お酒の力を借りようと思いますわ! 作:名無し
そう、つまりざっくり言うと今彼女は酒に酔いさえすれば気弱な自分も素直になれるんじゃないかと思い、人目を忍んで酒を飲んでいるのである。だから
(ふう……甘くておいしいけど……でも、お酒に酔うってどんな感じなのかしら?体はぽかぽかしていますけど……頭はまだはっきりしているし……うーん……もう少し飲んだ方がいいかしら?)
もう既に顔は真っ赤で明らかに酒が体に回っているのにも関わらず頭がはっきりしているから酔っていないと思っている彼女を止める者は誰もおらず、ジュースのように甘い酒をどんどん彼女は飲み続け――……
チュンチュン
「んえ……?」
気が付けば朝だった。しかも部屋から出た覚えがないのに、いつの間にか朝日が燦々と降り注ぐ公爵家の温室のベンチに座っており、体には赤いブランケットが掛けられている。
「な、何が一体どうなって…?」
どうしてこんなことになっているのか分からないレオノーラは首を傾げつつもとりあえず体を包み込むブランケットを落とさないよう胸の前でぎゅっと抑えながらベンチから立ち上がろうとした時、
「レオノーラ!」
「!」
聞き覚えのある声に動きを止めた。そして声のした方に目を向ければそこには金糸の髪に、宝石の様な青い瞳をした青年……グランツ公爵家の次男にして次期当主候補であるロイド・フォン・グランツが少し驚いた顔をして立っており、まさかの人物の姿にレオノーラは驚くが、ロイドは驚いているレオノーラを気にも留めず、慌てた様子で彼女に近付くと
「もうダメじゃないか!また勝手にどこかに行こうとしただろう!?ほら、水を持ってきたから今度は温室の薔薇に水をあげずにちゃんと飲むんだ!」
「え?」
「そんな可愛い顔したって駄目だ!さっきはそのまるで小動物の様に可愛らしい顔に騙されたが今度は口移しをしてでも絶対に水を飲んで貰うからな!?分かったか!」
「……あ、あの……ロイド様……?」
「!?」
そう言って水の入ったグラスを有無言わさずレオノーラの口元に近づけてくるいつもと様子が違うロイドに何がなんだか状況が全く掴めないレオノーラが戸惑った声を上げると、ロイドはハッとした様子で口を閉じ、次の瞬間。レオノーラの口元に近付けたグラスを『ガシャン!』と温室の床に思いっきり叩き落とし、
「……ふふ、おはよう。よく眠れたかいレオノーラ嬢?」
まるでこの数十秒間の事が全てなかったかのようにロイドはニコリといつもの優しい微笑みを浮かべて挨拶をしてきた。