねぇやり方でキラキラぶち殺しやがったんだよ…そう、俺の仲間殺しやがったんだよ、俺の仲間の全部奪いやがったんだよ。これがムカつかねぇなら俺はいったい何にムカつきゃ良いんだ? 何に腹立てれば良いんだ? 何に苛つきゃ良いんだ? あぁ、思い出すだけで腸煮えくり返ってゲボ出しそうになる。それくらい腹立ってたんだよ。だから《死線踏破》全員でカチコミ入れて、装備もアイテムもギルド武器もギルドホームも作製NPCも全部ぶっ壊してやったんだよ―――くははっ、マジ楽しかったなァ」
狂気に染まったその笑みに、しかしアインズは恐怖ではなく、不思議な事に共感をこそ覚えた。
仲間の為に動く―――その一点は、確かに共感出来たからだ。彼にとってはアインズ・ウール・ゴウンの仲間達こそが最高の友だったのだから。
だからこそ、仲間達が騙された事に憤るその気持ちはよく分かる。それに復讐するのも、理解出来る。
「だからさ、とりあえず俺らの同盟は一時的って風に捉えてた方が良いぜ、モっさん。他のギルドが見付かったら、そっちに鞍替えした方が良いぞ。或いはたっちゃんとかのギルメンを見付ける事だな。マジ扱い辛いから、俺ら」
「……それ、気を使ってる様で敵対しようとしてません?」
前提を知っていれば、予測は容易い。だが、それが真実なのか虚偽であるのか判断し辛いのが、《死線踏破》の嫌な所だ。
彼等の言葉には嘘がまるで無い。明らかに嘘であると分かるものも、露骨に嘘だと疑える様な要素も、何一つとして存在していない。
だからやりにくい。その狂気と正常さが完全に両立してしまっているから、どっちがどっちなのか掴みにくいのだ。
いちいち何もかも勘繰らなければならないというのは、何かと面倒だ。だが、こればっかりは止められない。下手すれば、アインズ・ウール・ゴウンを危険に晒す事になるのだから。
一見してみれば、侍Destr!の言葉は気遣いに見えるのだろう。だが忘れてはならない―――そもそも同盟を結ばなければ、何もかも無かった事になって、もし彼等の仕事に出くわしたら確実にNPCが消えるという事を。
「無い訳じゃないなー、けど気を使ってんのも確かって所さ。仕事は仕事、プライベートはプライベート。俺らはそこを割り切ってる。割り切り過ぎている。色んな奴らから狂ってるとか異常者だとか言われるくらいにはな。だからコレは本気だ。
・セツナ
通称は『セッちゃん』。異名は『冥土の女剣士』。
《死線踏破》のギルド長である侍Destr!の作製NPC。《死線踏破》の全権代理人にして侍Destr!の専属メイド。
灰の様な銀髪をローポニーテールで結び、ガーネットの様な真紅の眼を持った美人。侍Destr!曰く犬属性。黒い着物の上にフリルの割烹着を着た所謂『和風メイド』で、普段はこの格好。
しかし戦闘参加となれば白を貴重に淡い水色が混ざった和洋折衷の和服装備と二振りの刀の
クールで大人びた印象を持たれる事が多いが、創造者の侍Destr!曰く『犬属性』らしく、撫でられると自然と頬が綻んでしまうらしい。また、侍Destr!に嫁と言われると赤くなってしまう初心な一面もあり、女子メンバーからは可愛がられている。